ジャスタウェイ

日本の競走馬

ジャスタウェイ(欧字名:Just a Way2009年3月8日 - )は、日本競走馬種牡馬[2]

ジャスタウェイ
2013年天皇賞(秋)
欧字表記Just a Way[1][2]
品種サラブレッド[2]
性別[1][2]
毛色鹿毛[1][2]
生誕2009年3月8日(15歳)[1][2]
抹消日2015年1月7日[3]
ハーツクライ[1][2]
シビル[1][2]
母の父ワイルドアゲイン[1][2]
生国日本の旗 日本北海道浦河町[1][2]
生産者社台コーポレーション白老ファーム[1][2]
育成早来ファーム安平町[4]
ノーザンファーム空港牧場苫小牧市[5]
馬主大和屋暁[1][2]
調教師須貝尚介栗東[1][2]
調教助手北村浩平[6]
厩務員榎本優也[6]
競走成績
タイトルワールドベストレースホース(2014年)[7]
JRA賞最優秀4歳以上牡馬(2014年)[1][2]
生涯成績22戦6勝[1]
中央)20戦5勝[2]
(外国)2戦1勝[1][2]
獲得賞金9億940万9000円[1]
(中央)5億9569万4000円
(外国)3億1371万5000円[1][6]
WTRRI123 / 2013年[8]
M130 / 2014年[9]
TF126 / 2013年[10]
131 / 2014年[11]
勝ち鞍
GI天皇賞(秋)2013年
GIドバイデューティフリー2014年
GI安田記念2014年
GII中山記念2014年
GIIIアーリントンカップ2012年
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2014年度ワールド・ベスト・レースホース・ランキングにおいて日本調教馬として史上初めて同ランキング単独1位となり、「世界一」の競走馬となった。同年のワールドベストレースホースJRA賞最優秀4歳牡馬である。

概要

2009年に北海道浦河町にて誕生、社台コーポレーション白老ファームによって生産された父ハーツクライの牡馬である。2010年のセレクトセールに上場し、アニメ脚本家である馬主の大和屋暁によって所有され、大和屋が携わったアニメ『銀魂』の中に登場するアイテム名を授けられた。中央競馬(JRA)の栗東トレーニングセンターに所属する調教師須貝尚介に管理されて2011年、2歳夏に競走馬としてデビューした。

新馬戦優勝後、重賞で好走するも敗北が続いていた。それでも翌2012年春のアーリントンカップ(GIII)を優勝して2勝目を挙げ、重賞初勝利を果たした。しかしその後は重賞で好走するも勝ちきれずに再び連敗続き、今度は1年以上もの間勝利から遠ざかった。特に、2013年夏のエプソムカップ(GIII)から関屋記念(GIII)、そして秋の毎日王冠(GII)の3連戦は、すべて2着だった。しかし続く天皇賞(秋)(GI)にて、牝馬三冠達成のジェンティルドンナ東京優駿(日本ダービー)優勝のエイシンフラッシュなどを下して4馬身以上の差で優勝、1年以上継続した連敗を止めて、GI初勝利並びに天皇賞戴冠を果たした。また史上初めてとなる2勝馬による天皇賞戴冠を成し遂げた。

この後は連勝し、4連勝まで伸ばした。翌2014年の中山記念(GII)で重賞3勝目を挙げて、3月にはドバイ遠征を敢行。参戦したドバイデューティフリー(GⅠ)にて、南アフリカの無敗馬ウェルキンゲトリクスなど2着以下に6馬身以上の差をつけて大勝し、2か国のGI級競走を優勝。この圧勝劇は、この年の「ワールドベストレースホースランキング」で最高の評価を得るに至った。さらには凱旋初戦となった6月の安田記念(GI)を、グランプリボスとの接戦をハナ差先着し、GI級競走3勝目を挙げた。その後は実績のない長距離GIに挑戦、フランスの凱旋門賞(GⅠ)やジャパンカップ(GI)、有馬記念(GI)に出走し、このうちジャパンカップや有馬記念では上位に食い込んだ。有馬記念を最後に引退。日本とドバイ、フランスの三か国で出走し22戦6勝、約9億円の賞金を獲得した。

引退後は、種牡馬となり、重賞優勝産駒を多数輩出。そのうえGI級競走優勝産駒も複数現れた。2020年ホープフルステークス(GI)を優勝し同年のJRA賞最優秀2歳牡馬となったダノンザキッド(母父:ダンシリ)や2021年JBCレディスクラシック(JpnI)を優勝したテオレーマ(母父:シーザスターズ)、さらには2019年のクラシック三冠すべてで善戦したヴェロックス(母父:モンズーン)などの父として知られる。

デビューまで

誕生までの経緯

シビル

シビル(ジャスタウェイの母)は、1999年に白老ファームで生産された牝馬(持込馬)である。父ワイルドアゲイン、母シャロン英語版。母であるシャロンはアメリカで競走馬としてデビューし、1990年のコーチングクラブアメリカンオークス(G1)を含めて重賞5勝を挙げた[12]。半兄妹には日本に輸入されて外国産馬として中央競馬で活躍したトーヨーレインボーやエターナルビートがいる[12]。引退後のシャロンはアメリカで繁殖牝馬として繋養されたのち、1998年に日本に輸入され、北海道白老町の白老ファームに繋養された[13]。第1回ブリーダーズカップクラシックを制した種牡馬ワイルドアゲインとの仔を受胎した状態での輸入であり、そうして生まれたのがシビルである[12]

シビルは2002年に栗東トレーニングセンター宮徹厩舎から競走馬となったが、5戦して未勝利のまま引退。引退後は白老ファームで繁殖牝馬となる。初年度となる2005年は生後直死に見舞われたが、翌2006年に初仔となる牝馬(父:サクラバクシンオー)を出産[12]。初仔は2006年のセレクトセールにて1050万円で取引されて「スカイノダン」という名で競走馬となり、スプリント戦線で活躍。2010年の北九州記念(GIII)ではメリッサに半馬身差の2着となり[12]、続くセントウルステークス(GII)では1番人気を背負ったこともあった(6着)[14]

シビルは続いて父フジキセキの2番仔、父スペシャルウィークの3番仔を産み落とし、2008年にハーツクライと交配して受胎し、翌2009年に後のジャスタウェイである4番仔を産み落とした。翌2010年にはゴールドアリュールとの交配で出来た5番仔も出産したが、ジャスタウェイの活躍を見る事なく同年に結腸捻転で急死[13][15]。ジャスタウェイが大成した頃には現役及びデビュー前の弟妹は存在しなかった[16][15]

ハーツクライ

ハーツクライ

ハーツクライ(ジャスタウェイの父)は、2001年に北海道千歳市社台ファームで生産された[17]。父はサンデーサイレンス、母父はトニービン[17]社台レースホース所有のもとで走り[17]、2005年の有馬記念でディープインパクトを破って優勝[18][19]、2006年のドバイシーマクラシックで優勝するなど[20][21]、生涯19戦5勝を挙げた[22]。2007年より北海道安平町社台スタリオンステーションで種牡馬として供用された。ジャスタウェイは供用2年目となる2009年度産の産駒にあたる。

幼駒時代

牧場時代

2009年3月8日、北海道浦河町にて、ハーツクライの2年目産駒、シビルの4番仔である鹿毛の牡馬(後のジャスタウェイ)が誕生する。生産者名義は白老町の社台コーポレーション白老ファームだった。白老で離乳までの初期育成を、その後は早来ファームで中期育成[4]、そしてノーザンファーム空港牧場で後期育成された[5]。中期、早来ファームの育成主任は、「多くのハーツクライ産駒がそうであるように、この馬もトニービンの特徴がよく表現された馬でした[4]」と回顧し「独特の柔らかさ」があるゆえに、晩成型であると捉えていた[4]。翌2010年、セレクトセールに最低落札価格1000万円で上場され、いくつかの競りの末、大和屋暁が1200万円で落札していた[23][24]

馬主

大和屋暁

落札した大和屋暁は、主にアニメーションを中心に活躍している脚本家である。社台レースホースに出資する社台サラブレッドクラブに入会し「一口馬主」を嗜み、3頭目、社台では2頭目の出資馬がハーツクライだった[25]。有馬記念で金星を挙げた際は負けを確信して在宅観戦だったが[26]、ドバイシーマクラシックの際は現地で勝利を見届けて生まれて初めて表彰式に参加[26]。続くイギリスにも応援に出向いていた思い出があった[7]。そんな愛馬ハーツクライは喘鳴症により突然の引退を余儀なくされたが、引退後に行われたハーツクライを労うパーティーの壇上に立った大和屋は、馬主になりハーツクライの仔で無念を晴らすことを公に宣言した[27]。それからまもなく社台レースホースの後押しを受けて馬主登録を申請し、受理された[27]

