町田くんの世界

町田くんの世界』(まちだくんのせかい)は、安藤ゆきによる日本漫画作品。『別冊マーガレット』(集英社)2015年4月号から[1]2018年5月号まで連載された[2]

町田くんの世界
ジャンル少女漫画学園漫画
漫画
作者安藤ゆき
出版社集英社
掲載誌別冊マーガレット
レーベルマーガレットコミックス
発表号2015年4月号[1] - 2018年5月号[2]
発表期間2015年3月13日 - 2018年4月13日
巻数全7巻
話数全27話
映画
原作安藤ゆき
監督石井裕也
脚本片岡翔
石井裕也
音楽河野丈洋
制作CREDEUS
製作映画「町田くんの世界」製作委員会
配給ワーナー・ブラザース映画
封切日2019年6月7日
上映時間120分
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画映画
ポータル漫画映画

安藤にとって初のオリジナル連載作品[3]。勉強も運動も苦手で、機械に弱く、かつ不器用だが、周りの人間から愛される男子高校生の日常を描き[4]、従来の少女漫画とは異なる主人公像を示したことで高い評価を得た。第19回文化庁メディア芸術祭ではマンガ部門の新人賞に選出されており[5]、第20回手塚治虫文化賞では本作における表現を評価されて作者が新生賞を受賞している[6]

2018年5月25日に発売された単行本最終7巻の帯で映画化が発表され[7]2019年6月7日に公開された。

あらすじ

本作の主人公・町田一は、勉強も運動も苦手だが、人間が好きで、また周りの人間からも愛されている高校生である。

ある日、一は授業中に怪我をして、手当てを受けるために保健室に向かう。そこで、授業をサボっていたクラスメイト・猪原奈々と出会う。不在の先生に代わって奈々が一を手当てするが、手当てが終わった後、奈々は「人が嫌い」と言い放ってその場を去ってしまう。その様子に引っ掛かりを覚えた一は、以降奈々のことを気にかけるようになる。奈々の方も、自分のことを気にかける一に次第に好意を寄せるようになる。

その後、一は幼少の頃に好きだった幼稚園時代の先生・英子と再会する(8話)。その日、先生は結婚写真の撮影の予約を入れていたが、婚活は上手くいかず、一緒に写真を撮影する相手がいない状況だった。それを知った一は、先生を気遣って新郎役に名乗り出て、先生と一緒に写真を撮影する。

クリスマスが近づいたある日、奈々はクリスマス・イヴにイルミネーションを見ようと一を誘い、一もそれに応じる。さらに登下校も一緒にするようになるが、一は奈々にかつて自分が幼稚園時代の先生と一緒に撮った結婚写真を見せ、その写真にショックを受けた奈々は高校を休んでしまう。一はそのことを父親に相談し、父親から、奈々が自分に恋心を抱いていることを指摘される。クリスマス・イヴ当日、奈々と再会した一は、写真を見せられたときの心境を奈々から伝えられ、それに理解を示す。そして約束通り彼女とイルミネーションを見る。一連の出来事の後、一は恋愛について思考を巡らせるようになる。

登場人物

町田 一(まちだ はじめ)
本作の主人公。黒髪で眼鏡を掛けた、落ち着いた雰囲気の男子高校生[8]
町田家の長男で第1巻時点では4人の弟妹(ニコ・ミツオ・しおり・けーご)がいる。5話(第2巻収録)で新たな弟・六郎が誕生し、5人の弟妹の面倒を見る。
勉強も運動も苦手で要領もよくないが[注 1]、人間が好きで、ごく自然に他者を思いやる言動をとる。他者の恋心にもいち早く気付くが、自分に寄せられる好意に対しては鈍感なところがある[9]
父親は生物学者で普段は海外にいる。
猪原 奈々(いのはら なな)
本作のヒロイン。一のクラスメイト。負傷した一を手当てしたことがきっかけで、一と関わりを持つようになり、次第に一に好意を抱くようになる。
両親は仮面夫婦で、また中学時代にクラスメイトから無視されたという過去を持つ。それ故に登場当初は人間が嫌いであると発言しており、高校の授業もよくサボっていたが、学業成績は優秀である。
栄(さかえ)
一のクラスメイト。教室での座席は一の隣。
小テストで間違えた箇所を一に教えてもらおうとしたことがきっかけで、一と関わりを持つようになる。噂話が好きで、同じ高校の生徒の情報をしばしば一に教えている。
氷室(ひむろ)
一のクラスメイト。モデルをしている。
ひなた
ニコの幼なじみ。
桐谷 育(きりたに いく)
ミツオのクラスメイト。小学校4年生。姉がいる。
カズミ
一の母親の妹。既婚。

作風

本作の主人公・一は、「人たらしな人」を描きたいという想いから生まれた[10]。一については、従来の少女漫画のヒーロー像と比較して「あまりにも地味」という評もあるが[11]、作者によると、「行動や気持ちだけで人の心を動かすようなキャラクター」にするため、イケメンであったり、運動が得意であったりといった要素は敢えて盛り込まなかったという[10]

