尊富士弥輝也

日本の大相撲力士 (1999-)

尊富士 弥輝也(たけるふじ みきや、1999年4月9日 - )は、青森県北津軽郡金木町(現・五所川原市)出身で、伊勢ヶ濱部屋所属の現役大相撲力士。本名は石岡 弥輝也(いしおか みきや)。身長184.0cm、体重143.0kg。最高位は東前頭17枚目(2024年3月場所)。

尊富士 弥輝也
2024年1月、初場所にて
基礎情報
四股名石岡→尊富士
本名石岡 弥輝也
愛称みきやん、令和のF1相撲[1]
生年月日 (1999-04-09) 1999年4月9日(25歳)
出身青森県北津軽郡金木町
(現・五所川原市
身長184.0cm
体重143.0kg
BMI42.24
所属部屋伊勢ヶ濱部屋
得意技突き・押し
成績
現在の番付東前頭17枚目
最高位前頭17枚目
生涯戦歴69勝10敗(10場所)
幕内戦歴13勝2敗(1場所)
優勝幕内最高優勝1回
十両優勝1回
序二段優勝1回
序ノ口優勝1回
殊勲賞1回
敢闘賞1回
技能賞1回
データ
初土俵2022年9月場所
入幕2024年3月場所
趣味良い匂いのボディークリームを塗ること
備考
2024年3月24日現在

2024年3月場所において、新入幕力士としては1914年5月場所の両國勇治郎以来110年ぶりとなる幕内最高優勝を果たした。

来歴

大相撲入門前

祖父が草相撲の強豪だった縁で[2]、保育園の頃から相撲を始めた[3]。保育園児の頃は、稽古後のコンビニで買ってもらっていた唐揚げが楽しみで、そのために相撲の稽古を行った[4]わんぱく相撲全国大会では、五所川原市立金木小学校[5]4年時に個人ベスト8と団体優勝、5年時に個人3位を経験した[6]。小学校5年時からはつがる旭富士ジュニアクラブに通い[7]、小学校卒業後は地元の金木中学校ではなく、地元を離れて道場へ通いやすいつがる市立木造中学校に進学[6]。中学校3年時に全国都道府県中学生大会個人3位、全中個人ベスト8、白鵬杯団体優勝・個人3位の実績を残した[6]。出身地は豪雪地帯で、寒さの中で学校から道場まで30分歩き、寒さで凍った廻しを締めてそれを1000回のスクワットで解凍した[4]

中学校卒業後は鳥取城北高等学校に進学[6]。高校の同期にはアマルトゥブシン・アマルサナー(後の狼雅)らがいる。1年時に金沢大会で個人8強の実績を残すが、2年時の金沢大会で左膝前十字靱帯を断裂した[6][8]。3年時は全国高校総体個人3位、選抜高校相撲宇佐大会個人3位となったが、秋の国体個人準決勝で納谷幸之介(後の王鵬)に敗れた時に再び左膝を負傷し、3位決定戦は不戦敗となった[8][6]

高校卒業後は日本大学法学部政治経済学科に進学し、日本大学相撲部に入部[6]。大学の同期には川副圭太(後の輝鵬)、大谷真惟らがいる。2年時に全日本大学選抜金沢大会準優勝、全国学生体重別大会135キロ未満級準優勝、全国学生選手権団体優勝などの実績を残すが、全国学生選手権団体決勝戦で今度は右膝を負傷した[8]。その後は、3年時に全国学生選手権団体優勝[8]、4年時に全国学生相撲個人体重別選手権大会無差別級16強となった[6]2022年春に日本大学を卒業した[8]

大相撲入門後

2022年8月16日に記者会見を開き、大相撲の伊勢ヶ濱部屋に入門することを発表した[8]。伊勢ヶ濱部屋師匠の9代伊勢ヶ濱(元横綱・旭富士)は青森県出身のため毎年同県内で合宿を行っており、石岡は中学生時代から部屋との交流を持っていたことに加え、9代伊勢ヶ濱や、部屋所属で高校の同窓生でもある横綱照ノ富士からは中学生時代より目をかけられていたこと、照ノ富士は膝の怪我などで大関から一時は序二段まで番付を落としてから横綱まで上り詰めた経歴を持つことも、入門を後押しした[9]。2022年9月場所で前相撲から初土俵。同期生には輝鵬(幕下15枚目格付出)らがいる。なお、新弟子検査受検時点で23歳であったため、入門に当たっては年齢制限緩和措置が適用された[6]

初めて番付に名前が載った2022年11月場所は、6番相撲で幕内経験者の旭大星を破る[10]など7戦全勝で序ノ口優勝[11]。続く2023年1月場所も7戦全勝で序二段優勝を果たした[12]三段目に上がった3月場所は4番相撲で東俊隆に敗れ初土俵からの連勝が17で止まった[13]が、6勝1敗として5月場所では新幕下となった。

