春分

二十四節気の一つ

春分(しゅんぶん、: vernal equinox)は、太陽春分点(天の赤道を南から北へ横切る点)を通過すること[1][2]二十四節気の第4にあたる。3月20日または3月21日になることが多い。

二至二分(冬至夏至、春分、秋分)を基盤とする暦法は春秋時代には存在していたが、「春分」の名は後に「二十四節気」における節気名として名付けられた[3]

概要

春分の概念

地球は約1年の周期で太陽の周りを公転しており、この太陽の年周運動を天球上で表したもの(太陽の通り道)が黄道である[1][2]。黄道と天の赤道は天球上の2箇所で交わっており、春分点は太陽が天の赤道を南から北へ横切る点で、ここを通過するのが春分(その属する日が春分日)である[1][2]

  • 春分:太陽春分点を通過した瞬間の時刻をその国の標準時で表したもの。春分時ということもある[4]。例えば2022年の春分は、日本時間では3月21日0時33分である[5]
  • 春分日:春分が属する日。時差のために国・地域によって1日の違いが生ずる。 例えば2022年の春分日は、日本では3月21日であり、中国では3月20日である。

昼夜の長さ

春分の日の太陽光の当たり方
太陽の動き

暦便覧』では春分について「日天の中を行て昼夜とうぶんの時なり」(ちなみに秋分については「陰陽の中分なれば也」)と記され、昼夜の時間が同じになるという意味であるが、これは江戸時代に庶民が用いた時法が季節による昼夜の時間の長短に応じて1単位時間の長さが変動する不定時法だったことによる[6][7]

現代では春分は太陽の黄経が0度となる瞬間と定義され、定時法が採用されているもとでは、昼夜がちょうど12時間ずつとはならない[7]

実際には昼の方が夜よりも長くなるが、これは次の理由による。

日の出と日の入の定義
太陽の上端が地平線と一致した時刻を日の出及び日の入と定義しているため[8]
大気差
大気による屈折で太陽の位置が実際より上に見えるため、太陽が上に見える角度の分、日出が早く、日没が遅くなる。屈折は太陽が地平線に近いほど大きくなる。国立天文台では、太陽が地平線付近にある時の、その角度を35分8秒角と見積もっている[8]

これらを合わせると日本において、日出は、太陽の中心が地平線から昇るより平均3分25秒早く、日没は、太陽の中心が地平線に沈むより平均3分25秒遅くなる。したがって、春分の日の昼の長さは平均12時間7分、夜の長さは平均11時間53分である。そして、実際に昼夜の長さの差が最も小さくなる日は春分の4日程度前になる[8]

暦法

中国では春秋時代に二至二分(冬至と夏至の二至及び春分と秋分の二分)を基盤とする暦法が用いられていた[3]

その後、二十八宿を天空上に配置するモデルが出現した[3]。二十八宿の角宿は春秋時代前期から戦国時代直前にかけて、春分日の日没時に真東に位置していたことが判明している[3]

ただ、「春分」という語はあくまでも後世の「二十四節気」における節気名である[3]

二十四節気

二十四節気は一太陽年を24等分(約15日間)にして季節の目安としたもので、春分は啓蟄清明の間にあたる[9]。当初は1年の長さをそのまま24等分する平気法(恒気法、常気法)が用いられたが、天保暦で太陽の視黄経が15度の倍数になる瞬間で定義する定気法(実気法)が導入された[10]。春分は太陽の視黄経が0度のときにあたる[9]

七十二候

春分の期間の七十二候は以下のとおり。

初候
雀始巣(すずめ はじめて すくう):雀が巣を構え始める(日本)
玄鳥至(げんちょう いたる):燕が南からやって来る(中国)
次候
桜始開(さくら はじめて ひらく):桜の花が咲き始める(日本)
雷乃発声(かみなり すなわち こえを はっす):遠くで雷の音がし始める(中国)
末候
雷乃発声(らい すなわち こえを はっす):遠くで雷の音がし始める(日本)
始雷(はじめて いなびかりす):稲光が初めて光る(中国)

春分日の日付

定気法による春分の瞬間(世界時、UT)と、日本中国での春分日の日付は表のとおり。日本における時刻はこの表の9時間後[11][12]、中国では8時間後となり、世界時15時台の2国の日付は異なる。

日本と中国との時差が1時間あるので、春分の時刻が世界時の15時台である場合(日本時間では0時台)には、日本と中国での春分日の日付がずれる。1989年、2022年、2051年、2055年がこれに当たる。

