マルセイユ(Marseille [maʁsɛj] ( 音声ファイル))は、フランス最大の港湾都市で、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏 (Provence-Alpes-Côte d'Azur, PACA) の首府、ブーシュ=デュ=ローヌ県の県庁所在地である。地中海リオン湾を臨む。
概要
マルセイユ市の人口は約87万人。マルセイユ都市共同体の中心であり、近郊地域を併せた人口は約176万人である。都市圏人口はパリに次ぎ第二位の規模となる。近郊には古都エクス=アン=プロヴァンスがある。
都市名は古代ギリシア語マッサリア (Μασσαλία, Massalía)[注釈 1]、およびラテン語化されたマッシリア (Massilia) に由来する。漢字による表記は馬耳塞。
マルセイユの歴史的な領域は、西を海と山地に、南をカルスト地帯に、コート・ブリュやエスタック、鎖状にエトワール山地やガルラバン山地に囲まれ、円形競技場のようなかたちをしている。市街は非常に広い地域に広がっており、フランス本土のコミューンのうち面積では第5位である。
周辺のプロヴァンス地域と共に、2013年の欧州文化首都となった。
歴史
マルセイユの歴史は古く、小アジアから来た古代ギリシアの一民族であるポカイア人が紀元前600年頃に築いた植民市マッサリア(マッシリア)にその端を発する。このためフランスにおいてマルセイユは "cité phocéenne" (ポカイア人の街)とも綽名されている。当初はコルドバ山地の鉱物採掘を目的として建設されたが、内陸との交易中継地として軌道に乗り、やがてワインの産地としても繁栄するようになる[2]。
紀元前3世紀から紀元前2世紀にかけてのポエニ戦争ではローマ側につき、カルタゴと敵対した。カエサルの『ガリア戦記』にもマッシリアへの言及が見られる。紀元前49年からのカエサルとグナエウス・ポンペイウスの間で起った内戦ではポンペイウスを支持したが敗北し、自治都市としての権限を大きく縮小された(マッシリア包囲戦)。当時のマッシリアはガッリア・トランサルピーナ属州におけるギリシア系住民の拠点であったが、徐々にローマ化が進んでいった。
3世紀ごろ、キリスト教がもたらされた。10世紀にプロヴァンス伯の支配するところとなり、1481年にはフランス王国に併合された。中世にはあまり振るわなかったが、港での交易は18世紀に盛んになった。1720年には大規模なペストの流行 (マルセイユの大ペスト) で10万人程度の死者が発生したが、18世紀後半には復興した。フランス革命とナポレオン戦争で一時後退したが、産業の要地となって現在の商工業を中心とする市街が発展し、19世紀半ば以降、港湾施設が充実し多くの工業が興る。しかし、第二次世界大戦ではドイツ軍に占領され、大きな損害を受けた。大戦後は大建設計画により高層ビルの多い現代都市に変わった。
2023年6月27日、パリ近郊のナンテールで、17歳の北アフリカ系の少年が検問中の警察官から銃撃を受けて死亡[3]。このことを契機にフランス各地で、デモと暴動が拡大。同年7月1日、マルセイユでも市民と警察が衝突し、警察側は催涙ガスを使いながら暴徒の摘発を行い、少なくとも56人が逮捕された[4]。
旧港よりノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院を望む
カランク
マルセイユの衛星写真
地理
気候
温暖で湿潤な冬と全体的に乾燥する夏を持つ地中海性気候である。最も寒いのは1月と2月で、平均気温は8℃から9℃である。ローヌ川谷に起因する厳しい寒風ミストラルも知られており、冬と春に多く吹きつける。サハラ砂漠から吹き付ける熱風であるシロッコはそれほど起こらない。
マルセイユの気候 |
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月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年 |
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平均最高気温 °C (°F) | 11.2 (52.2) | 12.6 (54.7) | 15.3 (59.5) | 17.7 (63.9) | 22.2 (72) | 26.1 (79) | 29.5 (85.1) | 29.2 (84.6) | 25.3 (77.5) | 20.3 (68.5) | 14.7 (58.5) | 12.0 (53.6) | 19.7 (67.5) |
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日平均気温 °C (°F) | 7.1 (44.8) | 8.3 (46.9) | 10.7 (51.3) | 13.1 (55.6) | 17.4 (63.3) | 21.1 (70) | 24.1 (75.4) | 23.9 (75) | 20.4 (68.7) | 15.9 (60.6) | 10.8 (51.4) | 8.0 (46.4) | 15.1 (59.2) |
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平均最低気温 °C (°F) | 3.0 (37.4) | 3.9 (39) | 6.0 (42.8) | 8.5 (47.3) | 12.6 (54.7) | 16.0 (60.8) | 18.7 (65.7) | 18.7 (65.7) | 15.5 (59.9) | 11.6 (52.9) | 6.8 (44.2) | 4.1 (39.4) | 10.5 (50.9) |
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降水量 mm (inch) | 53.6 (2.11) | 43.5 (1.713) | 40.4 (1.591) | 57.9 (2.28) | 41.2 (1.622) | 25.4 (1) | 12.6 (0.496) | 31.4 (1.236) | 60.6 (2.386) | 85.4 (3.362) | 50.6 (1.992) | 52.0 (2.047) | 554.6 (21.835) |
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平均降水日数 | 6.1 | 5.1 | 4.8 | 6.3 | 4.9 | 3.5 | 1.4 | 3.1 | 4.1 | 6.3 | 5.2 | 5.6 | 56.4 |
