仮想通貨
仮想通貨(かそうつうか、英: virtual currency、virtual money)とは、デジタル通貨の一種であり、開発者により発行され、通常コントロールもされており、特定の仮想コミュニティ内で受け入れられ、使用されているものである。
2014年に欧州銀行監督局が「中央銀行や公的機関が発行したものではなく、法定通貨の裏付けがあるとも限らないが、自然人(個人)や法人に支払い方法として受け入れられ、電子的に移動、保存、取引される電子化された価値のあるもの」と定義した。対照的に、中央銀行によって発行されたデジタル通貨は中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)という。
定義
2012年、欧州中央銀行(ECB)は、仮想通貨を「デジタル通貨の一種であり、規制を受けておらず、通常は開発者によって発行および管理され、特定の仮想コミュニティのメンバー間で使用および受け入れられるもの」と定義した。 [1] :13
2013年、米国財務省のUS Financial Crimes Enforcement Network (FinCEN)は、自身の規制上の「実際の通貨」の定義と対照し、「一部の環境では通貨のように交換媒体として機能しているが、実際の通貨のすべての属性を備えているわけではない」とし、特に、どの地域においても法定通貨の地位をもっていない、とした(現在は、エルサルバドルの事例のようにビットコインが法定通貨の地位を得ている)。 [2]
2014年、欧州銀行監督局は仮想通貨を「中央銀行や公的機関によって発行されたものでも、必ずしも法定通貨の裏付けのあるものではないが、自然人または法人によって受け入れられている、価値のデジタル表現とし、電子的に転送、保存、または取引することができる」と定義した。 [3]
2018年に、欧州議会および理事会の指令 (EU)、2018/843では、「中央銀行または公的機関によって発行または保証されておらず、必ずしも法的に確立された通貨に関連付けられておらず、通貨の法的地位を持たない価値のデジタル表現」を意味すると定義し、交換媒体として自然人または法人によって受け入れられ、電子的に転送、保存、および取引することができる」とした [4]
よって、仮想通貨はゲーム内通貨などを含める場合がある。[5]
用語の歴史
「仮想通貨」という用語は、デジタル通貨とソーシャルゲームの開発と並行して、2009年頃に造られたと言われている。 [6]
本来、ビットコインの正しい分類は「暗号通貨」であるが、過去、特に米国政府では「仮想通貨」という用語を好み、一律に採用していた。 具体的には前述のFinCENに始まり、2012年にFBI [7] 2013年に総会計局[8] 、2013年11月に米国上院でビットコインに関する公聴会で証言した政府機関(国土安全保障省等)、米国証券取引委員会、司法長官、などに使用例が見られる。 [9]
概念そのものについては、2013年の米国議会聴聞会で、経済学者、元FRB議長のベン・バーナンキ氏は、「(我々は)過去20年にわたって進化してきた『電子マネー』または決済システム技術の分野の一種としてみなしている」と述べ、1995年の「通貨の未来」についての「銀行と金融サービスの未来委員会」による議会聴聞会における議論があった事について言及した。 [10]
日本
日本では、2016年6月3日に成立し、2017年4月1日に施行された、「改正資金決済に関する法律」の第2条第5項で、「暗号資産」(制定当初の名称は仮想通貨)は次のいずれかと定義された[11][12]。なお、名称に暗号とついているが、暗号を使用しなくても暗号資産であり、分散型である必要性もない。
- 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、なおかつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。
- 不特定の者を相手方として相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。
ただし、以下の2要件が要請されている。
- 金融商品取引法第2条第3項に規定する電子記録移転権利は除く。
- 財産的価値は、電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、日本円および外国通貨ならびに通貨建資産を除く。