本作は、一を主人公に据えつつ、一の周りの人間にスポットを当てるという形で描かれている[12]。作者によると、一の「人たらし」な部分を読者にも楽しんでもらうために、このような形式となったという[12]。ただし、当初は回ごとに主人公を変更し、その主人公たちに一を関わらせるという形式が考えられており、最終的には担当編集者の意見を踏まえて現在の形に落ち着いた[13]

評価

第19回文化庁メディア芸術祭でマンガ部門の審査委員を務めた門倉紫麻は、本作について、「勉強も運動も苦手、けれど人が好き、という新たなヒーロー」を登場させた点が審査委員の注目を集めたと述べている[3]。第20回手塚治虫文化賞でも、本作の主人公・一のキャラクター造形が評価されており、型破りなキャラクターが多い少女漫画の男性たちの中でも「全く逆の意味で型破り」と評されている[14]

このマンガがすごい!2016』に掲載されたレビューでは、一と他キャラクターとの交流を丁寧に描くことで「読みすすめるごとに優しい世界が立ちあがってくる」と評されている[15]

漫画家鳩胸つるんは、『別冊マーガレット』作品の中で本作が「ダントツで好き」で「ずっと続いてほしかった」と語っている[16]

賞歴・ノミネート歴

発表年部門対象結果
2015第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞町田くんの世界受賞[17]
このマンガがすごい!2016オンナ編町田くんの世界3位[18]
THE BEST MANGA 2016 このマンガを読め!町田くんの世界7位[19]
2015 コレ読んで漫画RANKING BEST50町田くんの世界9位[20]
2016マンガ大賞2016町田くんの世界8位[21]
第20回手塚治虫文化賞新生賞安藤ゆき受賞[14]

書誌情報

全て集英社から刊行されている。

単行本

  • 安藤ゆき 『町田くんの世界』 〈マーガレットコミックス〉、全7巻
    1. 2015年7月29日発行(7月24日発売[集 1])、『別冊マーガレット』2015年4月号[1] - 7月号、ISBN 978-4-08-845421-4
    2. 2015年11月30日発行(11月25日発売[集 2])、『別冊マーガレット』2015年8月号 - 11月号、ISBN 978-4-08-845485-6
    3. 2016年3月30日発行(3月25日発売[集 3])、『別冊マーガレット』2015年12月号、2016年2月号 - 3月号、ISBN 978-4-08-845541-9
      • 愛、ある生活[22](『別冊マーガレット』2015年2月号)
    4. 2016年11月30日発行(11月25日発売[集 4])、『別冊マーガレット』2016年4月号 - 5月号、7月号 - 8月号、ISBN 978-4-08-845670-6
    5. 2017年4月30日発行(4月25日発売[集 5])、『別冊マーガレット』2016年10月号、12月号、2017年1月号、4月号、ISBN 978-4-08-845747-5
    6. 2017年10月30日発行(10月25日発売[集 6])、『別冊マーガレット』2017年5月号、7月号 - 8月号、10月号、ISBN 978-4-08-845837-3
    7. 2018年5月30日発行(5月25日発売[集 7])、『別冊マーガレット』2017年11月号、2018年2月号 - 3月号、5月号[2]ISBN 978-4-08-844037-8

単行本未収録作品

  • 町田くんの世界(『別冊マーガレット』2017年8月号別冊ふろく『BETSUMA SPIN-OFF』)

小説

映画

町田くんの世界
監督石井裕也
脚本片岡翔
石井裕也
原作安藤ゆき「町田くんの世界」
製作北島直明(企画・プロデュース)
里吉優也
製作総指揮伊藤響
出演者細田佳央太
関水渚
岩田剛典
高畑充希
前田敦子
日比美思
太賀
池松壮亮
戸田恵梨香
佐藤浩市
北村有起哉
松嶋菜々子
音楽河野丈洋
主題歌平井堅「いてもたっても」
撮影柳田裕男J.S.C.
編集普嶋信一
制作会社CREDEUS
製作会社映画「町田くんの世界」製作委員会
配給ワーナー・ブラザース映画
公開2019年6月7日
上映時間120分
製作国 日本
言語日本語
興行収入1.6億円[23]
テンプレートを表示

2019年6月7日公開。監督は石井裕也[24]、主演は約1000人によるオーディションによって選ばれた当時は無名だった細田佳央太関水渚[25]。映画は、原作の町田くんの大人びて優しい人気者なキャラを、間抜けで、不器用なキャラに改変し、原作の不思議な優しい世界観とは、全く異なる世界とした。

キャスト

スタッフ

ミュージカル

2024年3月29日から4月21日に、シアタークリエ梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演予定[27]。主演は、川﨑皇輝少年忍者[27]

キャスト

演奏

スタッフ

脚注

注釈

出典

以下の出典は『集英社の本』(集英社)内のページ。書誌情報の発売日の出典としている。

外部リンク