ヤグアル級魚雷艇

ヤグアル級魚雷艇ドイツ語: Jaguar-Klasse)とは、西ドイツ海軍ジルバーメーヴェ級魚雷艇の後継として設計した魚雷艇である。140型魚雷艇(Klasse 140)とも表記される。

ヤグアル級 / ゼーアドラー級魚雷艇
基本情報
艦種魚雷艇Sボート
命名基準鳥類もしくは哺乳類の名前
建造所リュールセン, クローガー
運用者 ドイツ海軍
 トルコ海軍
 ギリシャ海軍
就役期間1957年~1976年(西ドイツ海軍)
同型艦ヤグアル級20隻+ゼーアドラー級10隻
前級ジルバーメーヴェ級魚雷艇
次級ツォーベル級魚雷艇
ティーガー級ミサイル艇
アルバトロス級ミサイル艇
要目
排水量基準:183.4t、満載:210t
全長42.6m
最大幅7.1m
吃水2.3m
主機メルセデス・ベンツ MB 518 B ディーゼル ×4基(ヤグアル級)
マイバッハ MD 871 ディーゼル×4基(ゼーアドラー級)
マイバッハ MD 872 ディーゼル×4基(ゼーアドラー級、1960年代後半に換装)
推進器4軸
出力3,000馬力(マイバッハ MD 872のみ3,600馬力)×4
速力42ノット(ヤグアル級)
36ノット
(ゼーアドラー級、エンジン換装前)
43.5ノット
(ゼーアドラー級、エンジン換装後)
航続距離35ノットの速力を維持して、700海里
乗員39名
兵装ボフォース 40mm/L70 単装機関砲×2基
533mm単装魚雷発射管×4基
機雷敷設装備×2基
(オプション、1基当たり23基の機雷を搭載可。)
爆雷×4発
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本項目では、派生型のゼーアドラー級魚雷艇141型魚雷艇ドイツ語: Seeadler-Klasse, Klasse 141)についても解説する。

概要

ヤグアル級/ゼーアドラー魚雷艇は、第二次世界大戦後西ドイツが初めて新規に設計開発された小型高速戦闘艇である。

ヤグアル級魚雷艇1番艇「P6059 / S1 ヤグアル」は1957年に就役し、1961年までの4年間でヤグアル級20隻とゼーアドラー級10隻の合計30隻が就役した[1]

就役後、ヤグアル級は第3高速艇戦隊(3. Schnellbootgeschwader)と第5高速艇戦隊(5. Schnellbootgeschwader)、ゼーアドラー級は第2高速艇戦隊(2. Schnellbootgeschwader)にそれぞれ配属された。しかし、第3次中東戦争の1967年10月21日にイスラエル海軍の駆逐艦エイラートエジプト海軍コマール型ミサイル艇から発射されたP-15「テルミート」対艦ミサイルによって撃沈した事例から、魚雷艇の存在価値が揺らぎ始めた。

このため第3/第5高速艇戦隊のヤグアル級はティーガー級ミサイル艇への更新が進められて1975年に全艇が西ドイツ海軍から退役し、第2高速艇戦隊のゼーアドラー級もアルバトロス級ミサイル艇に更新されて1976年に全艇が西ドイツ海軍から退役した。

船体

ヤグアル級とゼーアドラー級の艇体は同一の構造であり、木製の外板と軽合金製の甲板で製造され軽量化が図られているが、主な作戦想定海域である北海及びバルト海における一定水準の航洋能力を備えている。

ヤグアル級とゼーアドラー級の差異は搭載エンジンのみであり、どちらもディーゼルエンジンを搭載するが、ヤグアル級はメルセデス・ベンツ製のMB 518 B、ゼーアドラー級はマイバッハ(後のMTUフリードリヒスハーフェン)製のMD 871を搭載する。このため、ヤグアル級とゼーアドラー級を搭載エンジンのメーカーからそれぞれメルセデス-ボート(Mercedes-Boote)とマイバッハ-ボート(Maybach-Boote)と呼ぶこともある。

当初はゼーアドラー級の最高速度が大きくヤグアル級に劣っていたが、1960年代後半にはエンジンを改良型のマイバッハ製MD 872に換装することにより、ヤグアル級にほぼ匹敵する最高速度を手に入れた。

兵装

ヤグアル級/ゼーアドラー級の兵装は基本的に同一である。

主兵装の533mm魚雷発射管は艇体の左右に2基ずつの計4基搭載されており、魚雷の発射軸線は艇体の前後軸線からやや左右外向き(前部魚雷発射管は10°、後部魚雷発射管は15°)の角度をつけて取り付けられている。艇内に予備魚雷は搭載不可能なため、魚雷の再装填には母港に帰還するか補給艦と合流する必要がある。

搭載魚雷は、当初はフランスから第二次世界大戦中にドイツが生産したG7a魚雷(最大速度44ノット時の射程6km)の供給を受けていたが、G7a魚雷の在庫が払底すると、その後継としてイギリス製のMk 8 魚雷(最大速度44.5ノット時の射程4.5km)を装備するようになった[2]