続いてハーツクライの仔の所有を目指した。競馬サークルに伝手のない大和屋は、ハーツクライ引退直後の2007年からセレクトセールにとりあえず参加していたが[28]、初年度は金銭感覚の違いに怖気づいて入札すらできず[28]、翌2008年は入札こそできたが落札には至らなかった[29]。そしてハーツクライの初年度産駒が登場した2009年、大和屋はハーツクライの初年度産駒すべてにとりあえず入札する戦法を取り[30]、1700万円で初めてハーツクライの仔「シアトルデライターの2008」を落札した[31]。ハーツクライの初年度産駒の所有に成功し、馬主デビューが近づいたが、「シアトルデライターの2008」は翌2010年1月に心臓発作で死亡し、所有馬を喪う事となった[23]

しかし大和屋は挫けず、同年にも再び参戦して「シビルの4番仔」と巡り会っていた。この年は最低落札価格が2000万円以下のハーツクライ産駒に片っ端から入札しており[23]、「シビルの4番仔」も最低落札価格の1000万円から入札していた。すんなり落札とはいかず、他の参加者との競り合いになったが価格はそれほど高騰せず[23]、最終的に1200万円で大和屋が落札を果たした[24]。このとき大和屋は「シビルの4番仔」の外向という懸念要素を全く見落としており、知らずに落札してしまっていた[24]

落札直後に大和屋は、生産者である白老ファーム統括の角田修也に挨拶に赴いた[32]。その際に角田から「知っている調教師はいるんですか」と問われ、大和屋は「いません、紹介してください」と答えた[32]。そのとき、ちょうど背後を栗東の調教師である須貝尚介[32]が通りがかったのに気が付いた角田は須貝に連絡し、大和屋を紹介した[32]。かくして「シビルの4番仔」は須貝の管理馬となり[24]、大和屋の2番目に所有した馬で、最初にデビューする競走馬となった。

最初の競走馬に対し大和屋は、「ジャスタウェイ」という競走馬名を与えた。綴りは「Just a Way」で意味は「その道」で申請しているが、実際には自身が脚本を務めたアニメ『銀魂』のキャラクター「ジャスタウェイ」に絡ませた命名だった。

競走馬時代

2-3歳(2011-12年)

7月23日、新潟競馬場新馬戦(芝1600メートル)でデビューを果たした。直前は、ゲート練習に注力していたため、体の動きが硬く[33]、坂路調教でも動いていなかった[34]。そのため当日は、16頭中4番人気に落ち着いていた[35]。スタートから先行して好位を追走、スローペースとなる中、我慢しきれずに進出して直線半ばで抜け出していた[36][34]。先頭を奪取してからは末脚を用いて突き放す一方となり、独走して決勝線に到達していた[34]。33.3秒の上がりを見せて、後方に5馬身差をつける大勝で初出走初勝利、大和屋もまた馬主として初出走初勝利を挙げていた[33][36]。横手礼一は「去年のオルフェーヴルに続いて、新潟競馬場からの大物登場かもしれない[34]」と評価していた。

短期放牧を挟んだ後、同じ舞台で行われる9月4日の新潟2歳ステークス(GIII)で重賞初参戦となった[36]。ゲート中心の調教ながら優勝した新馬戦からの、更なる上積みが期待されていた[36]。18頭立てとなる中、最有力視されて単勝オッズ1.7倍の1番人気だった[37]。スタートから後方を追走し、馬場の外側に持ち出してから長い直線コースを使って追い上げていた[37]。前方では、モンストールが抜け出しており、それを目標に末脚を繰り出したが、詰め寄ることができなかった[37]。メンバー中最速の32.6秒の上がりを使ったが、32.7秒を繰り出したモンストールには敵わず、4分の3馬身差の2着で初敗北を喫した[37]。続く11月19日、東京スポーツ杯2歳ステークス(GIII)では、後藤浩輝が騎乗しディープブリランテ、クラレントに次ぐ3番人気に推されて参戦[38]。不良馬場が堪えて、ディープブリランテに千切られる4着だった[39][38]

この後は、不良馬場を走ったことを考慮し、ノーザンファームしがらきで短期放牧[40]。脚がむくみ、蕁麻疹にもなっていた[41]。年をまたいで3歳、2012年1月に帰厩し[40]、2月5日のきさらぎ賞(GIII)を叩きの一戦として始動した[42]秋山真一郎と臨み、3番人気に推されていたが、人気したディープインパクト産駒の3頭に揃って敗れた[43]。5番手で直線に向いてから、右にもたれながら追い込み[42]ワールドエース、ベールドインパクト、ヒストリカルに次ぐ4着だった[43]。このきさらぎ賞の後は、むくみや蕁麻疹は現れなかった[41]

映像外部リンク
2012年 アーリントンカップ(GIII)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画

そして叩き2戦目は2月25日、マイルに、福永に戻って挑んだアーリントンカップ(GIII)だった。きさらぎ賞で見せた右にもたれる癖を解消させるために、厩舎は舌を縛る対策を施して調教していた[42]。前年の朝日杯フューチュリティステークス5着のダローネガとの対決となり、ダローネガに次ぐ2番人気に推されていた[44]。スタートから折り合いに専念して後方で待機し、結果的に最後方追走となっていた[45]。12番手で直線に向いてからは、馬場の一番外側、大外に持ち出して追い込んでいた[44]。内側ではオリービンが抜け出してリードを築いていたが、ゴール寸前で末脚を発揮して一気に差し切っていた[44]。オリービンに半馬身差をつけて重賞初勝利を挙げた[44]

映像外部リンク
2012年 NHKマイルカップ(GI)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画
2012年 東京優駿(日本ダービー)(GI)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画

この後の目標は、NHKマイルカップ、そしてクラシック最高峰の東京優駿(日本ダービー)となった。その前にトライアル競走のニュージーランドトロフィー(GII)を使う予定だったが、直前に風邪をひいて回避し本番直行となった[46]。5月6日のNHKマイルカップ(GI)でGI初挑戦、福永と挑み4番人気だった[47]。スタートから後方を追走して追い込むも、秋山が騎乗した1番人気カレンブラックヒルに逃げ切りを許す7位入線[47]岩田康誠騎乗6位入線のマウントシャスタが直線にて、後藤騎乗のシゲルスダチの進路を塞ぐ走行妨害をして失格となったため、繰り上がって6着となった[47]。この事象で、落馬した後藤は頸椎骨折、頚髄不全損傷となり、戦線離脱となっていた[48]。続く5月27日の東京優駿(GI)は、福永には1番人気に推されることになる有力馬ワールドエースがいたため、後藤の起用を予定していた。しかし落馬したために、秋山を再起用して参戦。15番人気で挑み、優勝したディープブリランテに敗れる11着だった[49]
秋は、クラシック最終戦の菊花賞ではなく、中距離路線に進み、古馬に挑戦となった。10月7日の毎日王冠(GII)は、東京優駿優勝のエイシンフラッシュ安田記念優勝のストロングリターンリアルインパクトなどGI優勝経験のある古馬が5頭立ちはだかっていた[50]。加えて春は敵わなかったカレンブラックヒルとの再戦となっていた[50]。ジャスタウェイとカレンブラックヒルの3歳馬2頭と古馬14頭というメンバーとなる中、柴田善臣が騎乗し単勝オッズ61.6倍の12番人気という評価だった[50]。スタートからシルポートが逃げ、カレンブラックヒルが離れた3番手で先行する一方、中団馬群を追走した[50][51]。9番手で直線に向き、馬群を捌いて進出して数多の古馬を置き去りにして、先頭を奪ったカレンブラックヒルに詰め寄っていた[50][51]。ゴール寸前で並びかけて、カレンブラックヒルとともにほとんど同時に決勝線へ飛び込んでいた。2頭しかいない3歳馬によるワンツーフィニッシュとなったが、カレンブラックヒルに再び及ばなかった[50]。メンバー中最速の上がりを披露し追い込んだが、クビ差敵わなかった[51][50]

映像外部リンク
2012年 天皇賞(秋)(GI)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画

それでも2着で賞金を加算し[51]、続いて10月28日の天皇賞(秋)(GI)にも参戦、内田博幸とともに8番人気で再び古馬に挑んだ[52]。先行策に出たが、エイシンフラッシュに巻き返される6着だった[52]。この後は、香港国際競走に登録するも断念、朝日チャレンジカップを予定するも熱発して回避し、天皇賞(秋)の後は出走しなかった[53]

4歳(2013年)

連敗

前年秋は、3歳ながら天皇賞(秋)など古馬に挑んで惜敗し、陣営は、翌年への手応えを得ていた。父ハーツクライが、古馬となってから本格化したように、同じような成り上がりが期待されていた。古馬となったこの年は、格を落としてまずはGIII競走から仕切り直しを図ることとなった。この頃には虚弱だった体質も改善し、間隔を詰めてレースに出走することができるような状態になっていた。

まず年明けの中山金杯(GIII)で始動した。前年の毎日王冠で3着に下した7歳タッチミーノットとの再戦となり、互いに見込まれたハンデキャップを課されながら上位人気を独占していた[54]。1番人気を得たジャスタウェイは、平均ペースの中団後方を追走し、直線では外から追い込み、先行していた2番人気タッチミーノットを目指した[54]。しかしタッチミーノットに押し切られて、約2馬身敵わなかった。さらに4番人気アドマイヤタイシにも粘られて差し届かず、3着止まりだった[54]

