マグワ

クワ科の植物の一種

マグワ(Morus alba)は、成長が早いクワの一種で、10-20mの高さまで成長する。ヒト程度の比較的短寿命の木であるが、250歳を超える個体もいくつか知られている[1]中華人民共和国中央部に自生し[2]アメリカ合衆国メキシコオーストラリアキルギスタンアルゼンチントルコイランインド、その他多くの国で栽培されたものが帰化している[3][4][5][6][7][8]

マグワ
分類
:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 angiosperms
階級なし:真正双子葉類 eudicots
:バラ目 Rosales
:クワ科 Moraceae
:クワ属 Morus
:マグワ M. alba
学名
Morus alba L., 1753
シノニム
  • Morus atropurpurea Roxb.
  • Morus chinensis Lodd. ex Loudon
  • Morus intermedia Perr.
  • Morus latifolia Poir.
  • Morus multicaulis (Perr.) Perr.
  • Morus tatarica L.
和名
真桑

の商業生産に必要なカイコを飼育するために、広く栽培されている。また、音速の半分という速さで花粉を射出することでも知られている[9]果実は、熟すと食用になる。

記載

葉と果実

若木では、の大きさは最大30cmの長さになり、深く複雑な裂片を持つ丸い形である。古い木では、葉の大きさは5-15cmで、裂片はなく、根元の部分はハート形であり、先端は丸か尖っており、葉縁は鋸歯状である。通常は温帯では落葉性であるが、熱帯では常緑のものもある。

は単性で尾状花序であり、雄花は2-3.5cm、雌花は1-2cmの長さである。通常、雄花と雌花は別の木に生じるが、1本の木に両性の花が生じることもある[10][11]。果実は、長さ1-1.5cmである。野生のものは深紫色でるが、栽培されたものでは、多くは白色から桃色になる。味は甘いが、強い風味を持つレッドマルベリークロミグワとは異なり、風味は弱い。果実を食べた鳥等により、種子は広い範囲に運ばれる[3][4][12]

科学的には、尾状花序から花粉を放出する際を含め、RPM(植物の急速運動)の事例として有名である。雄蕊カタパルトとして働き、25マイクロ秒の間に蓄えた弾性エネルギーを放出する。その結果、動きの速さは音速の約半分、610km/hに達し、植物界の既知の運動の中で、最も速いものとなっている[9]

分類

2つの変種が知られている[3]

  • Morus alba var. alba
  • Morus alba var. multicaulis

栽培

1200年頃の梁楷による作品。カイコの飼育箱の中にマグワの葉が置かれている。

中国では、4700年以上前から、カイコの飼育のためにマグワを栽培してきた。古代ギリシア古代ローマでもカイコの飼育のために栽培された。少なくとも220年には、ローマ帝国皇帝ヘリオガバルスは絹のローブを着用していた[13]。12世紀にはヨーロッパの他の国にも伝わり、15世紀にスペイン帝国に征服された後には、ラテンアメリカにも導入された[14]。2002年には、中国国内において6260km2がこの種のために用いられていた[4]

インド亜大陸西部から[4]アフガニスタンイランを経て南ヨーロッパに至る広い範囲で、1000年以上にわたり、カイコの飼育のために栽培されてきた[12]

最近では、北アメリカの多くの都市部に加えて、道端や植林地の端等の荒れた土地でも広く帰化しており、原生するレッドマルベリーと交雑している。いくつかの地域では広範な交雑が起きており、レッドマルベリーの長期的な遺伝的生存が危惧されている[15]

標高4000mまで生存でき、温帯の他、亜寒帯地域においても栽培されて広く帰化している。貧土壌にも耐えることができるが、弱酸性で水はけが良い砂質または粘土質のローム土を好む[14]

利用

桑の葉茶

葉は、カイコが好む餌として用いられる他、乾期の植物が少ない地域では、ウシやヤギ等の家畜の餌としても用いられる。大韓民国では、桑の葉茶(ポンイプチャ)が作られる。実も食用となり、しばしば乾燥させたりワインが作られる[4][12]

アメリカ合衆国では、造園用途で、絹生産のためのマグワからのクローンとして、果実をつけないマグワが開発されている。果実なしで木陰を作ってくれる鑑賞樹として用いられている[16]

シダレグワ(Morus alba f. pendula)は、鑑賞樹として人気が高い[17]。1800年代末から1900年代初めにかけて、デラウェア・ラッカワナ・アンド・ウェスタン鉄道ニュージャージー州内のいくつかの大きな駅では、この植物が植えられた。影ができることと甘い実を付けることから、アメリカ合衆国南西部の砂漠都市では、芝生に植えられる木として人気があった[18]。一方、花粉に悩まされる都市も多く、花粉症を増やしたとして非難もされた[19][20][21]

医療用途

クワノンG、モラシンM、ステポゲニン-4'-O-β-D-グルコシド、マルベロシドA等の様々な抽出成分が広範な薬効を持つと言われている[22][23][24][25][26][27][28][29][30][31][32]。マグワから抽出されるシアニジン-3-O-β-D-グルコピラノシド及びサンゲノンGは、動物モデルにおいて、中枢神経系に対するいくつかの効果が実験されているが、まだその効果を確認する臨床試験が必要である[33]

生理活性物質としてアルカロイドフラボノイドを含み、伝統中国医学でも用いられている[34][35]。研究により、これらの化合物は高コレステロール、肥満、ストレス等を減らす効果を持つことが示唆されている[36]

文化

  • 14世紀中国で書かれた『三国志演義』では、劉備の家に大きなマグワの木があったとされる。
  • 1986年の韓国の官能映画『桑の葉』は、この植物から名付けられた。
  • 中国語の成語「桑田碧海」は、物事が大きく変わる例えとして用いられる。

ギャラリー

出典

外部リンク

ウィキスピーシーズには、マグワに関する情報があります。