甲板上には、対空兵装と二次的対水上火力を兼ねて艦橋の前後に1門ずつのボフォース 70口径40mm機関砲を装備している。対空用の射撃管制装置も設置されている。

オプションで機雷の敷設能力も付与することが可能であり、後部の魚雷発射管2基を撤去することで2基の機雷敷設装備とそれぞれに23基の機雷を搭載することが可能である。

この他には対潜水艦用の爆雷4発を搭載しているが、潜水艦捜索用のソナーは装備していない。

同型艇

ヤグアル級

ヤグアル級は西ドイツ海軍から退役後、11隻をトルコ海軍が引き取り内7隻を再就役させたが、1993年までに全て退役した。

トルコ海軍に引き取られなかった9隻のうち、フランス海軍標的艇として1隻を引き取ったほかはほとんどが解体された。うち1隻はブレーメン州ブレーマーハーフェンにて展示されていたが、こちらも2006年に解体されている。

ヤグアル級 / 140型
艦番号艦名就役退役備考
P6059 / S1ヤグアル
Jaguar
1957年11月16日1973年6月22日
P6058 / S2イルティス
Iltis
1957年12月19日1975年1月31日トルコ海軍に標的艇として売却。後にスクラップとして解体。
P6062 / S3ヴォルフ
Wolf
1958年2月12日1975年3月21日トルコ海軍において、P335 ユルドゥズ(Yıldız)として再就役。1993年6月17日に退役。
P6061 / S4ルクス
Luchs
1958年3月27日1972年12月1日
P6060 / S5レオパルト
Leopard
1958年5月20日1973年5月28日
P6065 / S12ルーヴェ
Löwe
1959年2月5日1975年4月25日トルコ海軍において、P332 カルカン(Kalkan)として再就役。1981年7月20日に退役。
P6066 / S13フクス
Fuchs
1959年3月17日1973年7月13日
P6067 / S14マルダー
Marder
1959年7月7日1972年6月2日
P6082 / S15ヴァイエ
Weihe
1959年10月28日1972年7月5日フランス海軍に標的艇として売却。1986年にトゥーロン沖にて撃沈。
P6083 / S16クラーニヒ
Kranich
1959年12月19日1973年11月2日ブレーマーハーフェンにおいて博物館船として展示。2006年にスクラップとして解体。
P6085 / S17シュトルヒ
Storch
1960年3月12日1974年3月29日トルコ海軍において、P331 トゥファン(Tufan)として再就役。1988年2月24日に退役。
P6087 / S18ハーヘル
Häher
1960年4月5日1974年12月15日トルコ海軍において、P333 ミズラク(Mızrak)として再就役。1981年7月20日に退役。
P6088 / S19エルスター
Elster
1960年7月8日1974年7月19日
P6089 / S20ライハー
Reiher
1960年8月15日1973年8月21日トルコ海軍に引き渡し後解体。
P6091 / S21ドメル
Dommel
1961年2月4日1974年3月22日
P6090 / S22ペンギン
Pinguin
1961年3月28日1972年12月14日短期間、第71テストセンター(Erprobungsstelle 71)において運用された。
後にトルコ海軍においてP336 キリク(Kılıç)として再就役。1988年12月31日に退役。
P6063 / S23ティーガー
Tiger
1958年10月15日1974年12月20日トルコ海軍において、P334 カライェル(Karayel)として再就役。1981年7月20日に退役。
P6064 / S24パンター
Panther
1958年12月12日1973年3月1日
P6084 / S29アルク
Alk
1960年1月14日1974年8月6日トルコ海軍に引き渡し後解体。
P6086 / S30ペリカン
Pelikan
1960年3月30日1974年5月31日トルコ海軍において、P330 フルトゥナ(Fırtına)として再就役。1985年に退役。

ゼーアドラー級

西ドイツ海軍から退役したゼーアドラー級は、10隻全てをギリシャ海軍が引き取りその内7隻を再就役させたが、2005年に最後の艇が退役した。

ゼーアドラー級 / 141型
艦番号艦名就役退役備考
P6068 / S6ゼーアドラー
Seeadler
1958年8月29日1976年7月30日ギリシャ海軍にて、P50(1980年以降の新しい艦番号:P196) エスペロス(ΕΣΠΕΡΟΣ)として再就役。2004年に退役。
P6069 / S7アルバトロス
Albatros
1959年1月27日1975年12月19日ギリシャ海軍に引き渡し後解体。
P6070 / S8コンドル
Kondor
1959年2月24日1976年7月25日ギリシャ海軍にて、P54(P228) ライラプス(ΛΑΙΛΑΨ)として再就役。2004年に退役。
P6071 / S9グライフ
Greif
1959年3月3日1976年12月1日ギリシャ海軍にて、P53(P199) キュクロン(ΚΥΚΛΩΝ)として再就役。2005年に退役。
P6072 / S10ファルケ
Falke
1959年4月14日1975年9月26日ギリシャ海軍にて、P51(P197) カタイギス(ΚΑΤΑΙΓΙΣ)として再就役。1981年に退役。
P6073 / S11ガイヤー
Geier
1959年6月3日1975年6月27日ギリシャ海軍にて、P56(P230) ティフォン(ΤΥΦΩΝ)として再就役。2005年に退役。
P6074 / S25ブッサルト
Bussard
1959年3月21日1975年11月28日ギリシャ海軍に引き渡し後解体。
P6075 / S26ハビヒト
Habicht
1959年6月21日1976年9月24日ギリシャ海軍にて、P52(P198) ケンタウロス(ΚΕΝΤΑΥΡΟΣ)として再就役。1995年に退役。
P6076 / S27シュペルバー
Sperber
1959年7月1日1976年2月27日ギリシャ海軍に引き渡し後解体。
P6077 / S28コルモラン
Kormoran
1959年11月9日1976年11月26日ギリシャ海軍にて、P55(P229) スコルピオス(ΣΚΟΡΠΙΟΣ)として再就役。1995年に退役。

脚注

外部リンク

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