続く2月10日の京都記念(GII)では、天皇賞(春)優勝のビートブラックを始め、産経大阪杯優勝のショウナンマイティ、重賞善戦中のトーセンラーなど、年上のGI惜敗経験馬との対決となった。それでもジャスタウェイは、期待されて1番人気に支持されていた[55]。スタートからビートブラックが逃げる中、先行策を選択した[55]

本馬場入場

好位を得て追走し、最初のホームストレッチに差し掛かったが、この時に少し行きたがる仕草を見せてしまっていた[56]。内田が宥めて好位を守ったが[56]、後方を進んでいたショウナンマイティが操縦利かず、途中で進出してビートブラックからハナを奪っていた[55]。ハナ交替後の新展開は、緩みないペースとなっていた[55]。直線に差し掛かり、後方勢は、一斉にショウナンマイティを目指して追い込んでいた。ジャスタウェイも同様に追い込んでいた。しかし直線で伸びなかった[55]。序盤で消耗したために末脚なく、失速して大きく後れを取った[56]。外から末脚を発揮して差し切ったトーセンラー優勝に対して、逃げたショウナンマイティやビートブラックすら捉えきれない5着だった[55]

そして3月9日、中日新聞杯(GIII)にダリオ・バルジューと参戦した。中山金杯で2着を譲ったアドマイヤタイシとの再戦となり、1番人気もアドマイヤタイシに譲る2番人気だった[57]。スタートから中団後方を追走し、10番手で直線に向いたが、末脚利かずに伸びを欠いた8着となり、GIIIでも下位に敗れていた[57]。古馬となってから、着順は右肩下がりの3連敗。シンガポール航空インターナショナルカップへの一次登録などもしていたが、撤退して放牧となった。しかしこの放牧によって一変。急成長を果たすこととなった。後に榎本は、放牧から帰還し続いてエプソムカップを目指すジャスタウェイについて「この馬は放牧から帰ってくるたびに成長してきたけど、エプソムカップの時は本当に良くなっていた。もうGIに届くぐらいのレベルになったんじゃないかなと思った[58]」と回顧している。

連続2着敗退

再起初戦は、6月9日のエプソムカップ(GIII)が選ばれた。傑出馬不在の混戦となる中、再戦となったサトノアポロラジオNIKKEI賞優勝の同期ファイナルフォームに次ぎ、重賞3勝の同期クラレントを上回る3番人気だった[59]。クラレントは、安田記念に出走を予定していたが、出走順位19位で除外となり、急遽転進してジャスタウェイの前に立ちはだかっていた[59]。8枠13番という外枠が割り当てられたジャスタウェイは、スタートで出遅れを喫していた。大逃げをする馬が現れたため、縦に長い馬群の最後方の内側を追走する形となった。最終コーナーを11番手で迎え直線に差し掛かってから追い上げた[59]。鞍上の福永は、外に持ち出してからでは間に合わないと判断して、そのまま内側に留まり、馬場の最も内側からの進出を選んでいた。馬群をさばいて進路を確保し、離れた2番手から先に抜け出していたクラレントに接近。ゴール手前でクラレントとの一騎打ちに持込むことに成功し、ほとんど同時に決勝線到達を果たしていた[59]。しかしクラレントにハナ差ばかり及ばず敗退し、連敗脱出はできなかった[59]

夏季競馬にも臨み、続いて8月11日のサマーマイルシリーズ関屋記念(GIII)に参戦した。同じようにマイルの重賞を優勝したドナウブルーレオアクティブレッドスパーダが立ちはだかったが、単勝オッズ2.8倍の1番人気に推されていた[60]。8枠16番からスタートしたが、再び出遅れを喫して最後方追走となった。15番手で迎えた直線では、エプソムカップとは異なり、大外に持ち出してから進出。上がり3ハロンをメンバー中最速となる33.2秒の末脚を繰り出して追い上げ、2番手追走から抜け出していたレッドスパーダに離れた外から詰め寄った[60]。ジャスタウェイのほか、レオアクティブとドナウブルーが背後からレッドスパーダに迫っていた。しかしどれもレッドスパーダに並びかけることができなかった[60]。後れた3頭は並んだまま決勝線到達していた。その争いの中でジャスタウェイがハナ差だけ先着を果たし、2着を確保した[60]

秋は、前年と同様に毎日王冠に参戦した。東京優駿並びに天皇賞(秋)優勝のエイシンフラッシュが参戦していたものの、実力伯仲の混戦とみられ、出走11頭中7頭が一桁オッズとなっていた[61]。ショウナンマイティやダークシャドウ、クラレント、レッドスパーダ、3歳のコディーノらが連ねる中、ジャスタウェイは5番人気だった[61]。スタートからエイシンフラッシュに続く5番手を追走、緩んだペースだったが残り600メートルから早くなり、勝負は末脚比べとなった[61]。クラレントとレッドスパーダが粘りこむ中、エイシンフラッシュとともに追い上げて先頭を奪ったが、終いになってエイシンフラッシュに突き放された[61]。半馬身差の2着敗退[61]、これを以て重賞3連続2着、有り余る能力がありながら、出遅れやスローペースに巻き込まれたりするなどして惜敗する姿は、父ハーツクライを想起させていた[62]。この頃は『優駿』によれば「惜敗キャラ[63]」、岡本光男によれば「勝てそうで勝てない馬[64]」だった。

天皇賞(秋)

続いて陣営は前年同様に天皇賞(秋)への参戦を望んでいたが、1週間前の時点で出走登録をしていた馬はフルゲートの18頭を上回っていた。ジャスタウェイの出走優先順位は20番目であり出走は絶望的だったが [63]、直前になって出走優先順位上位の馬のうち4頭が回避するなど、登録馬が18頭未満になる幸運に恵まれて出走が実現することとなった[65]。前年から1年振りのGI出走となった10月27日の天皇賞(秋)は、久々の一線級の相手への挑戦となった[64]。台風が接近していたため前々日の輸送となったが、問題なく現地へと到着した[66]

ジェンティルドンナ
トウケイヘイロー

17頭立てとなる中、前年の牝馬三冠馬であるジェンティルドンナ札幌記念函館記念などサマー2000シリーズ優勝のトウケイヘイロー、毎日王冠優勝から臨む前年優勝のエイシンフラッシュ、3歳のコディーノらが立ちはだかった[63]。榎本は戦前、「勝てるとすれば馬場状態や枠順や展開など、すべてが嚙み合った時かな[64]」と見立てていた。ディープインパクト産駒の牝馬三冠馬・ジェンティルドンナが大本命に推される一方で、ハーツクライ産駒の2勝馬ジャスタウェイは、単勝オッズ15.5倍の5番人気という支持に過ぎなかった[63]。前日は継続した降雨で不良馬場だったが、当日は晴れて馬場状態は回復し良馬場での開催となった[63]。馬場が内側から乾いていく傾向にあったため、福永はその内側にこだわり、抜け出す作戦を思い巡らせていた。直近のレースではスタートでの出遅れが敗因の一つであり、大一番での出遅れは致命傷になると考えていたため[67]、発走直前にゲートに入れ、慣れて落ち着いてもらおうと試みていた[67][68]

映像外部リンク
2013年 天皇賞(秋)(GI)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画
2013年 天皇賞(秋)(GI)
レース映像 関西テレビ競馬公式YouTubeチャンネルによる動画

スタートからトウケイヘイローが先行してハナを奪取、ジェンティルドンナも先行して直後の2番手に[63]。一方でジャスタウェイは、五分のスタートから中団の外側に留まり、同じく中団にいたエイシンフラッシュの背後に潜みながら追走[66]。トウケイヘイローが前半の1000メートルを58.4秒で通過するハイペースを刻む中、9番手で最終コーナーを通過し、直線で外に持ち出して追い上げを開始[63]。前方では逃げるトウケイヘイローが捕まり、代わってジェンティルドンナが先頭を奪取。押し切りを図っていたそのジェンティルドンナを目標に、福永に促されて鋭い末脚を繰り出した。一気に詰め寄り、並ぶ間もなくかわして残り200メートル手前で先頭を奪取すると[68]比較的乾いている内側に切れ込みながら勢い衰えることなく伸び続け、他馬を置き去りに[69]。最終的には2着ジェンティルドンナに4馬身、3着エイシンフラッシュに6馬身差をつける独走で勝利した[63]

決勝線到達直後

天皇賞(秋)での決勝着差4馬身は1987年ニッポーテイオーの5馬身に次ぐものであり、良馬場開催では史上最大着差での優勝となった[68]。1年8か月ぶりの勝利が古馬GIタイトルとなったが[13][69]、2勝馬による天皇賞優勝は史上初であり、古馬G1全体でも2006年エリザベス女王杯優勝のフサイチパンドラ以来史上2例目の記録であった[70][71]。またこれはハーツクライ産駒のJRAGI初勝利であり[13]、父が2006年の有馬記念で大本命の三冠馬ディープインパクトを破ってG1を初めて勝利した際と同じように、大本命のディープインパクト産駒・牝馬三冠馬ジェンティルドンナを破ってのGI初勝利となった[13]。さらに大和屋は、初めてデビューさせた競走馬で、しかも望みのハーツクライ産駒でGI優勝を果たした[72]

