酸化アルミニウム

無機化合物

酸化アルミニウム(さんかアルミニウム、: aluminium oxide)は、化学式がAl2O3で表されるアルミニウム両性酸化物である。通称はアルミナ(α-アルミナ)、礬土(ばんど)。天然にはコランダムルビーサファイアとして産出する。おもに金属アルミニウムの原料として使われるほか、硬度を生かして研磨剤、高融点を生かして耐火物としての用途もある[6]立方晶系のγ-アルミナは高比表面積を持つことから触媒として重要である[7][8]

酸化アルミニウム(III)
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識別情報
CAS登録番号1344-28-1 チェック
PubChem9989226
ChemSpider8164808 チェック
UNIILMI26O6933 チェック
RTECS番号BD120000
ATC分類D10AX04
特性
組成式Al2O3
モル質量101.961276g mol-1[1]
外観白色固体
匂い無臭
密度3.95–4.1 g/cm3
融点

2072 °C [3]

沸点

2977 °C [4]

への溶解度溶けない
溶解度ジエチルエーテルには溶けない
エタノールにもほとんど溶けない
熱伝導率30 W·m−1·K−1[2]
屈折率 (nD)nω=1.768–1.772
nε=1.760–1.763
複屈折 0.008
構造
結晶構造三方晶系、hR30、空間群 = R3c, No. 167
配位構造八面体
熱化学
標準生成熱 ΔfHo−1675.7 kJ·mol−1[5]
標準モルエントロピー So50.92 J·mol−1·K−1[5]
危険性
安全データシート(外部リンク)Safety data sheet
EU分類非掲載
NFPA 704
0
1
0
引火点なし (不燃性)
関連する物質
その他の陰イオン水酸化アルミニウム
その他の陽イオン三酸化ホウ素
酸化ガリウム
酸化インジウム
酸化タリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

産出

天然には、結晶コランダム三方晶系)として産出するほか、水和物ボーキサイトの主成分として存在する。ルビーサファイアはコランダムの変種で、微量の金属イオンが混入することにより呈色し宝石として珍重される。ルビークロムが混入することにより深赤色を呈し、ルビーレーザーなどの用途がある。サファイアチタンなどが微量混入し、赤以外の色を呈するコランダムである。

性質

粉末状の酸化アルミニウム

絶縁体、高熱伝導率(30 Wm−1K−1[2])のセラミック材料である。一般に結晶の状態で産出し、コランダムまたはα-酸化アルミニウムと呼ばれ、研磨材切削工具の部品としての用途がある[6]

酸化アルミニウムにおけるアルミニウムと酸素との結び付きは強く、ここからアルミニウムの単体を取り出すことは難しいが、アメリカ合衆国チャールズ・マーティン・ホールフランスポール・エルーらはそれぞれ、共に電気分解を用いてこれに成功した(ホール・エルー法)。

カラムクロマトグラフィーにおいて、シリカ二酸化ケイ素)が酸性のために充填材として用いることができないときに用いられることがある。ボーキサイトからアルミナを製造するには、カール・ヨーゼフ・バイヤー英語版が開発したバイヤー法が用いられている。

誘電正接がほかの素材と比べ、極めて低いことから高周波への応用例がある。

用途

融解塩電気分解でアルミニウムの材料とするほか、陶芸などのセラミックス材料としても添加される。また、研削材砂まき装置等の高強度、高靱性、耐熱衝撃性を求められる分野や、自動車排ガス浄化触媒等の触媒担体歯科治療(インレークラウンなどの修復物・補綴物)などに広く利用される。また、工業用サンドブラスト研磨剤として利用され、医療用途でも使用されWHOATC分類では、痤瘡(にきび)の瘢痕を削り取る治療に用いられる。

ミクロン単位で球状に加工したアルミナは、ゴム合成樹脂に添加することで放熱材料用高熱伝導フィラー、半導体封止材用フィラーとして用いられる[9]

高純度の結晶鉱石宝石として珍重される(サファイアルビー)。

高純度アルミナは、サファイアを使ったLEDの基板、リチウムイオン二次電池部材、半導体製造装置のセラミックス製部材などに、低ソーダアルミナは、液晶ディスプレイ用ガラスやICパッケージ、自動車プラグなどに使用される[10]。また、誘電正接がほかの素材と比べ、極めて低いことから、一部の高周波測定機やミリ波レーダー等の基板に使用される。しかし、回路パターンの形成法などがFR-4などの一般的なものと異なるため、製作所は違うことが多い。

合成法

種類

結晶

かつて組成がAl2O3だと考えられていたβアルミナ(Na2O・11Al2O3)は、ナトリウム・硫黄電池電解質に用いられる。

酸化アルミニウム(II)および酸化アルミニウム(I)

酸化アルミニウムにはAl2O3の化学式で表される酸化アルミニウム(III)の他に、AlOの化学式で表される酸化アルミニウム(II)および、Al2Oの化学式で表される酸化アルミニウム(I)が存在する。酸化アルミニウム(II)は高層大気中においてアルミニウム処理された手榴弾が爆発した際に気層から検出され[11][12][13]、星の吸収スペクトルからも発見されている[14]。酸化アルミニウム(I)は酸化アルミニウム(III)と金属ケイ素を真空条件下1800℃で加熱することによって得られる物質であり[15]、安定に存在できる温度領域が1050-1600℃であるため通常は気体として存在している[16]

脚注

関連項目

外部リンク