スーパーフォーミュラ

スーパーフォーミュラSUPER FORMULA)は、2013年から日本で開催されている自動車レースの1カテゴリー(格式は国際)。略称は「SF」。

スーパーフォーミュラ
カテゴリシングルシーター
国・地域日本の旗 日本
開始年2013年
ドライバー22 (2023年)
チーム12 (2023年)
コンストラクターサプライヤー
ダラーラ (SF23)
エンジン
サプライヤー
トヨタ
ホンダ
タイヤ
サプライヤー

Y

横浜ゴム
ドライバーズ
チャンピオン
日本の旗 宮田莉朋
チーム
チャンピオン
TEAM MUGEN
公式サイトスーパーフォーミュラ|SUPER FORMULA 公式WEBサイト
現在のシーズン

2013年から2015年は“全日本選手権スーパーフォーミュラ”、2016年から“全日本スーパーフォーミュラ選手権”として開催されている[1][2][3]

概要

2014年もてぎラウンド

フォーミュラカー(オープンホイール)を使用した四輪レースで、日本自動車連盟(JAF)公認の下、日本レースプロモーション(JRP)を運営母体とし、フォーミュラ・ニッポンを引き継ぐ形で2013年にスタートした。

全日本F3000選手権からフォーミュラ・ニッポン時代には“日本一速い男 決定戦”とも呼ばれ日本最高峰のカテゴリーとして扱われており、ランキング3位以内を獲得すればスーパーライセンスを取得できた時期もあり、ステップアップカデゴリーとしてフォーミュラ1(F1)ドライバーを輩出していた。だが年を追うごとに海外に拠点を移してF1を目指す日本人ドライバーが増えたこともあり、F1にステップアップするドライバーはほとんど見られなくなった。またリーマン・ショックによる経営への打撃でトヨタやホンダが相次いでF1から撤退したことから出場台数や観客数が減少傾向となった。

そこで2013年から国内という枠から脱却し、アジアのスタンダードフォーミュラを目指しアジアを中心にグローバル展開を進めるにあたり、現在の名称であるスーパーフォーミュラとして再スタートすることとなった。その関係で初年度の2013年に韓国インジェ・スピーディウムでの開催が予定されたが、最終的には中止となった[4]。また、2015年の概要発表会の際、当時のJRP社長である白井裕の口から「名実ともに世界の三大フォーミュラカーレースのひとつとして、F1インディカーと並び称されるカテゴリーにまで発展させることを目標」と述べ[5]、独立したカテゴリーの性格を強めていく方針を取ったこともあり、本カテゴリーと並び国内最高峰のレースであるSUPER GTとは異なり海外展開は見送られている。

2020年から全日本F3選手権を踏襲した全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権が下位カテゴリとして開催されている。

源流となる全日本F2000選手権発足から50周年を迎えた2022年に、社会環境との共存およびエンターテインメントの持続可能性を追求するプロジェクト『SUPER FORMULA NEXT50』(スーパーフォーミュラ ネクストゴー)を立ち上げている[6]

評価

改名当初は、F1で使用されるピレリ製タイヤやそのサーキットの経験を積めない事、スーパーライセンスを取得する条件を満たすまで(他のカテゴリより)時間がかかる[注 1]などの問題があった。同年に元F1ドライバーのヴィタントニオ・リウッツィナレイン・カーティケヤンが参戦するなど、レベルは充分高いとは言われるものの、やはりF1を目指す上では参戦する意義は薄いと見られていた。

ところがフォーミュラ・ニッポン時代から長らく参戦していたアンドレ・ロッテラーが、電撃的に2014年にF1のベルギーグランプリにスポット参戦した際に、日本のトップフォーミュラというキャリアの道筋を示して[7]から欧州でも注目が集まるようになった。2015年にはGP2王者のファビオ・ライマーが参戦を表明(後に彼の事情により撤回)、同じくGP2王者のストフェル・バンドーンが2016年、ピエール・ガスリーが2017年にF1のシートを確保するまで参戦し、フォーミュラレース界でも独特の存在感を示すようになった。加えてヨーロッパのジュニアカテゴリーの参戦資金が高騰している事から[注 2]、F2へ参戦できないドライバー[注 3]やF2以外でF1マシンに準じた経験を積めるカテゴリーという点で見直され、本カテゴリーの参戦を企図する海外勢のドライバーが増えつつある。

