水口哲也

日本のクリエイター、プロデューサー、実業家、大学教員

水口 哲也(みずぐち てつや、1965年5月22日 - ) は、クリエイタープロデューサー実業家大学教員。Enhance(米国法人エンハンス)代表、Synesthesia Lab(シナスタジアラボ)主宰、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(Keio Media Design)特任教授、Resonair (レゾネア)株式会社代表、EDGEof(エッジ・オブ)共同設立者兼CCO、株式会社アカツキ社外取締役[1]北海道小樽市出身。

みずぐち てつや

水口 哲也
生誕 (1965-05-22) 1965年5月22日(58歳)
日本の旗 日本北海道小樽市
出身校北海道札幌西高等学校
日本大学藝術学部文芸学科メディア美学専攻
職業クリエイター
プロデューサー
実業家
大学教員
肩書きEnhance(米国法人エンハンス)代表
Synesthesia Lab(シナスタジアラボ)主宰
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(Keio Media Design)特任教授
Resonair (レゾネア)株式会社代表
EDGEof(エッジ・オブ)共同設立者兼CCO
株式会社アカツキ社外取締役
公式サイト水口哲也の仕事とプロフィール
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略歴

北海道札幌西高等学校卒業後、日本大学藝術学部文芸学科に進学、メディア美学専攻。卒業後セガへ入社した[2]

同社情感デザイン研究室室長、ユナイテッド・ゲーム・アーティスツ(UGA)代表、キューエンタテインメント取締役などを歴任。

2012年、Resonair (レゾネア)株式会社を設立。2014年、アメリカ・カリフォルニア州にコンテンツ・パブリッシング・カンパニー Enhance(エンハンス)社を設立。2018年、共感覚的な体験を研究、実験するためのアライアンス型ラボ、シナスタジアラボを設立。同年、東京・渋谷にEDGEof(エッジオブ)を共同設立。

テクノロジー共感覚的な体験を融合させる作風を持ち味としている。代表作として、映像と音楽を融合させたゲーム「Rez」(2001)、音と光のパズル「ルミネス」(2004)、指揮者のように操作しながら共感覚体験を可能にした「Child of Eden」(2010)、RezのVR拡張版である「Rez Infinite」(2016)、テトリスのVR拡張版「Tetris Effect」(2018)や、音楽と光と共に、触覚を全身に拡張するウェアラブルスーツ「シナスタジア・スーツ」(2016)、共感覚体験装置「シナスタジアX1 – 2.44」(2019)など。

文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査主査(2005-2007)、英国D&AD Award審査委員(2008)、日本賞審査員(2009)、芸術選奨選考審査員(2010)、Wired Creative hack Award審査委員(2013)、Media Ambition Tokyo理事(2019)、アカツキ取締役(2020)などを歴任。

経歴

水口が16歳の時の1981年にMTVの放送が始まり、自分でも音楽と映像を融合させた表現をしたいと思うようになった[3]

セガ時代

大学時代からVRの研究をしていた一方、当時のゲームは2Dが主流だったためゲームにそこまで興味はなかった[2]セガの体感ゲーム用筐体「R-360」との出会いで考えが変わり、卒業後の1990年にセガへ入社した[2]

入社後、水口は「ジョイポリス」の前身となるアミューズメントパークのアトラクション設置について調査したり、鈴木久司とともに日本国外へ調査に行くこともあった[2]。その後、水口は鈴木の命でアミューズメントパーク用アトラクションの映像制作を任される[2]。この当時の様子について水口は2Dから3Dへの移行期と表現し、3Dの専門家がいないため自分たちで解決する必要があったことが良かったのではないかと振り返っており、CGクリエイターのマイケル・アリアスとも会ったという[2]

また、水口は映像制作に必要な高価な機材を調達できたものの、機材トラブルに悩んだとも話している[2]。同時期、セガでは鈴木裕率いるチームが低解像度ながらもリアルタイムレンダリング表示が秒間30フレームのF1レースゲーム『バーチャレーシング』の開発を進めており、水口も裕に相談していた[2]

そして1993年、水口もラリーレースを題材とした『セガラリーチャンピオンシップ』の開発に乗り出した[2]。セガ社内では水口がこの作品を手掛けることに反対する声もあったが、成功を収め、ゲームクリエイターとしての第一歩となった[2]。また、水口がスペインを訪れた際、祖父・父・孫が役割分担をしながら同作を楽しむ様子を見て、ゲーム作りの意義を感じたという[2]。その一方、レースゲームを作り続ける中で、水口はリアルさを突き詰めるばかりになってしまうと感じるようになった[2]。自分が本当にやりたいことを考える中で音楽に行き当たり、『スペースチャンネル5』の開発へとつながった[2]。湯田高志らによる初期案ではクールで芸術的な内容だったが、これではゲームとして遊べないと考えた水口はコミカルな要素を取り入れた[2]。これと並行して『Rez』の企画も進められていた[2]

キューエンターテインメント時代

セガを去った水口らはキューエンタテインメントを立ち上げた[4]

PlayStation Portableの発表を聞いた水口は、誰も遊んだことがなくて、かつ「ウォークマンのように音楽を聴きつつ,誰でも簡単に何かをいじりながら楽しめるゲーム」という命題から、効果音を音楽化することを考え、『ルミネス -音と光の電飾パズル-』が生まれた[4]

その後、キューエンターテインメントはニンテンドーDS向けパズルゲーム『メテオス』でも成功をおさめ、社員数も100人近くに増えた[5]。その矢先の2008年リーマン・ショックの煽りでアメリカの企業と契約していたプロジェクトが立ち消えとなる[5]。水口は2017年の講演の中でお金のストレスとクリエイティブで生ずるストレスは別物であるとしたうえで、その時からクリエイティブとビジネスの両立を考えるようになったという[5]。最終的にキューエンタテインメントはファンドから資金調達と引き換えに成果を求められることとなり、水口は『NINETY-NINE NIGHTS』などに参加していたものの、折り合いがつかなくなり、2011年10月に発売された『Child Of Eden』を以てキューエンターテインメントを去った[5]