幕下4場所目となった2023年11月場所は、勝ち越せばほぼ確実に関取昇進となる西幕下筆頭まで地位を上げた。「自分の相撲を取るだけ。十両とやりたい」と抱負を語った[14]。初めて髷を結って迎えた同場所は9日目の5番相撲で對馬洋に勝って4勝目を挙げ、勝ち越しが決定するとともに、新十両昇進が決定的と報じられた[15]。11日目の6番相撲の千代の海戦で叩き込みにより白星を得た際は、報道各社が新十両昇進確実、あるいはほぼ確実と報じた[16][17][18]。最終的に、この場所を6勝1敗の成績で終えて、場所後に行われた番付編成会議により、2024年1月場所での新十両昇進が決定した[19]

新十両会見では年下の熱海富士に先を越されたことについて「悔しい気持ちになった。自分も早く優勝争いをしたい」と言いつつ「自分の持ち味、立ち合いをもっと強化していく。やるしかないという思い」と意欲を持った[20]。師匠の伊勢ヶ濱は「まだやらないといけないことが多い。青森(の人)は横綱にならないと認めてくれないよ」と冗談も交えて期待を寄せた[21]。2024年1月場所は初日から絶好調で、この場所の十両で唯一となる中日勝ち越しを決めた[22]。新十両中日勝ち越しは1場所15日制定着となった1949年以降史上8人目[23]。14日目の千代栄戦で押し出しにより12勝目を挙げ、千秋楽を待たず十両優勝が決定[24]。千秋楽も勝利し、新十両の場所は13勝2敗で取り終えた。

翌3月場所で新入幕を果たす。初土俵から所要9場所での新入幕は、年6場所制となった1958年以降の初土俵(幕下付け出しを除く)としては常幸龍と並ぶ史上最速タイのスピード出世、新十両から1場所通過は史上7人目となった[25]。新入幕会見では「記録で満足しているようでは先は見えない」とした[26]上で、1月場所で部屋の横綱の照ノ富士が幕内優勝を達成し、十両優勝した自身がパレードの旗手を務めたことを指して「自分でもいつかこの舞台で、最高の景色を見てみたいなという思いになりました」と幕内優勝を目指している旨を語った[27]。この3月場所は中日勝ち越しを決めたが、新入幕力士の中日勝ち越しは2011年5月技量審査場所の魁聖以来、中日時点で新入幕力士が優勝争い単独首位は15日制定着となった1949年5月場所以降初[28]。また、11日目には大関・琴ノ若を寄り切りで破り元横綱・大鵬以来64年振りである新入幕力士としての初日からの11連勝を果たした[29]。12日目の大関・豊昇龍戦で敗れ初日からの連勝はタイ記録の11でストップしたが、12日目終了時点で11勝1敗と依然として単独トップ[30]。14日目の朝乃山との一番に敗れた際右足を負傷したものの、千秋楽に出場、豪ノ山を押し倒しで破り、1914年(大正3年)5月場所の両國勇治郎以来110年ぶりとなる新入幕での幕内最高優勝を果たした[注 1]。ちなみに十両優勝の翌場所に幕内最高優勝を果たしたのも両國以来2人目である。なお、大銀杏を結えない力士の優勝は初めて[31]。また、併せて殊勲賞、敢闘賞、技能賞の三賞も同時に受賞した。同一場所で三賞すべて受賞するのは2000年11月の琴光喜以来約24年ぶり6人目、新入幕力士では1973年9月の大錦以来約51年ぶり2人目である[32]。また、青森県出身力士の幕内優勝は、1997年(平成9年)11月場所の貴ノ浪(三沢市出身)以来約27年ぶりとなったほか、津軽地方出身力士の優勝は1991年(平成3年)夏場所の旭富士木造町(現:つがる市)出身・現:伊勢ケ浜親方)以来33年ぶり、五所川原市出身力士の幕内優勝は1934年(昭和9年)夏場所の清水川[注 2]以来90年ぶりとなった[33]。なお新入幕場所での勝利数13は1場所15日制が定着した1949年5月場所以降では、1964年1月場所の北の冨士(のち北の富士)、1967年3月場所の陸奥嵐、2014年9月場所の逸ノ城と並ぶ1位タイ記録である。

人物

尊富士」という四股名は、「尊」は高い地位を目指すという意味も込めて日本武尊から1字貰い、「富士」は師匠・9代伊勢ヶ濱の現役時代の四股名「旭富士」に由来している[34]。命名者は9代伊勢ヶ濱である[3]

協会公式プロフィールによると、好きな歌手はAK69、好物は果物(特に)、好きなテレビ番組は『サンデースポーツ』、好きなアニメは『クレヨンしんちゃん[35]

取り口

協会公式プロフィールによると、得意手は突き・押し[35]。巨漢力士相手には下からの攻めが光る[22]

ベンチプレス220kgを挙げる怪力の持ち主だが、部屋の横綱の照ノ富士から「お前、上半身のトレーニングするな」「四股とすり足だけやれ」と怒られた。そのため四股とすり足で下半身を作り、筋トレを全くやらずに2024年1月場所に挑み、結果として十両優勝を決めた[36]