優勝馬服

また福永は、通算12回目の挑戦で天皇賞(秋)初優勝。前週に行われた菊花賞をエピファネイアで制していることから、2週連続GI優勝を成し遂げた[71]。菊花賞と天皇賞(秋)の連続優勝は、1965年に菊花賞をダイコーター、天皇賞(秋)をシンザンで制した栗田勝以来[68]。また福永の父である福永洋一は1972年にヤマニンウェーブで天皇賞(秋)を優勝していることから、横山富雄・典弘父子以来史上2組目となる父子天皇賞(秋)優勝となった[71]。福永祐一は「外へ出した時の反応がすごかった。あっという間に他馬を置き去りにして、あまりに早く先頭に立ったので、僕が戸惑ったくらい。ジェンティルドンナもあっという間に見えなくなった[64]」と回顧している。

天皇賞を戴冠したジャスタウェイの次なる目標は、翌年3月のドバイミーティングとなった[73]。ジャパンカップや有馬記念へ出走する計画もあったが、疲労が著しいためにすべて回避。年内全休となった[73]

5歳(2014年)

中山記念

目標とするドバイミーティングでは、芝1777メートルで行われるドバイデューティフリー(G1)への参戦を基本線に考えていた。それに向けて、1月29日に帰厩[73]。前回の長期休養明けは、夏から秋にかけて変わり身を見せ、本格化して天皇賞(秋)戴冠を果たしていたが、今回の長期休養明けでは、さらに筋肉量が増えるなどさらに成長し、古馬の体つきを実現していた[73]。再始動初戦は、ドバイ遠征の前哨戦として、3月末の中山記念(GII)に参戦した。福永が騎乗停止処分により騎乗不能となり、横山典弘が代打を務めた。天皇賞(秋)で下したトウケイヘイローとの再戦となるほか、サダムパテックロゴタイプアユサンなどGI優勝馬4頭、GII優勝馬7頭のメンバーが揃う15頭立てだった[74]。トウケイヘイローに1番人気を譲り、単勝オッズ5.3倍の2番人気だった[74]

映像外部リンク
2014年 中山記念(GII)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画

逃げ馬のトウケイヘイローが肝心のスタートで出遅れたが、ジャスタウェイは好発して先行策を敢行。馬場の最も内側の好位を追走した[74]。出遅れたトウケイヘイローが無理な逃げで失速する一方、好位をスムーズに立ち回り、3番手で迎えた直線ではそのまま内側を突いて進出[75][74]。失速したトウケイヘイローをかわしたうえに、後続を突き放して独走態勢を築いた。2着を争ったアルキメデスやロゴタイプ、マイネルラクリマに3馬身半差をつけて決勝線に到達し、ドバイ遠征の前哨戦を連勝で制した[74]。横山は、1996年サクラローレル、2008年及び2009年連覇のカンパニーに続く中山記念4勝目を挙げ、保田隆芳増沢末夫、柴田善臣の最多タイ記録に並んだ[76][77]。なお横山には、最後の直線インコース、間隙を突いたことで過怠金1万円の処分が下っている[78]

ドバイデューティフリー

概況

3月29日、アラブ首長国連邦ドバイのメイダン競馬場で行われるドバイデューティフリー(G1)は、日本調教馬3頭を含む13頭立て、うち7頭がGI級競走優勝馬だった。ロゴタイプやトウケイヘイローとは再戦となり、10頭の外国調教馬とは初対決、7頭のGI級優勝馬が集っていた[79]。外国調教馬で有力視されていたのは、南アフリカ調教馬のウェルキンゲトリクスやイギリス調教馬のザフューグだった。ウェルキンゲトリクスは、デビューから無敗の6連勝している南アフリカの一流馬であり、このレースの前哨戦であるジェベルハッタを制して参戦していた[80]。ザフューグは、牝馬ながらアルカジーム英語版トレーディングレザー英語版などのヨーロッパ牡馬の一線級を下してアイリッシュチャンピオンステークスを優勝していた[79]。イギリスのブックメーカー各社は、地元のザフューグが出走しているにもかかわらず、ジャスタウェイの実力を認めて1番人気に設定していた[79]。参戦にあたり福永は、2つの作戦を用意していた[81]。先行して逃げ馬の背後を得て、直線で抜け出すプランAと、出遅れるなどしたら後方待機から追い込み、末脚に賭けるプランBだった[81]

映像外部リンク
2014年 ドバイデューティフリー(G1)
レース映像 レーシングドバイ公式YouTubeチャンネルによる動画

トウケイヘイローが好スタートから同じように逃げる一方で、ジャスタウェイは出遅れてプランB、後方2番手の外側を確保した[82]。トウケイヘイローが1000メートルを59秒以下で通過するややハイペースを追走[82]。やがて対抗馬ウェルキンゲトリクスの背後を得てマークする形を取りながら、ワンターンに差し掛かって最終コーナーを通過すると直線外から追い込みを開始。逃げ馬を捉えて先に抜け出そうとしていたウェルキンゲトリクスに驚異的な末脚で詰め寄ると[81]残り300メートルで捉えて一気に差し切り[81]、そのままの勢いで独走していった。最終的には2着ウェルキンゲトリクスに6馬身4分の1差、それ以下に約8馬身差をつけて決勝戦に到達していた[81]

これでGI級競走2勝目、海外G1初優勝を果たした。日本調教馬のドバイデューティフリー優勝は2007年のアドマイヤムーン以来のものとなった[83]。また2006年ドバイシーマクラシックを優勝した父ハーツクライとともに、父仔でのドバイミーティング優勝を達成[83]。オーナーの大和屋は、人生の目標に定めていたドバイミーティング優勝を最初の所有馬で果たしたことになった[26]

優勝着差6馬身4分の1の大勝だったうえに、走破タイム1分45秒52は、従来レコードを2秒41上回るコースレコードを樹立していた[81]。この年の馬場は高速決着の傾向にあり、レコードが多発していたが、2秒以上短縮したのはジャスタウェイだけだった[81]。福永は、シーザリオで優勝した2005年アメリカンオークス以来9年ぶり5度目の海外G1勝利[83]。ウェルキンゲトリクスのクリストフ・スミヨンは、最終コーナーで勝利を確信していたが「日本の馬が矢のように駆け抜けていった。言葉がないです[84]」と回顧している。また福永は、引き揚げて来て一言「これで世界ランキング1位でしょう[84]」と話していた。

世界ランキング1位

この独走劇は、レーティング的にも高い評価を受けた。着差6馬身以上でウェルキンゲトリクスを制したことから「130」ポンドを獲得[85]。このレーティングは国際競馬統括機関連盟(IFHA)が発表する「ロンジンワールドベストレースホースランキング」の、この年1月1日から4月7日までの四半期発表ではアメリカ調教のダート馬ゲームオンデュードの「125」や香港調教の芝馬ミリタリーアタック英語版の「124」、日本調教馬キズナの「121」やゴールドシップの「120」などを上回り単独での「世界ランキング1位」の座に輝いていた[85]。「130」という評価は前年の有馬記念でオルフェーヴルに与えられた「129」を上回り[86][85]、セックスアローワンスを考慮しなければ前年首位のブラックキャビアトレヴと同じ数値[85]、日本調教馬としては1999年のエルコンドルパサーの「134」に次いで史上2番目に高い数値だった[87]。またIFHAによる日本調教馬の「世界ランキング1位」は、2006年7月に前身である「ワールドリーディングホース」中間発表で「125」を与えられて1位タイとなったディープインパクト以来であり、単独1位は日本調教馬史上初の快挙であった[85]

2014年度ロンジンワールドベストレースホースランキング[88]
RATE(調教国)馬馬場距離レース着順
1130 ジャスタウェイMドバイデューティフリー1着
2129 エピファネイアLジャパンカップ1着
3127 エイブルフレンドM香港マイル1着
オーストラリアIインターナショナルS1着
愛チャンピオンS2着
キングマンMセントジェームズパレスS1着
ザグレーギャツビーI愛チャンピオンS1着
バラエティクラブMチャンピオンズマイル1着

この後、世界各国でレースが続々行われ「ロンジンワールドベストレースホースランキング」は更新されていったがジャスタウェイの「130」ポンドを上回る馬は現れず、単独での「世界ランキング1位」の座を確定させることになる[89]。1977年にイギリスアイルランドフランスで始まった「ヨーロピアンクラシフィケーション」でレーティングによるランキングを作る試みが始まって以来、競馬後進国である日本は初めは対象外にされており、対象となってからもどんな優駿も上位にはたやすく認められなかった[79]。しばらくして日本の競走が評価対象になり、1996年ジャパンカップで2着となったファビラスラフインが同年度3歳部門で28位にランクイン[79]。それからディープインパクトの2006年度4位、オルフェーヴルの2013年度3位などを経た2014年度、ジャスタウェイが首位に登り詰めて日本調教馬史上初めてとなる快挙を成し遂げた[90]。またこの年にはジャパンカップで「129」のレーティングを与えられたエピファネイアとともに日本調教馬によるワンツーフィニッシュを果たし、ともにこの年の「ロンジンワールドベストレースホース」として表彰されている[7]。翌2015年1月20日、ロンドンのクラリッジスホテル英語版で行われた表彰式で、大和屋はこのようにスピーチしている[7]

