全国高等学校女子硬式野球選手権大会

全国高等学校女子硬式野球選手権大会(ぜんこくこうとうがっこうじょしこうしきやきゅうせんしゅけんたいかい)は、兵庫県内で毎年7月から8月に全国高等学校女子硬式野球連盟が開催している女子硬式野球の大会。

全国高等学校女子硬式野球選手権大会
決勝のみ 使用される阪神甲子園球場
開始年1997年(平成9年)
主催全国高等学校女子硬式野球連盟丹波市
スポンサー興和コカ・コーラプロトコーポレーションミズノほか(2023年)
開催国日本の旗 日本
チーム数58チーム
前回優勝神戸弘陵(3回目・2023年)
最多優勝埼玉栄高校(7回)
公式サイト
大会サイト
取りやめ
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止。
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使用球場の1つであるスポーツピアいちじま

全国高等学校女子硬式野球選抜大会(毎年3月から4月に開催)・全国高等学校女子硬式野球ユース大会(毎年8月下旬に開催)と並ぶ全国大会[1]で、準々決勝に進出した8チームには全日本女子硬式野球選手権大会への出場権が与えられる。

概要

運営(2023年)

大会名:第27回 全国高等学校女子硬式野球選手権大会 supported by KOWA[2]

使用球場

会場は数回にわたる変遷を経て、2016年の第20回大会からつかさグループいちじま球場(兵庫県丹波市)を主に使用。2021年の第25回大会からは、男子硬式高校野球の全国大会でも使用する阪神甲子園球場で決勝を開催している[3]2023年の第27回大会からは、1・2回戦の一部で兵庫県立淡路佐野運動公園第1・第2野球場を使用することに伴って、球場の所在する兵庫県淡路市が共催団体に加わっている。

  • 兵庫・阪神甲子園球場(第25回 - 、決勝のみ使用)
  • 兵庫・つかさグループいちじま球場(第8回 - 第18回、第20回 - )
    • 第24回までは全試合を開催していたが、第25回以降は1回戦から準決勝まで使用。第27回からは、運営上「丹波会場の1つ」と位置付けられている。
  • 兵庫・ブルーベリースタジアム丹波(第19回、第25回 - )
    • 第19回では全試合、第25回以降は1・2回戦の一部で使用。第27回からは、運営上「丹波会場の1つ」と位置付けられている。
  • 兵庫・兵庫県立淡路佐野運動公園第1・第2野球場(第27回 - )
    • 1・2回戦の一部で使用。運営上は「淡路会場」という位置付けで、開会式も「丹波会場」(つかさグループいちじま球場)と別に第1野球場で組まれている。
過去

主な大会規定

  • 使用球はミズノ製[4]の硬式球。金属バットを使用する。
  • 指名打者制度(DH)を採用。試合における指名打者の使用の有無は対戦校の判断に委ねられていて、試合中に指名打者を解除することも認めている[4]
  • 試合は7イニング制で、5回裏を終了した時点で「試合成立」とみなす。
  • 雨天などで5回までに試合中止となった場合は、継続試合として翌日以降の第一試合に行う。
  • 5回終了以降で7点差以上ある場合は、点差コールドとする。ただし、準決勝・決勝戦は点差コールドを適用しない[4]
  • 7回終了時点で同点の場合は、タイブレーク(無死一・二塁)を適用する。ただし、準決勝・決勝では9回まで延長でき、9回終了時点で同点の場合は10回表からタイブレークを行う[4]
  • 熱中症対策で給水タイムをもうけ、出場中の選手も審判団もグラウンドからいったん撤収する。

この他にも、試合中の場内アナウンスでスターティングメンバー・次の打順の選手・交代選手の名前を紹介する場合には、「選手の苗字(同姓の選手が同じチームにいる場合には氏名)+さん」という呼称を使用[5]。また、試合によっては、女子の国際大会や男子の地方大会に参加した経験を持つ女性審判が、球審や塁審を務めることがある[6]

歴史

社会人野球でのプレー経験がある四津浩平(よつ こうへい)は、首都圏の大学で女子軟式野球部を指導していた時期(1990年代中盤)に本業(古美術商としての仕事)で中華人民共和国(中国)を訪れた際に、現地の女子硬式野球関係者から「野球を通じた女子中高生による日中交流」について相談を受けた。この相談がきっかけで、1995年8月東京都・福生市営球場において、日本(東京都)と中国(北京市)のチームによる「日中対抗中高女子硬式野球大会」が日本国内で初めて開催された[7]。中国側は当初から硬式野球での交流を望んでいたが、当時の日本では女子で野球のプレーを経験している中学・高校生がまだ少なかったため、日本側のチーム編成に当たっては東京都内の高校(2校)のソフトボール部に協力を依頼したという[8]

