エフリンA5
エフリンA5(英: ephrin A5)は、ヒトではEFNA5遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6][7]。
エフリンA5はエフリンのAサブクラス(エフリンA)に属するGPIアンカータンパク質であり、EphAサブクラスのEph受容体に結合する。また、エフリンA5はEphB2に結合することも示されている[8]。
成長円錐の生存における逆行性シグナル伝達
エフリンのユニークな特性の1つは、Eph受容体を発現している細胞へ伝達されるシグナルとは異なるシグナルがエフリンを発現している細胞内へ伝達されるという逆行性シグナル伝達の存在である。エフリンAはGPIアンカーによって細胞膜へ結合しているだけで、エフリンBとは異なり細胞内シグナル伝達ドメインを欠いており、エフリンAによる逆行性シグナル伝達の機構は未解明である。エフリンA5など特定のエフリンAは逆行性シグナル伝達カスケードを開始することが知られており、培養中のマウス脊髄運動ニューロンでは成長円錐の拡大が刺激されることが示されている[9]。エフリンA5による逆行性シグナルはGPI依存的であることが示されており、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼCによってGPIアンカーを除去することでエフリンA5による成長円錐拡大効果は消失する。EphA受容体は運動ニューロンの成長円錐に対して反対の効果を発揮し、成長円錐の大きさは縮小する。
レチノトピックマップの形成
エフリンA5は成長円錐の生存を促進し、EphAによるシグナルとは反対の効果を発揮すること、そしてこの効果がエフリンA5による逆行性シグナルによって直接媒介されていることは、軸索誘導に対する重要な示唆をもたらす。すなわち、この現象はEphAを発現している移動中の軸索がエフリンA5を発現している細胞を選択的に回避し、そしておそらくエフリンA5の発現が低い細胞へ向かって移動する機構の説明となる[9]。この機構は、レチノトピックマップの形成時に上丘(SC)内の異なる領域へ網膜神経節細胞(RGC)を誘導する機構と同一である。SCの後側領域で高発現しているエフリンA5は、耳側網膜から移動してきたRGCに発現しているEphAへ結合してその成長円錐の崩壊を誘導することで、RGCの後側領域からの反発とエフリンA5の発現の低い前側領域へ向かう移動を引き起こす[10]。