横手市立図書館

日本の秋田県横手市の図書館

横手市立図書館(よこてしりつとしょかん)は、秋田県横手市にある公共図書館

横手市立図書館
Yokote Municipal Library
横手市立横手図書館
施設情報
正式名称横手市立図書館
専門分野総合
事業主体横手市
管理運営横手市教育委員会
所在地6館
統計情報
蔵書数437,407点(2023年3月31日[1]時点)
貸出数279,975点(2022年度[1]
来館者数167,627人(2022年度[1]
年運営費233,815千円(2023年度当初予算[1]
条例横手市立図書館設置条例(平成17年10月1日横手市条例第301号)
公式サイト横手市立図書館
プロジェクト:GLAM - プロジェクト:図書館
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横手市内の各地域(大雄、山内地域は除く[注 1])に、横手図書館、増田図書館、平鹿図書館、雄物川図書館、大森図書館、十文字図書館が設置されている。全館(2図書室を含む)の蔵書数は437,407点で、年間貸出数は279,975点である(2022年度統計)[1]

歴史

戦前

横手市立図書館(横手市立横手図書館)の起源となるのは、1903年明治36年)9月7日に開館した平鹿郡立図書館である[2][3]。当初は「平鹿郡公会堂」の1階部分を使用して開館し、蔵書数は884点、初代館長は青柳淳であった[注 2]。平鹿郡公会堂は木造2階建ての洋風建築で、現在は横手城南高等学校の校舎が立地する場所(横手市城西町[3])に所在した[2]。平鹿郡立図書館の設置に至ったのは、1889年(明治32年)に公布された「図書館令」によって、県内において郡立図書館設置の機運が高まったことが大きな要因である[4]。これにより、1903年(明治36年)までには北秋田山本仙北南秋田雄勝由利平鹿の各群に郡立図書館が設置された[5][4]

1923年大正12年)4月の郡制廃止により県に移管し、秋田県立秋田図書館横手分館となったが[6][7][3]1931年昭和6年)に秋田県立秋田図書館のすべての分館が所在地の自治体に移管されることが決定[8]1932年(昭和7年)3月に秋田県から横手町へと移管され、横手町立横手図書館と改称した[7][9][8]

戦後

第二次世界大戦が終結し、1945年(昭和20年)10月4日 - 5日にかけて横手にもアメリカ兵が進駐したが、宿舎については横手図書館が充てられ[10]、図書館は一時休館となった[9]

1946年(昭和21年)6月には大町6番(元安田銀行横手支店[11])へ移転。1948年(昭和23年)には前郷二番町8番3号(元横手衛生試験所[11])へ移転、1951年(昭和26年)4月1日には市制施行により横手市立図書館と改称した[9]1957年(昭和32年)1月には根岸町7番32号(元営林署[11])に移転、1962年(昭和37年)3月には横手北小学校(初代)の隣の建物に移転するが、翌年3月に発生した横手北小の火災によって、多くの破損・紛失図書を出した[9]

1964年(昭和39年)6月19日に羽後銀行(現・北都銀行)から土地と建物の寄贈を受け、大町7番9号(元羽後銀行本店、現在地)に移転した[12]1980年時点で、蔵書数は60,208点(2022年現在、横手図書館単体で90,116点[1])、年間貸出数は22,663点(2022年現在、横手図書館単体で87,023点[1][12]

1981年(昭和56年)5月1日には、平鹿郡平鹿町平鹿町立図書館が開館[13]。平鹿郡内では、横手市立図書館に次ぐ公立図書館となった。また、十文字町立図書館1989年(昭和64年)に、雄物川町立図書館1992年(平成4年)に、増田町立図書館増田ふれあいプラザ内に1995年(平成7年)[14][15]大森町立図書館が大森総合学習センター内にて2000年(平成12年)1月30日[16]に開館している。

1983年(昭和58年)8月、横手市立図書館は建て替えのため一時的に朝倉小学校の旧校舎へ移転、1984年(昭和59年)11月12日に現在の建物で再開館した[11]。新図書館の設計アドバイザーは菅原峻[17]石坂洋次郎の長編小説である『山と川のある町』にちなみ、「山と川の見える図書館」のコンセプトのもと建設された。これは当時の市長が新図書館のイメージとして掲げていたもので[17]横手川と愛宕山を臨む縦5.7m、横7.5mの大窓が設けられた[18][19]

2005年(平成17年)10月1日、〈旧〉横手市と、平鹿郡に属していた全町村が合併し、〈新〉横手市が発足した。これにより、新たに「横手市立図書館」が発足し、各図書館は「横手市立◯◯図書館[注 3]」へと改称した。

2013年頃、大雄図書館および山内図書館が大雄公民館図書室および山内公民館図書室となり、各公民館併設の施設となった[20]。また、横手市増田まんが美術館に併設する形で、複合施設「増田ふれあいプラザ」内に開館した増田図書館が、2016年(平成28年)7月に横手市役所増田地域局内へと移転した。翌年である2017年(平成29年)11月1日には平鹿図書館が、移転・新築した横手市役所平鹿地域局内へと移転した[21]

