スパインチーク・アネモネフィッシュ

スパインチーク・アネモネフィッシュ[2]学名Premnas biaculeatus)は、スズメダイ科に分類される海水魚の一種[3]マルーン・クラウンフィッシュとも呼ばれる[4]インドネシア西部から台湾グレートバリアリーフまでのインド太平洋に分布する[3]。約17cmまで成長する[5]。他のクマノミと同様に、イソギンチャク相利共生しており、触手による影響を受けない。順位制を持ち、雌が最も大きく、雄は小さい個体ほど順位が低い[6]。唯一の繁殖雌が死ぬと繁殖雄が雌に変わり、最大の非繁殖雌が繁殖雄になる[7]

スパインチーク・アネモネフィッシュ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:条鰭綱 Actinopterygii
:スズキ目 Perciformes
亜目:ベラ亜目 Labroidei
:スズメダイ科 Pomacentridae
亜科:ソラスズメダイ亜科 Pomacentrinae
:Premnas
Cuvier, 1816
:P. biaculeatus
学名
Premnas biaculeatus
(bloch, 1790)
シノニム
  • Chaetodon biaculeatus Bloch, 1790
  • Holocentrus sonnerat Lacepède, 1802
  • Lutianus trifasciatus Schneider, 1801
  • Premnas epigrammata Fowler, 1904
  • Premnas gibbosus Castelnau, 1875
  • Premnas semicinctus Cuvier, 1830
  • Premnas unicolor Cuvier, 1829
  • Sargus ensifer Gronow, 1854
英名
Maroon clownfish
spine-cheeked anemonefish

分類

本種は Premnas 属の唯一の種 (単型) である[5]。クマノミ類は歴史的に形態学的特徴と体色で区別されてきたが、その後は頭部の鱗や歯の形などで区別されるようになった[7]。本種の頬にある棘により、クマノミ属とは別の属として考えられている。本種は単型分類群だと考えられてきたが、系統的にはクラウンアネモネフィッシュや Amphiprion latezonatus に近縁である[8][9]。別の系統解析においてもカクレクマノミと近縁であることが示されている[10]。これにより、Premnas 属はクマノミ属に含まれると考えられる[11]

スマトラ島の個体群は別種の可能性がある[12]。しかし別種と証明する為には形態学的な違いだけでなく、遺伝的データが必要である[13][14]

2021年に行われたスズメダイ科の系統解析によると、本種はクマノミ属に含まれる[15]

説明

頬にある棘が特徴。体色や模様は性別や地域によって異なる。英名である「Maroon (栗色)」の体色を持つのは一部の雌だけで、暗褐色のものもいる。幼魚と雄は赤みがかった明るいオレンジ色。体には3本のバンドが入り、色は白、灰色、黄色など様々。バンドの色を瞬時に変える場合もある[7]。成長した雌はバンドが殆ど消失する[16]。雌は雄よりも大きく、最大17 cmまで成長するのに対し、雄は6 - 7 cm程度である[7]

体色変異

地域変異は少なくとも3つある。

中央マレー諸島

北スラウェシ州からコモド島までのマレー諸島中央部では、雌は頭部のバンドがくすんだ黄色で、体のバンドは灰色。雄と幼魚は赤みがかった明るいオレンジ色で、バンドは白い。

東ティモールからオーストラリアまで

東ティモールからニューギニアオーストラリアにかけての地域では、雌のバンドは白色か灰色。雄と幼魚は中央マレー諸島と同じ。

スマトラ島

スマトラ島アンダマン諸島ニコバル諸島では、雌雄共にバンドが黄色である。

分布と生態

主に東南アジアの島々に分布する。ラグーンサンゴ礁の外側に生息する[17]動物プランクトン藻類を捕食する[5]。主にサンゴイソギンチャク、タマイタダキイソギンチャク、ウスカワイソギンチャクと共生している[7]。縄張り意識はとても高い。サンゴイソギンチャクは多くの種類のクマノミが共生しており、縄張り意識の高さはこのことに由来する可能性がある[18][19]。本種はサンゴイソギンチャクと共生する傾向が非常に高いが、縄張り意識の高さとの関係は不明[20]は岩などに産み付けられ、親が鰭を使い卵に空気を送る。

人との関わり

アクアリウムで飼育され、飼育下繁殖の例もある[5]。大型で縄張り意識も強いため、混泳には注意が必要である[21]ポートモレスビー付近で捕獲された変異個体を改良し[22]、「ライトニング」と呼ばれる網目模様の品種が作り出されている[23]。カクレクマノミとの交雑個体も生み出されており、形態はカクレクマノミに似るが、より大型で攻撃性が高い[24]

脚注

参考文献

関連項目