新性能電車の車両形式

新性能電車の車両形式(しんせいのうでんしゃのしゃりょうけいしき)では、1959年に称号改正された101系電車151系電車153系電車155系電車など以降の日本国有鉄道(国鉄)及び国鉄分割民営化により国鉄の車両を引き継いだJR各社が保有する新性能電車および貨物電車であるM250系形式番号の付与法則について記述する。

国鉄からJRへ継承されてきた書体
103系
JR西日本が導入した
モリサワ新ゴ書体
115系体質改善車
JR東日本特急「つがる」(E751系)の形式称号

形式標記

電車の形式称号は、1959年に称号改正された101系電車・151系電車・153系電車・155系電車など以降の新性能電車とそれ以前の旧形電車とで称号方式が異なる。なお、本節では前者について記載する。後者は国鉄旧形電車の車両形式を参照。

ただし、直流電車では旧形電車に属する吊り掛け駆動方式を採用した車両であっても、交直両用電車および交流電車についてはこの称号規程により形式が付与される。

記号事例 ABC-XXXX車両形式
1.国鉄車両およびJR各社
(ただし、2.とJR四国の新製形式を除く)
 485-96485系電車モハ485形電動車
2.JR東日本E351系電車以降の表記E231-21E231系電車クハE231形制御車
3.JR東日本の蓄電池駆動電車EV-E301-1EV-E301系電車EV-E301形制御電動車

このうち、○については、車両の車種を表す記号を表し、●については用途を、Aは電気方式、Bは車両用途・構造を、CについてはA・Bに付随して定義される数字を指し、Xは製造番号を表す。

車両の種類を表す記号

車両の種類を表す記号は、次のとおりである。

記号車種車種解説
クモ(Mc)制御電動車運転台と動力装置のある車両
モ(M)電動車動力装置(モーター)のある車両
ク(Tc)制御車運転台のある車両
サ(T)付随車運転台も動力装置もない車両

車両の設備を表す記号

単独で使用する場合が多い。

  • 合造車の場合は下記の順番で重ねて使用される。電車では285系のみで使用されているA・B寝台合造車は「ロハネ」と標記される。
  • 583系(寝台車と普通車)や485系「ニューなのはな」(お座敷グリーン車と普通車)のように座席に転換・可変機構が設けられている場合にはその中で高い等級のものが付けられる。
  • 記号文字の「ロ」及び「ハ」はもともと一等車から順にいろは順に付けた記号の「イ」(一等車)が廃止され(2013年に「ななつ星in九州」の客車として復活)「ロ」(二等車→一等車)と「ハ」(三等車→二等車)の記号が残ったものである。それ以外は用途設備及びその関連語の読みに由来するが、詳細は各車種の記事参照。
種別記号1969年5月10日以降1969年5月9日以前1960年5月31日以前
営業用イネ特別A寝台[注 1](g)--
ロネA寝台車[注 2](n)--
ハネB寝台車(h)二等寝台車-
グリーン車(s)一等車二等車
普通車二等車三等車
食堂車(ビュッフェ含む[注 3])(b)(d)
郵便車(w)
荷物車(x)
事業用職用車(z)
救援車(h)
配給車(a)

形式数字

形式数字は桁位置により次のような分類がある。また、JR化後に新製されたJR東日本の車両(一部の系列を除く)はこの数字の前にJR東日本の車両を示すE(Eastの頭文字)がつく。

  • 百位:電気方式
  • 十位:車両の用途
  • 一位:系列・形式の区別(おおむね連番)

