戦域

戦域(せんいき、英語: theater / theatre)とは、重要な軍事的事象が発生したり、進行したりしている領域のことである[1][2]。戦域には、戦争作戦に関与している、または関与する可能性のある空域・陸地・海域全体を含みうる[3]

戦時における戦域

カール・フォン・クラウゼヴィッツは、著書『戦争論』において、Kriegstheaterという用語(17世紀の古いラテン語のtheatrum belliを翻訳したもの)を次のように定義している。

戦争が展開する空間のうち、その境界線が防護されており、一種の独立性を有する区域を言い表したものである。この防護は、要塞であることもあれば、天然の要害であることもあり、或いはその戦争に属する他の戦場から遠く隔っているという状態自体の場合もある。単なる全体の一部ではなくて、それ自体ひとつの小さな全体なのである。その結果、他の戦場で生じた変化は、直接的な影響を与えることはなく、間接的な程度のものとなる。その概念を適当に述べようとすると、彼我の一方の軍は前進して他方は後退する、また一方は攻勢に出て他方は守勢を取る、というように仮定される。しかし、このように明確に定義された概念は、普遍的な適用ができないので、ここでは単に区別線を示すために使用されている[4]

作戦領域

作戦領域英語: Theater of operations、TO)[5]とは、戦域の下位区分である。 作戦領域の境界は、戦域内の戦闘活動を調整・サポートする司令官によって定められる。

作戦領域は、戦時であるか平時であるかに応じて、戦略的指揮や軍管区などに区分される。米軍は、特定の軍事作戦領域に割り当てられた統合軍(地域)に分割され、戦略的指揮に基づいてタスクフォース・野戦部隊・戦闘群が組織される。

一般的に戦略的な指揮または指示は、多くの戦術的な軍事編成または作戦指揮を組み合わせてなされる。現代の軍隊では、戦略軍(英語: strategic command)は、戦闘団(英語: group)の組み合わせなどである戦闘部隊(英語: combat command)としてより知られている。

ソビエトとロシアの軍隊

ソビエト軍とロシア軍は、大陸の地理的領域とその境界の海域、島、隣接する海岸[6] 、空域など、大きな地理的区画を戦域として分類している。「戦域」を表すロシア語は、театр военных действийТВД )である。

大陸・海洋地域の分割は、戦略軍団の作戦計画立案にあたっての境界を定め、第二次世界大戦における第1ウクライナ戦線北部戦線のように、特定の重要な"戦略的方向"、すなわち従来戦場に応じて命名された"戦線"(фронт方面軍)の軍事行動を可能にするのである。

戦略的指揮の緊急性が低下した平時において、"戦線"は割り当てられた作戦セクションを担当する軍管区に改められた。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国の統合軍
チャート121940年に陸軍省のドクトリンによって構想された、作戦領域の典型的な組織。

「作戦領域」という用語は、アメリカ陸軍野戦教本英語版では、軍事作戦に付随する行政活動に必要な領域を含む、侵略または防御される陸海域として定義されていた(チャート12)。第一次世界大戦の経験を踏まえて、継続的な作戦が行われる大規模な陸地と考えられており、主に2つの区域、すなわち戦闘ゾーン(戦闘が活発に行われる区域)と連絡ゾーン(戦域の管理に必要な区域)に分割されていた。軍隊が前進するにつれて、これらの区域も新たな支配地域に進出していく[7]

関連項目

脚注