従来の仮想通貨の呼称では、既存の法定通貨と紛らわしく、通貨建資産を除外しており、誤解を招くことがあったため、2018年の国際会議で暗号資産(英: crypto asset)の呼称が使われたことをきっかけに、日本でも2019年5月31日に暗号資産への呼称変更などを盛り込んだ資金決済法や金融商品取引法の改正法が国会で可決成立した[13][14]。暗号を使用しなくても暗号資産であり、紛らわしくなっている。
2020年5月、金融商品取引法及び資金決済に関する法律改正で呼称が「仮想通貨」から「暗号資産」に統一された。これ以来ニュースなどの報道においても基本的に「暗号資産」と呼称するようになっている。
暗号であるかどうかよりも、電子情報処理であるかどうかが要件である。通貨建資産を除くとなっているので、法定通貨で価値が安定している物が除外される。
ビットコイン(BTC)やアルトコインなどは、暗号通貨(cryptocurrency)であるが、これはデジタル通貨の一種であり、日本の法律上の「暗号資産」の一種でもある。
エルサルバドル共和国において、2021年6月9日に「ビットコイン法」が成立し、ビットコインが国の法定通貨となり[15]、2021年9月7日に施行された[16]。「外国為替及び外国貿易法」第6条で定める外国通貨に該当する場合は、「資金決済に関する法律」第2条第5項第1号で定める暗号資産に該当しなくなるが、外国通貨に該当するかは強制通用力を持つかどうかが基準となる[17]。エルサルバドルの「ビットコイン法」第7条では、ビットコインは強制通用力を持つと定めているが、第12条でビットコインにアクセスすることが出来ない人は第7条が免除されるとされているので[18]、日本政府は2021年6月25日の答弁において、ビットコインはエルサルバドルの外国通貨には該当せず、ビットコインは暗号資産に含まれるという解釈のスタンスをとっている[19]。
通貨の分類表
デジタル通貨は、電子的に転送され格納されるという特定の形態を持つ通貨であり、硬貨または紙幣といった物理的な実体をもつ通貨とは異なる。欧州中央銀行によれば、仮想通貨は「一般的にはデジタル」であるが、長い歴史を持つその先駆者であるクーポンは物理的なものである。[1]
暗号通貨は、暗号を利用してトランザクションを保護し、新しい通貨単位の作成を制御するデジタル通貨である。[20] 仮想通貨がすべてかならず暗号を用いているという訳ではないので、仮想通貨がすべて暗号通貨であるとは意味しない。[21] エストニアは、エストニア人と外国人の両方にデジタル形式の身分証明書を提供する「e-residency」プログラム内での暗号トークンの使用など、ブロックチェーン技術のさまざまな可能性を模索してきました[21]。[22]
貨幣の形態 | |||||
---|---|---|---|---|---|
物理的 | デジタル | ||||
暗号に依存しない | 暗号に依存する、または暗号通貨である | ||||
法的 位置 づけ | 規制 なし | 中央集権的 | クーポン | インターネットクーポン | |
モバイルクーポン | |||||
地域通貨 | ゲーム内仮想通貨、集中管理型仮想通貨 | ||||
分散型 | 物理的な実物貨幣 | 分散型仮想通貨 | 暗号通貨 | ||
規制を受ける | 紙幣、硬貨、現金 | (日本的な意味のいわゆる)電子マネー | |||
銀行にある預金(預金通貨) |
世界の仮想通貨
世界にある仮想通貨の総数は年々増えていく傾向にある。『日本大百科全書』(ニッポニカ)の2016年ころに編集された版では、「600種類を超える仮想通貨が存在する」と記述され、「それらの推定時価総額は2016年4月時点で約80億ドル」とされた[23]。2018年1月27日に掲載された朝日新聞の「キーワード」という記事では、「世界で1千種類以上あるとされ、全体の時価総額は約59兆円に達する」と解説された[24]。ビットコインとイーサリアムは、時価総額や1日の取引量から見て仮想通貨におけるトップ2である。[25]
集中管理型仮想通貨
- L$(リンデンドル、Linden Dollar) - 仮想世界Second Life(セカンドライフ)で使用される[23]。
分散型暗号通貨
- AAVE(アーベ、Aave)
- ADA(カルダノ、Cardano) - カルダノ (ブロックチェーン)を参照。
- ADX(アデックス、AdEx)
- AE(エターニティ、Aeternity)