全世界のハンデキャッパーの方々に感謝しています。前回イギリスに来たのはハーツクライがキングジョージに出走した際で、その時は残念だったのですが、今回このような賞をいただき、ロンドンが好きになりました。 — 大和屋暁[88]

こうして世界一となったジャスタウェイには、ドバイデューティフリーの直後から世界各国から出走オファーが舞い込むようになった[91]。例えばイギリスのアスコット競馬場からプリンスオブウェールズステークスヨーク競馬場からインターナショナルステークス、オーストラリアのムーニーヴァレー競馬場からコックスプレートへの出走オファーを受けていた[91]。しかし結局、陣営はいずれも選択することはなかった[91]

一方、イギリスのタイムフォーム誌は国際競馬統括機関連盟のものと大きく異なる世界ランキングを作成し[92]、ジャスタウェイに対して131ポンドの年間レーティングを与えている[93]。これはキングマンを134ポンドで2014年世界一として、オーストラリア、エピファネイア、ランカンルピー(132)に続き、パレスマリスバラエティクラブ(131)と並ぶ同5位に本馬を格付けしたものである[92]。同誌は、公式レーティングについてジャスタウェイが「明らかに同馬より優れた近年の日本調教馬達」を凌駕したものと批判し、同年鑑の海外競馬欄に日本が含められた1997年以後の同国ではエルコンドルパサー(136)、ディープインパクト(134)、ロードカナロア(133)、エピファネイア、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、シンボリクリスエス(132)に続く8位にジャスタウェイを格付けした[93]

安田記念

「世界ランキング1位」となった後は出走オファーに応えて外国転戦の可能性もあったが、日本凱旋を選択。帰国して吉澤ステーブルWESTで休養し[94]、安田記念から宝塚記念というローテーションが設定された。前年の天皇賞(秋)優勝後は消耗からの回復に時間を要したが、今回のドバイ遠征では外国へ輸送されたにもかかわらず、すぐに回復[94]。精神面も成長したことで、アクシデントなく凱旋初戦を迎えていた[94]。ところが騎乗予定だった福永に騎乗停止処分が下り、直前で騎乗不能となるアクシデントに見舞われた。そこで陣営は、代打として前年の毎日王冠に騎乗した柴田善臣を起用。大和屋がジャスタウェイへの騎乗経験のある騎手を重視したための再登板であり、当初サダムパテックに騎乗する予定があった柴田を半ば強奪するかたちになった。調教師の須貝は、かつてJRA競馬学校の第1期を卒業して騎手免許を取得しており、同期の柴田と騎手と調教師の関係でのG1参戦となった[95][96]

こうして迎えた6月8日の安田記念には1頭の香港調教馬を含めて17頭が出走[89]、そのうち9頭はGI級競走優勝馬という「空前の好メンバー[95]」(土屋真光)が揃った。他にもG1勝利こそ無いものの、地力のあるワールドエースやグランデッツァなども参戦[95]。強力なメンバーが相手だったが、それでも本命はジャスタウェイであり[95]、遠征帰りや代打起用などの懸念要素も問題にせず単勝オッズ1.7倍の支持を集めていた[97]。以下の人気は、3歳牝馬ミッキーアイル、ワールドエース、グランデッツァ、カレンブラックヒル、フィエロホエールキャプチャトーセンラーなどが続いた[97]。当日は3日前から続く降雨に祟られ、不良馬場になっていた。降雨こそ弱まり小雨になったが、馬場は回復せず、道悪での開催となった[95]

映像外部リンク
2013年 天皇賞(秋)(GI)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画
2013年 天皇賞(秋)(GI)
レース映像 関西テレビ競馬公式YouTubeチャンネルによる動画

ミッキーアイルが逃げて展開を作る一方、ジャスタウェイは5枠10番から五分のスタートを切り、中団を追走[97][98]。グランデッツァやグランプリボス、ワールドエースなどとともに馬群を形成し、その馬群の中に潜って末脚に賭けていた[98]。9番手、11番手でワンターンを馬群で過ごした[97]。直線では、馬群がばらけて各々進路を確保し、横一線になって追い上げ始めた。ジャスタウェイも同様に外側へ持ち出して進路を確保してからの追い上げを試みたが、ジャスタウェイへのマークは厳しく、簡単に進路を得ることができなかった[97]。特にすぐ外側にいたグランプリボスに蓋をされ、外への進路を塞がれていた[97]。そこで切り替えて状態の悪い内側に突っ込みながら、馬群を捌いて進出を開始[97][96]

抜群の進出コースを確保したのは、24歳三浦皇成が騎乗するブービー人気のグランプリボスだった[99]。1歳年上のグランプリボスは、2010年の朝日杯フューチュリティステークス、2011年のNHKマイルカップを優勝したGI2勝馬であり、2年前の安田記念でもストロングリターンに次ぐ2着となっていたが、連敗するうちに6歳となり、約半年ぶりの復帰戦で人気薄となっていた[99]。そんな伏兵グランプリボスが直線半ばで抜け出し、先頭を奪取[98]。進出に手間取ったジャスタウェイは後を追ったものの、グランプリボスもしぶとく、簡単には先頭を明け渡さなかった[98]

競り合うグランプリボス(手前)とジャスタウェイ(奥)

それでも雨でぬかるんだ馬場に脚を取られ、のめりながらも末脚を利かせて徐々に接近し、ゴール直前でどうにか並び立つ[89][97][100]。ともにGI級競走2勝の2頭が並び立ってからは時に三浦の肘が柴田の顔面に入る程の激しい競り合いとなり[98][101]、両者はほとんど同時に決勝線へ飛び込んでいた。優劣には写真判定が用いられ、結果ジャスタウェイのハナ差、約9センチメートルの先着が確定した。安田記念では1999年エアジハードグラスワンダー以来となる15年ぶり、グレード制導入後4例目のハナ差決着となった[102]

表彰式

凱旋試合の安田記念を戴冠。重賞4連勝でその内GI級競走で3勝となったが[102]グレード制導入後重賞3連勝中、またはそれ以上での安田記念優勝は2013年ロードカナロア以来の4頭目となり[102]、さらに2001年香港カップから2002年フェブラリーステークスを連勝したアグネスデジタル以来となる外国G1優勝直後の帰国初戦、いわゆる凱旋試合にJRAGIを選んでの優勝となった[102]。また柴田は1993年ヤマニンゼファー以来となる安田記念2勝目[103]。さらに父ハーツクライは前々週の優駿牝馬ヌーヴォレコルトで、前週の東京優駿をワンアンドオンリーで制しており、3週連続で産駒がGI優勝[103]。2005年に秋華賞をエアメサイア、菊花賞をディープインパクト、天皇賞(秋)をヘヴンリーロマンスで制したサンデーサイレンス以来となる同一種牡馬産駒による3週連続JRAGI優勝となった[100]

次走は宝塚記念を予定しており[104]、出走馬を決めるファン投票では、ゴールドシップ、ウインバリアシオン、ジェンティルドンナに次ぐ第4位、約4万票を集めていた[105]。しかし不良馬場の安田記念をこなした代償は大きく、疲労が著しかったために[106][104]宝塚記念は回避となり、予定を前倒しして夏休みに。吉澤ステーブルWESTで放牧となった[107]

凱旋門賞

夏休み明けの秋の目標は、フランスのロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞となった。この年、凱旋門賞へ登録した日本調教馬は、ジャスタウェイを含めて6頭いたが、うち3頭が須貝厩舎だった[108]。ジャスタウェイとゴールドシップ、そしてレッドリヴェールだった[108]。レッドリヴェールは、3歳の牝馬であり、前年の阪神ジュベナイルフィリーズを無敗で制していた。そして翌年の桜花賞ハープスターに次ぐ2着となった後、牝馬限定の優駿牝馬ではなく、牡馬も出走する東京優駿に敢えて出走していた[109]。結果次第では凱旋門賞参戦も検討されており、それを見据えて福永を起用していた[109]。しかし栗東から東京への輸送でも堪えて12着に敗退し、断念していた[110]。しばらくしてジャスタウェイが福永を得て、凱旋門賞へ挑むこととなっていた。福永は、ロンシャン競馬場の感触を確かめるために、前もって渡仏しレースに騎乗していた[111][112]

