馬追丘陵

北海道の石狩平野にある丘陵

馬追丘陵(まおいきゅうりょう)は、北海道石狩平野南東に位置する最高標高287.1m[1]丘陵である[2][3]。「まおい」という名称は、アイヌ語で「ハマナスの実があるところ」を意味する「マウ・オ・イ」に由来する[4]

馬追丘陵の位置
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馬追丘陵の位置

概要

馬追丘陵は、最北端は空知管内夕張郡長沼町の東部から、最南端は胆振管内勇払郡厚真町の北西端にまで至っている。全長は約50kmで幅は5~8kmであり、北高南低のなだらかな背斜丘陵を形成している更新世段丘である[2][3][5]。最高点の標高は287.1mである[1]。JR室蘭線以南の最南部を早来丘陵と言う事もある[2][3]。空知方面ではきらら397等のの稲作やジャガイモなどの畑作リンゴ等の果樹栽培を、胆振方面では酪農が行われている。北部の山麓には馬追温泉(単純硫黄泉,16℃)が、南部の山麓に鶴の湯温泉(含硫黄 - ナトリウム - 塩化物・炭酸水素塩泉,14.8°C)が存在している[2]。丘陵は南部を中心に勇払平野に繋がる、遠浅川やフモンケ川などの形作る多くの谷底平野が入り込んでいる[5]

地質的特徴

北海道道央南部地域は、千島弧と東北日本弧の衝突によって形成された日高衝突帯の褶曲-衝上断層帯の西縁部に位置している。この衝突に伴い、日高山脈の西側には数多くの褶曲と衝上断層が形成され、その最西端に地形的に表れているのが馬追丘陵である[6]
馬追丘陵の東側においては、上から汐見層、下安平層、美里層、ニタッポロ層が順に重なっている。これらの層は、支笏カルデラ樽前山風不死岳恵庭岳等からの噴出物で出来た地層である。この内、汐見層とは角閃石紫蘇輝石火山灰層がピート層・粘土層に挟まっていう地層である。また、下安平層と美里層は白色軽石有色鉱物層、砂礫層、シルト層中に点在する地層であり、その含有率のみに差がある。最下層のニタッポロ層は青灰色粘土層が紫蘇輝石軽石層を挟んだものである[7]
馬追丘陵北部にあっては、道央石狩平野南部地域の地下に厚く発達している南長沼層が露出しており、地質学関係者の間ではその模式地として知られている。南長沼層とは、浅海成や非海成の上部漸新統であり、道央地方における後期新生代堆積盆の発達により形成された局地的な堆積盆の埋積物が生み出した地層のこととされている。南長沼層が露出している、長沼町内の馬追丘陵北部の地点の泥質岩試料からは有孔虫珪藻渦鞭毛藻花粉等の微化石が数多く出土している。このような形で様々な種類の微化石を大量に産出するような浅海成相を示す上部漸新統が北日本とその周辺で分布している事は大変珍しく、南長沼層の微化石相は、北西太平洋地域の中緯度域での古第三紀末の浅海の古生物相の一端を示す例として貴重であるとされている[8]

早来丘陵

前述のとおり、馬追丘陵南部、安平町厚真町にまたがるエリアは早来丘陵と呼ばれており、その長さは南北約10kmである[5]。この丘陵は北部の馬追丘陵の中軸となる山域とは、安平町の市街地付近に存在する安平川周辺の氾濫平野に分断されており、この部分をJR室蘭線国道234号線は通過している[5]。また、安平川の周辺やその南側の丘陵地には、小規模な段丘が多く存在している[5]

