デイジー・ベル
「デイジー・ベル」(Daisy Bell)は、1892年にイギリスのシンガーソングライターのハリー・ダクレが作詞・作曲した、ポピュラーソングのスタンダードな1曲である。「二人乗りの自転車」((a) Bicycle Built for Two)の副題があるほか、歌詞の一部から、「デイジー・デイジー」(Daisy, Daisy)の名でも知られる。
「デイジー・ベル Daisy Bell」 | |
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楽曲 | |
作詞者 | ハリー・ダクレ |
デイジーとはすべて小文字(daisy)ならヒナギクのことであるが、歌詞中では語頭が大文字(Daisy)なので人名(女性名)である。エドワード7世の妾の1人ウォリック伯爵夫人デイジー・グレヴィルがモデルとも言われる[1][2]。
この曲は、世界で初めてコンピュータが歌った歌として知られる。1961年にIBM 704による音声合成によって歌われた。これが、1968年の映画『2001年宇宙の旅』の終盤の展開の元ネタとなっている。
歴史
この曲は、1892年にハリー・ダクレによって作られた。ダヴィッド・ユエンが『アメリカン・ポピュラー・ソングス』の中で次のように書いている[3]。
イギリスのポピュラーソングの作曲家であるダクレが初めて渡米したとき、彼は自転車を持参したが、これには関税がかけられた。彼の友人のウィリアム・ジェロームは、それに対して「二人乗りの自転車(bicycle built for two)を持って来なくて良かったな。関税が2倍になるところだった」と言った。ダクレは「二人乗りの自転車」というフレーズを気に入り、すぐさま、このフレーズを使ってこの曲を作った。この曲「デイジー・ベル」は、ロンドンのミュージックホールでケイティー・ローレンスの歌唱により初めて成功を収めた。アメリカでの初演はトニー・パストールによる。1892年初頭にバワリーのアトランティック・ガーデンでジェニー・リンゼイがこの歌を歌って大喝采を受けたことで、アメリカでも人気となった。
コンピュータによる歌唱
デイジー・ベルは、世界で初めてコンピュータが歌った歌として知られる。1961年、ベル研究所のIBM 704が歌った。音声合成の主プログラムはジョン・ケリーとキャロル・ロックボーム(Carol Lockbaum)が、伴奏はマックス・マシューズがプログラミングした。それを録音したものは、全米録音資料登録簿に登録されている[5]。
SF作家のアーサー・C・クラークは、1962年にベル研究所を訪れた際にIBM 704による歌唱のデモを見学している。1968年のSF映画・小説『2001年宇宙の旅』では、分解され機能を喪失しつつあるコンピュータHAL 9000が「デイジー・ベル」の一部を歌うシーンがあり、その際にIBM 704について言及している[6]。映画での実際の歌声は、HAL9000役の声優ダグラス・レインによるものである。
その他にも、「コンピュータによる歌唱」にこの曲が使われる例が多くある。
- 1985年、クリストファー・C・ケイポンが、フロッピーディスクドライブコモドール1541の読み書きヘッドの動作音で音楽を奏でるコモドール64用プログラムを作成し、デモとして「デイジー・ベル」を演奏した[7]。
- 1999年にリリースされたデスクトップバーチャルアシスタントソフト「BonziBuddy」は、ユーザから歌うように要求されると「デイジー・ベル」を歌った。このソフトのキャラクターは、リリース当初は緑のオウムだったが、後に紫のゴリラになった[8]。
- AppleがiPhone 4Sに搭載した、iOS向け秘書機能アプリケーションソフトウェアであるSiriにて、ユーザーが「歌って」とリクエストすると、Siriがデイジー・ベルの一節を口ずさんで返答する。また、マイクロソフトのAIアシスタント「Cortana」にも同様の機能がある[9][10]。
歌詞
歌詞にはいくつかのバージョンがあるようだが、以下はNIHのページによる。
There is a flower | We will go tandem | I will stand by you |