ゴールドシップ

レッドリヴェールの参戦はなくなったが、須貝厩舎からはジャスタウェイとゴールドシップの2頭が挑戦することになった。2頭のほかに遠征に同行する馬、いわゆる帯同馬は、用意されなかった。この時点で宝塚記念連覇など、GI5勝を挙げていたゴールドシップと、世界ランキング1位のジャスタウェイは、厩舎で馬房を隣同士にされるなど仲が良く、須貝は、互いが互いの帯同馬となることを期待していた[113][114]。ゴールドシップは、夏の札幌記念を前哨戦としたのに対して、ジャスタウェイは前哨戦を用いず、ぶっつけ本番での参戦となった[115]。歴代優勝馬の中では、1965年シーバードの3か月がブランクの過去最長記録として存在していたが、それを上回る4か月のブランクを経た参戦となっていた[116]。しかし陣営は、克服できると考えていた[116]。またヨーロッパの重い馬場も、安田記念の不良馬場をこなしたなら通用すると考えていた[104]

エルコンドルパサー

外国G1を優勝してからの凱旋門賞参戦は、1999年にサンクルー大賞を優勝[注釈 1]してから参戦し、モンジューに僅差の2着と惜敗したエルコンドルパサー以来だった[118]。ただエルコンドルパサーは、ヨーロッパ長期滞在を経ての惜敗であり、短期間の滞在での外国G1優勝馬による参戦は初めてだった[118]。芝2400メートルで行われる凱旋門賞には、これまで同じような距離で活躍した日本調教馬が次々に参戦して、悉く敗れていた[118]。しかしジャスタウェイは、これまでの傾向とは異なり、芝2000メートル以下でしか勝利したことがなく、しかも実績のほとんどがマイルに偏っていた[118]。このようなマイル適性に富んだ馬の参戦は、日本調教馬として初めての試みだった[115][118]

しかしこのような新しい挑戦には、批判がついて回った[119]。世界ランク1位になったことで世界各国の競馬場からの招待オファーを受けるなど、実績に見合ったレースを選択することはいくらでも可能だった[119]。それでも敢えて陣営は、未知数の領域に足を踏み入れている選択を決断していた[119]。須貝は「やっぱり初めてと2番目は違う。凱旋門賞を勝つことは日本競馬の悲願。世界一になった馬を預かるものとして凱旋門賞を目指す責任がある[119]」と参戦の理由を回顧している。参戦にあたって当然ながら、距離やスタミナ不足が指摘されていた[120]。遠征は当初、成田国際空港からパリへの直行便を利用する予定だった[104]。しかし航空会社のストライキが発生して欠航となり、急遽オランダのアムステルダムに移動し、陸上輸送でパリへ向かう迂回を強いられた[104]。当初の予定よりも8時間超過する移動となったが、ドバイの経験があるジャスタウェイは動じず、輸送を順調にこなしていた[104]。現地での調整も順調で、福永曰く「ドバイの時以上[104]」の仕上がりで挑んでいた[104]

10月5日の凱旋門賞(G1)は、20年ぶりとなるフルゲート20頭立てだった[121]。有力馬が続々回避したことから出走馬が揃い、混戦模様となっていた[121]。20頭のうち、ゴールドシップとジャスタウェイという須貝厩舎の2頭に、3歳牝馬の桜花賞優勝馬・ハープスターを加えた3頭が日本調教馬だった。日本調教馬としては史上最多となる頭数で挑み、しかも3頭ともに実績十分で戦前は日本の「最強トリオ[122]」などと喧伝されていた。3頭の現地での人気は、ハープスター、ジャスタウェイ、ゴールドシップの順に4番人気から6番人気までを占めていた[121]

映像外部リンク
2014年 凱旋門賞(G1)
レース映像 フランスギャロップ公式YouTubeチャンネルによる動画

良いスタートを切ったジャスタウェイだったが、その後の追走に苦労して後方から数えて4、5番手、馬群の後方で置かれる形となった[121]。コーナーに差し掛かると、外側から馬に寄られて、馬場の内側から抜け出すことができず、馬群の真っ只中に嵌り、終始揉まれながらの追走となっていた[119]。やがてフォルスストレートから直線に向いて勝負どころでは、最も内側を突いていた[123]。しかし最内コースに進路を見出せず、外に持ち出してから追い上げた[123]。進路確保に手間取ったのは致命傷となり、追い上げ始めても、既に逆転不能の差ができていた[123]。先行して抜け出していた7番人気トレヴに独走を許して敗退[123]。トレヴに約5馬身後れを取る8着だった[104]。福永によれば敗因は、距離ではなく、単なる力負けであるとしていた[124]

ジャパンカップ

帰国初戦は、凱旋門賞と同様に長距離、2400メートルのジャパンカップが選ばれた[89]。10月11日に帰国して検疫、吉澤ステーブルWESTでの着地検査をこなした[125]。その後須貝が、遠征や輸送のダメージが少ないことを確認して参戦が決定した[126]。当初、陣営には、ジャパンカップの前週に行われるマイルチャンピオンシップという選択肢も存在していたという[127]。外国人記者の多くは、凱旋門賞の敗戦を距離の問題であると捉えており、マイルチャンピオンシップや香港マイル、香港カップなど実績ある中距離路線に出走するものだと考えていた[126]。しかし陣営に言わせれば、凱旋門賞の敗因は決して距離だとは考えていなかった[126]。また、マイルチャンピオンシップでは時間が足りず、香港では連続での外国遠征となる懸念があり、既に実力を証明した中距離で全うしても得られるものは小さいと考え、さらなる挑戦のために敢えて長距離を選んでいた[127]。須貝は「世界一の称号をいただいている馬ですし、馬場がどうの、距離がどうのとは言っていられない立場[128]」と述べて、長距離に再び挑んでいた[128]

11月30日のジャパンカップ(GI)は、アイリッシュダービー優勝のトレーディングレザー英語版、バーデン大賞やバイエルン大賞優勝のアイヴァンホウ、ジャマイカハンデキャップ優勝のアップウィズザバーズの外国調教馬3頭を迎えたが、人気の中心とは、日本調教馬が占めていた[129]。古馬では3連覇がかかるジェンティルドンナ、天皇賞(秋)優勝直後のスピルバーグ、前年菊花賞優勝のエピファネイアがおり、3歳馬では、皐月賞優勝のイスラボニータ、東京優駿(日本ダービー)優勝のワンアンドオンリー、凱旋門賞帰りの牝馬ハープスターが出走[129]。役者は揃い『優駿』によれば「『史上最高』との声も聞かれるほどの豪華メンバー[129]」だったという。フルゲートの18頭立てとなる中、ジェンティルドンナが1番人気、ハープスターが2番人気と続き、ジャスタウェイは、単勝オッズ6.7倍の3番人気だった。以下エピファネイア、イスラボニータなどが続いていた[129]

福永は、4番人気エピファネイアの主戦騎手でもあったが、ジャスタウェイを選択していた[130]。エピファネイアには、当日ワールドスーパージョッキーシリーズで来日中のクリストフ・スミヨンが「エキストラ騎乗」で代打を務めていた[131]。ジャスタウェイの参戦過程は、決して順調ではなかった[127]。1週間前の調教では福永は首を傾げ、直前の併せ馬でも後れを取っていた[132]。福永によれば「絶好調という感じは受けません[133]」と話していた。しかし当日に一変し、福永が想定したよりも良い感触を返し馬で得て参戦していた[133]

映像外部リンク
2014年 ジャパンカップ(GI)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画

最も内枠、1枠1番からスタートして中団馬群の内側を追走[134]、最終コーナーを8番手で通過した。直線では外に持ち出して進路を確保して追い上げた[134]。福永は後に「道中もスムーズに運べて、だいたい思った通り[133]」だったと振り返っていた。道中、後方を追走していたトレーディングレザーが第3コーナーで故障して後退し、競走中止[133]。トレーディングレザーの突然の後退により、その背後にいたハープスターやスピルバーグ、ジェンティルドンナなどが躓くなど、大きな不利を被っていた[133]。一方のジャスタウェイは、スムーズに最終局面に入っていた[133]。スパートすると、イスラボニータと並ぶ形での進出となり、先行勢のほとんどを差し切っていた。不利を受けたジェンティルドンナなどもスパートしていたが、それらに前方を譲らなかった。やがてイスラボニータも制していた[133]

それでも、先頭奪取はできなかった。遥か前方に、独走するエピファネイアがいた[134]。先行策と折り合いの両立を実現し、直線に向いてスパート、一気に後続を引き離してセーフティリードを築いていた[129]。末脚衰えず独走するエピファネイアに対して、ジャスタウェイは追い上げるも、差は広がるばかりだった。残り100メートルほどで末脚が鈍ってしまい[135]、ゴール手前では遅れて追い上げたスピルバーグやジェンティルドンナ、ハープスターに接近を許した。それでも粘り、それらに半馬身先着して2着は確保していた[129][136]

「世界一」のレーティングを持つジャスタウェイは、エピファネイアに4馬身差つけられた2着に屈していた[137]。ジャパンカップの4馬身差は、2003年優勝タップダンスシチーが2着ザッツザプレンティにつけた9馬身差に次いで2番目に大きい優勝着差だった[137]。しかし後日発表されたレーティングの判定では、エピファネイアは「128」で世界2位止まり、世界1位ジャスタウェイのドバイデューティフリー「130」は脅かされなかった[138]