再びクリエイティブの世界へ

キューエンターテインメントとしての業務の傍らで、水口はミュージックビデオの制作をしていたものの、四角い画面の制約から逃れられないと感じ、クリエイティブから離れることも考えた[5]。そこへ慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科から、特任教授として講義をしてほしいとの依頼が来て、引き受ける[5]。水口は講義の中で自分が過去にかかわった作品を例に「欲望のチューニング」を教えていくこととなった[5]。これにより、大学以外の企業や団体からも講演のオファーが来るようになった[5]

クリエイティブとコンサルティングを一体化させた仕事を水口は楽しんでいたものの、手を動かして何かを作る方が向いているのでは?とも感じていた[5]。その矢先の2014年キューエンタテインメントが買収されるという情報が水口のもとに寄せられる[5]。『ルミネス』の塩漬けを危惧した水口は、知人であるモブキャスト代表取締役の藪考樹と共同で権利を買い取り、スマートフォン向けパズルゲーム『LUMINES パズル&ミュージック』として配信した[5]

その後、水口は販売を専門とするEnhance Gamesと、開発を中心とする集団レゾネアの代表を務めた[5]

作品履歴

ビデオゲーム

発売年作品名プラットフォームクレジット脚注
1994年セガラリーチャンピオンシップアーケードプロデューサー[2]
1995年マンクスTT スーパーバイクアーケードプロデューサー[2]
1996年セガツーリングカーチャンピオンシップアーケードプロデューサー
1998年Sega Rally 2アーケードプロデューサー
1999年スペースチャンネル5ドリームキャスト、PlayStation 2プロデューサー[2]
2001年Rezドリームキャスト、PlayStation 2プロデューサー[2]
2002年スペースチャンネル5 Part 2プロデューサー
2004年ルミネス -音と光の電飾パズル-PlayStation Portableプロデューサー[4]
2005年メテオスニンテンドーDSプロデューサー[6]
2006年NINETY-NINE NIGHTSXbox 360プロデューサー[7]
2006年Every Extend ExtraPlayStation Portableプロデューサー[8]
2006年Gunpey-Rプロデューサー
2006年Lumines 2プロデューサー
2006年Lumines LiveXbox 360プロデューサー[9]
2007年E4プロデューサー
2007年Rez HDプロデューサー
2011年Child of EdenPlayStation 3、Xbox 360ディレクター[10]
2016年Rez InfinitePC(Occulus Rift、HTC Vive)
PlayStation 4(PlayStation VR)
プロデューサー、クリエイティブディレクター[11]
2018ルミネスリマスターPC
PlayStation 4
Xbox One
Nintendo Switch
エグゼクティブプロデューサー[12]
2018年Tetris EffectPlayStation 4(PlayStation VR)プロデューサー、コンセプトデザイナー[13]

メディアアート作品

  • 2016年 - Synesthesia Suit + Rez Infinite、クリエイティブディレクター (Media Ambition Tokyo)[14]
  • 2018年 - Synesthesia Whale、クリエイティブディレクター (VENT)
  • 2019年 - シナスタジア X1 - 2.44 featuring evala [See By Your Ears]、クリエイティブディレクター (Media Ambition Tokyo)

音楽

音楽アーティスト・プロデュース履歴
音楽作品履歴
  • 2006年 「Heavenly Star / Breeze」 - 作詞、プロデューサー[9]
  • 2007年 「Genki Rockets I -Heavenly Star-」(アルバム)- 作詞、プロデューサー
  • 2011年 「GENKI ROCKETS II -No border between us-」(アルバム)- 作詞、プロデューサー
  • 2012年 「GENKI ROCKETS II -No border between us- Repackage」(アルバム)- 作詞、プロデューサー

映像

発表年作品名クレジット備考脚注
1993年Megalopolice:Tokyo City Battleプロデューサー大型筐体「AS-1」用体感シアター映像
マイケル・アリアスとの共同制作
[15]
1993年米米クラブ・ザ・ミュージックライドプロデューサー体感シアター映像
フジテレビとの共同制作
[15]
2006年Heavenly Starプロデューサー元気ロケッツのミュージックビデオ
2007Breezeプロデューサー元気ロケッツのミュージックビデオ
2008Star Lineプロデューサー元気ロケッツのミュージックビデオ
2010make.believeプロデューサー元気ロケッツの3Dミュージックビデオ

その他

  • 2007年 - LIVE EARTH オープニングアクト演出、ディレクター[16]

受賞歴など

  • 2002年 - 米国Game Developer’s Conference、Developer Choice Award (Game Innovation Spotlights) 受賞(Rez[17]
  • 2002年 - 欧州アルスエレクトロニカ、インタラクティブアート部門Honorary Mention[18]、経済産業省デジタルコンテンツグランプリ・エンターテインメント部門サウンドデザイン賞[19]文化庁メディア芸術祭特別賞[20]などを受賞(以上Rez)
  • 2006年 - 全米製作者組合(PGA)が選ぶ「Digital 50」(世界のデジタル系イノベーター50人)に選出[21]
  • 2008年 - グッドデザイン賞受賞 (Genki Rockets)[22]
  • 2016年 - WIRED Audi INNOVATION AWARD 2016受賞[23]、グッドデザイン賞受賞(シナスタジア・スーツ)[24]、米国The Game Awards 2016 Best VR Game受賞 (Rez Infinite)[25]

出演履歴など

書籍・記事・Web・対談など

出典

外部リンク