ススキ

イネ科ススキ属の植物

ススキ(芒、薄、Miscanthus sinensis)とは、イネ科ススキ属の植物尾花(おばな)ともいい秋の七草の一つ。また(かや。「」とも書く)と呼ばれる有用植物の主要な一種。野原に生息し、ごく普通に見られる多年生草本である。

ススキ
ススキ
分類
:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:単子葉類 Monocots
:イネ目 Poales
:イネ科 Poaceae
:ススキ属 Miscanthus
:ススキ M. sinensis
学名
Miscanthus sinensis Andersson. (1855)
和名
ススキ(芒、薄)

特徴

高さは1から2m。地下には短いがしっかりした地下茎がある。そこから多数の花茎を立てる。は細長く、根出葉と稈からの葉が多数つく。また、ケイ酸を多く含むため堅く、縁は鋭い鉤状になっているため、皮膚が傷つくことがある。

夏から秋にかけての先端に長さ20から30cm程度の十数本に分かれた花穂をつける。花穂は赤っぽい色をしているが、種子(正しくは穎果・えいか)には白い毛が生えて、穂全体が白っぽくなる。種子は風によって飛ぶことができる。花穂はオギ(荻)に似ているがススキは株立ちになっており区別できる[1]。中秋の名月ごろに出た花穂は、晩秋のころには熟し、草体が黄色や赤色なる草紅葉が見られる[2]

日本には全国に分布し、日当たりの良い山野に生息している。

夏緑性で、地上部は冬には枯れるのが普通であるが、沖縄などでは常緑になり、高さは5mに達する。その形ゆえに、たまにサトウキビと勘違いする観光客がいる。国外では朝鮮半島・中国・台湾に分布するほか、北米では侵略的外来種として猛威をふるっている(日本にセイタカアワダチソウが侵入したのと逆の経路で伝播)。

遷移上の位置づけ

植物遷移の上から見れば、ススキ草原は草原としてはほぼ最後の段階に当たる。ススキは株が大きくなるには時間がかかるので、初期の草原では姿が見られないが、次第に背が高くなり、全体を覆うようになる。ススキ草原を放置すれば、アカマツなどの先駆者(パイオニア)的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。後述の茅場の場合、草刈りや火入れを定期的に行うことで、ススキ草原の状態を維持していたものである。

逆光に美しく映えるススキの穂
ススキの実

分類

本州南部以南の海岸線には、葉の幅が広く、ざらつきの少ないものがあり、これをハチジョウススキM. condensatus Hack.)という。変種と見なす立場もある。

同属の別種もいくつかある。やや華奢な植物で、株を作らず水辺に生え、綿毛が純白で穂先にノギの無いのものにオギ(荻、M. sacchariflorus (Maxim.) Benth.)がある。ススキよりさらに大きく、堤防などに大きな株を作るものにトキワススキM. floridulus (Labill.) Warb.)がある。他にもカリヤス(苅安、M. tinctorius Hack.)、カリヤスモドキ(M. oligostachyus)など数種が知られるが、多くない。

ススキはイネ科の代表のひとつと見なされているから、ススキの名を持つ植物は多く、たとえば以下のようなものはさほどススキに似ておらず、分類上も近くはないがその名を持っている。

利用

かつては「」(かや)と呼ばれ、農家で茅葺(かやぶき)屋根の材料に用いたり、家畜の餌として利用することが多かった。そのため集落の近くに定期的に刈り入れをするススキ草原があり、これを茅場(かやば)と呼んでいた。現在では、そのような利用がされないので、その多くは遷移が進んで、雑木林となっている。そのため、ススキ草原に生育していた植物には、かつて普通種であったが、現在は稀少になっているものがある。また、カヤネズミなども同様に見かけにくくなっている。

また、未成熟の穂を食用とする地域もある。

東京・雑司ヶ谷鬼子母神では、ススキの穂をミミズクの姿に作った「すすきみみずく」が有名。

ススキとオギの交配雑種とされるオギススキ(ジャイアントミスカンサス) (Miscanthus x giganteusなどはバイオマス作物として注目されている[3]

