アカハナグマ

アカハナグマ (赤鼻熊[6]学名Nasua nasua) は、食肉目アライグマ科ハナグマ属に分類される哺乳類。南米に分布する。体重2–7.2 kg、全長85–113 cmになるが、全長の半分は尾が占める[7]。体色は個体差が大きく、尾の縞模様は薄れることもある。だが吻部は白くならず、この点で中米に分布するハナジロハナグマと区別できる[7]

アカハナグマ
アカハナグマ
アカハナグマ Nasua nasua
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:食肉目 Carnivora
:アライグマ科 Procyonidae
:ハナグマ属 Nasua
:アカハナグマ N. nasua
学名
Nasua nasua (Linnaeus1766)[2]
シノニム[3]

Viverra nasua Linnaeus, 1766

和名
アカハナグマ[4][5]
英名
Brown-nosed coati[2]
Ring-tailed coati[5]
South American coati[3]
Southern coati[5]
分布域。これに加え、アンデスの西側からも数個体の報告がある。

分布

南米の熱帯から亜熱帯域に広く生息する。分布域は主にアンデス山脈より東の低地で(一部、標高2500mで見られる地域もある)北はコロンビアガイアナから、南はウルグアイ・北部アルゼンチンまで。南米の国家ではチリにのみ自然分布しない[1][7]ロビンソン・クルーソー島に移入されている[1]

アンデス西部での分布域については多少の混乱があるが[8]、エクアドルの西部、コロンビアの北部と西部から本種の記録がある[9][10]ハナジロハナグマは、南米では唯一、コロンビア北西部、パナマとの国境に近いウラバ湾からの記録があるのみである[9][10]。ヤマハナグマ属 Nasuella は本種より体が小さく、より標高の高い地域に分布するが、その分布域は本種と大きく重なっている[11]

形態

頭胴長(体長)41 - 67センチメートル[4]、尾長32 - 69センチメートル[4]、肩高30センチメートル[4]、体重オス4 - 5.6キログラム・メス3.5 - 4.5キログラム[5]。顔面や吻は暗色で、目の上下や頬に白斑がある[5]

生態

橙赤色の個体。体色は個体差が大きい[7]

森林に生息する[4]昼行性で、地上・樹上双方で生活する[12]雑食性で、主に果実無脊椎動物・他の小動物・鳥の卵などを食べる。果実を求めて高木に登る、吻で地面を掘る、石を裏返す、鉤爪で倒木を裂くなどの様々な方法で餌を探す[12]

メスは"bands"と呼ばれる15-30匹の大きな群れを作るが[12][13]、成獣のオスは繁殖期を除いて単独で生活する[4]。生態が異なるために、かつてはオスは別の種だと思われ、現在も用いられるcoatimundiという別名が付けられた[2][4]。雌雄共に縄張りは持たないため、生活圏は重なることもある[13]

群れの個体は、小さく鼻を鳴らすことでコミュニケーションをとる。警戒音はこれとは違い、大きな唸り声やクリック音である。警戒音を聞いた個体は木に登り、その後落下して逃げ散る[12]。天敵としてはキツネジャガージャガランディイヌ・人間などがある[14]

木の上で眠ることが多い[12]

野生での寿命は7年程度だが、飼育下では14年ほど生きる[13]。長期飼育として17年8か月の生存記録がある[5]

繁殖

メスは果実が熟する時期に、全個体同時に発情する。メスは複数のオスと交尾し、77日の妊娠期間の後[13]、2-4匹の仔を産む。仔は樹上に作った巣に入れられ、4–6週育てられる。メスはこの間、群れを離れる[12][13]。メスは自身の生まれた群れに残る傾向があるが、オスは3年ほどで群れから出る[13]

分類

Wozencraft (2005) では13亜種が認められている[3]

Nasua nasua nasua (Linnaeus, 1766)
ブラジル(ペルナンブーコ州)[5]
Nasua nasua aricana Vieira, 1945
ブラジル(マットグロッソ州)[5]
Nasua nasua boliviensis Cabrera, 1956
ボリビア(コチャバンバ県)[5]
Nasua nasua candace Thomas, 1912
コロンビア(アンティオキア県)[5]
Nasua nasua cinerascens Lönnberg, 1921
アルゼンチン(チャコ州)[5]
Nasua nasua dorsalis Gray, 1866
エクアドル、ペルー[5]
Nasua nasua manium Thomas, 1912
エクアドル(グアヤキル)[5]
Nasua nasua molaris Merriam, 1902[要検証]
メキシコ(コリマ州)[5]
このタクソンは本来シロバナアナグマの亜種Nasua narica molaris Merriam, 1902として分類されており[15]、Wozencraft (2005) でも本種とシロバナアナグマで重複している[3]
Nasua nasua montana Tschundi, 1844
ペルー[5]
Nasua nasua quichua Thomas, 1912
エクアドル(アスアイ県)[5]
Nasua nasua solitaria Schinz, 1823
ブラジル(エスピリトサント州)[5]
Nasua nasua spadicea Olfers, 1818
パラグアイ[2]
Nasua nasua vittata Tschudi, 1844
ガイアナ内陸部[5]

脚注

外部リンク