百位

JR化以降は国鉄継承車を除く。

形式番号電気方式電気方式以外の差違
(ただし、一般的ではない)
国鉄時代[1]JR北海道JR東日本JR東海JR西日本[1]JR九州JR化時点1989年度以降
JR化当初2005年度以降
1直流設定なし直流直流
(1は設定なし)
直流
(3は設定なし)
直流直流
(1・2は2012年時点では設定なし)
抵抗制御VVVFインバータ制御新形式[注 4]
2電機子チョッパ制御界磁添加励磁制御
VVVFインバータ制御
3アルミ合金製車両、
筑肥線直流飛び地用
←に加え、特殊構造車、
界磁添加励磁制御[注 5]
VVVFインバータ制御新形式[注 6]
4交直両用
(6は設定なし)
交直両用設定なし交直両用
(4・5は設定なし)
交直両用
(4・7は2012年時点では設定なし)
交直両用
(2012年時点では設定なし)
抵抗制御
5特殊用途VVVFインバータ制御新形式[注 7]
6界磁添加励磁制御[注 8]、VVVFインバータ制御
7交流
(8は設定なし)
交流
(8は2012年時点では設定なし)
交流
(設定なし)
交流抵抗制御、サイリスタ位相制御
8直流
(2012年時点では設定なし)
特殊用途VVVFインバータ制御新形式[注 9]
9設定なし試作車設定なし予備設定なし試作車

十位

十位の用途は次のとおり。なお、JR化以降は国鉄継承車を除く。また、普通列車用については国鉄時代は接客設備や最高速度の違いなどにより、通勤形と近郊形に明確な区分をしていたが、JR化以降は電車でも一般形の区分が使われるようになった[注 10]

形式番号用途・構造による区分
国鉄時代JR化以降
制定当初1970年代以降[1]JR北海道JR東日本JR東海JR西日本[1]JR九州
JR化当初2005年度以降
0近距離用通勤形[注 11][注 12]設定なし一般形[注 13]設定なし通勤形・近郊形[注 14]通勤形・近郊形
(1・3は現時点では設定なし)
通勤形
1近郊形一般形近郊形
2一般形設定なし
3設定なし設定なし設定なし
4事業用・非旅客(荷物車郵便車)用※
5遠距離用急行形[注 15]設定なし特急形設定なし急行形
(設定なし)
通勤形・近郊形
(現時点では設定なし)
設定なし
6
7設定なし特急形特急形
8特急形特急形特急形
9試験車※事業用車・試験車・試作車・予備など※

なお、営業用車両から事業用車や試験車などに改造された場合は、元の車両の形式数字を踏襲するケースが多い。

一位

一位は、系列を表す場合奇数(1・3・5・7・9)を使用し、百位(電気方式)・十位(用途)の数字の組み合わせごとで、系列の登場した順に使用していない若い奇数から付番する[注 11][注 16]
また電動車(制御電動車も含む)の増備車のみが仕様変更などで形式(系列名)変更されても、制御機器などに変更がなければ制御車・付随車は形式を変更せずに増備される(485系のクハ481形・サロ481形、113系のクハ111形・サハ111形など)場合がある[注 17]
個々の車両形式を示す場合には次のとおり。
  • 電動車(制御電動車も含む)の場合
    • MM'ユニット方式の場合、主制御装置を搭載するもの(M車、Mc車)に奇数、無いもの(M'車)に1減じた偶数を付番する。この場合、原則として奇数形式が奇数向き東海道本線を基準として東京方)に配される[注 18]
    • 1M方式電動車の場合は、原則として奇数が付番される。
    • JR化後には同一の系列内にユニット方式と1M方式の電動車を含んだ系列の登場や系列内での組成変更などにより、奇数形式同士がユニットを組んだり、1M方式の電動車に偶数形式を与えるなど原則から外れた付番をされている場合もある。
  • 制御車の場合
    • どちら向きにも使用できるものは原則として奇数が付番される。この場合、奇数向き(東海道線で東京方先頭車)・偶数向き(同、神戸方)を車両番号の偶数・奇数や番台区分で区別することがある。
    • 向きが限定されるものは奇数向きを奇数、偶数向きを1減じた偶数とする場合が多い。
  • 付随車の場合
    • 原則的に基本形式には奇数が付番される。また、設備や搭載機器の違いにより1減じた偶数を付番することもある。
中には原則から外れたものもあり、最近では編成内で設備が異なる同形式車両が多いので、車両番号にオフセットを加えた番台区分で区別する場合がしばしば見られる。
この車両称号規程制定以前に新製されていた101系・151系・153系・155系については旧規程による形式番号(それぞれ90系・20系・91系・82系)を付与されて落成しており、この規程の制定により形式番号が改められた[注 19]

