ブール代数

ブール代数(ブールだいすう、: boolean algebra)またはブール束(ブールそく、: boolean lattice)とは、ジョージ・ブールが19世紀中頃に考案した代数系の一つである。ブール代数の研究はの理論が築かれるひとつの契機ともなった。ブール論理の演算はブール代数の一例であり、現実の応用例としては、組み合わせ回路(論理回路)はブール代数の式で表現できる。

定義

ブール代数ブール束)とは束論における可補分配束(complemented distributive lattice)のことである。

集合 LL 上の二項演算 ∨(結び(join)と呼ぶ),∧(交わり(meet)と呼ぶ)の組 ⟨ L; ∨, ∧ ⟩ が以下を満たすとき分配束(distributive lattice)と呼ぶ。

  • 交換則xy = yxxy = yx
  • 結合則:(xy)∧ z = x ∧(yz) 、(xy)∨ z = x ∨(yz)
  • 吸収則[注釈 1]:(xy)∨ x =x 、(xy)∧ x = x
  • 分配則:(xy)∧ z = (xz)∨(yz) 、(xy)∨ z = (xz)∧(yz)

さらに L の特別な元 0, 1 と単項演算 ¬ について、以下が成り立つとき組 ⟨ L; ∨, ∧, ¬, 0, 1 ⟩ を可補分配束ブール束)と呼ぶ。

  • 補元則: x ∨ ¬x = 1, x ∧ ¬ x = 0。

典型的な例は、台集合として特別な2つの元 0, 1 のみの2点集合 {0, 1} からなるものであり、コンピュータの動作原理の理論としても知られている。この代数の上では排他的論理和 (xor) や否定論理積(nand)など応用上重要な演算子が ∧、 ∨、 ¬ の組み合わせで記述される(∧ または ∨ も ¬ と残りの1つの組み合わせで記述される。)。

ブール環

任意の元 x に対して 積の冪等x2 = x を満たす単位的環 Bブール環(boolean ring)という。このとき単位的環の公理から

x=(−1)x=x(−1)

さらに

(−x)(−y)=xy

が導かれ、それらと冪等則により

を得る[注釈 2]。つまり(乗法が)冪等的かつ単位的な環は加法に関して全ての元の位数が高々2であるような可換環となる。したがって

とおけば B はブール代数となる。また B がブール代数のとき

[注釈 3]おけば B はブール環となる。この対応はブール代数とブール環の間の自然な一対一対応を定めるので、しばしばこの2つは同一視される。[1]

脚注

注釈

出典

参考文献

  • レイモンド・スマリヤン『スマリヤン先生のブール代数入門 嘘つきパズル・パラドックス・論理の花咲く庭園』川辺治之 訳、共立出版、2008年8月。ISBN 978-4-320-01869-3 
  • ガーレット・バーコフ、ソンダース・マクレーン『現代代数学概論』奥川光太郎・辻吉雄 共訳(改訂第3版)、白水社、1967年。 
  • 前田 周一郎『束論と量子論理』森北出版、2015年8月。ISBN 978-4-627-05399-1  - 1980年に槙書店から出版され、2015年に森北出版から復刊された。
  • Birkhoff, Garrett (1979), Lattice Theory (3rd Revised ed.), American Mathematical Society, ISBN 978-0-8218-1025-5 
  • Davey, B. A.; Priestley, H. A. (2002), Introduction to lattices and order (2nd ed.), Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-78451-1, MR1902334, Zbl 1002.06001, https://books.google.com/books?id=vVVTxeuiyvQC 
  • Grätzer, George (2008), Universal Algebra (2nd ed.), Springer, ISBN 978-0-387-77486-2, https://books.google.com/books?id=8lNkXPJas4wC 
  • Halmos, Paul R. (2012), Lectures on Boolean Algebras, Undergraduate Texts in Mathematics, Springer-Verlag, ISBN 978-0-387-90094-0, https://books.google.com/books?id=_JPfBwAAQBAJ 

関連項目

外部リンク