C-130J (航空機)

C-130J スーパーハーキュリーズ

アメリカ空軍州兵用のC-130J

アメリカ空軍州兵用のC-130J

C-130Jは、アメリカ合衆国製の軍用輸送機であり、ロッキード・マーティン社の前身の1つであるロッキード社のC-130 ハーキュリーズの新世代型として開発された航空機である。愛称はスーパー・ハーキュリーズ(英:Super Hercules)。

概要

従来のC-130に代わる新世代型として1991年から開発されたのが、このC-130Jである。

従来型の基本設計はそのままに、新型ミッションコンピューターを導入し、コックピットを大型ディスプレイ4つ(5つないし6つのバージョンもある)に小型ディスプレイ5つ、そして入力装置からなるグラスコックピットに改修しており、ボーイング787ボーイング737の一部機体に装備されている釣り下げ型ホログラフHUDを装備している。これにより完全に2人乗務での飛行が可能となったため、航法士フライトエンジニアが搭乗する必要はなくなり、人件費の削減に貢献している。ただ、オブザーバーなどの追加の搭乗員用に第3の座席が設けられている他、航法士席の部分に追加乗員用のステーションをオプションで設置可能である。

その他にも、エンジンをロールス・ロイス/アリソン製のAE 2100D3に換装、プロペラハミルトン・スタンダード製の平面型四翅(54H60)から、ダウティ・ロートル製の三日月形六翅(R391)に変更している。これらの改修により最大速度や上昇性能、航続距離が従来型より向上し、離陸滑走距離はさらに減少した。翼下の増槽は取り外されているが、装備することは可能である。また、従来型では一部にしか装備されなかった空中給油の受油装置もオプションで装備可能であり、イスラエルはフライングブーム式のリセプタクル、イギリス、イタリア、インドはホースアンドドローグ式のプローブを装備している。

ローンチカスタマーイギリス空軍で、現在ハーキュリーズ C.1/C.3(C-130K)の後継として導入している。その他、アメリカ空軍は通常型に加えてEC-130/HC-130/MC-130の後継と、ハリケーン・ハンター用としても導入している。

KC-130J ハーベストホーク
左翼外側にヘルファイアミサイル4発を搭載している

アメリカ海兵隊が採用した空中給油機型のKC-130Jは、ISR(インテリジェンス、監視、偵察)兵装キットを組み込むことにより監視任務および30mm機関砲ヘルファイア対戦車ミサイル、誘導爆弾を用いての地上部隊への火力支援が提供できる。これはハーベストホーク[注 1]と呼ばれ、地域制圧のような精度を必要としない任務に用いられる。

純粋な輸送機型の売れ筋は胴体延長型のC-130J-30で、通常型はほぼ派生型のベース機として生産されている。

20年以上に渡って生産され、2020年時点の採用国は20か国以上に上るが、生産数は500機程度と、H型の1,087機より少なく、E型の491機より若干多い程度しかない。C-130を運用している国は多いにもかかわらず、かつてほど生産されていない背景としてあるのは、従来型が長く大量生産された関係でまだ後継機を必要とする国が少ないこと、中古機の購入や既存機の近代化改修にも一定の需要があること、競合機がほぼ存在しなかった頃に比べてより大型のエアバス A400Mや同クラスのエンブラエル C-390など選択肢が増えていることが挙げられる。

バリエーション

C-130J
基本型。
C-130J-30
オーストラリア空軍のC-130J-30
胴体を4.57m延長し、34.36mとしたストレッチモデル。
AC-130J
ガンシップ型。愛称はゴーストライダー
EC-130J
アメリカ空軍のEC-130J
心理戦・情報戦活動型。愛称はコマンド・ソロ
HC-130J
アメリカ沿岸警備隊のHC-130J
捜索救難機型。アメリカ沿岸警備隊は海上哨戒、物資輸送も兼務する多目的型のHC-130Hから移行中。
アメリカ空軍向けはコンバット・キングIIと呼ばれる。通算2,500機目のC-130はこのコンバット・キングIIとして配備されたものだった。
KC-130J
アメリカ海兵隊のKC-130J
空中給油機の機能を付与したもの。
MC-130J
特殊部隊支援機型。愛称はコマンドーIIあるいはコンバット・シャドウII
SC-130J
海上哨戒機型として計画。愛称はシー・ハーキュリーズ
WC-130J
ハリケーンサイクロンを観測する、アメリカ空軍のハリケーン・ハンター型。愛称はウェザーバード
CC-130J
カナダ軍向けC-130J-30の名称。なお、アメリカ国防総省の形式登録プログラムの都合で、アメリカのC-130J-30がこの形式を名乗っていた時期があった。
ハーキュリーズ C.4
イギリス空軍向けのC-130J-30。
ハーキュリーズ C.5
イギリス空軍向けのC-130J。
C-130XJ
胴体を短縮し、電子機器などを簡素化した廉価版。現在開発中。
LM-100J
C-130J-30の民間型。2014年2月3日に計画のローンチが発表され、2017年5月25日に初飛行した[2]

運用国

C-130Jを採用した国

アメリカ合衆国

92機 (C-130J-30:62機、C-130J:10機、EC-130J:3機、HC-130J:2機、MC-130J(コマンドーII):1機、WC-130J:10機)
7機(HC-130J)
45機(KC-130J:44機、ブルーエンジェルスの輸送支援機「ファットアルバート」に元イギリス空軍機のC.5:1機[3]

イギリス

24機(C.4:14機、C.5:10機) 欧州NATO軍を中心に量産続くエアバス A400Mの調達に伴い、C.5は2019年までに退役して他国に売却された。C.4も2023年までに退役予定[4]