2024年(令和6年)3月2日より、休館中の横手図書館を除いた5図書館で、図書の自動貸出機の運用が開始した[22]。貸出機の上に本を置くことで、本に貼付されたICタグを機械が読み取り、自動で手続きが完了する仕組みである[22]。ICタグを用いた複数冊が同時に読み取り可能な貸出機の導入は、県内では当市が初だという[22]。またこれに加え、マイナンバーカードやスマートフォンを図書館カードの代替として利用できるサービスも開始した[23]

横手図書館の駅前移転

2004年(平成16年)2月、横手市立図書館の館長OB会が「横手市立図書館振興のための提言書」を市に提出した[24]。1983年に竣工した横手市立図書館は、敷地・施設狭隘でかつ駐車場も少ない(4台分のみ[25])ことから、2003年(平成15年)に秋田県が策定した「あきたLプラン15」内「あるべき図書館の姿」にて示された基準値を下回っている実情にあった[24]。提言書では、駅前再開発の一環として新図書館を建設するとの話題もあることから、市の実情に合った新図書館の構想が示された。ここに記載された駅前再開発については2011年(平成23年)に完工しているが、そこに図書館は建設されていない[注 4]

旧ユニオンビル

2018年(平成30年)、市は横手駅東口第二地区第一種市街地再開発事業の構想にて、図書館を核とした公益複合施設を整備する方針を示した[18]。既存の横手図書館を移転し、新しい公益施設内に附設するという計画で、2019年(平成31年)2月には、整備に関する具体的構想を示すが、市民との議論が行われていなく、進め方が拙速であるとの議会内からの批判があったことなどを踏まえ[26][27]、市は同年3月に市民との意見交流会を実施し、翌月には市民に対するアンケートを実施した[18]

再開発準備組合を経て、2020年令和2年)6月に横手駅東口第二地区再開発組合が設立され、2021年(令和3年)より工事に着工した[28]。再開発事業自体の総事業費は約110億円で、事業期間は2020年度から2025年度まで[28]。公益施設は「A棟(公益施設棟)」とされており、建設場所はJR横手駅東口に立地する旧ユニオンビル跡地(北緯39度18分38.51秒 東経140度33分42.89秒 / 北緯39.3106972度 東経140.5619139度 / 39.3106972; 140.5619139[29]

2022年(令和4年)8月より、公益施設の準備状況に関する市民説明会が市内各所で行われ、施設の概要などを示した[30]。また、同時期に公益施設の愛称の公募を始め、1,876点の応募の中から、同年12月22日の横手市定例記者会見にて、愛称を「Ao-naあおーな)」と決定した旨を発表した[31]。同市出身の東京都在住の人物による案であった[31]

2023年(令和5年)3月に公開された整備概要及び運営方針によれば、施設の配置は以下のようになる[18]

施設面積(m2主な施設
3階横手市立横手図書館483.93児童図書フロア
2階1,610.11一般図書フロア
中2階402.59閉架図書フロア
1階コミュニティスクエア1,733.58オープンスペース、ティーンズエリア、屋内外アクティブエリア、ラウンジエリア、スタジオ

移転作業を本格的に開始するため、横手図書館は2023年10月2日をもって一時休館となる予定であったが[32]、同年7月7日に同再開発事業にて整備されていた「B-1棟(民間ビル棟)」にて不良工事が発覚したことにより[33][34]、横手図書館の入居する公益施設棟も工事が中断し[35]、休館・移転は先延ばしとなった[36][25]。中断していた工事は同年9月25日に再開[37]。当初の予定では2024年春に開館する予定であった[32]が、2024年9月14日に延期、移転に伴う横手図書館の休館は2024年3月1日からとなった[38][25]

移転作業中の代替サービスは、横手市交流センターY2(わいわい)ぷらざ内にて2024年3月4日より行われる[39]。従来のY2ぷらざの図書サービスに加え、横手図書館外の5館から集めた本の貸出や、雑誌の閲覧、利用者登録の受付などが行われる[39]

移転作業を終えた後、元の建物は改修工事を施した上で学童保育用の施設として使われる予定である[25]

各館

名称住所蔵書数年間貸出数年間入館者数開館
横手市立横手図書館(休館中)〒013-0021
秋田県横手市大町7番9号
90,11687,02350,841人1903年
横手市立増田図書館〒019-0701
秋田県横手市増田町増田字土肥館173番地
(増田地域局内)
37,09234,12120,353人1995年
横手市立平鹿図書館〒013-0105
秋田県横手市平鹿町浅舞字覚町後138番地
(平鹿地域局内)
56,90949,42928,159人1981年
横手市立雄物川図書館〒013-0205
秋田県横手市雄物川町今宿字鳴田133番地
113,92236,02316,740人1992年
横手市立大森図書館〒013-0516
秋田県横手市大森町字東中島141番地2
(大森総合学習センター内)
58,34527,23412,240人2000年
横手市立十文字図書館〒019-0522
秋田県横手市十文字町字西上24番地1
70,94739,62939,294人1989年
山内図書室〒019-1108
秋田県横手市山内土渕字二瀬8番地4
(山内地域局内)
3,9441,276-
大雄図書室〒013-0461
秋田県横手市大雄字三村東18番地
(大雄地域局内)
6,1322,352-
横手市交流センター
「Y2(わいわい)ぷらざ」
図書・地域情報コーナー
〒013-0036
秋田県横手市駅前町1番21号
-2,888-2011年
総計437,407279,975167,627人
2022年(令和4年)度の統計[1]