文化

和漢百物語に描かれたススキ 左馬之助光年

日本文化とススキ

沖縄地方には、ススキの葉を環のように結んで魔除けとする風習がある。(西表島南風見のススキ)
  • 尾花/尾花栗毛
    • 日本語では、ススキの穂は、それを動物のに見立てて尾花(おばな)と呼ぶことがあり、ススキ自体もそのように呼ばれることがある。この「尾花」はススキおよびススキの穂を意味する古名であり、奈良時代初期の歌人山上憶良が『万葉集』(巻八 1538)にて「の花 尾花 撫子の花 女郎花 また 藤袴 朝顔の花」と詠んだように、古来、秋の七草の一つに数えられている。
    • 馬の毛色尾花栗毛(おばなくりげ)というのは、栗毛馬や栃栗毛馬であることに加えて鬣(たてがみ)や尾の長毛が白色のものを指す。この白毛は遠目には金色に輝いて見えるため、その特徴を秋のススキの穂になぞらえて呼ばれたものである。
  • 枯れ尾花/枯尾花
    • 枯れすすき(枯薄、花も穂も枯れたススキ)には枯れ尾花/枯尾花(かれおばな)という呼称(古名)もあり、現代でも「幽霊の正体見たり枯尾花」というはよく知られている。これは江戸時代中期の国学者俳人横井也有が俳文集『鶉衣』の中で「一年松木淡々己れ高ぶり 人を慢(あなど)ると伝へ聞き 初めて対面して化物(ばけもの)の正躰見たり枯れ尾花 其(そ)の誠心なること大概この類なり」と述べたうちの「化物の正躰見たり枯尾花」が世に広まりつつ変化したものであるが、これは「疑心暗鬼に陥った心境下では風になびく枯れ尾花のような何でもないものも怪しげに思え、幽霊のようなただならないものと見間違えてしまう」ということから、「恐怖心や猜疑心があると、何でもないものでも、怖ろしげなもの、怪しげなものに思えてしまう」ということを意味する譬えとなっている。さらには、やはりススキの穂にまつわる類義語として「落武者は薄の穂にも怖(お)」 (cf. wikt) があるが、こちらは「落武者は捕まることを警戒し、怯えているためススキの穂にも恐怖する」ということから転じて先の諺と同じ意味で用いられる。
    • 江戸時代中期の俳人・与謝蕪村は「狐火の 燃えつくばかり 枯尾花」と詠んでいるが、こちらは、夜の野原にて風に揺らめく枯尾花の情景を、怪しく燃え盛るこの世のものならぬ狐火に譬えた俳句である。

気象庁による観測

気象庁では、全国の気象官署で統一した基準により、すすきが開花した日などの植物季節観測(生物季節観測)を行っている。

すすきの開花日とは、葉鞘から抜き出た穂の数が、穂が出ると予想される全体の約20%に達したと推定される最初の日である。気象台の構内もしくは付近で観測している。

すすき開花日の平年値
(1991 - 2020年、気象庁)[4]
観測地点開花日
函館8月15日
青森8月28日
秋田8月25日
盛岡8月30日
山形8月15日
仙台8月6日
福島8月27日
新潟8月27日
金沢8月4日
富山8月23日
長野8月18日
宇都宮8月26日
福井9月11日
前橋9月1日
熊谷9月19日
水戸9月4日
岐阜9月20日
名古屋9月23日
甲府8月24日
銚子10月8日
8月28日
静岡9月25日
東京9月13日
横浜9月17日
松江9月13日
鳥取9月12日
京都8月31日
彦根9月4日
下関10月2日
広島9月22日
岡山9月13日
神戸9月26日
大阪9月8日
和歌山9月25日
奈良9月17日
福岡9月23日
佐賀9月24日
大分9月22日
長崎9月29日
熊本9月21日
鹿児島10月6日
宮崎9月28日
松山9月9日
高松9月25日
高知8月30日
徳島9月16日
名瀬10月26日
石垣島10月6日
宮古島10月25日
那覇10月16日
南大東島10月24日

ギャラリー

ススキに関する諸項目

ススキが登場する作品

ススキに関連する地名

著名なススキ群生地

脚注

関連項目