貨物電車の形式記号

ANN-XXXX
Mc250-1

このうち、○は車両の車種を表す記号、Aは電気方式、NNは最高速度、Xは製造番号を表す。

  • 車両の種類を表す記号
記号車種
Mc制御電動車
M電動車
T付随車
  • 電気方式
百位電気方式使用電動機
1直流直流電動機
2交流電動機
3その他
4交直両用直流電動機
5交流電動機
6その他
7交流直流電動機
8交流電動機
9その他
  • 最高速度
十位以下最高速度
00 - 49110km/h以下
50 - 99110km/h超

系列の一例

今までに登場した系列

  • ここでは消滅した系列や計画されていたが登場することがなかった系列についても記載している。
 十位
0123456789
百位1101系111系121系E131系141系151系161系 181系191系
103系113系[注 20]123系 143系153系163系[注 21] 183系193系
105系115系124・125
125系
 145系155系165系 185系 
107系117系E127系 147系157系167系 (187系) 
 119系E129系  159系169系 189系 
2201系211系221系E231系 251系E261系271系281系
203系213系223系E233系 253系  273系283系 
205系215系225系E235系 255系  285系 
207系E217系227系  E257系  287系 
209系    E259系  289系 
3301系
EV-E301系
311系321系E331系 E351系 371系381系 
303系313系323系  E353系 373系383系 
305系315系      385系 
          
          
4401系[注 22]411421系[注 23] 440441451系 471系[注 24]481系490491
E491系
403系[注 22]413系423系[注 23] 443系453系[注 24] 473系[注 24]483系[注 25]493系
E493系
 415系[注 11][注 26]   455系 475系[注 27]485系[注 28]495系
 417系   457系[注 27]  497
 419系      489系 
5E501系 521系E531系    581系591系
        583系[注 29] 
          
          
          
6     651系  681系 
     E653系  683系 
     E655系    
     E657系    
          
7701系711系721系
E721系
731系740E751系  781系790791
 713系 733系743   783系792
 715系 735系    785系 
 717系 737系    787系 
 719系      789系 
8EV-E801系811系821系       
 813系      883系 
 815系      885系 
 817系        
 BEC819系        
9901系        E991系
FV-E991系
         E993系
         E995系
          
          
  • ()で囲まれたものは、系列ではないが形式数字として存在するもの。
  • (斜体)で書かれたものは、計画のみで実際には製造されなかったもの。
  • 後ろに※のついている系列は、新製時に電動車(制御電動車を含む)ユニットのみが系列名と同じ形式数字および1減じた偶数を用いて登場している[注 30]もの。
  • サロ124形・サロ125形は113系に含まれる。
  • クハ411形・サハ411形は415系に含まれる。

JR四国の車両

JR四国が所有している車両のうち、JR化後に新製された車両(電車・気動車)には形式と車両番号が一体となった4桁の数字のみの車両形式が用いられており、電車には千位が5 - 8の形式番号が使用されている。

国鉄から継承した車両とJR他社から購入した車両およびそれらの改造車はほとんどが国鉄時代の形式の付け方のままであるが、2016年に121系の機器・台車を更新した車両は、分割民営化後にJR四国が導入した7000系との連結を考慮したがため7200系という4桁数字の形式が与えられている。[8][9]

その他の慣例

碓氷峠でEF63形電気機関車と協調運転する機能を装備
元になった系列の一位を「9」に変更:例:165系→169系、183系→189系、485系→489系
当てはまらない系列:上記3系列以外で一位が「9」の系列
国鉄時代に登場したアルミ車体の直流用電車
百位「3」:例:301系、381系
狭小トンネル路線用のパンタグラフ取付部の低屋根構造
800番台:例:クモハ100、モハ100、モハ114、モハ164
800番台が存在するが狭小トンネル路線を通過しないため低屋根構造ではない形式:モハ112、モハ414、モハE231
試作的なもの
900番台:例:101系900番台、165系900番台→169系900番台、201系900番台、207系900番台、901系→209系900番台、209系950番台→E231系900番台
9000番台:223系9000番台(クモハ223-9001→クモヤ223-9001)
試作車が900番台・9000番台を名乗らない形式:207系(JR西日本)量産先行車、415系1900番台、681系量産先行車→681系1000番台
当てはまらない系列:900番台を名乗るが試作要素がない系列:717系900番台

脚注

注釈

出典

関連項目