元2代栃東の玉ノ井親方は2024年3月場所中のコラムで立合いで当たってからの右差しの速攻相撲を評価しており、大学時代の膝の負傷で然程の活躍ができなかった経験が膝に負担をかけない持ち味のスピード相撲につながったと分析している[37]。同場所中のコラムで元武双山の藤島親方は、この場所で見せたような圧力相撲に定評のある大の里の右差しを封じた巧さとスピードの相撲を評価した[38]。この場所11日目の琴ノ若戦で銀星を獲得した速攻相撲について元琴奨菊の秀ノ山親方は「立ち合いから迷いがなく、馬力とスピードを生かして前に出る相撲は、昔の琴錦関の『F1相撲』を思わせる」と評している[1]

主な成績

2024年3月場所終了現在

スピード記録

  • 初土俵から十両昇進までの所要場所数:8場所(歴代7位)
  • 初土俵から幕内昇進までの所要場所数:9場所(常幸龍貴之と並び歴代1位タイ)
  • 幕内優勝までの所要場所数:10場所(歴代1位)

通算成績

  • 通算成績:69勝10敗(10場所)
  • 通算勝率:.873
    • 幕内成績:13勝2敗 (1場所)
    • 幕内勝率:.867
    • 十両成績:13勝2敗(1場所)
    • 十両勝率:.867
    • 幕下成績:23勝5敗(4場所)
    • 幕下勝率:.821
    • 三段目成績:6勝1敗(1場所)
    • 三段目勝率:.857
    • 序二段成績:7勝0敗(1場所)
    • 序二段勝率:1.000
    • 序ノ口成績:7勝0敗(1場所)
    • 序ノ口勝率:1.000
  • 新十両場所での初日からの連勝:9(初代成山、翔天狼、大の里と並び歴代1位タイ)
  • 新入幕場所での初日からの連勝:11(大鵬と並び歴代1位タイ)
  • 新入幕場所での勝利数:13(北の冨士、陸奥嵐、逸ノ城と並び歴代1位タイ)
  • 新入幕場所での優勝:両國に続いて2人目
  • 幕尻優勝:史上4人目
  • 三賞トリプル受賞:史上6人目
    • 新入幕での三賞トリプル受賞:史上2人目
  • 十両、幕内の連続優勝:両國に続いて2人目
  • 新十両、新入幕での優勝:史上唯一
    • 新十両、新入幕の連続優勝:史上唯一
  • 三役経験のない力士の優勝:史上5人目

各段在位場所数

2024年3月場所終了現在

  • 通算在位:10場所
    • 幕内在位:1場所
    • 十両在位:1場所
    • 幕下在位:4場所
    • 三段目在位:1場所
    • 序二段在位:1場所
    • 序ノ口在位:1場所
    • 前相撲:1場所

各段優勝

  • 幕内最高優勝:1回(2024年3月場所)
  • 十両優勝:1回(2024年1月場所)
  • 序二段優勝:1回(2023年1月場所)
  • 序ノ口優勝:1回(2022年11月場所)

三賞・金星

  • 三賞:
    • 殊勲賞:1回(2024年3月場所)
    • 敢闘賞:1回(2024年3月場所)
    • 技能賞:1回(2024年3月場所)
  • 金星:なし

場所別成績

尊富士 弥輝也
一月場所
初場所(東京
三月場所
春場所(大阪
五月場所
夏場所(東京)
七月場所
名古屋場所(愛知
九月場所
秋場所(東京)
十一月場所
九州場所(福岡
2022年
(令和4年)
x x x x (前相撲) 西序ノ口15枚目
優勝
7–0 
2023年
(令和5年)
東序二段11枚目
優勝
7–0 
西三段目19枚目
6–1 
東幕下41枚目
6–1 
東幕下17枚目
6–1 
東幕下6枚目
5–2 
西幕下筆頭
6–1 
2024年
(令和6年)
東十両10枚目
優勝
13–2 
東前頭17枚目
13–2
x x x x
各欄の数字は、「勝ち-負け-休場」を示す。    優勝 引退 休場 十両 幕下
三賞=敢闘賞、=殊勲賞、=技能賞     その他:=金星
番付階級幕内 - 十両 - 幕下 - 三段目 - 序二段 - 序ノ口
幕内序列横綱 - 大関 - 関脇 - 小結 - 前頭(「#数字」は各位内の序列)

合い口

いずれも2024年3月場所終了現在。

(以下、最高位が横綱・大関の現役力士)

  • 大関・豊昇龍には1敗。
  • 大関・琴ノ若には1勝。
  • 元大関・朝乃山には1敗。
  • 最高位が関脇以下の力士との幕内での対戦成績は以下の通りである。
力士名勝数負数力士名勝数負数力士名勝数負数力士名勝数負数
関脇
阿炎10妙義龍10若元春10
小結
遠藤10竜電10
前頭
大の里10豪ノ山10湘南乃海10大奄美10
美ノ海10狼雅10


(カッコ内は勝数、負数の中に占める不戦勝、不戦敗の数。太字は2024年3月場所終了現在、現役力士。)

改名歴

  • 石岡 弥輝也(いしおか みきや)2022年9月場所
  • 尊富士 弥輝也(たけるふじ -)2022年11月場所 -

脚注

注釈

出典

関連項目

外部リンク

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