スポケーン (Spokane [ˌspoʊˈkæn] [1] )は、アメリカ合衆国 ワシントン州 東部に位置する中規模商工業都市。スポケーン郡 の郡庁所在地 である。人口は22万8989人(2020年国勢調査 )で、シアトル に次ぐ州第2の都市である。市はシアトルの東約450km、ポートランド の北東約600kmに位置する。
もともとの地名はスポケーン・フォールズ(Spokan Falls)といった。市内をコロンビア川 の支流であるスポケーン川が流れ、市内にはもとの地名が示す通り、滝 がいたるところに見られる。また、市はLilac City (ライラック の街)と呼ばれている。コロンビア台地の東端、ロッキー山脈 の西麓に位置するスポケーンは、このような自然の豊かさでよく知られる。また治安 も比較的良い。
なお、英語での公式な発音はスポーケイン だが、現地ではよくスポケーン と発音される。日本語ではスポケーン という表記のほかに、スポーケン 、スポーカン 、スポーキャン などの表記ゆれがある。
都市名の由来は原住民のスポケーン族で、「太陽の子供」を意味する。
歴史 リバーフロント・パークの時計塔 その昔、スポケーン川にはサケ が豊富であったことから、この地には土着の人々がよく集まった。やがて1880年 、アメリカ合衆国陸軍 が現在のスポケーンの北西約90kmの位置にキャンプ・スポケーンを設置した。このキャンプの設置には、ノーザン・パシフィック鉄道をこの地に引くことによってアメリカ合衆国の領土を保障しようという狙いがあった。翌1881年 には、そのノーザン・パシフィック鉄道 がスポケーンまで開通し、ヨーロッパ 人入植者がこの地にやってきた。同年11月29日にはスポケーン・フォールズ(Spokan Falls)という市名で正式な市になった。なお、当時は「スポケーン」の綴りにeはなかった。その翌々年、1883年 に市は現在のスポケーンに改称された。
1889年 夏には大火が起こり、ダウンタウンは壊滅的な被害を受けた。ポンプ場が技術的な問題を抱えていたため、出火の際に十分な水圧がなかった。ボランティアの消防団が消火を試みたときには、すでに彼らのホース が使い物にならないほどに火が燃え広がっていた。やがて風に乗って火はさらに燃え広がり、最終的にはダウンタウンの27ブロックが燃えてしまった。
このような大惨事があったにもかかわらず、スポケーンは成長を続けた。大火から3年後の1892年 、グレート・ノーザン鉄道 がスポケーンまで開通し、市には同社の操車場が置かれた。現在リバーフロント・パークに建っている時計塔は、当時の駅の建物の一部である。当時はアメリカ合衆国北西部で最も大きな駅であった。当時の駅はスポケーン国際環境博覧会(後述)を開催したときに取り壊され、現在残っているのはこの時計塔のみである。
スポケーン滝 1974年 にはスポーケン国際環境博覧会 が開催された。当時、スポケーンは万国博覧会 を開いた都市としては史上最小であった(しかしその翌年には沖縄県 国頭郡 本部町 で沖縄国際海洋博覧会 が開かれ、その記録はわずか1年余りで破られてしまった)。その名が示す通り環境をテーマにしたこの万国博覧会には日本も参加した。この博覧会を境にスポケーンは100年来の鉄道の町 から脱皮し、明確なダウンタウンを持つ商工業都市へと変貌していった。
スポケーン国際環境博覧会で建てられた建物の多くは現在も残り、使用されている。アメリカ合衆国館はIMAX シアターになった。ワシントン州館はINB演技芸術センター(Inland Northwest Bank Performing Arts Center )として使われている。博覧会会場跡は400,000m²の敷地を有するリバーフロント・パークとなり、市民の憩いの場となっている。園内には前述のIMAXシアターや時計塔のほか、ローフ・カルーセル(Looff Carousel)というメリーゴーランド も残っている。
地理・気候 右: ワシントン州の中でのスポケーン郡の位置。左: スポケーン郡の中でのスポケーンの位置 スポケーンは、北緯47度40分24秒 西経117度24分37秒 / 北緯47.67333度 西経117.41028度 / 47.67333; -117.41028 (47.673341, -117.410271)に位置している。市の標高は610mである。
市はコロンビア台地の東端、ロッキー山脈 の西麓に位置している。市内をコロンビア川 の支流であるスポケーン川が流れ、至るところに滝 が見られる。市の周辺には広大な小麦 畑やステップ が広がっている。
アメリカ合衆国統計局 によると、スポケーン市は総面積151.6km2 (58.5mi2 )である。このうち149.6km2 (57.8mi2 )が陸地で2.0km2 (0.8mi2 )が水域である。総面積の1.30%が水域となっている。
スポケーンは高緯度・内陸にあるため冷涼な気候であり、夏もさほど暑くならず過ごしやすい。年間雨量はシアトル の半分以下であり、乾燥しているが、水源は豊富であり水不足になることは稀である。ケッペンの気候区分 では、地中海性気候 (Csb)に属する。