- AION(アイオン、Aion)
- AMB(アンブロサス、Ambrosus)
- ARK(アーク、Ark)
- AST(エアスワップ、AirSwap)
- BAT(ベーシックアテンショントークン、 Basic Attention Token)
- BCD(ビットコインダイヤモンド、Bitcoin Diamond)
- BCH(ビットコインキャッシュ、Bitcoin Cash)
- BCPT(ブロックメイソン クレジット プロトコル、Blockmason Credit Protocol)
- BNB(バイナンスコイン、Binance Coin)
- BNT(バンカー、Bancor)
- BRD(ブレッド、Bread)
- BTC(ビットコイン[23]、Bitcoin)
- BTG(ビットコインゴールド、Bitcoin Gold)
- BVS(ビットコインシルバー、Bitcoin Silver)
- CDT(ブロックス、Blox)
- CND(シンジケーター、Cindicator)
- CMT(サイバーマイルズ、CyberMiles)
- COT(コスプレトークン、Cosplay Token)- Cosplay Tokenを参照。
- DASH(ダッシュ、Dash) - 現金感覚で使用でき、匿名性に強い。
- DNT(ディストリクトゼロエックス、district0x)
- DGD(ディジックスダオ、DigixDAO)
- DOGE(ドージコイン、Dogecoin)
- DOT(ポルカドット、Polkadot)
- EDO(エイドー、Eidoo)
- ENG(エニグマ、Eniguma) - マサチューセッツ工科大学発の暗号資産(仮想通貨)。
- ENJ(エンジンコイン、Enjin Coin)
- ELF(エルフ、aelf)
- EOS(イオス、EOS)
- ETH(イーサリアム[23] 、Ethereum)- 不動産や信託などに使われる[23]。
- EVX(エヴァレックス、Everex)
- FIL(ファイルコイン、Filecoin)
- FUEL(イーサーパーティ、Etherparty)
- FUN(ファンフェア、FunFair)
- GAS(ガス、Gas)
- GTO(ギフト、Gifto)
- GVT(ジェネシスビジョン、 Genesis Vision)
- GXS(ジーエックスチェーン、GXChain) - 中国発の仮想通貨。2019年に中国警察当局により閉鎖された。
- HSR(エイチシェア、Hshare)
- ICN(イコノミ、Iconomi)
- ICX(アイコン、ICON)
- INS(INSエコシステム、INS Ecosystem)
- IOST(アイオーエストークン、IOStoken)
- KMD(コモド、Komodo)
- KNC(カイバーネットワーク、Kyber Network)
- LED(イーサレンド、ETHLend)
- LINK(チェーンリンク、Chainlink)
- LN(リンク、LINK) - LINEグループが発行する仮想通貨、暗号資産。
- LRC(ループリング、Loopring)
- LSK(リスク、Lisk)
- LTC(ライトコイン[23] 、Litecoin)- ビットコインから派生した暗号通貨。
- LUN(ルーナー、Lunyr)
- LUNA(テラ、Terra)
- MANA(ディセントラランド、Decentraland)
- MCO(モナコ、MONACO)
- MOD(モダム、Modum)
- MONA(モナコイン [23]、MonaCoin) - 日本発祥の暗号通貨。
- MTH(モニーサ、Monetha)
- MTL(メタル、Metal)
- NANO(ナノ、Nano)
- NAV(ナブコイン、 NavCoin)
- NBNG(ノブナガトークン、NOBUNAGA)- 日本発祥の暗号通貨。
- NCASH(ニュークリアスビジョン、Nucleus Vision)
- NEM(ネム、NEM) - 新規発行という仕組みがない仮想通貨。[26]
- NEO(ネオ、NEO) - 中国版イーサリアムと呼ばれる。
- NEBL(ネブリオ、Neblio)
- NULS(ナルス、Nuls)
- OMG(オミセゴー、Omisego)
- PIVX(ピヴクス、ピブクス、PIVX)- ビットコインとDASHをベースにした匿名性の仮想通貨。
- POE(ポーエット、Po.et)
- PPT(ポピュラス、populous)
