葉縁

中裂から転送)

葉縁(ようえん、: leaf margin)は葉身の周縁部を指す[1]。種によりその形状は異なるため、同定に利用される。

葉の形。葉縁は「MARGIN」。

以下にその形状に関する用語を示す。

鋸歯

鋸歯(きょし、: serration, teeth)とはの歯状の葉縁の細かい切れ込みのことである[2]。鋸歯の先端部には水孔を持つことが多い[2]被子植物広葉樹は年平均気温の上昇に伴い全縁の種が多くなるため、気温と鋸歯形成の関係性が指摘される[2]

鋸歯の有無・形状

とくに註のない和名、英名は清水 (2001)による[3]。ラテン語、特徴は葉の形態の用語(英語版)より。

形状用語読み英語ラテン語特徴
全縁
(全辺)
ぜんえんentireForma integra平坦、滑らかな縁で、鋸歯はない。
毛縁もうえんciliateciliata縁毛がある。
長毛縁ちょうもうえんfimbriateふさ毛がある。
深波状
(湾ある)
しんはじょうsinuatesinuosa深く、波のような彎入。粗い円鋸歯状。
波状はじょうundulate,
repand
undulata深波状より狭い波のような縁。
円鋸歯状
(鈍鋸歯状[4]
えんきょしじょう
(どんきょしじょう)
crenate,
scalloped
crenata波のような鋸歯をもつ。円い歯状。
小円鋸歯状
(小鈍鋸歯状)[5]
しょうえんきょしじょう
(しょうどんきょしじょう)
crenulatecrenulate細かい円鋸歯状。
鋸歯状きょしじょうserrate,
saw-toothed
serrata鋸歯の先は葉の先を向き、非対称。
細鋸歯状さいきょしじょうserrulateserrulata細かい鋸歯状。
歯状
(歯牙縁)
しじょう
(しがえん)
dentate,
toothed
dentata歯牙をもつ。鋸歯の先は開出し、歯の先を向かない[3]。 大きな歯牙を持つものを coarsely dentateをもつものをglandular dentateと呼ぶこともある
doubly serrate[6]
細歯状
(細葉牙縁)
さいしじょうdenticulatedenticulata細かい歯牙がある。
重鋸歯
(重鋸歯状[1]
じゅうきょしbiserrate,
double serrate,
doubly serrate[6]
duplicato-dentataそれぞれの鋸歯に小さな鋸歯がある。
鋭浅裂
(欠刻縁)
えいせんれつ
(けっこくえん)
incised欠刻がある。
spiny,
pungent
spiculataアザミのように堅く尖った先端がある。

切れ込みの深さ

切れ込みのある葉身

葉身に切れ込みがある場合、切れ込みの深さにより、浅裂(せんれつ、: lobate, lobed)、中裂(ちゅうれつ、: cleft)、深裂(しんれつ、: parted, partite)、全裂(ぜんれつ、: divided, dissected)に分けられる[3][1]。その突出部を裂片(れっぺん、: lobe)とよぶ[1]

切れ込みの深さと形状

裂片が左右に列をなす場合羽状(うじょう、: pinnate)、放射状に並ぶ場合掌状(しょうじょう、: palmate)という[1]

とくに註のない和名、英名は清水 (2001)による[3]

形状用語英語[4]
羽状浅裂pinnately lobed
羽状中裂pinnately cleft
羽状深裂pinnately partedヨモギブタクサ(2回羽状深裂)
羽状全裂
羽状複葉
pinnately divided,
pinnately compound
ヌルデニワトコ
下向羽裂
(逆羽状分裂)
runcinate
頭大羽状lyrateダイコンマルバコンロンソウ(ともに頭大羽状複葉)[7]
櫛の歯状pectinate
掌状浅裂palmately lobed
掌状中裂palmately cleft
掌状深裂[4]ヤツデ
掌状全裂
掌状複葉
palmately divided,
palmately compound
トチノキヤマウコギコシアブラヤグルマソウ
鳥足状深裂pedately parted

脚注

参考文献

  • 巌佐庸、倉谷滋、斎藤成也塚谷裕一『岩波生物学辞典 第5版』岩波書店、2013年2月26日、329,1424頁。ISBN 9784000803144 
  • 清水建美『図説 植物用語辞典』八坂書房、2001年7月30日、130,276-277頁。ISBN 9784896944792 
  • 岩瀬徹・大野啓一『野外観察ハンドブック 写真で見る植物用語』(初版)全国農村教育協会、2004年5月3日、51-61頁。ISBN 488137107X 

関連項目

外部リンク