阿武隈高地

福島県の高地
阿武隈山地から転送)

阿武隈高地(あぶくまこうち)は、宮城県南部から茨城県北部にかけて広がっている高地で、大部分が福島県に属している。阿武隈山地(あぶくまさんち)とも呼ばれる。

阿武隈高地
阿武隈高地の霊山より紅葉期の望遠(福島県
所在地宮城県福島県茨城県
位置北緯37度06分20秒 東経140度40分08秒 / 北緯37.10556度 東経140.66889度 / 37.10556; 140.66889
最高峰大滝根山(1,193 m
プロジェクト 山
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石川町より見る阿武隈高地
阿武隈高地の棚倉近辺(2006年6月撮影)

地勢

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阿武隈高地の周辺

宮城県南部の阿武隈川右岸山地(亘理町岩沼市の境)を北端、茨城県北部の久慈川左岸山地(日立市東海村の境)を南端として南北170 km以上[1]にわたって連なる山地である。その大部分が福島県に属し、おおむね阿武隈川を中心とする盆地である中通り地方と、太平洋沿岸部である浜通り地方との境界線となっている。阿武隈川・久慈川・太平洋に囲まれた紡錘形をした比較的なだらかな山地である。

山容は隆起準平原北上山地と同様に高地部は全体的に比較的なだらかな地形が続く。阿武隈高地は海底で堆積した大変古い地層が隆起して陸地となり、はじめは日本アルプスのような大山脈だったと考えられるが、その後の長年の浸食作用で老年期のなだらかな地形となり、さらに隆起が進み隆起準平原となったと考えられる。阿武隈高地には侵食による残丘である硬い地質の独立峰が各所に残る。阿武隈高地中央部から西部のなだらかな山容とは対照的に阿武隈高地東部は、更なる隆起と再侵食により深い渓谷を刻むも多く、阿武隈高地を西から東に抜ける道路の多くは、隆起した高地東部の「畑川断層」・「双葉断層」など断層による断崖状の壁面の急勾配を下っていく[2]。阿武隈高地がかつて海底にあったことを物語るものに、田村市滝根のあぶくま洞などの鍾乳洞いわき市大久町のアンモナイトフタバスズキリュウなどの化石産出地などがある。

阿武隈高地は活断層調査結果などより比較的安定な地盤と考えられ、また従来地震による被害の少ない地域でもある。

気候

沿岸は温暖な太平洋側気候、内陸は内陸性気候を呈しており、奥羽山脈以西より降雪量も少ない。また阿武隈山地の西側は年平均降水量1,100 mmから1,300 mmと東北地方では少ない方である。太平洋側は阿武隈川側に比較して冬は温暖で夏は涼しいが、標高の高い地域はは寒さが厳しく、やませの影響で冷害となることも多い[3]

主な山

  • 大滝根山 1,193 m 阿武隈山地最高峰
  • 日山 1,057 m 阿武隈山地で2番目に高い山
  • 八溝山 1,022 m 茨城県最高峰

以上1000m峰

北より

[4][5]

阿武隈高地(ビッグアイ22階展望ゾーンより望む)

主な河川

隆起した高地東部を刻む深い谷の一つ夏井川渓谷

阿武隈高地の河川施設

阿武隈高地の千五沢ダム(中央付近)空撮

阿武隈水系においては、支流における河川施設が多く、阿武隈川が流れる福島県中通り地方の年平均降水量1,500 mm(奥羽山脈側) - 1,100 mm(阿武隈川流域・盆地部) - 1,300 mm(阿武隈高地側)と少ないため、その多くは灌漑、上水道用のダムである。

