この項目では、日本で独占禁止法と略称される個別法について説明しています。法分野の総称については「独占禁止法」をご覧ください。 |
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 独占禁止法 |
法令番号 | 昭和22年法律第54号 |
種類 | 経済法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 1947年3月31日 |
公布 | 1947年4月14日 |
施行 | 1947年7月20日 |
所管 | (持株会社整理委員会→) 公正取引委員会 [官房/審査局/経済取引局] |
主な内容 | 私的独占、不当な取引制限、事業者団体、独占的状態、株式の保有、役員の兼任、合併、分割、株式移転、事業の譲受け、不公正な取引方法、適用除外、差止請求、損害賠償、公正取引委員会、犯則事件の調査 |
関連法令 | 商法、下請代金支払遅延等防止法 |
条文リンク | 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 - e-Gov法令検索 |
ウィキソース原文 | |
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私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(してきどくせんのきんしおよびこうせいとりひきのかくほにかんするほうりつ、昭和22年法律第54号、英語: Act on Prohibition of Private Monopolization and Maintenance of Fair Trade[1])は、私的独占、不当な取引制限および不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することを目的とする日本の法律である(同法1条)。
主務官庁は公正取引委員会事務総局官房で、経済産業省経済産業政策局産業組織課、消費者庁取引対策課および証券取引等監視委員会事務局取引調査課など他省庁と連携して執行にあたる。
同法は、こうした事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用および国民実所得の水準を高め、以って一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を促進するという政策目的[2]に基づき制定されている(同条)。1条の目的を達成することを任務とする公正取引委員会を置くと定める(同法27条1項)。
同法律には法令用語で言うところの「題名」は付されておらず、頭書の名称は制定時の公布文から引用したいわゆる「件名」である。独占禁止法ないし独禁法と略称されることも多い。
独禁法における主要な違反要件においては、単に行為要件(例:不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと)を満たすのみでは足らず、「競争を実質的に制限する」(競争の実質的制限)や「公正な競争を阻害するおそれ」(公正競争阻害性)を満たさなければならない。このうち後者を弊害要件という。
そして、弊害要件が満たされるためには、
のいずれかが必要とされている。
条文上は、私的独占や不当な取引制限においては競争の実質的制限が、不公正な取引方法においては公正競争阻害性が、規定されており、後者のほうがより緩い要件とされている。
「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもってするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを言う(2条5項)。
「排除」とは、他の事業者の事業活動の継続を困難にし、あるいは新規参入を困難にする行為をいう。不公正な取引方法に該当する手段が多いが、それに限定されるものではない。
「支配」とは、他の事業者の意思決定を拘束し、自己の意思に従わせることをいう。もっとも、ここでいう「拘束」とは、必ずしも相手方の意思に反することを要さないし、また、株式保有や役員派遣により事実上意思決定を支配できるようになった状態も「支配」に含まれる。
大部分の「私的独占」に当たる行為は「不公正な取引方法」にも該当するため、独自の意義付けは低いという見方が最近提唱されている。排除型については、一般指定15項がほとんど包含するし、支配型については、2条9項4号がほぼ包含する。もっとも、支配型については「不公正な取引方法」における課徴金制度が適用範囲が限定されたため、「私的独占」で事件処理をする意味が増している。
エンフォースメント(執行・実現方法)としては、以下がある。
「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義を以てするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう(2条6項)。
6条において不当な取引制限を内容とする国際的協定等が禁止されている。
典型的には談合がこれに当たる。
不当な取引制限の成立要件は、意思の連絡と、相互拘束・共同実行である。実務上は、意思の連絡がどの時点で成立したかの認定が争点になることが多い。
エンフォースメントとしては、以下がある。
「不公正な取引方法」とは、2条9項に定める以下の行為をさす。