ただしF1参戦にはFIA F2、或いはF3の経験がないと不利な状況には変わりなく、前述のドライバーたちもF2(GP2)のタイトルを獲得し、すでにスーパーライセンスの発給条件を満たした上での参戦である為、F1目的での参戦という観点からは課題も残っている。一方でライセンスポイントが必要なかったり、必要であっても条件が緩いトップフォーミュラ(インディカーやフォーミュラEなど)へ行く上では、何かしらの事情でF1・F2のシートが得られないドライバーにとっては有力な選択肢になっているとも言える。後にインディカーに転戦するフェリックス・ローゼンクヴィストアレックス・パロウ(2021年・2023年インディカー王者)や、現在フォーミュラEに参戦しているニック・キャシディなどはその例である。

運営面での問題としては本カテゴリーも含め、審査委員会への報告内容に統一的な基準がない為、サーキット側の競技長の判断基準に委ねられているという、国内レース共通の課題を抱えている。スーパーフォーミュラのセッション中の判定に関しても、JRPがレースディレクターを派遣しているものの、主催者側(開催地のサーキット)が選定する競技長に決定権があり、その決定を審査委員会が承認するという形を取っている。その為、メディア対応は基本的にJRPが担っているものの、JRP側はレースの判定/裁定についての決定権がない為、無許可でのコメントや説明が出来ないという状況にある。この状況については、長年苦悩しているらしく、2016年にJRP社長へ就任した倉下明によれば、「三権分立の様な形で判定と裁定がされている為、メディアへの対応や最高責任者が明確化されていない」という課題[8]を抱えているとコメントしている。その一方で、SUPER GTが株式会社GTアソシエイションが必要に応じて対応するのに対し、スーパーフォーミュラ側は2019年シーズンの第3戦で、予選が赤旗中断のまま終了になった一件で、JRPが公式声明を出すといった対応を[9]した例を除けば、運営側がノーコメントで終わるケースも多い。また、その問題について事実上、手を付けられず、それらが明文化されないままレース運営が行われている状況であり、参加ドライバーから度々苦言を呈される点も課題となっている。

車両

SF14(シェイクダウンテストにて)

国際自動車連盟の国際モータースポーツ競技規則 (国際スポーツ法典) 付則J項による車両分類では、グループE部門IIのSSに属するフリーフォーミュラシングルシーターとされる。

2013年のみフォーミュラ・ニッポンで使用していたスウィフト・017.n(FN09)を改称した「SF13」に、3.4L V8 NAエンジンのトヨタ・RV8Kまたはホンダ・HR12Eを搭載した物を使用。

2014年からはダラーラ社のSF14[10]に、SUPER GT・GT500クラス用と基本設計が共通の2.0L 直4 直噴 ターボ[11]NRENippon Race Engine[12])のトヨタ・RI4A、またはホンダ・HR-414Eを搭載した。このNREには燃料流量を制限する燃料リストリクターが装着されており、通常時の出力は550~600馬力程度に抑えられている。またサーキットによっては安全を考慮し、通常よりも燃料流量が少なく設定されている。
燃焼効率を追求したいわゆるダウンサイジングターボの潮流の中に生まれたこのエンジン規格は、旧来のようにガソリンを際限なく消費してパワーのみを追求するターボではなく、限られたガソリン流量でパワーを追求することが求められており、希薄燃焼(リーンバーン)やプレチャンバー(副室)などの先端技術が駆使されている。2014年に通常時100kg/hであった燃料流量は2015年に95kg/h、2021年に90kg/hへと段階的に引き下げられているが、ほぼパフォーマンスを維持している[13]