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平均月間日照時間 | 150 | 155.5 | 215.1 | 244.8 | 292.5 | 326.2 | 366.4 | 327.4 | 254.3 | 204.5 | 155.5 | 143.3 | 2,835.5 |
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出典:世界気象機関 (国際連合),[5] フランス気象局[6] |
人口
1962年 | 1968年 | 1975年 | 1982年 | 1990年 | 1999年 | 2006年 | 2012年 | 2016年 |
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778 071 | 889 029 | 908 600 | 874 436 | 800 550 | 795 518 | 839 043 | 852 516 | 870 018 |
source=1999年までLdh/EHESS/Cassini[7]、2004年以降INSEE[8][9]
16世紀中の人口推移は、1524年では1万5千、1585年には3万5千、1597年に3万人[10]。
2008年時点のマルセイユ人口における移民数は108,392人で、これは総人口の12.7%である(そのうちの2.2%がヨーロッパ出身者、非ヨーロッパ出身者が10.5%で主にマグリブ諸国出身である)[11]。さらに、1999年には、18歳未満の若者の41.8%の少なくとも片親が移民であった(うち23%がマグリブ諸国、サハラ以南アフリカ、またはトルコ出身))[12]。住民が移民である割合(うち40%はマグリブ諸国)は、マルセイユ内3つの区において2005年に50%を超えた[13][14]。
対外関係
姉妹都市・提携都市
- 姉妹都市
経済
南フランスにおける貿易・商業・工業の一大中心地である。商工会議所の起源もマルセイユだとされている。近接するトゥーロン軍港に対して、貿易港を有する。これはフランスおよび地中海で最大、ヨーロッパでは第3位の玄関港として、110航路、120カ国の360以上の港と連絡している。工業は鉄鋼・化学・プラスチック・金属・造船・石油精製・建設資材・石鹸・食品加工が発達している。
教育
大学
- エクス=マルセイユ大学(Université d'Aix-Marseille) - 2012年に3校を再統合して創設された。
交通
空路
空港
鉄道
鉄道路線
地下鉄
軌道
路面電車
2007年に開業した路面電車がある。路面電車の建設に伴い、トランジットモールの整備や街路樹の植生等の都市改造が計画的に行われている。港町であることから、舟をモチーフにしたユニークな車体が特徴となっている。
バス
バス路線
航路
船舶
観光
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商業都市であるため、南フランスの都市としては珍しく、観光面の魅力にはやや乏しい。
- 丘の上に立つノートルダム・ド・ラ・ギャルド(守護聖人)教会⇒ノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バシリカ聖堂(英語版)
- 都市の南東部の海岸線一帯はカランク(入り江)と呼ばれ、景勝地となっている。
- マルセイユ港港外の流刑島シャトー・ディフ。アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『モンテ・クリスト伯』に登場する。
- 名物料理のブイヤベース。魚をすりつぶしたスープで、もともとは海から戻った漁師の体を温めるためのものであったが、今では高級料理となっている。一般に、近郊のカシの白ワインと好相性とされる。
- 食前酒としてパスティスが好まれる。無色透明のリキュールで、水を注ぐと白濁する。甘くてアニス風味が強烈だが、クセになる[要出典]。
- 博物館にはヨーロッパ地中海文明博物館(英語版)・マルセイユ歴史博物館(英語版)・カンティーニ美術館(英語版)がある[15]。
文化・名物
マルセイユは2013年に欧州文化首都となった。フランスで人気のヒップホップ・ユニットIAM、フォンキー・ファミリーの出身地でもある。
マルセイユ石鹸
マルセイユ石鹸は植物由来の原料から作られるマルセイユの伝統的な石鹸。その歴史は古く、製造方法が確立する前の最古の販売記録は1370年にさかのぼり、1688年にルイ14世治世下の財務総監、ジャン=バティスト・コルベールが「マルセイユ石鹸」(サボン・ド・マルセイユ)の名称をマルセイユ産のオリーブ・オイルのみを原料とする、脂肪含有率が72%以上の石鹸に使用するとした勅令を出した。2003年3月以降は厳密な原産地呼称ではなく、動物性の原料も含む成文化された脂肪酸の最小含有量に基づいた製品に冠されるとしているが、今日でも伝統的なマルセイユ石鹸の原料は植物由来のものでなければならない。
スポーツ
高齢者に人気のスポーツはペタンクであり、広場では必ず見かける光景で、ワールドカップも開催されている。また、セーリングやウィンドサーフィン、パワーボートなどのマリンスポーツも非常に盛んである。
サッカーリーグであるリーグ・アンに所属するオリンピック・マルセイユは、地元民から絶大な人気を誇っておりアイデンティティーでもある。フランス国内においても、パリ・サンジェルマンFCに次いで人気のクラブである。また、フランスのチームで唯一、UEFAチャンピオンズリーグを制覇している。
映画
マルセイユが舞台の作品
- マルセイユの一夜 (1948年, フランス)
- マルセイユ特急 (1974年, イギリス / フランス)
- フレンチ・コネクション2 (1975年, アメリカ)
- スチュワーデス物語 (1983年, 日本 / 第6話・第11話)
- 想い出のマルセイユ (1998年, フランス)
- マルセイユの恋 (1996年, フランス)
- 幼なじみ (1998年, フランス)
- TAXiシリーズ (1998年, フランス)
- マルセイユ・ヴァイス (2003年, フランス)
- マルセイユの決着 (おとしまえ) (2007年, フランス)
- キリマンジャロの雪 (2011年, フランス)
- 虚空の鎮魂歌 (レクイエム) (2012年, フランス)
- フレンチ・コネクション 史上最強の麻薬戦争 (2014年, フランス / ベルギー)
- 音楽劇 マリウス (2017年, 日本)
- スティルウォーター (2021年, アメリカ)
関係者
著名な出身者
居住者その他ゆかりある人物
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
マルセイユに関連する
メディアおよび
カテゴリがあります。
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