河川施設一覧

一次
支川
(本川)
二次
支川
三次
支川
ダム名堤高
(m)
総貯水
容量
(千m3)
型式事業者備考
[位置]
黄金川(阿武隈川犬神ダム32.41,206アース福島県北緯37度01分41秒 東経140度16分25秒 / 北緯37.02809670203809度 東経140.27357782024455度 / 37.02809670203809; 140.27357782024455
今出川(阿武隈川)今出ダム79.514,400重力式福島県計画中止
北須川(阿武隈川)千五沢ダム43.013,000アース福島県北緯37度11分33秒 東経140度29分51秒 / 北緯37.19240006216314度 東経140.49753664192573度 / 37.19240006216314; 140.49753664192573
上石川(阿武隈川)金沢調整池30.81,371重力式東北農政局北緯37度20分26秒 東経140度27分08秒 / 北緯37.34063650026078度 東経140.45219677079237度 / 37.34063650026078; 140.45219677079237
大滝根川(阿武隈川)三春ダム65.042,800重力式国土交通省北緯37度24分15秒 東経140度28分25秒 / 北緯37.404069583353824度 東経140.4736223567902度 / 37.404069583353824; 140.4736223567902
大平川(阿武隈川)高柴調整池24.3115アース東北農政局北緯37度27分35秒 東経140度28分00秒 / 北緯37.459826809882045度 東経140.46658796277273度 / 37.459826809882045; 140.46658796277273
阿武隈川蓬萊ダム21.53,803重力式東北電力北緯37度38分33秒 東経140度31分31秒 / 北緯37.64257913078624度 東経140.52533775288185度 / 37.64257913078624; 140.52533775288185
阿武隈川信夫ダム21.51,872重力式東北電力北緯37度42分55秒 東経140度29分52秒 / 北緯37.715180226440076度 東経140.49781697796593度 / 37.715180226440076; 140.49781697796593
阿武隈川阿武隈大堰可動堰国土交通省北緯38度04分44秒 東経140度51分31秒 / 北緯38.07896863132433度 東経140.8584740902323度 / 38.07896863132433; 140.8584740902323
白岩川(仁井田川)新池15.4250重力式福島県北緯37度08分35秒 東経140度56分33秒 / 北緯37.14313789726182度 東経140.9424339448241度 / 37.14313789726182; 140.9424339448241
黒森川(夏井川こまちダム37.0772重力式コンクリート福島県北緯37度16分57秒 東経140度34分20秒 / 北緯37.28255292713247度 東経140.57234659636669度 / 37.28255292713247; 140.57234659636669
小玉川(夏井川)小玉ダム10213,930重力式福島県北緯37度07分35秒 東経140度49分28秒 / 北緯37.126511418929795度 東経140.82432859342546度 / 37.126511418929795; 140.82432859342546
鮫川高柴ダム59.512,700重力式福島県北緯36度54分20秒 東経140度43分05秒 / 北緯36.90561432033799度 東経140.71803784790998度 / 36.90561432033799; 140.71803784790998
四時川(鮫川)四時ダム83.512,100ロックフィル福島県北緯36度54分20秒 東経140度43分05秒 / 北緯36.90561432033799度 東経140.71803784790998度 / 36.90561432033799; 140.71803784790998
花園川大北川水沼ダム33.72,230重力式茨城県北緯36度51分01秒 東経140度40分33秒 / 北緯36.85033979125度 東経140.67584306449度 / 36.85033979125; 140.67584306449
大北川小山ダム6516,600重力式茨城県北緯36度47分59秒 東経140度38分25秒 / 北緯36.79959222285225度 東経140.64019107525678度 / 36.79959222285225; 140.64019107525678
花貫川花貫ダム45.32,880重力式茨城県北緯36度43分28秒 東経140度38分55秒 / 北緯36.724522958058度 東経140.6485485026度 / 36.724522958058; 140.6485485026
十王川十王ダム48.62,860重力式茨城県北緯36度40分14秒 東経140度39分46秒 / 北緯36.67051474701699度 東経140.66279673049996度 / 36.67051474701699; 140.66279673049996
竜神川(久慈川竜神ダム453,000重力式茨城県北緯36度41分02秒 東経140度28分03秒 / 北緯36.683962879152度 東経140.46746603431度 / 36.683962879152; 140.46746603431