燃料リストリクターには一時的に燃料流量を増加させる「オーバーテイク機能」(OTS、オーバーテイクシステム)がついており、ドライバーはステアリング上にあるボタンを押すことで作動させることができる。ただしOTSの使用には回数または時間の制限(2021年現在は合計で200秒間まで)があり、一度使用すると一定時間機能が使えなくなる(インターバルタイム)[注 4]。なおOTSの利用状況はマシンのロールフープ部分にあるLEDの表示に反映され、残り時間が20秒未満になると色が緑→赤に変化するなど、観客目線である程度の状況が判別できるようになっている[14]。また2022年までOTS使用中はLEDが高速点滅していたが、「前方のドライバーがミラーでOTSの使用状況を確認できるため、実際の追い越しにつながりにくい」ことが問題視され、2023年より点滅は取りやめられている[15]

当初はハイブリッドシステム「System-E」の搭載も計画され、エンジンについてはトヨタが、System-Eについてはホンダが、それぞれ基礎開発を担当[16]。しかし何回かテストは行なわれたが、実現はしていない。

2019年からはエンジンはそのまま、シャシーをダラーラ社のSF19に移行。車両性能そのものには大きな変更はないものの、安全対策の一つとしてコクピットを保護するHaloを導入。また、2021年から、いわゆる第5世代移動通信システム(5G)を導入し、全車のオンボード映像をネットでライブ配信する事を前提に、その為の機材を搭載出来るようなスペースを設ける予定[17]である。

タイヤは当初ブリヂストンワンメイクであったが、2015年をもって供給を終了[18]。2016年からは横浜ゴムが供給する事になり、ドライタイヤも2スペック開発されるようになった[2][19]。しかし2020年からドライタイヤは1スペック制に戻っている。

2014〜2016年の規定のF1マシンが従来よりスピードが低下していた事もあり、ドライバーの感想や走行データの比較では「スーパーフォーミュラのコーナリングスピードはF1よりも速い」と言われていた[20][21][22]。またコースの違いから単純には比較てできないものの、F1を基準としたラップタイム比では、より高出力なFIA-F2よりも速いというデータもある[23]

歴代チャンピオン

ドライバー・チームタイトル

ドライバー
(所属チーム/エンジン)
チーム
(エンジン)
2013年 山本尚貴
TEAM MUGEN/ホンダ)
TEAM MUGEN
(ホンダ)
2014年 中嶋一貴
(PETRONAS TEAM TOM'S/トヨタ)
PETRONAS TEAM TOM'S
(トヨタ)
2015年 石浦宏明
P.MU/CERUMOINGING/トヨタ)
P.MU/CERUMO・INGING
(トヨタ)
2016年 国本雄資
(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)
P.MU/CERUMO・INGING
(トヨタ)
2017年 石浦宏明
(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)
P.MU/CERUMO・INGING
(トヨタ)
2018年 山本尚貴
(TEAM MUGEN/ホンダ)
TEAM MUGEN
(ホンダ)
2019年 ニック・キャシディ
VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)
VANTELIN TEAM TOM'S

(トヨタ)

2020年 山本尚貴
(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)
DOCOMO TEAM DANDELION RACING

(ホンダ)

2021年 野尻智紀
(TEAM MUGEN/ホンダ)
TEAM MUGEN
(ホンダ)
2022年 野尻智紀
(TEAM MUGEN/ホンダ)
TEAM MUGEN
(ホンダ)
2023年 宮田莉朋
(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)
VANTELIN TEAM TOM'S

(トヨタ)

ルーキー・オブ・ザ・イヤー

  • ルーキードライバー(SFの決勝レース出走回数が積算で4戦未満のドライバー)の中で年間獲得ポイント最上位の選手が受賞。なお、2013年から2021年まではルーキーが3人以上いる場合、2022年は2名以上存在する場合に成立
ルーキー・オブ・ザ・イヤー
(所属チーム/エンジン)
2013年not held
2014年 野尻智紀
(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)
2015年 小林可夢偉
KYGNUS SUNOCO TEAM LEMANS/トヨタ)
2016年not held
2017年 ピエール・ガスリー
(TEAM MUGEN/ホンダ)
2018年 松下信治
(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)
2019年 アレックス・パロウ
TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)
2020年 大湯都史樹
(TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)
2021年 大津弘樹
Red Bull MUGEN Team Goh/ホンダ)
2022年 佐藤蓮
TEAM GOH/ホンダ)
2023年 リアム・ローソン
TEAM MUGEN/ホンダ)

