LARME

日本の雑誌

LARME』(ラルム)は、株式会社LARMEが発行する女性向けファッション雑誌[1]。コンセプトは「甘くてかわいい女の子のファッション絵本」[1][2]。10代後半から20代の女の子をターゲットとして、2012年9月徳間書店から創刊された[3]創刊号、002号が即日重版となるなど異例の売り上げを記録したが[2]2020年3月の045号をもって休刊[4]。同年9月に株式会社LARMEから復刊した[4]。初代編集長及び、現編集長は中郡暖菜[4]

ラルム
LARME
ジャンルファッション
読者対象10代後半 - 20代の女性
刊行頻度季刊隔月刊→季刊
発売国日本の旗 日本
言語日本語
出版社徳間書店→株式会社LARME
発行人川田修→金箱隆二→中郡暖菜
編集長中郡暖菜→中山剛介→板倉由佳→鍬守未希→中郡暖菜
刊行期間2012年9月 -
姉妹誌PECHE(ペシェ)
ウェブサイトhttps://www.larme.co/
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歴史

初代編集長の中郡暖菜は、大学生の頃から5年間、インフォレスト社編集者として過ごし、『小悪魔ageha』の編集長・中條寿子の元で働いていた[2][5][6][7]。当時は後のLARMEに通じるような絵本っぽいストーリー性のある企画を作っていたという[2]。母親に病気が見つかったことをきっかけに、自分の作った雑誌を見てもらいたいという思いが芽生え、新たな雑誌を立ち上げることを決意[5][7]。編集長にも背中を押されとんとん拍子で創刊が決まったものの、編集長の退社によりその話が流れてしまう[5]。本来であれば、2012年3月に『小悪魔ageha』の姉妹雑誌として『LARME』という雑誌が出る予定だった[8]。気持ちが前に進んでいた中郡は、他の可能性を探るためすぐにインフォレスト社を退社した[5]

退社後、中郡は徳間書店に企画書を持ち込んで採用され、26歳で同社史上最年少の編集長となる[5][6]。初めは季刊誌としてのスタートだった[9]。当時について、中郡は次のように述べている。

焦りはありましたが、自分のやりたい雑誌を作るということにしか関心がなく、他の道はまったく考えていなかった。お金もなかったけれど、困ったらバイトでもすればいいと割り切っていたし、だめならまた他の出版社に持ち込もうと思っていました。 — 中郡暖菜[5]

002号までは編集部員が他にいなかったため、モデル探しからリース依頼まで全てひとりで行っていた。インフォレスト社が円満退社ではなかったことから、縁のあった事務所やカメラマンに声をかけることができず、一から開拓した[9]

創刊号(001号)、002号が即日重版、003号が10万部、004号が15万部と好評な売れ行きを見せ、2013年5月17日発売の004号から隔月刊(奇数月)になることが決定[2]。スタッフも1年で10人ほどに増えた[6]

2016年9月17日発売の024号(2016年11月号)を最後に、中郡が編集長を退任、徳間書店を退社[4]。その理由について、中郡は後に次のように語っている。[10]

いろいろ言えないこともあるのですが(笑)、簡単に言うと『LARME』が大きくなりすぎてしまい社内政治に巻き込まれた、という感じです。最初は編集長の私の判断で何でも進められていたのに、規模が大きくなるにつれて会社のいろんな部署の意思が入ってくるようになって。私はフリーの編集者として編集長契約を結んでいたのですが、『編集長が社員じゃないと困る』ということで正社員になった時期もありました。そのときに雑誌の部数を決める販売部や、“会社の意向”という大きな壁にぶつかり、難しさを感じました。 — 中郡暖菜[10]

中郡退任後、3人が編集長を務めたが[11]、2020年3月17日に発売の045号(2020年5月号)をもって休刊[12][13]。2020年6月5日、徳間書店公式サイトにて、株式会社LARME(代表取締役社長:中郡暖菜)[注釈 1]に雑誌『LARME』の事業を譲渡したことが発表された[15]。『LARME』の休刊は2020年1月に決定しており、その際に編集部から中郡宛に連絡があったという[4]。「中郡さんが運営や政策をするなら出資する」といった周囲の声に後押しされ、中郡は2020年3月に株式会社LARMEを設立、徳間書店から事業を譲り受けた[6][注釈 2]