用水路・導水路

用水路名所在地管理者
東根堰福島県

発電所一覧

発電所名河川名
(水系)
ダム式
/水路式
運用開始年最大出力
(kw)
有効落差
/水量
所在地事業者位置備考
移川移川(阿武隈川水路1921年(大正10年)330福島県三春町東北電力北緯37度29分50秒 東経140度33分22秒 / 北緯37.497123927570016度 東経140.55618257388343度 / 37.497123927570016; 140.55618257388343[1]
青石移川(阿武隈川)水路1919年(大正8年)200福島県三春町東北電力北緯37度30分18秒 東経140度32分50秒 / 北緯37.5050874997757度 東経140.5472408435657度 / 37.5050874997757; 140.5472408435657[2]
三春ダム
管理用右岸
大滝根川(阿武隈川)ダム1998年(平成10年)(1,020)(43.9 m)福島県三春町東北地方整備局北緯37度24分13秒 東経140度28分29秒 / 北緯37.40359398735842度 東経140.47466076885885度 / 37.40359398735842; 140.47466076885885[3][4]
三春ダム
管理用左岸
大滝根川(阿武隈川)水路1998年(平成10年)福島県三春町東北地方整備局
仏台口太川(阿武隈川)水路1914年(大正3年)150福島県二本松市東北電力北緯37度33分01秒 東経140度34分16秒 / 北緯37.55014999705502度 東経140.57097724933772度 / 37.55014999705502; 140.57097724933772
沢上口太川(阿武隈川)水路1908年(明治41年)340福島県二本松市東北電力北緯37度33分11秒 東経140度33分39秒 / 北緯37.553092585759316度 東経140.5607105692097度 / 37.553092585759316; 140.5607105692097
小瀬川移川(阿武隈川)水路1921年(大正10年)1,100福島県二本松市東北電力北緯37度35分30秒 東経140度30分59秒 / 北緯37.591680425510276度 東経140.51648106050652度 / 37.591680425510276; 140.51648106050652
蓬莱阿武隈川ダム+水路1938年(昭和13年)38,50077.6 m福島県福島市東北電力北緯37度41分53秒 東経140度29分46秒 / 北緯37.69792737146347度 東経140.49619716195232度 / 37.69792737146347; 140.49619716195232
信夫阿武隈川ダム+水路1939年(昭和14年)5,950福島県福島市東北電力北緯37度43分02秒 東経140度29分47秒 / 北緯37.717237942746394度 東経140.49651625656972度 / 37.717237942746394; 140.49651625656972
川上川上川(久慈川水路1914年(大正3年)800福島県塙町東北電力北緯36度55分40秒 東経140度26分52秒 / 北緯36.927755度 東経140.447727度 / 36.927755; 140.447727
雨谷渡瀬川(久慈川)水路1923年(大正12年)520福島県塙町東北電力北緯36度58分05秒 東経140度26分45秒 / 北緯36.967994度 東経140.445748度 / 36.967994; 140.445748
真野真野川ダム1991年(平成3年)1,100福島県相馬市東星興業(東北電力)北緯37度43分08秒 東経140度50分01秒 / 北緯37.718777度 東経140.833628度 / 37.718777; 140.833628
昼曽根請戸川水路1913年(大正2年)500福島県浪江町東北電力北緯37度32分25秒 東経140度51分48秒 / 北緯37.540263146726744度 東経140.86338925062827度 / 37.540263146726744; 140.86338925062827
古道川高瀬川(請戸川)水路福島県田村市東北電力北緯37度27分51秒 東経140度49分07秒 / 北緯37.46403907262818度 東経140.81864203334547度 / 37.46403907262818; 140.81864203334547
高瀬川高瀬川(請戸川)水路1926年(大正15年)4,800福島県浪江町東北電力北緯37度27分37秒 東経140度51分49秒 / 北緯37.460349177532756度 東経140.86356202515208度 / 37.460349177532756; 140.86356202515208
木戸川第一木戸川水路福島県川内村東北電力北緯37度16分35秒 東経140度51分50秒 / 北緯37.276345度 東経140.863996度 / 37.276345; 140.863996
木戸川第二木戸川水路1936年(昭和11年)15,000福島県楢葉町東北電力北緯37度16分51秒 東経140度56分30秒 / 北緯37.280917度 東経140.941737度 / 37.280917; 140.941737
木戸川第三木戸川水路1939年(昭和14年)1,000福島県楢葉町東北電力北緯37度16分36秒 東経140度57分33秒 / 北緯37.276721度 東経140.959144度 / 37.276721; 140.959144
夏井川第一夏井川水路1916年(大正5年)4,000福島県いわき市東北電力北緯37度09分47秒 東経140度49分32秒 / 北緯37.16302236957351度 東経140.8255021178841度 / 37.16302236957351; 140.8255021178841
夏井川第二夏井川水路1920年(大正9年)3,500福島県いわき市東北電力北緯37度11分21秒 東経140度48分04秒 / 北緯37.18919度 東経140.801194度 / 37.18919; 140.801194
夏井川第三夏井川水路1931年(昭和6年)1,800福島県いわき市東北電力北緯37度09分00秒 東経140度49分53秒 / 北緯37.15003度 東経140.83142度 / 37.15003; 140.83142
川前夏井川水路1916年(大正5年)1,400福島県いわき市東北電力北緯37度14分03秒 東経140度41分35秒 / 北緯37.234121度 東経140.69293度 / 37.234121; 140.69293
塩田夏井川水路1927年(昭和2年)560福島県いわき市東北電力北緯37度08分29秒 東経140度50分23秒 / 北緯37.14140339110474度 東経140.83986021796272度 / 37.14140339110474; 140.83986021796272
鹿又川鹿又川(夏井川水路1921年(大正10年)680福島県いわき市東北電力北緯37度12分19秒 東経140度45分28秒 / 北緯37.20531度 東経140.757726度 / 37.20531; 140.757726
小玉川第一小玉川(夏井川)水路1931年(昭和6年)2,800福島県いわき市東北電力北緯37度07分37秒 東経140度50分05秒 / 北緯37.12681877662428度 東経140.83480619877727度 / 37.12681877662428; 140.83480619877727
小玉川第二小玉川(夏井川)水路1935年(昭和10年)2,920福島県いわき市東北電力北緯37度07分45秒 東経140度48分24秒 / 北緯37.12906478799904度 東経140.80668690585355度 / 37.12906478799904; 140.80668690585355
大利第一好間川(夏井川)水路1920年(大正9年)1,000福島県いわき市東北電力北緯37度04分34秒 東経140度47分55秒 / 北緯37.07618007494511度 東経140.79867817773473度 / 37.07618007494511; 140.79867817773473
大利第二好間川(夏井川)水路1920年(大正9年)316福島県いわき市東北電力北緯37度05分27秒 東経140度46分41秒 / 北緯37.09092645409273度 東経140.77802588705873度 / 37.09092645409273; 140.77802588705873
鮫川第二鮫川水路福島県古殿町東北電力北緯37度02分15秒 東経140度37分17秒 / 北緯37.03738067480983度 東経140.6214988171078度 / 37.03738067480983; 140.6214988171078
柿の沢鮫川水路4,800福島県いわき市日鉱金属北緯37度00分04秒 東経140度42分36秒 / 北緯37.001061964936966度 東経140.70990636977024度 / 37.001061964936966; 140.70990636977024[5]
高柴ダム鮫川ダム1985年(昭和60年)1,60031.3 m / 6.5 m3福島県いわき市福島県北緯36度57分21秒 東経140度44分00秒 / 北緯36.955700587251066度 東経140.73327056427678度 / 36.955700587251066; 140.73327056427678[6]
四時川第一四時川水路1922年(大正11年)4,000福島県いわき市東北電力北緯36度55分57秒 東経140度41分05秒 / 北緯36.93243312074099度 東経140.68470308972366度 / 36.93243312074099; 140.68470308972366
四時川第二四時川水路1927年(昭和2年)1,230福島県いわき市東北電力北緯36度55分33秒 東経140度39分24秒 / 北緯36.92569876590859度 東経140.65680536191007度 / 36.92569876590859; 140.65680536191007
小川四時川水路1922年(大正11年)2,400福島県いわき市東北電力北緯36度54分13秒 東経140度43分11秒 / 北緯36.90353211877472度 東経140.7198247596733度 / 36.90353211877472; 140.7198247596733