スポケーンの気候 月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年 日平均気温 °C (°F ) −1.4 (29.5) 0.6 (33.1) 4.6 (40.3) 8.3 (46.9) 12.8 (55) 16.7 (62.1) 21.0 (69.8) 20.7 (69.3) 15.7 (60.3) 8.7 (47.7) 2.1 (35.8) −2.6 (27.3) 9.0 (48.2) 降水量 mm (inch)45.7 (1.799) 33.0 (1.299) 40.6 (1.598) 33.0 (1.299) 40.6 (1.598) 33.0 (1.299) 15.2 (0.598) 15.2 (0.598) 17.8 (0.701) 30.5 (1.201) 58.4 (2.299) 58.4 (2.299) 421.6 (16.598) 出典:Weatherbase[2]
交通 スポケーンの玄関口となる空港はダウンタウンの西約8kmに位置するスポケーン国際空港 (Spokane International Airport 、IATA : GEG )である。この空港はスポケーンのみならず、ワシントン州東部・アイダホ州 北西部の玄関口となっている空港である。州間高速道路 I-90が空港を通っており、ダウンタウンから車で10分程度で着くことが出来る。
ダウンタウンを通る州間高速道路I-90は、アメリカ合衆国の北西部・北東部を通り、シアトル とボストン を結んで大陸を横断する幹線である。かつてはシアトルとミネアポリス を結ぶグレイハウンド の長距離バスがこの高速道路の上を走っていたが、2004年 に不採算のために廃線となった[3] [4] 。廃線以後、シアトルからスポケーンへのバスは1日3便で、うち2便がスポケーン以東、モンタナ州 ビリングス までの運行となっている。ミネアポリス方面からのバスの終点はノースダコタ州 ファーゴ である。ビリングス~ファーゴ間はグレイハウンドと提携する地元密着型の中距離バス会社、リムロック・トレイルウェイズによってカバーされている。またこれとは別に、ポートランド とスポケーンを結ぶバスも1日1便ある。
アムトラック の駅があり、シアトル・ポートランドとシカゴ とを結ぶエンパイア・ビルダー 号が停車する。スポケーン駅はシアトル方面とポートランド方面との連結・切り離し駅となっている。アメリカ合衆国とカナダ との国境線近くを走るこの列車は、途中グレイシャー国立公園 を通過する。
市内の交通機関としては、スポケーン交通局(STA)が運営する路線バス が挙げられる。ライトレール を建設する案が出されており、もし可決されれば、このライトレールはダウンタウンとリバティ・レイクを結び、また将来的にはスポケーン国際空港へも延伸される予定になっている。
教育 ゴンザガ大学 スポケーン市内の公立学校はスポケーン公立学区 の管轄下にある。スポケーン学区はPBS と提携したKSPS-TVというテレビ局 を持っており、ワシントン州東部のみならずアイダホ州 やモンタナ州 の一部、カナダ のカルガリー やエドモントン でも視聴されている。
大学は都市の規模の割に充実している。最も有名で評価の高いのは上智大学 と交換留学の提携をしているカトリック 系私立のゴンザガ大学 である。そのほかにもワシントン州立大学 スポケーン校、イースタン・ワシントン大学、ホイットワース大学(英語版 ) と4年制大学が4つ、さらにコミュニティ・カレッジ が2つある。ゴンザガ大学は男子バスケットボールの強豪校としても知られ、ジョン・ストックトン や八村塁 らのNBA 選手を複数輩出している。そのほかムコガワ・フォート・ライト・インスティチュートという、兵庫県 西宮市 にある武庫川女子大学 の海外キャンパスがある。
人口動勢 以下は2000年 の国勢調査 における人口統計データである。
基礎データ
人口: 195,630人 世帯数: 81,512世帯 家族数: 47,276家族 人口密度 : 1,307.7人/km2 (3,387.0人/mi2 )住居数: 87,941軒 住居密度: 587.8軒/km2 (1,522.6軒/mi2 ) 人種別人口構成
年齢別人口構成
18歳未満: 24.8% 18-24歳: 11.1% 25-44歳: 29.6% 45-64歳: 20.5% 65歳以上: 14.0% 年齢の中央値: 35歳 性比(女性100人あたり男性の人口) 世帯と家族 (対世帯数)
18歳未満の子供がいる: 29.4% 結婚・同居している夫婦: 41.3% 未婚・離婚・死別女性が世帯主: 12.4% 非家族世帯: 42.0% 単身世帯: 33.9% 65歳以上の老人1人暮らし: 11.7% 平均構成人数 収入と家計
収入の中央値世帯: 32,273米ドル 家族: 41,316米ドル 性別男性: 31,676米ドル 女性: 24,833米ドル 人口1人あたり収入: 18,451米ドル 貧困線 以下対人口: 15.9% 対家族数: 11.1% 18歳未満: 19.3% 65歳以上: 9.6% 姉妹都市 スポーケンは以下4都市と姉妹都市 提携を結んでいる。
註 外部リンク ウィキメディア・コモンズには、
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