引退レース

引退式

12月28日の有馬記念(GI)は4着。これを以て引退となった。ラストランを終えた後、時間を空けて午後6時半にゴールドシップと共に競馬場を退き、栗東に帰還[139]。年をまたいだ2015年1月4日、京都競馬場で引退式が行われた[140]。榎本が好きなMr.Childrenの『終わりなき旅』をBGMに[141]、GI初勝利を果たした際の天皇賞(秋)のゼッケンを着用して登場[140]。主戦騎手の福永を背に、芝コースでのキャンターが披露された[140]。福永は、思い出のレースにドバイを挙げ、須貝は「ジャスタウェイの子供たちを、父に負けず世界で戦えるように育てていく責務を課せられた[142]」、榎本は「またいつか、ジャスタウェイの子供を担当して、大きなレースを勝ちたいです[142]」と述べていた。後に初年度産駒として生まれるアドマイヤジャスタは、須貝と榎本に手掛けられて出世を果たすことになる[143]

翌々7日付けで競走馬登録を抹消された。この年のJRA賞では、全285票中242票を獲得[注釈 2]最優秀4歳以上牡馬に選出された[144]。他に年度代表馬部門でも51票を獲得したが、231票のジェンティルドンナに及ばず次点[注釈 3]最優秀短距離馬部門でも32票を獲得したが、193票のスノードラゴンと34票のコパノリチャードに及ばず第3位[注釈 4]だった[144]

種牡馬時代

供用

競走馬引退後は、種牡馬として供用された。引退直後の2015年1月10日から北海道安平町の社台スタリオンステーションに繋養され[145]、父ハーツクライの目の前の馬房が割り当てられた[140]。供用に際しては、シンジケートが結成された[146]。シンジケートの総額は、公表はされていないが、島田明宏によれば「10億、20億といった単位の金[146]」が動いたという。初年度の種付け料は350万円に設定され、種付け権利はすぐに売り切れていた[147][148]

初年度となる2015年は220頭と交配し、2年目からは100頭台に落ち込んだが、5年目となる2019年は盛り返して214頭と交配した[149]。しかし翌6年目となる2020年、三桁を割る86頭に落ち込み、この年の秋に社台スタリオンステーションを追われた[150]。2021年からは、日高町ブリーダーズ・スタリオン・ステーションで供用されるようになり[151]、日高では、年間約60頭との交配に留まっている[150]

産駒の活躍

ヴェロックス

産駒は、2018年から競走馬として走っている。初年度産駒は続々勝ち上がり、ファーストシーズンサイアーチャンピオン、2018年デビューの新種牡馬で一番の活躍を果たしていた[151]。初年度産駒のなかでも須貝と榎本が手掛けるアドマイヤジャスタは、同年のホープフルステークス(GI)で2着、中内田充正厩舎のヴェロックスは、翌2019年の若葉ステークス(L)優勝するなどして、2019年クラシック戦線に加わっていた[152]。特にヴェロックスはクラシック三冠競走すべてで複勝圏内入りを果たし、皐月賞2着、東京優駿および菊花賞3着となった[153]

マスターフェンサー

また芝だけに留まらずダート、角田晃一厩舎のマスターフェンサー(母父:デピュティミニスター)は、日本を飛び出してアメリカのクラシック競走に参戦していた[154]。2019年、日本生産馬として史上初めてとなるケンタッキーダービー(G1)参戦を果たして6着、ベルモントステークス(G1)にも臨み5着となった[154]

クラシックタイトルこそ逃した初年度産駒だったが、その後も続々活躍し、重賞タイトルにありついた産駒も多数存在した。クラシック終結直後の2019年秋に、ロードマイウェイチャレンジカップ(GIII)を優勝し、産駒として初めて重賞優勝を成し遂げていた[151]。翌2020年春にはアウィルアウェイシルクロードステークス(GIII)を、夏にはアドマイヤジャスタが函館記念(GIII)を優勝[151]。帰国したマスターフェンサーもダートグレード競走を多数優勝していた[151]。さらに2021年秋には、テオレーマ(母父:シーザスターズ)が金沢競馬場で行われたJBCレディスクラシック(JpnI)を優勝[155]。初年度産駒からGI級競走優勝産駒を送り出すことに成功している[155]

テオレーマ

重賞優勝産駒は初年度産駒に留まらず、複数世代に及んでいる。特に2018年産、3年目産駒のダノンザキッド(母父:ダンシリ)は、2020年のホープフルステークス(GI)を優勝し、同年のJRA賞最優秀2歳牡馬を受賞[156]。産駒として初めてとなるJRAGI優勝を成し遂げ、JRA賞を受賞した[157]

ダノンザキッド

ダノンザキッドは2021年皐月賞(GI)ではエフフォーリアを上回る1番人気の支持を集め(15着)[158]、同年のマイルチャンピオンシップ(GI)ではグランアレグリアシュネルマイスターに次ぐ3着[159]。2022年も重賞戦線で活躍し、秋のマイルチャンピオンシップではセリフォスに次ぐ2着[160]、暮れの香港カップ(G1)ではロマンチックウォリアーに次ぐ2着[161]、2023年の大阪杯(GI)では、ジャックドールスターズオンアースに次ぐ3着となっている[162]

競走成績

以下の内容は、netkeiba[163]並びにJBISサーチ[164]、『優駿』2015年2月号[165]の情報に基づく。

競走日競馬場競走名距離
(馬場)



オッズ
(人気)
着順タイム
(上り3F)
着差騎手斤量
[kg]
1着馬
(2着馬)
馬体重
[kg]
2011.07.23新潟2歳新馬芝1600m(良)16714006.4(04人)01着R1:36.10(33.8)-0.8福永祐一54(ラパージュ)494
0000.09.04新潟新潟2歳SGIII芝1600m(良)18611001.7(01人)02着R1:33.90(32.6)-0.1福永祐一54モンストール490
0000.11.19東京東スポ杯2歳SGIII芝1800m(不)15814007.4(03人)04着R1:53.50(36.3)-0.8後藤浩輝55ディープブリランテ488
2012.02.05京都きさらぎ賞GIII芝1800m(良)1368006.9(03人)04着R1:47.90(34.2)-0.9秋山真一郎56ワールドエース492
0000.02.25阪神アーリントンCGIII芝1600m(良)13813004.1(02人)01着R1:35.30(34.2)-0.1福永祐一56(オリービン)482
0000.05.06東京NHKマイルCGI芝1600m(良)18714010.0(04人)06着R1:35.30(34.2)-0.8福永祐一57カレンブラックヒル474
0000.05.27東京東京優駿GI芝2400m(良)18714112.9(15人)11着R2:24.80(34.1)-1.0秋山真一郎57ディープブリランテ482
0000.10.07東京毎日王冠GII芝1800m(良)1647061.6(12人)02着R1:45.00(33.0)-0.0柴田善臣54カレンブラックヒル490
0000.10.28東京天皇賞(秋)GI芝2000m(良)18611028.3(08人)06着R1:57.80(34.0)-0.5内田博幸56エイシンフラッシュ486
2013.01.05中山中山金杯GIII芝2000m(良)1659003.4(01人)03着R1:59.90(34.5)-0.4内田博幸56.5タッチミーノット486
0000.02.10京都京都記念GII芝2200m(良)1144003.5(01人)05着R2:13.20(34.2)-0.7内田博幸55トーセンラー490
0000.03.09中京中日新聞杯GIII芝2000m(良)1859005.9(02人)08着R2:00.30(35.3)-0.7D.バルジュー57サトノアポロ486
0000.06.09東京エプソムCGIII芝1800m(良)14813006.2(03人)02着R1:45.70(32.7)-0.0福永祐一56クラレント496
0000.08.11新潟関屋記念GIII芝1600m(良)18816002.8(01人)02着R1:32.70(33.2)-0.2福永祐一56レッドスパーダ506
0000.10.06東京毎日王冠GII芝1800m(良)11810009.3(06人)02着R1:46.80(32.7)-0.1柴田善臣56エイシンフラッシュ498
0000.10.27東京天皇賞(秋)GI芝2000m(良)1747015.5(05人)01着R1:57.50(34.6)-0.7福永祐一58ジェンティルドンナ496
2014.03.02中山中山記念GII芝1800m(稍)1534005.3(02人)01着R1:49.80(36.6)-0.6横山典弘58アルキメデス502
0000.03.29メイダンドバイDFG1芝1800m(Gd)13201着R1:45.52福永祐一57(Vercingetorix)計不
0000.06.08東京安田記念GI芝1600m(不)17510001.7(01人)01着R1:36.80(37.1)-0.0柴田善臣58グランプリボス498
0000.10.05ロンシャン凱旋門賞G1芝2400m(Gd)2014708着福永祐一59.5Treve計不
0000.11.30東京ジャパンCGI芝2400m(良)1811006.7(03人)02着R2:23.80(35.1)-0.7福永祐一57エピファネイア498
0000.12.28中山有馬記念GI芝2500m(良)16815004.6(03人)04着R2:35.50(33.4)-0.2福永祐一57ジェンティルドンナ504
  • 馬場状態:Gd=Good
  • タイム欄のRはレコード勝ちを示す

