SMARCA4

SMARCA4(SWI/SNF related, matrix associated, actin dependent regulator of chromatin, subfamily a, member 4)もしくはBRG1(BRM/SWI2-related gene 1)は、ヒトではSMARCA4遺伝子にコードされるタンパク質である[5]

SMARCA4
PDBに登録されている構造
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PDBのIDコード一覧

2GRC, 2H60, 3UVD, 5DKD, 5EA1

識別子
記号SMARCA4, BAF190, BAF190A, BRG1, MRD16, RTPS2, SNF2, SNF2L4, SNF2LB, SWI2, hSNF2b, CSS4, SWI/SNF related, matrix associated, actin dependent regulator of chromatin, subfamily a, member 4
外部IDOMIM: 603254 MGI: 88192 HomoloGene: 135927 GeneCards: SMARCA4
遺伝子の位置 (ヒト)
19番染色体 (ヒト)
染色体19番染色体 (ヒト)[1]
19番染色体 (ヒト)
SMARCA4遺伝子の位置
SMARCA4遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点10,961,001 bp[1]
終点11,065,395 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
9番染色体 (マウス)
染色体9番染色体 (マウス)[2]
9番染色体 (マウス)
SMARCA4遺伝子の位置
SMARCA4遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点21,527,465 bp[2]
終点21,615,526 bp[2]
RNA発現パターン




さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 RNA polymerase II cis-regulatory region sequence-specific DNA binding
ヌクレオチド結合
transcription coactivator activity
ATP-dependent activity, acting on DNA
RNA polymerase I core promoter sequence-specific DNA binding
helicase activity
transcription corepressor activity
protein N-terminus binding
histone binding
p53結合
転写因子結合
Tat protein binding
DNA polymerase binding
hydrolase activity, acting on acid anhydrides
ATPアーゼ活性
血漿タンパク結合
androgen receptor binding
lysine-acetylated histone binding
nucleosomal DNA binding
加水分解酵素活性
ATP binding
RNA結合
DNA結合
細胞の構成要素 nBAF complex

SWI/SNF complex
核質
npBAF complex
核小体
細胞核
細胞外空間
高分子複合体
生物学的プロセス positive regulation of glucose mediated signaling pathway
クロマチンリモデリング
regulation of transcription, DNA-templated
regulation of transcription by RNA polymerase II
positive regulation of transcription of nucleolar large rRNA by RNA polymerase I
negative regulation of androgen receptor signaling pathway
positive regulation of DNA-binding transcription factor activity
negative regulation of transcription by RNA polymerase II
transcription, DNA-templated
神経系発生
positive regulation of transcription, DNA-templated
positive regulation of Wnt signaling pathway
negative regulation of G1/S transition of mitotic cell cycle
negative regulation of cell growth
positive regulation of pri-miRNA transcription by RNA polymerase II
positive regulation by host of viral transcription
neural retina development
positive regulation of transcription by RNA polymerase II
beta-catenin-TCF complex assembly
nucleosome disassembly
negative regulation of transcription, DNA-templated
chromatin organization
interleukin-7-mediated signaling pathway
RNA polymerase I preinitiation complex assembly
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_001128844
NM_001128845
NM_001128846
NM_001128847
NM_001128848

NM_001128849
NM_003072

NM_001174078
NM_001174079
NM_011417
NM_001357764

RefSeq
(タンパク質)
NP_001122316
NP_001122317
NP_001122318
NP_001122319
NP_001122320

NP_001122321
NP_003063
NP_001361386
NP_001122321.1

NP_001167549
NP_001167550
NP_035547
NP_001344693

場所
(UCSC)
Chr 19: 10.96 – 11.07 MbChr 19: 21.53 – 21.62 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

機能

SMARCA4遺伝子にコードされるSMARCA4タンパク質はSWI/SNFファミリーに属し、ショウジョウバエのbrahmaタンパク質と類似している。このファミリーのメンバーはヘリカーゼ活性とATPアーゼ活性を持ち、遺伝子周辺のクロマチン構造を変化させることで特定の遺伝子の転写を調節していると考えられている。SMARCA4は巨大なATP依存性クロマチンリモデリング複合体(SWI/SNF複合体)の一部を構成する。この複合体は、通常はクロマチン構造によって抑制されている遺伝子の転写活性化に必要である。さらに、SMARCA4はBRCA1と結合するとともに、発がん性タンパク質CD44の発現を調節している[6]

SMARCA4(BRG1)は転写を活性化したり抑制したりする機能を果たす。BRG1は着床前期以降の発生に重要である。ノックアウト研究で示されているように、機能的なBRG1を持たない場合には胚は透明帯を破って孵化することができず、子宮内膜(子宮壁)への着床が阻害される。BRG1は精子の発生にも重要である。精子形成過程での減数第一分裂時には高レベルのBRG1が存在する。BRG1が遺伝的損傷を受けている場合、減数分裂は第一分裂前期で停止し、精子の発生阻害による不妊が引き起こされる。また、BRG1が平滑筋発生を補助することもノックアウト研究から示されている。BRG1がノックアウトされている場合、消化管の平滑筋は収縮性を欠き、一部のケースでは腸が不完全なものとなる。また、平滑筋発生におけるBRG1ノックアウトによる他の欠陥は、出生後の動脈管開存症などの心合併症である[7][8]

臨床的意義

SMARCA4(BRG1)は、がんで最も高頻度で変異が生じているATP依存性クロマチンリモデリング因子である[9]SMARCA4遺伝子の変異は、副腎[10]と肺[11]由来のヒトがん細胞株で最初に認識された。その後、髄芽腫膵臓がんやその他多くの腫瘍においてかなりの頻度で変異がみられることが明らかとなった[12][13][14]

がんにおけるBRG1の変異はミスセンス変異の選択性が異常に高く、ATPアーゼドメインを標的としたヘテロ接合型変異が高頻度で生じている[9][15]。変異は高度に保存されたATPアーゼ配列に集中しており[16]、ATP結合ポケットやDNA結合面など機能的に重要な表面に位置している[15]。こうした変異は優性に作用し、エンハンサー[15]プロモーター[16]領域におけるクロマチン調節機能を変化させる。

BRG1の変異はMYC遺伝子の状況依存的な発現変化と関係しており、このことはBRG1とMYCが機能的に関係していることを示している[11][15][17]。他の研究では、肺がんやその他の腫瘍種においてBRG1とレチノイン酸グルココルチコイドによる細胞分化との因果関係が示されており、BRG1はがん細胞による未分化状態の遺伝子発現プログラムの維持を可能にし、重要な細胞過程の制御に影響を与えている。このことは、一部の白血病に対しては有効なこれらの化合物を用いた治療が肺がんやその他の固形腫瘍に対しては効果が乏しいことの説明にもなっている[18]

抗がん剤に対する感受性や抵抗性におけるBRG1の役割は、ヒ素ベースの抗がん剤であるダリナパルシン英語版の作用機序の解明によって浮き彫りとなった。ダリナパルシンはBRG1のリン酸化を誘導し、クロマチンからの除去をもたらすことが示された。クロマチンから除去されることで、BRG1は転写コレギュレーターとして作用することができなくなる。その結果、細胞は保護酵素であるHO-1英語版を発現することができなくなる[19]

相互作用

SMARCA4は次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

関連文献

外部リンク