1 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
2 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
3 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
4 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
5 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
6 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
6条において不公正な取引方法を内容とする国際的協定等が禁止されている。
エンフォースメントとしては、以下がある。
一般指定とは、「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号)のことを指す。
が規定されている。
特殊指定には、新聞業・物流・大規模小売店に関するものが存在する。
次に掲げる行為の禁止(8条)。
エンフォースメントとしては、以下がある。
次の各号の一に該当するときは合併をしてはならない(15条)。
次の各号のいずれかに該当する場合は、共同新設分又は吸収合併をしてはならない(15条の2)。
会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同株式移転(会社が他の会社と共同してする株式移転をいう。以下同じ。)をしてはならない(15条の3)。
会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合は、そのような行為をしてはならず、不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない(16条)。
会社は、他の会社の株式を取得又は保有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合は、その株式を取得又は保有してはならず、不公正な取引方法により他の会社の株式を取得又は保有してはならない(10条)。
原則として他の国内の会社の議決権のうち、銀行については5%、保険業については10%を超えて、議決権を取得又は保有してはならない(11条)。所謂5%ルール。
企業結合計画に関する事前相談に対する対応指針(平成14年12月11日公表)による事前相談が合併等の前に行われるのが通例である。申出の条件としては、具体的な計画に対する当事会社からのものでこれへの回答内容を公表することを条件として行われ、原則として90日以内に回答するものとされている。そして、問題がないと回答したものについては、届出後において法定の措置を採らないものとされている。
他の国内の会社の株式(持分を含む)を所有することにより事業支配力が過度に集中する会社を設立したり、そのような会社になってはならない(9条)。
「事業支配力が過度に集中する」とは、
をいう。端的に言えば、1つの純粋持株会社ないしは銀行持株会社が、複数の業種で市場において支配的地位を持つ大企業を傘下に収めている状態のことである。これにより大日本帝国時代の旧植民地だった大韓民国と異なり、大東亜戦争以前に存在した三井合名(現・三井不動産)や三菱合資(後継法人は存在せず)など、財閥の頂点にあった会社が株式を上場せず、同族企業として存在し続けることは、21世紀の現在でも出来ない。
この条項は、本法律の施行直後に追って成立した過度経済力集中排除法および財閥同族支配力排除法が実施法となっていた。
一定の持株会社や総資産2兆円以上の会社(子会社も含んで計算。ただし、銀行等は総資産8兆円以上)については毎事業年度終了後3月以内(設立時は30日以内)に公正取引委員会に報告書提出義務がある。
なお、例外については適用除外整理法に規定がある他、大手私鉄では大東亜戦争以前に成立した陸上交通事業調整法で指定された区域における事業者が集約され、新規参入が制限されている例もある。放送持株会社では、放送法により傘下に収められる放送局の数に制限が設けられている他、サービスエリアが重複する他系列の局を傘下に収めることはできないとされている。
エンフォースメントとしては、排除措置命令(株式の処分等)がある。
「独占的状態」とは、同種または類似の商品又は役務の国内で供給されたものの価額が一定の水準を超えた場合において、その商品役務等に係る一定の事業分野において,次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう(8条の4)
エンフォースメントとしては、公正取引委員会は、独占的状態があるとき、事業者に対し事業の一部譲渡その他競争を回復させるのに必要な措置を命じることができる。ただし、そのような措置によりその事業者の供給する商品等の供給費用が著しい上昇をもたらす程度に事業が縮小し、経理が不健全になり、又は国際競争力の維持が困難になると認められる場合、及びその商品等について競争を回復するのに足りると認められる他の措置が講ぜられる場合はこの限りでない。なお、公正取引委員会は審判開始手続に先立って公聴会を開催する義務が生じる。
平成17年改正後は排除措置命令(事前手続あり)が出た時点から効力が発生し、争う者は審判請求をおこなって審判手続に移行することとなった(供託金を積むことによる執行停止制度が存在)。