馬追山

馬追山
標高287.1 m
所在地 日本 北海道空知管内夕張郡長沼町及び由仁町
位置北緯42度59分21.94秒 東経141度44分48.87秒 / 北緯42.9894278度 東経141.7469083度 / 42.9894278; 141.7469083 東経141度44分48.87秒 / 北緯42.9894278度 東経141.7469083度 / 42.9894278; 141.7469083
山系馬追丘陵
馬追山の位置
プロジェクト 山
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馬追山(まおいやま)は、北海道空知管内夕張郡長沼町由仁町にまたがる馬追丘陵北部の一角を構成する、複数の小ピークが連なる山群の総称であり、最高標高点は287.1m[1]である。一等三角点「馬追山」(標高272.7m)および天測点の置かれた小ピークは通称「瀞台(しずかだい)」[9]と呼ばれ、この位置に通称名での看板が設置されている。看板には通称の由来として「明治十九年北海道植民地選定事業のため、北海道庁技師内田 瀞氏が馬追原野の地勢調査のため登ったもので、この事業は北海道農村設定と開拓史の上で画期的なものであった。この馬追原野はその第一次のもので、その主役となった内田瀞氏を讃えて昭和35年「しずか台」(本名・きよし)と命名された。この山に登り、石狩平野を眺望して「大小の河川沼沢、深い泥炭層、その開拓の前身は容易ならざるも必ずや、他日穀倉たらん」と述べている。」と記されている。このため、馬追山の山頂がこの瀞台であると誤認される場合があるが、国土地理院の写真測量による最高点は上記三角点位置から南方へおよそ1.5km、自衛隊基地南側の稜線上にある。また、長沼ナイキ基地訴訟の舞台となった場所としても知られる(後述)[10]
1873年マーレー・S・デイというお雇い外国人苫小牧の勇払を基点に三角測量に着手した。丁度、この時5つの地点に標が立てられ、そのなかの第4標目に選ばれたのがこの馬追山だった[9]。馬追丘陵のなかで最高峰となる馬追山からは、当時、札幌にあった開拓使庁庁舎の屋上に設置されていた八角座を望むことができ、精確な三角測量の基準になったという[9]。こうして太平洋側から日本海側までを、三角線を接続することに成功したデイは、1874年に初の近代測量による「北海道実測図」を発行したものの、測量自体がその翌年に中断されている[9]

長沼ナイキ基地訴訟

1969年、馬追山山中に航空自衛隊が「ナイキ地対空ミサイル基地」を建設するために、当時の農林大臣森林法に基づいて国有水源涵養保安林の一部(全体、約1500haのうち約35ha)指定を解除した[10]。これに対し反対派地域住民のうちの一部[11]や、左翼系の護憲派[11][10]日米安保反対派、在日朝鮮人の団体[12][13]や、日教組[14]などで構成される反基地闘争勢力[10]が、「基地には公益性がなく、自衛隊は違憲であり、保安林解除は違法である」として、保安林指定解除の取消しを求めて行政訴訟を起こした事件である[10][15]。訴訟は、一審の札幌地裁では「平和的生存権」を認め、初の違憲判決で処分を取り消したものの、国の控訴による二審で札幌高裁は「防衛施設庁による代替施設の完成によって補填される」として一審判決を破棄、「統治行為論」を判示した。これを不服とした原告団は上告したものの、最高裁は違憲審査権の行使を控え、そもそも原告側には原告適格がないとして、1980年に上告を棄却した[16]。この事件が長沼ナイキ基地訴訟問題である。

また、現在もこちらの地図にもあるように、長沼町馬追台の山麓から山腹にかけてのエリアには航空自衛隊千歳基地長沼分屯基地が在り、北部航空方面隊麾下の第3高射群に所属する第11高射隊と第24高射隊が駐屯している。