2020年9月17日発売の046号(2020年号)から季刊誌として復刊[4]。復刊号となった046号は、前号の3倍以上の売り上げを記録し、完売した[17]。最新号は2024年3月18日に発売された060号[18]

特色

「甘くてかわいい女の子のファッション絵本」をコンセプトとし[1][2]、作り込んだ甘めの世界観を特徴とする[9]。『LARME』という名前はフランス語で「」の意。LARMEが涙の代わりとなって女の子を癒やせる存在になれたら、という思いが込められている[19]

2014年のインタビューで中郡は、「コーディネートで大切にしているのは『少女感』。セクシーや格好いいではなく、小さな女の子がおめかししているようなイメージ」と語っている[20]。『LARME』では、異性の目を気にしたモテよりも、自分たちの世界を重視しており[21]、誌面上にも男性モデルは殆ど登場しない[1][20]

また、「雑誌というより、写真集や本みたい」と口にする読者もいるほど[20]、写真や紙にもこだわっている[9]。あえてフィルムで撮影したり、ざらついて見える加工を施したりしているという[20]。飾っておきたくなる本を目指しており[9]、人物を小さくレイアウトすることもある[2]

復刊後もターゲット層は変わらず10代から20代の女の子とする一方、トレンドを取り入れたスタイルを提案していくとしている[4]。2020年のインタビューで中郡は、復刊にあたってこれまでの世界観を壊さなければならないと最初に決めた、と語っている。その理由として「休刊という道を選ばねばいけなくなるほど、世の中から求められているものとの乖離があったということ」をあげている[11]

モデル

創刊号(001号)の表紙は渡辺麻友AKB48)と白石麻衣乃木坂46)が務めた。当時としては珍しかった女性アイドルのレギュラーモデル起用を積極的に行っており、『LARME』をきっかけに活躍の幅を広げる事例も見られた[11]

中郡は2013年のインタビューでモデルの選出基準について尋ねられた際、共通するのは”甘くてかわいい”雰囲気で、「個人的に目が大きい子が好きなので、そういう子が多いかもしれませんね」と述べている[2]。2017年のインタビューでは、「5年前に当時の女の子の『なりたい』と思う人物像を考えた時に、『アイドル』と『ハーフ』と『ギャル』だと思って。その3つの要素を全部入れようと決めたんです」と述べ、それら3つを全て同じバランスにしたかったと語る。また、それらに共通するのは”媚びない”姿勢だと分析している[7]。アイドル以外のモデルもお人形のような女の子が多く、他のファッション誌と比べて笑顔が少ないことが特徴である[1]

復刊号である046号の表紙をインフルエンサーなえなのが飾り、一部で反発を生んだ[1]。なえなのの起用について中郡は次のように述べている。

『LARME』ってこうだよね、っていう意識がない子のほうが良いのかなと。その意識が働いてしまうと変に意識したり、しばられたりしちゃうじゃないですか。変化していけない雑誌のほうが弱いし、かっこ悪いと思うから。新しく変化して、新しい世界に届ける。新規ファンを獲得していかないと、雑誌が広がっていかない。なえなのちゃんの表紙を「LARMEっぽくない」って言う意見は目にしましたけど、私からすればそもそも最初に創刊してその時のLARMEらしさのようなものを作った私も『LARME』が何なのかはずっと分からない。雑誌はそのときそのときで作っていくものなので、時代と共に変化していくものだと思っているからです。 — 中郡暖菜[11]

表紙の最多人数は7人で、060号のFRUITS ZIPPER[18]