阿武隈高地のダム画像

阿武隈高地の水力発電所画像

鍾乳洞

植生

  • 日山周辺
    • 日山の山頂付近を除く自然林の多くが伐採され、自然の植生群が少なくなってきているが、低地ではアカマツ林が点在する所があるほかに、日山の標高860メートル周辺には貴重なブナの自然林、イヌシデ林が残されている。(岩代観光協会ホームページより要約

産業

工業

農業

林業

観光

交通

阿武隈高地は、阿武隈川流域盆地(概ね国道4号沿線)から太平洋沿岸(国道6号沿線)を直結する河川に乏しいため、富士川流域や三遠南信天竜川流域)や濃尾木曽三川流域)や信越信濃川流域)のような「内陸と沿岸が山地を越えて親密」とは逆に、内陸と沿岸の交流は浅い。

水戸 - - 中村 - 亘理の「沿岸同士」や、宇都宮 - 郡山 - 福島 - 白石の「内陸同士」は、交流も深く交通網も充実している。しかし、「阿武隈高地を越えた双方」を結ぶ路線は、鉄道では平と郡山を結ぶ磐越東線1本のみだが、本数は少なく複線化もされていない。同じく、中村から福島または白石を結ぶ鉄道は、計画倒れに終わっている(→阿武隈急行線)。

空港

  • 福島空港 - 郡山近郊に位置する。阿武隈高地を切り開いて作られたため、日本では松本空港658 m)に次いで標高が高い空港(372 m)である[8]

鉄道

道路

脚注

関連項目

歴史関連

外部リンク

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