LRP6
LRP6(low-density lipoprotein receptor-related protein 6)は、ヒトではLRP6遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6]。LRP6は古典的Wnt経路に関与するLRP5/LRP6/Frizzled受容体群の重要な構成要素である。
構造
LRP6は膜貫通型LDL受容体タンパク質であり、LRP5と同様の構造を持つ。これらのタンパク質は全長約1600アミノ酸のうち、約85%が細胞外に位置する。N末端には4つのβプロペラモチーフと4つのEGF様リピートが交互に並んでいる。LRP5やLRP6に結合する細胞外リガンドの大部分はβプロペラ部分に結合する。22アミノ酸からなる領域が細胞膜を横断する1回膜貫通タンパク質であり、207アミノ酸からなる領域が細胞内に位置する[7]。
機能
LRP6はLRP5やFrizzledタンパク質ファミリーのメンバーと共に補助受容体として機能し、古典的Wnt経路を介してWntタンパク質によるシグナルを伝達する[7]。
相互作用
古典的Wntシグナルは、Frizzled受容体とLRP5/6補助受容体を介して、GSK3BのSer9のリン酸化に依存しない活性をダウンレギュレーションする[8]。LRP5やLRP6の欠乏による古典的Wntシグナルの低下は、p120-カテニンの分解を引き起こす[9]。
LRP6はDickkopf(Dkk)ファミリーのタンパク質(DKK1など[10])、スクレロスチン、R-spondin、システインノット型タンパク質ファミリーのメンバーなどの細胞外タンパク質によって調節される[7]。
臨床的意義
ヒトでは、LRP6の機能喪失変異は血漿中のLDLやトリグリセリドの増加、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症を引き起こす[7]。同様に、Lrp6に機能喪失変異を有するマウスも骨量が低下する[11]。LRP6は副甲状腺ホルモン(PTH)治療に対する骨の同化応答に重要であり、LRP5はこの作用には関与していない[11]。一方、LRP5が重要な役割を果たしているメカノトランスダクション(力に対する骨の応答)には、LRP6は活性を持たないようである[11]。LRP5の阻害因子の1つであるスクレロスチンは、骨細胞特異的なWntアンタゴニストとして、骨粗鬆症の臨床試験において有望な結果が得られている[12][13]。