歴代表紙モデル一覧

番号発売日名前よみ備考
0012012年9月14日渡辺麻友わたなべ まゆAKB48の元メンバー(3期生)
白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0022012年12月17日小嶋陽菜こじま はるなAKB48の元メンバー(1期生)
0032013年3月16日菅野結以かんの ゆい
白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0042013年5月17日渡辺美優紀わたなべ みゆきNMB48の元メンバー(1期生)
島崎遥香しまざき はるかAKB48の元メンバー(9期生)
0052013年7月17日瑛茉ジャスミンえま じゃすみん
逢沢りなあいざわ りな
黒瀧まりあくろたき まりあ
0062013年9月17日2013年11月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0072013年11月16日2014年1月号菅野結以かんの ゆい
0082014年1月17日2014年3月号黒瀧まりあくろたき まりあ
AMOあも
0092014年3月17日2014年5月号逢沢りなあいざわ りな
0102014年5月17日2014年7月号中村里砂なかむら りさ
菅野結以かんの ゆい
0112014年7月17日2014年9月号AMOあも
0122014年9月17日2014年11月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
中村里砂なかむら りさ
0132014年11月17日2015年1月号中村里砂なかむら りさ
0142015年1月17日2015年3月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0152015年3月17日2015年5月号渡辺美優紀わたなべ みゆきNMB48の元メンバー(1期生)
中村里砂なかむら りさ
0162015年5月16日2015年7月号中村里砂なかむら りさ
0172015年7月17日2015年9月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0182015年9月17日2015年11月号逢沢りなあいざわ りな
菅野結以かんの ゆい
0192015年11月17日2016年1月号西もなかにし もなか
中村里砂なかむら りさ
0202016年1月16日2016年3月号渡辺美優紀わたなべ みゆきNMB48の元メンバー(1期生)
0212016年3月17日2016年5月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0222016年5月17日2016年7月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0232016年7月16日2016年9月号齋藤飛鳥さいとう あすか乃木坂46の元メンバー(1期生)
0242016年9月17日2016年11月号中村里砂なかむら りさ
0252016年11月17日2017年1月号齋藤飛鳥さいとう あすか乃木坂46の元メンバー(1期生)
白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0262017年1月17日2017年3月号黒瀧まりあくろたき まりあ
0272017年3月17日2017年5月号中村里砂なかむら りさ
0282017年5月17日2017年7月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0292017年7月15日2017年9月号吉木千沙都よしき ちさと
0302017年9月16日2017年11月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0312017年11月17日2018年1月号渡辺梨加わたなべ りか櫻坂46(当時は欅坂46)の元メンバー(1期生)
0322018年1月17日2018年3月号中村里砂なかむら りさ
0332018年3月17日2018年5月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0342018年5月17日2018年7月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0352018年7月17日2018年9月号吉木千沙都よしき ちさと
0362018年9月15日2018年11月号吉木千沙都よしき ちさと
中村里砂なかむら りさ
0372018年11月16日2019年1月号渡辺梨加わたなべ りか櫻坂46(当時は欅坂46)の元メンバー(1期生)
0382019年1月17日2019年3月号齋藤飛鳥さいとう あすか乃木坂46の元メンバー(1期生)
0392019年3月15日2019年5月号吉田朱里よしだ あかりNMB48の元メンバー(1期生)
0402019年5月17日2019年7月号白石麻衣しらいし まい乃木坂46の元メンバー(1期生)
0412019年7月17日2019年9月号山本舞香やまもと まいか
0422019年9月17日2019年11月号佐藤ノアさとう のあ
吉木千沙都よしき ちさと
中村里砂なかむら りさ
0432019年11月15日2020年1月号中村里砂なかむら りさ
0442020年1月17日2020年3月号黒瀧まりあくろたき まりあ
中村里砂なかむら りさ
吉木千沙都よしき ちさと
山本舞香やまもと まいか
0452020年3月17日2020年5月号吉木千沙都よしき ちさと
中村里砂なかむら りさ
山本舞香やまもと まいか
0462020年9月17日2020年秋号なえなのなえなの
0472020年12月17日2021年冬号佐々木彩夏ささき あやかももいろクローバーZのメンバー
0482021年3月17日2018年春号佐々木彩夏ささき あやかももいろクローバーZのメンバー
齊藤なぎささいとう なぎさ=LOVEの元メンバー
0492021年6月17日2021年夏号景井ひなかげい ひな
佐藤ノアさとう のあ
なえなのなえなの
0502021年9月16日2021年秋号矢吹奈子やぶき なこHKT48の元メンバー(3期生)、IZ*ONEの元メンバー
0512021年12月17日2022年冬号鶴嶋乃愛つるしま のあ
0522022年3月30日2022年春号戦慄かなのせんりつ かなのfemme fataleのメンバー、悪魔のキッスのメンバー
頓知気さきなとんちき さきなfemme fataleのメンバー
0532022年6月17日2022年夏号齋藤なぎささいとう なぎさ=LOVEの元メンバー
0542022年9月16日2022年秋号佐々木彩夏ささき あやかももいろクローバーZのメンバー
0552022年12月16日2023年冬号なえなのなえなの
0562023年3月17日2023年春号齋藤なぎささいとう なぎさ=LOVEの元メンバー
0572023年6月16日2023年夏号かすかす
0582023年9月15日2023年秋号佐々木彩夏ささき あやかももいろクローバーZのメンバー
0592023年12月15日2023年冬号戦慄かなのせんりつ かなのfemme fataleのメンバー、悪魔のキッスのメンバー
0602024年3月18日2024年春号月足天音つきあし あまねFRUITS ZIPPERのメンバー
鎮西寿々歌ちんぜい すずかFRUITS ZIPPERのメンバー
櫻井優衣さくらい ゆいFRUITS ZIPPERのメンバー
仲川瑠夏なかがわ るなFRUITS ZIPPERのメンバー
真中まなまなか まなFRUITS ZIPPERのメンバー
松本かれんまつもと かれんFRUITS ZIPPERのメンバー
早瀬ノエルはやせ のえるFRUITS ZIPPERのメンバー