長官山

長官山
標高254 m
所在地 日本 北海道空知管内夕張郡長沼町及び由仁町
位置北緯43度01分34秒 東経141度44分52秒 / 北緯43.02611度 東経141.74778度 / 43.02611; 141.74778
山系馬追丘陵
馬追山の位置
プロジェクト 山
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長官山(ちょうかんざん)は、北海道空知管内夕張郡長沼町由仁町の町境に存在する標高254mのである[17][18]。この山は、石狩平野南部に位置しており、馬追山等とともに馬追丘陵を構成している[17][9]
山頂には展望台が設置されており、山頂付近に樹林が無いことと、石狩平野に突出した地形的特徴から眺望が良く[18]、西側には石狩平野に広がる水田越しに札幌山地(手稲山無意根山等)を一望できるほか、北西方向には札幌市街、南西方向には支笏湖周辺の山塊(樽前山恵庭岳等)、東側には日高山脈や夕張山地(芦別岳夕張岳等)が見渡せる。山頂やや北にも見晴らし台(通称:マオイ文学台)があり、小説『馬追原野』の著者辻村もと子の文学碑がある[19]
長官山という山名は、1891年に渡辺千秋北海道庁長官(3代目)が、北海道内の視察を目的とした道内行脚を行うに際して、この山へ登頂し、当時はまだただの広い原野であった石狩平野の開拓構想を練ったことにちなんで、長沼町由仁町の住民が「長官山」と呼んだことに由来するとされている[17]

自然

野鳥や、昆虫樹木や野花の種類が大変豊富で、馬追丘陵全体では、例えば、25種類の、202種類の野鳥の生息が確認されている。長官山に限っていえば、針葉樹トドマツ広葉樹ミズナラホオノキキタコブシオオカメノキ等が群生しているが、このうち、冬季でも葉をつけているのは、トドマツのみである[18]。そして、これらの樹木は、その種類を問わず、の重みの影響などで根上り現象が起きていることが多い[18]。この美しい自然は遊歩道が整備されているため、簡単に観察し愛でることができるが[20]ヒグマの確認例も僅かながらあり、登山に際しては注意が必要である[18]

観光、登山

観光

札幌を中心とした大都市圏の郊外にあたり、見晴らしの良い高台と豊かな森林など自然に恵まれた馬追丘陵北部は、立地特性を生かした長沼町、由仁町の観光拠点となっている。
長沼町側には、スキー場[21](夏季はキャンプ場[22]としても運用)、オートキャンプ場[23]、温泉施設[24]、観光牧場[25]などが整備されており、また農家レストランが近隣に多数存在する。
由仁町側にも、温泉施設[26]、フラワーガーデン[27]、展望公園[28]、オートキャンプ場[29]、ゴルフ場[30]などがある。

登山

馬追丘陵の北部、馬追山ならびに長官山を有するエリアは、国有林内に設置された林道の一部区間ならびに登山道について、遊歩道としての管理を長沼町が委託されている[31]
遊歩道には、長官山北麓の北長沼スキー場の脇からマオイ文学台を経て長官山に至るコース(通称:スキー場コース)、長官山西麓の伏古斎苑、伏古墓地の奥から長官山山頂に至るコース(通称:火葬場コース)、長官山南麓の旧馬追温泉脇から沢沿いを経て尾根から長官山山頂に至るコース(通称:温泉コース)、旧馬追温泉の道道札夕線を挟んだ南側にある林道脇から瀞台および馬追山山頂に至るコース、瀞台西麓にある湧水の水汲み場、「馬追の名水」から瀞台および馬追山山頂に至るコース(通称:名水コース、瀞台にまっすぐに向かうコースと馬追山山頂に至る通称:大回りコースに中途で分岐する)、馬追山南麓の道道夕張長沼線沿い、長沼町と由仁町古山地区の町境付近から瀞台および馬追山山頂に至るコース(通称:古山口コース)がある。
各コースは地元山岳会有志による笹刈り、倒木処理、標識設置等の整備管理がなされており、老若男女を問わず安全かつ気軽に登山を楽しめるコースとして夏山、冬山を問わず親しまれている。小ピークを多数有するためにアップダウンに富み、なおかつ整備が行き届いたコースであることから、トレイルランニングの練習コースとしても紹介される場合があり[32]、一般登山者は注意が必要である。

脚注

関連項目


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