種牡馬成績

年度別成績

以下の内容は、JBISサーチの情報に基づく[149]

種付年度種付頭数生産頭数血統登録頭数出走頭数勝馬頭数重賞勝馬頭数AEICPI
20152201381381238951.44
2016151106106957120.89
20171217875624111.25
20181519997874900.80
20192141401381165221.10
20208662601731.07
20216138380
202267000
合計652500305101.141.82

重賞優勝産駒一覧

GI級競走優勝産駒

GI級競走は、太字強調にて示す。

重賞優勝産駒

地方競馬独自の格付けは、アスタリスクを充てる。

血統

ジャスタウェイ血統(血統表の出典)[§ 1]
父系サンデーサイレンス系ヘイロー系
[§ 2]

ハーツクライ
2001 鹿毛
父の父
*サンデーサイレンス
Sunday Silence
1986 青鹿毛
HaloHail to Reason
Cosmah
Wishing WellUnderstanding
Mountain Flower
父の母
アイリッシュダンス
1990 鹿毛
*トニービン*カンパラ
Severn Bridge
*ビューパーダンスLyphard
My Bupers

シビル
1999 鹿毛
Wild Again
1980 黒鹿毛
IcecapadeNearctic
Shenanigans
Bushel-n-PeckKhaled
Dama
母の母
*シャロン
Charon
1987 栗毛
Mo ExceptionHard Work
With Exception
Double WiggleSir Wiggle
Blue Double
母系(F-No.)(FN:2-n)[§ 3]
5代内の近親交配なし[§ 4]
出典


参考文献

  • 大和屋暁『ジャスタウェイな本 世界最強馬との1640日』(KKベストセラーズ、2015年)ISBN 458410428X
  • 優駿』(日本中央競馬会
    • 2006年5月号
      • 石田敏徳「【ヘッドライン】ドバイで日本馬が2勝を挙げる活躍」
      • 石川ワタル「【ワールドレーシングニュース】第11回ドバイワールドカップデー ハーツクライ&ユートピア 世界の舞台で歴史的な圧勝劇」
    • 2011年9月号
      • 横手礼一「【進め!クラシックロード(2)】一歩リードの重賞&オープン勝ち馬」
    • 2011年11月号
      • 「【重賞プレイバック】第31回新潟2歳ステークス(GIII)モンストール」
    • 2012年1月号
      • 「【重賞プレイバック】第16回東京スポーツ杯2歳ステークス(GIII)ディープブリランテ」
    • 2012年4月号
      • 「【重賞プレイバック】第52回きさらぎ賞(NHK賞)(GIII)ワールドエース」
      • 「【重賞プレイバック】第21回アーリントンカップ(GIII)ジャスタウェイ」
    • 2012年6月号
      • 優駿編集部「【杉本清の競馬談義(325)】須貝尚介調教師」
    • 2012年7月号
      • 「【重賞プレイバック】第17回NHKマイルカップ(GI)カレンブラックヒル」
      • 「【重賞プレイバック】第79回東京優駿(GI)ディープブリランテ」
    • 2012年12月号
      • 「【重賞プレイバック】近代競馬150周年記念 第146回天皇賞(秋)(GI)エイシンフラッシュ」
      • 「【重賞プレイバック】第63回毎日王冠(GII)カレンブラックヒル」
    • 2013年3月号
      • 「【重賞プレイバック】第62回日刊スポーツ賞 中山金杯(GIII)タッチミーノット」
    • 2013年4月号
      • 「【重賞プレイバック】第106回農林水産省賞典 京都記念(GII)トーセンラー」
    • 2013年5月号
      • 「【重賞プレイバック】第49回中日新聞杯(GIII)サトノアポロ」
    • 2013年8月号
      • 「【重賞プレイバック】第30回エプソムカップ(GIII)クラレント」
    • 2013年10月号
      • 「【重賞プレイバック】サマーマイルシリーズ第48回関屋記念(GIII)レッドスパーダ」
    • 2013年12月号
      • 岡本光男(日刊スポーツ関西)「【GIインサイドストーリー】ジャスタウェイ 驚愕の末脚を繰り出した理由ワケ
      • 「【重賞プレイバック】第148回天皇賞(秋)(GI)ジャスタウェイ」
      • 「【重賞プレイバック】第64回毎日王冠(GII)エイシンフラッシュ」
    • 2014年4月号
      • 岡本光男(日刊スポーツ関西)「【2014年の主役を担う古馬たち】充実の時を迎えいざ世界へ ジャスタウェイ」
      • 秋山響「【2014年ドバイワールドカップデイ完成ガイド】ドバイデューティフリー」
    • 2014年5月号
      • 斎藤修「【ドバイワールドカップデー詳報】ジャスタウェイ 2着以下を突き放す圧巻のパフォーマンス」
      • 「【重賞プレイバック】第88回中山記念(GII)ジャスタウェイ」
      • 「【ニュース&トピックス】ジャスタウェイが世界ランキング1位に」
    • 2014年6月号
      • 吉沢譲治「【日本の種牡馬 血統に秘められた物語(2)】ハーツクライ 随所に映し出される母の父の影響力」
    • 2014年7月号
      • 岡本光男「【出走馬それぞれのダービー戦記】4番人気12着 レッドリヴェール 小柄な牝馬には響いた馬体減」
      • 土屋真光「【GIインサイドストーリー】ジャスタウェイ 向かい風を追い風に変えて」
    • 2014年8月号
      • 「【重賞プレイバック】第64回農林水産省賞典 安田記念(GI)ジャスタウェイ」
    • 2014年10月号
      • 合田直弘「【日本馬3頭の『武器』と『勝利へのシナリオ』】ジャスタウェイ 3歳世代の挑戦を受けて立つ王者」
      • 軍土門隼夫「【3人のサムライ 頂までのアプローチ】福永祐一 ダービーが目標なら、凱旋門賞は夢」
      • 岡本光男「【夢を追い求めるホースマンたちの声】須貝尚介調教師 馬房が隣同士の2頭が一緒に行くなんてすごいこと」
      • 軍土門隼夫「【ステップレース検証】2頭は札幌記念からロンシャンへ」
    • 2014年11月号
      • 軍土門隼夫「【第93回凱旋門賞詳報】最強トリオでも叶わなかった夢 トレヴが36年ぶりの連覇達成」
      • 軍土門隼夫「【日本馬の遠征記(2)】ジャスタウェイ 結果は伴わずも、課題は克服」
      • 軍土門隼夫「【日本馬の遠征記(3)】ゴールドシップ 万全な状態も、不向きな馬場と流れ」
    • 2014年12月号
      • 岡本光男(日刊スポーツ・関西)「【第34回ジャパンカップ】今回こそ世界チャンプの末脚を見せる ジャスタウェイ」
      • 合田直弘「【第34回ジャパンカップ】海外での評価を聞く 『距離不適合』の評価を覆すか注視」
    • 2015年1月号
      • 岡本光男(日刊スポーツ・関西)「【第59回有馬記念】譲れない、世界一の誇り ジャスタウェイ」
      • 有吉正徳「【GIインサイドストーリー】エピファネイア 人馬共にリベンジを果たした瞬間」
      • 平松さとし「【敗因探究】注目馬たちのジャパンカップを振り返る」
      • 「【重賞プレイバック】ジャパン・オータムインターナショナル ロンジン賞 第34回ジャパンカップ(GI)(国際招待)エピファネイア」
    • 2015年2月号
      • 合田直弘「【引退特別企画(2)】ジャスタウェイ "世界一"を掴みとった駿才」
      • 石川ワタル「【2014年の蹄跡(1)】ジャスタウェイ&ジェンティルドンナ ドバイの宴~日本馬が世界を驚かせた夜」
      • 「【2014年度JRA賞決定!】年度代表馬はジェンティルドンナ」
      • 優駿編集部「【杉本清の競馬談義(357)】大和屋暁さん」
      • 岡本光男「【トレセン・リポート】栗東トレセン発 有馬記念翌日、榎本調教助手が振り返るジャスタウェイとの思い出」
      • 「【ニュースフロントライン】GI7勝馬ジェンティルドンナ、世界トップのジャスタウェイが引退式――多くのファンに見守られながらターフに別れを告げる」
      • 「【馬産地ニュース】引退したスターホースたちが北海道へ――第2の馬生にも期待がかかる」
    • 2015年3月号
      • 沢田康文「【ワールドレーシングニュース】2014年ロンジンワールドベストレースホースセレモニー 世界1位ジャスタウェイ、同2位エピファネイアがロンドンで表彰される」
      • 石川ワタル「【ワールドレーシングニュース】Topics」
    • 2017年4月号
    • 2018年7月号
  • Timeform (2014) (英語). Racehorses of 2013. Timeform Ltd. ISBN 978-1901570939 
  • Timeform (2015) (英語). Racehorses of 2014. Timeform Ltd. ISBN 978-1901570977 

脚注

注釈

出典

外部リンク