レギュラーモデルオーディション

2020年

2021年

2021年7月6日から開催[23]

2023年

2023年5月30日からミクチャにて開催[25]

影響・評価

『LARME』が創刊された2012年はギャル系や赤文字系の雑誌が多く、その中間にあたる雑誌がなかったという[2][9]。中郡は2013年のインタビューで、「こういった世界観に特化した雑誌がなかったこともあり、たくさんの方に支持していただけたのかなと思います」と分析している[2]

『LARME』から生まれた、あるいは拡散された流行も少なくはなく、その例として目の下を赤くした「うさぎメイク」や「ゆめかわいい」のイメージなどがあげられる[1]。004号でイギリス映画ロリータ』(1962年)をイメージとした特集を組んだ際には[2]、撮影当時には入手しづらかったギンガムチェック柄の服やハート型のサングラスが掲載後にブームとなり、多くのアパレルショップに並ぶこととなった[26]

2020年9月に復刊号である046号が発売されると、インフルエンサーのなえなのを起用した表紙や、歌舞伎町ロケ地とした量産型・地雷系ファッションの特集が話題となり、賛否の声が上がった[11]。藤谷千明は、親しみやすさを持つインフルエンサーや、ネット発のファッションである量産型・地雷系は生々しさがあり、従来のガーリーで幻想的な世界観を求めていた読者はショックを受けたのではないか、と分析する。また、LINE LIVEを舞台に開催された課金制のレギュラーモデルオーディションにおいて、オーディションを勝ち抜き撮影に参加したものの、雑誌に掲載されていないというアイドルのツイートが拡散され、一部のファンが不信感を持ったことについても指摘した[1]

研究

南里敬三は2020年の論文において、LARMEはメイクとコーデでモデルの固有性を消していると分析し、「彼女らは一人一人固有のモデルであるというより、女の子の”絵本”、或いは、”おとぎの国”の均質的住人と言うべきだろう」と述べている[27]。2022年の論文では、人生における苦悩の吐露はLARMEの基本路線であり、LARMEは復刊後その基本路線に立ち返ったと言える、と述べている[28]

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 南里敬三「ネットから見たファッション誌が売れない理由 GFL誌はそれをどう克服したか」『大分大学国際教育推進センター紀要』大分大学国際教育推進センター、2020年3月、194-219頁。 
  • 南里敬三「売れるファッション誌はまだ作れるのか 緊縮デフレ下の日本のファッション誌」『大分大学国際教育推進センター紀要』大分大学国際教育推進センター、2022年3月、61-114頁。 

外部リンク