ベルギー憲法194条は、ベルギーの首都はブリュッセル市であると定めている[3]。条文上はブリュッセル市の「市」に相当するフランス語の"ville"およびオランダ語の"stad"が小文字で表記され、それぞれ"ville de Bruxelles"[5]、"stad Brussel"[6]となっているが、このことをもって全体としてのブリュッセル(ブリュッセル首都圏地域)がベルギーの首都であることを意味するという主張は法的根拠に欠ける。しかし実際には、ブリュッセル市は公式な首都ではあるものの、連邦政府および地域政府から首都としてのブリュッセルに委譲される財源は、ブリュッセル市を含むブリュッセル首都圏地域の19の自治体間で分割され、また、ベルギーの国家機関はブリュッセル市内に限らず、ブリュッセル首都圏地域内の他の自治体にも多数所在する。すなわち、憲法上はブリュッセル市のみが首都とされているものの、事実上ブリュッセル首都圏地域全体が首都として機能しているのである。例を挙げると、イギリス連合王国の首都における、グレーター・ロンドンとシティ・オブ・ロンドンの関係、インド共和国の首都における、デリー連邦直轄地とニューデリーの関係。また、日本国の都道府県庁所在地における、東京都区部と新宿区の関係に例えることができる。