メタドヘリン

メタドヘリン: metadherinMTDH)、 LYRIC(lysine-rich CEACAM1 co-isolated)、またはAEG-1(astrocyte elevated gene 1)は、ヒトではMTDH遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6][7]

MTDH
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

4QMG

識別子
記号MTDH, 3D3, AEG-1, AEG1, LYRIC, LYRIC/3D3, metadherin
外部IDOMIM: 610323 MGI: 1914404 HomoloGene: 12089 GeneCards: MTDH
遺伝子の位置 (ヒト)
8番染色体 (ヒト)
染色体8番染色体 (ヒト)[1]
8番染色体 (ヒト)
MTDH遺伝子の位置
MTDH遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点97,644,184 bp[1]
終点97,730,260 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
15番染色体 (マウス)
染色体15番染色体 (マウス)[2]
15番染色体 (マウス)
MTDH遺伝子の位置
MTDH遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点34,082,840 bp[2]
終点34,145,770 bp[2]
RNA発現パターン


さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 transcription coactivator activity
NF-kappaB binding
血漿タンパク結合
double-stranded RNA binding
RNA結合
細胞の構成要素 細胞質
integral component of membrane
核内構造体
核膜
endoplasmic reticulum membrane

bicellular tight junction
intercellular canaliculus
細胞結合
apical plasma membrane
小胞体
perinuclear region of cytoplasm
細胞核
fibrillar center
核小体
生物学的プロセス positive regulation of protein kinase B signaling
positive regulation of autophagy
negative regulation of apoptotic process
negative regulation of transcription by RNA polymerase II
positive regulation of angiogenesis
positive regulation of NF-kappaB transcription factor activity
bicellular tight junction assembly
positive regulation of I-kappaB kinase/NF-kappaB signaling
リポ多糖を介したシグナル伝達経路
positive regulation of nucleic acid-templated transcription
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_178812
NM_001363136
NM_001363137
NM_001363138
NM_001363139

NM_026002
NM_001357925
NM_001357926

RefSeq
(タンパク質)

NP_848927
NP_001350065
NP_001350066
NP_001350067
NP_001350068

NP_080278
NP_001344854
NP_001344855

場所
(UCSC)
Chr 8: 97.64 – 97.73 MbChr 8: 34.08 – 34.15 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

機能

MTDH(AEG-1)は、HIF-1αを介した血管新生に関与している。MTDHはSND1英語版とも相互作用してRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)とも関係し、RISCやmiRNAの機能に非常に重要な役割を果たしている[8][9]。MTDHは細胞核スプライソソームタンパク質とも相互作用し、選択的スプライシング過程を調節していることが示されている[10]

MTDHはLSF(Late SV40 factor)/TFCP2英語版と呼ばれるがん遺伝子を誘導する。LSF/TFCP2はチミジル酸シンターゼ英語版の誘導とDNA生合成に関与している[11]。LSF/TFCP2はMMP9転写をアップレギュレーションすることで、血管新生を亢進する[12]

臨床的意義

MTDHは、メラノーマ、悪性神経膠腫乳がん肝細胞がんにおいてがん遺伝子として作用する[13]。MTDHはこれらのがんで高度に発現しており、その発生とプログレッションを補助している。MTDHはがん遺伝子であるc-Mycによって誘導され、がん細胞の足場非依存性増殖(転移)に重要な役割を果たしている。

MTDHの過剰発現は乳がんの40%以上でみられ、臨床的予後不良と関係している。MTDHは播種性転移の促進と化学療法抵抗性の向上という二重の役割を担っている。そのため、MTDHは化学療法の効果を高め、転移を抑えるための治療標的としての可能性がある[14][15][16][17]。miRNAによるMTDHの人為的ノックダウンは、乳がんにおいてがん抑制機能を有する可能性がある[18]

MTDHは前立腺がんでも過剰発現していることが示されている。そこでは細胞質へより多く局在する変化が生じており、予後不良の指標となる[19][20]。前立腺がん細胞の細胞核では、MTDHはCD44などの遺伝子の選択的スプライシングに影響を与えていることが示されており、前立腺がんのプログレッションと関係している可能性もある[10]

MTDHによって誘導されるLSF/TFCP2は、化学療法抵抗性、上皮間葉転換アレルギー応答、炎症アルツハイマー病など、多面的役割を果たす[21]

MTDHはマウスの肝臓で脂肪肝を誘発する[22]

相互作用

MTDHは次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

関連文献