イスラエル

C-130J-30を9機発注

イタリア

21機(C-130J:4機、C-130J-30:10機、KC-130J:7機)

イラク

C-130J-30を6機発注し、2016年5月現在3機を保有。

インドネシア

C-130J-30を5機発注し、2023年2月に初号機を受領[5]

インド

C-130J-30を6機、さらに6機を追加発注

 エジプト

C-130Jを2機発注

オーストラリア

C-130J-30:12機

オマーン

C-130J-30を2012年に1機、C-130Jを2014年に2機受領。

カタール

C-130J-30:4機

カナダ

CC-130J:17機

韓国

C-130J-30を2014年に4機受領予定

クウェート

  • クウェート空軍
KC-130Jを3機発注

サウジアラビア

C-130J-30を20機、KC-130Jを5機発注、2016年3月に2機のKC-130Jを受領。

チュニジア

C-130J-30を2013年、2014年に1機ずつ受領。2機保有。

 デンマーク

C-130J-30:4機

ニュージーランド

2019年に5機のC-130Hの後継として、C-130J-30を11機発注した[6]。2024~25年の間に受領する予定[7]

 ノルウェー

C-130J-30を4機保有していたが、ノルウェー国内で起きた2012年の事故で、1機喪失した。重視するPKO活動に支障が出るとして、純増分含めC-130Jを2機追加発注中。

バーレーン

元イギリス空軍のC.5 1機を保有。

バングラデシュ

元イギリス空軍のC.5を2018年に3機、2019年に2機の計5機を受領[8]。さらに追加発注を検討[3]

リビア

C-130Jを2機発注。

ドイツ / フランス

C-130Jを4機から6機配備予定、フランスを拠点とする共同の輸送機部隊で運用する[9]。2020年2月までに、C-130J-30とKC-130J各2機がオルレアン第123オルレアン=ブリシー空軍基地フランス語版に配備された[10]

仕様

C-130J三面図

出典: Jackson, Paul (2004). Jane's All the World's Aircraft 2004-2005. Jane's Publishing Company Ltd.. pp. 700-702. ISBN 978-0710626141 

諸元

性能

  • 超過禁止速度: 700 km/h (378ノット)
  • 巡航速度: 645 km/h (348ノット)
  • 失速速度: 185 km/h (100ノット)
  • 航続距離: 5,250 km (2,835海里) ※ペイロード18,144 kg、予備燃料Mil-C-5011A
  • 実用上昇限度: 9,315 m(30,560 ft) ※66,680 kg AUW時
  • 上昇率: 640 m/分 (2,100 ft/分)
  • 離陸滑走距離: 930 m (3,050 ft)
  • 着陸滑走距離: 427 m(1,400 ft) ※58,967 kg AUW
  • 最短離陸滑走距離: 549 m (1,800 ft)
  • 翼面荷重: 433.7 kg/m2 (88.83 lb/sq ft)
  • 馬力荷重(プロペラ): 5.14 kg/kW (8.11 lb/shp)


使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

比較

主な軍用輸送機の比較
C-2 A400M C-17 Y-20 C-130J KC-390 An-178 Il-276
画像
乗員3名3-4名2-4名3名3-6名2名3名2名
全長43.9 m45.1 m53.0 m47.0 m29.79 m35.20 m32.95 m33.2 m
全幅44.4 m42.4 m51.8 m50.0 m40.41 m35.05 m28.84 m30.1 m
全高14.2 m14.7 m16.8 m15.0 m11.84 m11.84 m10.14 m10.0 m
空虚重量69.0 t76.5 t128.1 t100 t34.25 t51 t
基本離陸重量120 t263 t70.305 t
最大離陸重量141 t136.5 t265.35 t220 t79.38 t81.0 t51.0 t68.0 t
最大積載量32 t(2.5G)
36 t(2.25G)
30 t(2.5G)77.519 t66 t19.050 t26 t18.0 t20.0 t
貨物室
(L×W×H)
15.65×4.0×4.0m17.71×4.0×3.85m26.83×5.49×3.76m20.0×4.0×4.0m16.76×3.02×2.74m18.5×3.0×3.4m16.65×2.748×2.75m
発動機CF6-80C2K1F×2TP400-D6×4F117-PW-100×4D-30KP-2×4AE2100-D3×4V2500-E5×2D-436-148FM×2PD-14M×2
ターボファンターボプロップターボファンターボプロップターボファン
巡航速度マッハ0.81
マッハ0.68-0.72
781 km/h
(高度9,450 m)
マッハ0.74
830 km/h
(高度8,530 m)
マッハ0.75マッハ0.59
671 km/h
(高度6,700 m)
マッハ0.80
870 km/h
マッハ0.77
825 km/h
マッハ0.75
810 km/h
航続距離0 t/9,800 km
20 t/7,600 km
30 t/5,700 km
36 t/4,500 km
0 t/8,710 km
20 t/6,390 km
30 t/4,540 km
0 t/9,815 km
72 t/4,630 km
0 t/7,500 km
0 t/6,445 km
16.3 t/3,150 km
0 t/6,241 km
14 t/5,019 km
23 t/2,722 km
26 t/2,000 km
0 t/5,500 km
5.0 t/4,700km
18.0 t/1,000 km
0 t/7,300 km
4.5 t/6,000 km
20 t/3,250 km
最短離陸滑走距離500 m770 m1,000 m600 - 700 m600 m1,100 m1,050 m
生産数(-2023)1911927968500920
運用状況現役実用試験中開発中

脚注

注釈

出典

関連項目

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