日中対抗中高女子硬式野球大会は翌1996年に、大韓民国にある高校のチームを加えた3カ国・4チームによる対抗戦へ発展。四津は、以上の経験を踏まえて、女子の硬式野球部がある日本国内の高校を対象に1997年から本大会を開始した。ちなみに、第1回大会には、東京都・兵庫県・埼玉県から5校が参加。四津は、「女子の野球選手にプレーの場を用意してあげたい」との一心で、女子野球を日本に普及させるべく「家(一戸建て家屋)が2軒建つほどの私財を投じた」とされている[8]

もっとも、日本の高校野球を統括している日本高等学校野球連盟(日本高野連)では、女子学生に対する危険を防ぐ観点から、女子学生が連盟主催の硬式野球大会(全国高等学校野球選手権大会選抜高等学校野球大会)や全国高等学校軟式野球選手権大会へ男子学生と一緒に参加することを規定で認めていない。これに対して、四津は1998年に、当大会の主催団体として全国高等学校女子硬式野球連盟を発足。2000年から男子と同様に春の選抜大会(全国高等学校女子硬式野球選抜大会)を主催していることもあって、本大会への参加校は徐々に増加している[8]

本大会の会場については、第1回から第6回(2002年)まで東京都内、第7回(2003年)のみ埼玉県内、第8回(2004年)から兵庫県内の球場を使用(詳細前述)。選抜大会に続いてスポーツピアいちじまの使用を開始した第8回からは、地元の自治体(市島町丹波市)も主催団体に名を連ねている[8]。ただし、年頭から新型コロナウイルスへの感染が拡大している2020年には、選抜大会・日本高野連主催の上記大会と合わせて中止を余儀なくされた。

参加校が40校にまで増えた第25回(2021年)には、1回戦から準決勝までを丹波市内の球場(春日スタジアムとスポーツピアいちじま)、決勝のみ同じ兵庫県内(西宮市)の阪神甲子園球場で開催。この年には阪神タイガース(甲子園球場を本拠地として使用するNPBセントラル・リーグの加盟球団)が阪神タイガース Women(女子硬式野球のクラブチーム)を創設しているが、同球場が(プロ・クラブ・社会人チームを含めた)女子野球の公式戦に使用された事例は、本大会の第25回決勝が初めてである[注釈 1]

2022年の大会では、auじぶん銀行の特別協賛[11]を受けて「全国高等学校女子硬式野球選手権大会 supported by auじぶん銀行」として開催された[12]。この大会では出場校が49校にまで達したほか、1回戦から準決勝まで丹波市内の上記球場を使用。丹波市は大会の開幕を前に、全日本女子野球連盟から全国12ヶ所目の「女子野球タウン」に認定された[13]。決勝については8月2日に甲子園球場で開催[14]。開催に際しては、同球場を使用する決勝では初めて一般客の入場を認めるとともに、全席指定方式で入場券を初めて販売した[12]

2023年の第27回大会は、興和(KOWA)からの特別協賛を背景に、「全国高等学校女子硬式野球選手権大会 supported by au KOWA」という名称で開催。出場校は過去最多の58チーム(57校と連合1チーム)で、準々決勝と準決勝を丹波市内の球場、決勝を8月1日に甲子園球場で実施した。その一方で、1・2回戦では丹波市内の球場に加えて、兵庫県淡路市内の兵庫県立淡路佐野運動公園第1・第2野球場を初めて使用した[15]。ちなみに淡路市では、兵庫ディオーネ(かつて日本女子プロ野球機構に参加していたチーム)が2015 - 2017年シーズンに淡路佐野運動公園第1野球場を本拠地に使用するなど女子野球との縁が深く、2021年には丹波市に先んじて「女子野球タウン」の認定を受けている。