排除措置命令は現在行われている行為に対するのみならず、行為がなくなってから3年を経過していない場合は「特に必要があると認めるとき」に限り排除措置命令を出すことが可能となった。
確定した排除措置命令に違反した者には2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科が可能)に処せられ、法人については3億円以下の罰金(私的独占、不当な取引制限においては差止めを命ぜられた部分以外については、300万円以下)の両罰規定が設けられている。なお、確定前(確定後でも過料に処すことは可能)は50万円以下の過料に処せられる。
不当な取引制限(価格にかかるものや価格に影響を与える行為に限る)、私的独占(支配型で対価に関わらないものは除く)、不公正な取引制限(法で直接規定されている行為に限り、1号から4号違反(不当廉売等)は10年以内に排除措置命令を受けている者、5号は継続しているものに限定)に対し課徴金納付命令の制度が設けられている。
課徴金の額は、原則売上額の10%(小売業3%、卸売業2%)とされている。中小企業については4%(小売業1.2%、卸売業1%)である。ただし、排除型私的独占は6%(小売業2%、卸売業1%)。なお、継続期間が2年以内(他に要件あり)の行為については、20%減額、10年以内に違反行為をしている者や主導的に関与し悪質な行為に関与した者には50%増額の規定が設けられている(両方の要件に該当する場合は課徴金は100%増額となる。)。なお、罰金の確定判決がある場合は罰金額の半額が控除される。
1号から4号違反(不当廉売等)の不公正な取引制限は3%(小売業2%、卸売業1%)、5号違反(優越的地位の濫用)の不公正な取引制限は1%であり、上記の減増額規定の適用はない。
公正取引委員会に対して、規則に基づき不公正な取引制限に関して、調査開始日以前において単独で違反行為を申告した事業者について(他に要件あり)は、課徴金が1番目については全額免除、2番目については半額免除、3番目から5番目(ただし、4番目及び5番目については新事実を申告した場合に限る。)については30%免除となり、調査開始日(それ以降も含む)に申告した者でまだ5番目まで枠が埋まっていないとき(ただし調査開始日以後に申告を行った事業での減額は3者以内に限定)は30%減額となる。なお、調査開始日以後は違反行為を止めていることが条件である。
ちなみに、申告のFAX番号は03-3581-5599である。
公正取引委員会の告発がないと、主要な違反類型については処罰できない(96条)。
主要な違反類型として次のものがある。
なお、これらに罰則においては懲役と罰金を併科することができる。さらに、事業者団体の解散宣告や特許権の取消等の宣告をすることができる場合が存在する。
不公正な取引方法によってその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより「著しい損害」を生じ、又は生じるおそれがあるときに限り、その利益を侵害する事業者等に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(24条)。
私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法により排除措置命令(又は課徴金納付命令)がされた事業者は、被害者に対し無過失責任を負う(時効は命令等が確定後3年)(25条)。なお、この条に基づく損害賠償請求訴訟は、東京高等裁判所の専属管轄である。
また、独禁法25条によることなく、独禁法違反の行為が民法709条の不法行為に該当するときは、被害者は民法709条に基づいて損害賠償請求もできる。この場合は、被害者は故意過失をも立証しなければならない。
申告制度は45条に規定がある。
何人も、公正取引委員会に対し、この法律に違反している事実があると思料するときは、その事実を報告し適当な措置を求めることができ(1項)、公正取引委員会規則が定めるところにより、書面で具体的な事実を摘示したものであるときは、速やかにその結果を報告した者に対し通知しなければならない(3項)。
4項は職権調査についての規定である。
行政調査は47条に規定がある。
いずれも間接強制(罰則はあるが、直接強制はできない)。もっとも、1号の審尋はめったに使われず、大概任意の事情聴取という形が取られているようである(すなわち拒否する自由があるということである)。
審判手続は、独占的状態に対する措置に関するものを除いて、審判請求があってから開始する。原則として、委員会が指定する審判官による公開の審判手続きを経て、委員会による審決が出される。
審決取消訴訟は東京高裁の専属管轄で、事実認定に関して実質的な証拠がある場合は裁判所も拘束される。
立法論としては審判制度を廃止して、最初から裁判所で争えるようにすべきだとの意見もある。
審判制度は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)の施行(平成27年4月1日)により廃止された。ただし,同改正法附則第2条の規定により,平成27年3月31日までに排除措置命令及び課徴金納付命令に係る事前通知が行われた事件については,なお従前の例によることとされている[3]。
国税の犯則調査と類似の制度が設けられた。犯則調査の際は黙秘権が存在する(もっとも黙秘権告知義務無し)。
企業統合の際の事前相談制度等がある。