シリーズ参戦したF1ドライバー

ドライバー参戦年SFでの年間成績F1参戦歴
佐藤琢磨20132013年18位2002-2008(ジョーダンBARスーパーアグリ
ナレイン・カーティケヤン2014-20182014年13位 2015年11位 2016年14位 2017年19位 2018年15位2005, 2011-2012(ジョーダン、HRT
ヴィタントニオ・リウッツィ20142014年16位2005-2007, 2009-2011(レッドブルトロ・ロッソフォース・インディア、HRT)
中嶋一貴2013-20212013年4位 2014年1位 2015年2位 2016年4位 2017年5位 2018年6位 2019年11位 2020年11位 2021年16位2007-2009(ウィリアムズ
小林可夢偉2015-2015年6位 2016年17位 2017年7位 2018年10位 2019年6位 2020年16位 2021年20位 2022年17位 2023年11位2009-2012, 2014(トヨタザウバーケータハム
アンドレ・ロッテラー2013-20172013年2位 2014年3位 2015年3位 2016年2位 2017年6位2014(ケータハム)
ストフェル・バンドーン20162016年4位2016-2018(マクラーレン
ピエール・ガスリー20172017年2位2017-(トロ・ロッソ、レッドブル、アルファタウリアルピーヌ
ピエトロ・フィッティパルディ20182018年22位2020(ハース
リアム・ローソン20232023年2位2023(アルファタウリ)

テレビ放送

レース中継

J SPORTSが決勝全戦を生中継しており、2014年からは予選の生中継も行っている。2017年からBSフジでも決勝の生中継(J SPORTSの実況と映像を使用)を開始[24]。2018年よりTAKUROGLAY)が作曲を担当した『流転』が中継のテーマ曲となっている[25]。2019年からBSフジの放送が、生中継から当日夕方の録画放送に変更となり[26]、J SPORTSの決勝生中継もBSフジの実況を使用。2021年からサーキットの場内実況がJ SPORTSでも使用されることになった[27]。また、BSフジは放送が当日深夜に移行。

またGYAO!インターネットでレース映像の無料配信を行っていた。

日本国外向けにはmotorsport.tvが2018年より決勝のライブ配信を行っている[28]。また2020年からはレッドブルが運営する独自の配信プラットフォーム「Red Bull TV」が予選及び決勝のライブ&オンデマンド配信に参入した[29]

2021年シーズンをもってBSフジでの放送及びRed Bull TVでの配信が終了し、新しいデジタルプラットフォーム『SFgo(エスエフゴー)』やYouTubeの公式チャンネルの強化といったデジタルコンテンツの強化が今後は図られる[30]。2023年シーズンからはABEMAが配信に参入し、決勝のみ全戦生中継を行う[31]

関連番組

2014年 - 2016年には、関係者をゲストに迎えてのトークとレースハイライトで構成した『スーパーフォーミュラTV』がフジテレビNEXTで放送されていた。また、BSフジのバラエティ番組カンニングのDAI安☆吉日!』で本シリーズを取り上げていた。2016年にはフジテレビ関西テレビで専門番組として『超速GO音』が放送され、フジテレビ On Demandでも視聴可能である[32]。他に、ドライバーや関係者を交えてレースの模様を伝えるBSフジの『スーパーフォーミュラ GO ON!』が2022年2月まで放送された。

2022年7月より、BSフジで新たに『GO ON! NEXT~サーキットで会いましょう~』が1時間番組として不定期に放送される(2022年は年4回放送の予定)。MCには日向坂46富田鈴花を迎える[33]。2023年はABEMAで『サーキットで会いましょう』が引き続き配信される。

2024年3月4日よりフジテレビ『FNN Live News α』にて毎週月曜にモータースポーツを扱うコーナー『Monday Motor SPORT』が開始され、レースなどの情報を取り上げる[34]

スポンサー

NEXT50 PARTNERS

2021年までは下記の通りスポンサーの細分化がなされていたが、2022年に全スポンサーが『NEXT50 PARTNERS』に統一された。

過去

シリーズパートナー

シリーズサポーター

プロモーションパートナー

ブロードキャストパートナー

協賛パートナー

脚注

出典

関連項目

外部リンク