歴代優勝校

開催年出場数優勝校結果準優勝校備考
11997年5夙川学院(兵庫)駒沢学園女子(東京)5チーム総当たりのリーグ戦方式で開催されたため
全試合での得失点差を基に順位を決定
21998年8習志野(千葉)9 - 7神村学園(鹿児島)この大会からトーナメント制に移行
31999年9神村学園(鹿児島)13 - 6浜名(静岡)
42000年10神村学園(鹿児島)7 - 4蒲田女子(東京)
52001年12神村学園(鹿児島)18 - 1蒲田女子(東京)大会3連覇
62002年13埼玉栄(埼玉)11 - 7駒沢学園女子(東京)
72003年8神村学園(鹿児島)7 - 2埼玉栄(埼玉)
82004年10神村学園(鹿児島)3 - 1埼玉栄(埼玉)
92005年8神村学園(鹿児島)3 - 2埼玉栄(埼玉)大会3連覇
102006年12埼玉栄(埼玉)2 - 0花咲徳栄(埼玉)
112007年6埼玉栄(埼玉)3 - 2花咲徳栄(埼玉)大会2連覇
122008年4駒沢学園女子(東京)2 - 1花咲徳栄(埼玉)
132009年4花咲徳栄(埼玉)5 - 2埼玉栄(埼玉)
142010年4駒沢学園女子(東京)3 - 1花咲徳栄(埼玉)
152011年4埼玉栄(埼玉)5 - 4花咲徳栄(埼玉)
162012年4花咲徳栄(埼玉)5 - 2埼玉栄(埼玉)
172013年16埼玉栄(埼玉)8 - 3蒲田女子(東京)
182014年19福知山成美(京都)3 - 0花咲徳栄(埼玉)
192015年20埼玉栄(埼玉)1 - 0駒沢学園女子(東京)
202016年24神戸弘陵(兵庫)12 - 1神村学園(鹿児島)
212017年26埼玉栄(埼玉)1 - 0履正社(大阪)
222018年28京都両洋(京都)5 - 0横浜隼人(神奈川)
232019年31作新学院(栃木)4 - 3履正社(大阪)
242020年新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止
252021年40神戸弘陵(兵庫)4 - 0高知中央(高知)阪神甲子園球場を決勝に初めて使用
262022年49横浜隼人(神奈川)4 - 3開志学園(新潟)延長10回(タイブレーク)で決着
甲子園球場を使用する決勝では初めて
女性が監督を務める出場校が(両校とも)進出
272023年58神戸弘陵(兵庫)8 - 1岐阜第一(岐阜)決勝は台覧試合[16]
2022年ユース大会・2023年選抜大会優勝校の神戸弘陵が
女子高校硬式野球史上初の「年間三冠」を達成[1]

出場校

出場校都道府県優勝準優勝備考初出年
きょうとがいだいにし京都外大西26京都府0回0回2013
きょうとめいとく京都明徳26京都府0回0回2019
きょうとりょうよう京都両洋26京都府1回0回2012
ふくちやませいび福知山成美26京都府1回0回2010
おおさかたいいくだいがくなみしょう大体大浪商27大阪府0回0回2016
りせいしゃ履正社27大阪府0回2回2014
こうべこうりょうがくえん神戸弘陵学園28兵庫県3回0回2014
こうべこくさいだいがくふぞく神戸国際大附28兵庫県0回0回2023
そうかい蒼開28兵庫県0回0回2021
しまねけんりつしまねちゅうおう県立島根中央32島根県0回0回2019
おかやまがくげいかん岡山学芸館33岡山県0回0回2019
こうりょう広陵34広島県0回0回2022
さんよう山陽34広島県0回0回2021
ひろしまけんりつさえき県立佐伯34広島県0回0回2017
にった新田38愛媛県0回0回2019
こうちけんりつむろと県立室戸39高知県0回0回2013
こうちちゅうおう高知中央39高知県0回1回2013
おりおあいしん折尾愛真40福岡県0回0回2015
くまもとこくふ熊本国府43熊本県0回0回2022
しゅうがくかん秀岳館43熊本県0回0回2018
たまなじょし玉名女子43熊本県0回0回2023
にちなんがくえん日南学園45宮崎県0回0回2012
かみむらがくえん神村学園46鹿児島県6回2回1998
おきなわけんりつなんぶしょうぎょう県立南部商47沖縄県0回0回2022