- QTUM(クアンタム、Qtum)
- RCN(リピオ クレジット ネットワーク、Ripio Credit Network)
- RDN(ライデンネットワーク、Raiden Network)
- RPX(レッドパルス、Red Pulse)
- RYO(コバン、c0ban) - 日本発の暗号資産。
- RLC(アイエグゼック、iExec RLC)
- SALT(ソルト、SALT)
- SAND(ザ・サンドボックス、The Sandbox)
- SNGLS(シンギュラーディーティーヴィー、SingularDTV)
- SNM(ソン、SONM)
- SNT(ステータス、Status)
- STEEM(スチーム、スティーム、Steem)
- STORJ(ストレージ、Storj)
- STORM(ストーム、Storm)
- STRAT(ストラティス、Stratis)
- SUB(サブストラタム、Substratum)
- Symbol(シンボル、Symbol)- NEMの大型アップデート版ブロックチェーン
- THETA(シータ、Theta)
- TNB(タイムニューバンク、Time New Bank)
- TNT(ティーロン、Tierion)
- TRIG(トリガーズ、Triggers)
- TRX(トロン、TRON) - 仮想通貨TRONを参照。
- VET(ヴィチェーン、VeChain)
- VIB(バイブレート、Viberate)
- VIBE(バイブ、VIBE)
- WABI(ワビ、WaBi)
- WAVES(ウェーブス、Waves)
- WMT(ワールドモバイルトークン、World Mobile Token)
- WTC(ウォルトンチェーン、Waltonchain)
- XLM(ステラルーメン、Stellar Lumens)
- XMR(モネロ、Monero)
- XRP(エックスアールピー)
- XVG(ヴァージ、Verge)
- XZC(ゼットコイン、Zcoin)
- ZEC(ジーキャッシュ、ジー・キャッシュ、Zcash)
- ZIL(ジリカ、Zilliqa)
- ZPG(ジパングコイン、Zipangcoin) - 三井物産デジタルコモディティーズが発行する仮想通貨。インフレヘッジとして金価格と連動することを目指す。
- ZRX(ゼロエックス、0x)
海外の動き
中国
2021年9月24日、中国人民銀行は国内で仮想通貨(暗号資産)のサービスを提供する行為を禁止、仮想通貨の使用を違法とした。合わせて海外の取引所が中国本土の住民にサービスを提供することも禁じた[27]。
北朝鮮
北朝鮮はネットでの仮想通貨の略奪行為に積極的に動いている。2023年2月1日、ブロックチェーン分析会社チェイナリシスは、北朝鮮の支援を受けたハッカー集団が、2022年の1年間で17億ドル(約2200億円)相当の暗号資産を盗んだと報告した[28]。2021年は、北朝鮮による暗号資産窃取の金額は、4億2900万ドルだった。
国連の北朝鮮制裁委員会では、北朝鮮が2022年に、過去最高額の暗号資産(仮想通貨)を盗んだことが報告された[29]。
2022年3月、北朝鮮のハッカー集団は、ベトナムのホーチミン市にあるゲーム会社「スカイメイビス」のネットワークに侵入し、6億2000万ドル(約800億円)相当の暗号資産を窃取した[30]。標的になったゲーム「アクシー・インフィニティ」は、ゲーム内で利用者たちが、動物のキャラクターを成長させると、暗号資産「イーサリアム」が獲得できるゲームとなっている[31]。このゲームは東南アジアを中心に爆発的な人気で、新型コロナで外出制限が相次いだ際は1日平均200万人近くが利用した[32]。北朝鮮のハッカー集団はそのゲーム利用者たちの暗号資産「イーサリアム」を不正に奪取した。
2022年11月、ソウルで開催された北朝鮮のサイバー犯罪をめぐる国際会議では、このハッカー集団による暗号資産の奪取で北朝鮮は弾道ミサイル31発分の費用を稼いだ、と報告された[33]。
2023年1月23日、FBI(米連邦捜査局)は、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」が2022年6月に米国の仮想通貨(暗号資産)関連企業のシステムにサイバー攻撃を仕掛け、1億ドル(約130億円)相当の仮想通貨を盗んだと発表した[34]。FBIは、北朝鮮に盗まれたこの暗号資産は「弾道ミサイルと大量破壊兵器の計画を支援」するために使われている、と述べている。
エルサルバドル