利用案内

利用カード(一部加工)

館外貸出は横手市内在住または通勤・通学者が対象(2024年9月の新公益施設・横手図書館開館後は、市内外在住に関わらず利用登録ができるようになる[18]。)。貸出には利用者登録が必要で、これは市内各図書館で受付を行っている[40]。利用者登録の際に図書館利用カードが発行され、そのカードを用いて貸出が行われる。カードは全館共通で、市内の各図書館で利用可能[40]。カードの他、スマートフォンで図書館公式サイトもしくはMINEBAアプリ[注 5]を開きバーコードを表示することでカードの代わりとして利用することができる[23]。貸出は窓口もしくは自動貸出機[22]にて、返却は市内の各図書館(借りた場所に関わらず可能)の窓口や、ブックポスト横手市交流センター「Y2(わいわい)ぷらざ」1階にある「図書・地域情報コーナー」内窓口にて可能[40]

図書館利用カードとは別に、中学生以上の利用者を対象とした「読書手帳」と呼ばれる読んだ本を記録する手帳や、小学生以下の利用者を対象とした「満点カード」と呼ばれる貸出図書冊数に応じて得点が得られるカードが任意で利用できる[41]。満点カードは100点ごとに「満点賞」が授与される他、各図書館に掲示される[41]

館外貸出

  • 図書、雑誌:最大10冊、14日間(2週間)貸出可。
  • 視聴覚資料:最大2点、7日間(1週間)貸出可。
    • 視聴覚資料についてはブックポストではなく貸し出された図書館の窓口に返却する必要がある。
    • 団体[注 6]であれば最大50冊、30日間(1ヶ月)貸出可(図書、雑誌のみ)

満点カード

  • 利用条件:小学生以下で、利用者登録を済ませていること。
  • 得点:図書1冊貸出につき1点。
    • 100ページを超える図書については、100ページごとに1点。(1日ごとに10冊まで。)

利用時間

  • 開館時間:10:00 - 18:00(横手図書館は19:00閉館、土・日・祝日は一律18:00閉館)
  • 休館日:水曜日(横手・雄物川・十文字図書館のみ)、火曜日(増田・平鹿・大森図書館のみ)、毎月最初の平日、年末年始(12月29日から1月3日)、特別資料整理期間(年に10日以内で実施される)

主な取り組み

おはなし会

毎月1回のペースで、幼児から小学生向けの読み聞かせ紙芝居が各図書館で行われている[42]。横手図書館では「おはなし大すきの会」、増田図書館では「おはなしカランコロンますだ」、雄物川図書館では「れんげ草の会」、大森図書館では「大森おはなし会」、十文字図書館では「おはなしぽぽポ」、平鹿図書館では図書館司書が、読み聞かせを行っている。

日曜子ども図書館

1977年(昭和52年)6月12日に横手市立図書館が主体となり始まった事業で、子どもたちに本を貸し出して読んでもらうことを目的としている[43]。市内の各公民館の一隅に本棚を設置し、毎週日曜日(第三日曜日は除く)に公民館長や地域の代表者によって貸し出しが行われた[44]。初めは八王子・金沢・境町に開設され、1987年(昭和62年)までの10年間で30館に展開した[43]。日曜子ども図書館への配本数としては、1984年(昭和59年)に20,409冊、1998年(平成10年)には42,359冊、2004年(平成16年)には50,640冊へ上った[44]

横手市立図書館にも児童図書コーナーは設置されていたが、児童利用者の約83パーセントが横手南小学校児童であったため、他の市内小学校児童にも広く図書館サービスを提供するためといった主旨があった[44]

日曜子ども図書館では、市内各所の児童に対して本を読む機会を与えた他にも、利用する児童のためのレクリエーションを実施したり、児童らのさまざまな相談に乗るなどしていた[44]

2005年(平成17年)9月、当初の目標を達成したため日曜子ども図書館は事業終了した[44]

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 横手市史編さん委員会『横手市史 昭和編』横手市、1981年。 
  • 日本図書館協会 編『近代日本図書館の歩み―日本図書館協会創立百年記念〈地方篇〉』日本図書館協会、1992年。ISBN 4-8204-9123-7 
  • 横手市編『横手市史 通史編 近現代』横手市、2011年。 

関連項目

外部リンク