乙女の祈り (バダジェフスカの曲)

乙女の祈り」(おとめのいのり、ポーランド語の原タイトルはModlitwa dziewicy第4番、フランス語ではLa prière d'une vierge)はポーランドの作曲家、テクラ・バダジェフスカ (1834あるいは1838–1861) の作品である。

A Maiden's Prayer.mid "A Maiden's Prayer"[ヘルプ/ファイル],
MIDI乙女の祈り の伴奏をここからダウンロードして視聴する事が出来ます。3分05秒 13KB

原曲

日刊紙「Kurjer Warszawski」(1851年4月14日発行)より「乙女の祈り」出版を報じる記事。

1851年4月14日発行のワルシャワの日刊紙に「最近ボンダジェフスカ嬢作曲による《乙女の祈り》というピアノ曲が出版された。楽譜は各ミュージック・ショップで購入可能。価格は45コペイカ」という内容の記事が掲載された[1][2]。楽譜はまずワルシャワで出版され[3]、続いて1858年9月にフランスの音楽雑誌「La Revue et Gazette Musicale」の付録としてパリ発表された[4][5][1]。世界各国の80以上の出版者から刊行され、幅広く人気を博したが、「芸術的価値はない」と評されている[6]。中級のピアノ奏者向けで、中程度の難易度の短いピアノ曲である。 魅力的でロマンチックなメロディーが好まれている一方で、感傷的なサロンふうの駄作と言われることもある。 ピアニストで学者のアーサー・レッサーは「愚かな時代遅れの曲[7]」と評している。

続編として、同じ作曲家により「かなえられた祈り(「乙女の祈り」への答え)」が作曲された。

カントリーミュージック

アメリカの音楽家ボブ・ウィルズはニューメキシコ州のロイにある理髪店にいる時にフィドルで「乙女の祈り」を演奏しているのを聴き、その曲をウェスタンスウィング風に編曲した[8]。ウィルズはまず、1935年に器楽曲としてそれを公表し(ヴォーカリオンレコーズ03924、1938年に発表)、すぐにウィルズの定番曲になった[9][10]。後に、バック・オーウェンスの1965年のナンバーワンアルバムI've Got a Tiger By the Tailをはじめとして、多くのカントリーアーティストが演奏するスタンダードな楽曲になった[11]。今でもウェスタンスウィングのバンドのレパートリーの定番である。

ウィルズは「乙女の祈り」の歌詞を書き、1941年にトミー・ダンカンのボーカルで再録音された(オーケー・レコーズ06205)[12]。歌詞はタイトルを反映している。ボーカルのある「乙女の祈り」をカバーしたカントリーシンガーは比較的少ないが、レイ・プライスのトリビュート・アルバム San Antonio Rose (1962)[13]ウィリー・ネルソンのアルバムRed Headed Stranger(2000年のCD再発行版収録、1975年のLPには未収録)」に収録されている[14]。どちらの歌手もウィルズが書いた歌詞を若干変更して使用した。エヴァリー・ブラザースも1973年に録音している[15]

ウィルズは1963年のアルバムBob Wills Sings and Playsで3回めの録音を行っている[16]。彼が1970年にナッシュヴィルの作曲者の殿堂入りした時、「乙女の祈り」が作品のひとつとして言及された。

その他のメディア

欧米
  • おそらく、「乙女の祈り」を使用したものでもよく言及されるのは1930年にクルト・ヴァイルベルトルト・ブレヒトが作った音楽劇『マハゴニー市の興亡』である。第1幕の途中で登場し、売春婦やその客がよく訪れる安酒場で、調子外れなピアノで演奏される[17]。ヤーコプ・シュミットはマハゴニーの住人の1人であるが、この歌が「永遠の芸術」だと言った。
  • リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの人気曲"It Never Entered My Mind"は最後から二番目のメロディーにこの歌を用いた。
アジア

国鉄時代国鉄キハ81系気動車国鉄20系客車でこの曲が車内チャイムとして使用されていた。

文学

  • 「乙女の祈り」はメアリー・ウィルキンズ・フリーマンの怪談The Wind in the Rose-Bush (1903年出版)において、気味の悪い場面で使われている。主人公が空き家のように見える家からピアノを弾く音で目が覚め、階段を下りて急いでピアノを弾いているのは誰か見ようとするが、そこには誰もいないということが分かる。

脚注

注釈

出典

参考文献

  • McWhorter, Frankie. Cowboy Fiddler in Bob Wills' Band. University of North Texas Press, 1997. ISBN 1-57441-025-3
  • Mishler, Craig. The Crooked Stovepipe: Athapaskan Fiddle Music and Square Dancing in Northeast Alaska and Northwest Canada. University of Illinois Press, 1993. ISBN 0-252-01996-2