(2023年大会終了時点で)現在出場していない高校
出場校都道府県優勝準優勝備考初出年最終年
いしのまきしりつじょし石巻市立女子04宮城県0回0回19992004
せんだいじょししょうぎょう仙台女子商業04宮城県0回0回20062006
いばらきけんりつみとしょうぎょう県立水戸商業08茨城県0回0回19982001
ときわだいがくこう常磐大高08茨城県0回0回20022006
うつのみやぶんせいじょし宇都宮文星女子09栃木県0回0回20022002
さいたまけんりつまつぶし県立松伏11埼玉県0回0回20032003
ちばけんりつちばしょうぎょう県立千葉商業12千葉県0回0回20012004
ならしのしりつならしの市立習志野12千葉県1回0回19981999
とうきょうとりつかがくぎじゅつ都立科学技術13東京都0回0回20012001
とうきょうとりつきりがおか都立桐ケ丘13東京都0回0回20022002
とうきょうとりつしょうわ都立昭和13東京都0回0回20002001
ひろおがくえんこいしがわ広尾学園小石川13東京都0回0回旧:村田20132022
にいがたけんりつながおかしょうぎょう県立長岡商業15新潟県0回0回20022002
たかおかだいいち高岡第一16富山県0回0回19981998
はまな浜名22静岡県0回1回19992003
ふくちやまじょし福知山女子26京都府0回0回20042006
おおさかふりつやおみなみ府立八尾南27大阪府0回0回20012001
しゅくがわがくいん夙川学院28兵庫県1回0回19972002
ひょうごけんりつささやまさんぎょう県立篠山産業28兵庫県0回0回20042004
ひょうごけんりつささやまほうめい県立篠山鳳鳴28兵庫県0回0回20002000
わかやまなんりょう国際開洋第二30和歌山県0回0回20112011
やまぐちけんりつほうふ県立防府35山口県0回0回20062006
さがけんりつさがひがし県立佐賀東41佐賀県0回0回20022002

インターネット向けの試合中継

バーチャル高校野球」(朝日新聞社朝日放送テレビ・株式会社運動通信社が共同で運営する高校野球関連のポータルサイト)では、2019年の第23回大会から、準々決勝以降の7試合を対象に、中継動画のライブ配信とダイジェスト動画の配信を実施[17]。配信対象の試合を年々拡大した結果、2023年(第27回大会)の時点で全試合の配信に至っている[18]

また、スポーツナビ内にも大会の速報ページを設置。出場校に関する情報や、試合に出場した選手の成績などを掲載しているほか、「バーチャル高校野球」(女子版)の映像などを配信している。

テレビでの放送

朝日放送テレビが2021年の第25回大会から、決勝の中継映像を制作したうえで、基本として関西ローカル向けに放送。当初の計画では、2021年からの生中継を予定していた[19]が、同年には本大会の決勝が男子全国大会(第103回全国高等学校野球選手権大会)終盤の休養日に組み込まれていたが、天候不順の影響で決勝の日時が急遽変更されたこと[注釈 2]を受けて、録画ダイジェストの時差(深夜)放送で対応[20]。実際には、本大会の決勝と予備日が男子全国大会(全国高等学校野球選手権大会)の開幕前に組まれるようになった2022年から、「バーチャル高校野球」での動画ライブ配信と並行しながら生中継を実施している[21]。テレビ放送では同局のアナウンサーによる実況付きの中継映像を「バーチャル高校野球」と共用しているため、決勝、優勝監督・活躍選手のインタビュー、閉会式が生中継の放送枠内で収まらない場合には、放送の終了直後から閉会式が終了するまで「バーチャル高校野球」単独でのライブ配信で対応している。

朝日放送テレビがテレビ朝日と共同で制作する『熱闘甲子園』(本来は男子全国大会のダイジェスト番組)では、決勝のダイジェストを兼ねた本大会の特集企画を、2021年から男子大会の試合日程に応じて1回ずつ放送[22]。同年には日本放送協会(NHK)でも、第25回大会全体のダイジェスト番組である『甲子園で輝きたい~女子高校球児の夏~』を、決勝の翌月(9月12日)にBS1の『BS1スペシャル』(単発特別番組枠)で放送した[23]

朝日放送グループが運営するスカイACS放送ケーブルテレビ局向けのスポーツ専門チャンネル)では、「バーチャル高校野球」からの配信動画をベースに、第25回大会から決勝と閉会式のダイジェスト番組を制作。決勝が開催された月内(基本として8月中)に、この番組を日本全国へ向けて放送している[24]。ただし、放送の日時は開催年によって異なる。

関連項目

脚注

注釈

出典

外部リンク