2021年9月7日、エルサルバドルでは、「ビットコイン法」が発行し、世界で初めてビットコインを国の法定通貨に採用した。同法では、顧客がビットコインでの支払いを希望した場合、国内の店舗は原則として拒否できない、税金もビットコインで支払える、従来の法定通貨であるドルと併用可能、などを定めた[35]。その後、ビットコインの価格は世界的に下落したが、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は2022年5月9日、ツイッターで「国が500BTCのビットコインを取得平均価格30,744で押し目買い(ディップ買い)した」と公表[36]、さらに、2022年6月30日に、エルサルバドル政府がビットコインを1万9000ドルで80BTC追加購入したことを明らかにした[37]。ナジブ・ブケレ大統領は6月30日、ツイッターに「ビットコインは未来だ。安く売ってくれてありがとう」と投稿した[38]。
しかし、2022年9月の時点では、エルサルバドルの国内ではビットコインの普及はあまり進んでいない。エルサルバドルの国民は従来の法定通貨である米ドルを決済手段として使い続けており、1年たっても多くの店舗がビットコインに対応していない[39][40]。中米大学が実施した国民の世論調査によると、ビットコインを一度も使っていないとの回答者が75.6%に上った。またビットコインがエルサルバドルの法定通貨になったことについて、77%の回答者は「誤り」だったと示した[41]。
また、2023年初頭、エルサルバドルはビットコイン担保付き債券の法的枠組みを提供する法律を制定した。これらの債券は「ボルケーノ(火山)・ボンド」と呼ばれている。「ボルケーノ・ボンド」という言葉は同国が作ったビットコイン・シティの位置に由来しており、同地は近くのコンチャグア火山からの地熱エネルギーを利用した再生可能エネルギー型仮想通貨マイニング・ハブとなる予定だ[42]。
さらに、2022年4月には中央アフリカ共和国がビットコインを採用している。[43]
マイニング
仮想通貨の新規発行は「マイニング」(採掘)という方法で行われる。仮想通貨とは、高度な計算プログラムである。その仮想通貨の取引にはさらに複雑で高度な計算を必要とする。そこで、世界中のマイナー(採掘者)たちが、その仮想通貨のコンピューター演算の作業に協力し、その成功報酬として新たに発行される仮想通貨を得る仕組みが生まれている。 仮想通貨のマイニングをするにはパソコン1台あれば十分であり、現在は、ビジネスとして仮想通貨の採掘に励む個人のマイナーたちや、マイニング企業が世界中に存在する。
しかし、2022年のビットコインなどの仮想通貨価格の長期低迷は仮想通貨のマイニング企業に打撃を与えている[44]。一部のマイニング(採掘)業者はその機材・装置を担保に金融機関から融資を受けているが、ビットコイン価格の低迷で、その融資の返済が難しくなりつつある。そうした融資の総額は最大40億ドル(約5400億円)に上るという[45]。
アナリストらによれば、貸し手が担保として受け入れていたマイニング機器の多くは、ビットコイン価格と足並みをそろえて価値が半減している。そのため、担保価値が債務残高を下回るアンダーウォーター(水面下)状態の融資が増えている。
また、マイニング企業は、仮想通貨をマイニングするのに多くの電力を消費する。その電力需要はとても大きく、その影響で一般消費者向けの電気代も上昇している[46]。2022年9月8日、アメリカのホワイトハウスは米国内の仮想通貨マイニング事業者が、国の全家庭のコンピュータに匹敵するエネルギーを消費する勢いであることを発表し、仮想通貨のマイニング業界の電力需要を抑制するための対策を規制化する必要があると訴えた[47]。
取引方法
仮想通貨の取引は、仮想通貨取引所が提供する取引ツールを介して行われる。仮想通貨取引所は世界各国に数多く存在し、それぞれ取り扱い通貨や手数料などに違いがある。
税金
個人の仮想通貨の売買によって得られた利益は「雑所得」(その他)に該当し、総合課税となる。総合課税とは他の所得と合算する仕組みであり、所得の額が上がれば上がるほどその税率も高くなる累進課税である。現在、日本の所得税の最高税率は45%、それに、住民税10%も加わるので、仮想通貨で得た利益には最高で55%の税金が課せられることになる。仮想通貨で利益を得た投資家が確定申告をする時は、自分はどの税率が適用されるのか調べておくことは肝要である。