日時 (UT)日本中国
1966年3月21日01:533月21日3月21日
1967年3月21日07:373月21日3月21日
1968年3月20日13:223月20日3月20日
1969年3月20日19:083月21日3月21日
1970年3月21日00:563月21日3月21日
1971年3月21日06:383月21日3月21日
1972年3月20日12:213月20日3月20日
1973年3月20日18:123月21日3月21日
1974年3月21日00:073月21日3月21日
1975年3月21日05:573月21日3月21日
1976年3月20日11:503月20日3月20日
1977年3月20日17:423月21日3月21日
1978年3月20日23:343月21日3月21日
1979年3月21日05:223月21日3月21日
1980年3月20日11:103月20日3月20日
1981年3月20日17:033月21日3月21日
1982年3月20日22:563月21日3月21日
1983年3月21日04:393月21日3月21日
1984年3月20日10:243月20日3月20日
1985年3月20日16:143月21日3月21日
1986年3月20日22:033月21日3月21日
1987年3月21日03:523月21日3月21日
1988年3月20日09:393月20日3月20日
1989年3月20日15:283月21日3月20日
1990年3月20日21:193月21日3月21日
1991年3月21日03:023月21日3月21日
1992年3月20日08:483月20日3月20日
1993年3月20日14:413月20日3月20日
1994年3月20日20:283月21日3月21日
1995年3月21日02:143月21日3月21日
1996年3月20日08:033月20日3月20日
1997年3月20日13:553月20日3月20日
1998年3月20日19:553月21日3月21日
1999年3月21日01:463月21日3月21日
2000年3月20日07:353月20日3月20日
2001年3月20日13:313月20日3月20日
2002年3月20日19:163月21日3月21日
2003年3月21日01:003月21日3月21日
2004年3月20日06:493月20日3月20日
2005年3月20日12:333月20日3月20日
2006年3月20日18:263月21日3月21日
2007年3月21日00:073月21日3月21日
2008年3月20日05:483月20日3月20日
2009年3月20日11:443月20日3月20日
2010年3月20日17:323月21日3月21日
2011年3月20日23:213月21日3月21日
2012年3月20日05:143月20日3月20日
2013年3月20日11:023月20日3月20日
2014年3月20日16:573月21日3月21日
2015年3月20日22:453月21日3月21日
2016年3月20日04:303月20日3月20日
2017年3月20日10:283月20日3月20日
2018年3月20日16:153月21日3月21日
2019年3月20日21:583月21日3月21日
2020年3月20日03:493月20日3月20日
2021年3月20日09:373月20日3月20日
2022年3月20日15:333月21日3月20日
2023年3月20日21:243月21日3月21日
2024年3月20日03:063月20日3月20日
2025年3月20日09:013月20日3月20日
2026年3月20日14:453月20日3月20日
2027年3月20日20:243月21日3月21日
2028年3月20日02:163月20日3月20日
2029年3月20日08:013月20日3月20日
2030年3月20日13:513月20日3月20日
2031年3月20日19:403月21日3月21日
2032年3月20日01:213月20日3月20日
2033年3月20日07:223月20日3月20日
2034年3月20日13:163月20日3月20日
2035年3月20日19:013月21日3月21日
2036年3月20日01:013月20日3月20日
2037年3月20日06:493月20日3月20日
2038年3月20日12:393月20日3月20日
2039年3月20日18:313月21日3月21日
2040年3月20日00:103月20日3月20日
2041年3月20日06:053月20日3月20日
2042年3月20日11:523月20日3月20日
2043年3月20日17:263月21日3月21日
2044年3月19日23:193月20日3月20日
2045年3月20日05:063月20日3月20日
2046年3月20日10:563月20日3月20日
2047年3月20日16:513月21日3月21日
2048年3月19日22:323月20日3月20日
2049年3月20日04:273月20日3月20日
2050年3月20日10:183月20日3月20日
2051年3月20日15:583月21日3月20日
2052年3月19日21:543月20日3月20日
2053年3月20日03:463月20日3月20日
2054年3月20日09:333月20日3月20日
2055年3月20日15:273月21日3月20日
2056年3月19日21:093月20日3月20日
2057年3月20日03:063月20日3月20日
2058年3月20日09:033月20日3月20日
2059年3月20日14:433月20日3月20日
2060年3月19日20:373月20日3月20日

閏年の循環との関係

グレゴリオ暦による17世紀から24世紀までの日本の春分は表のとおり[13][14][15]

2024年の春分は3月20日[更新]

365日からの超過分が毎年蓄積し、4年に一度閏年でリセットされる様子がわかる(春分は閏日の挿入される2月末日より後のため、4で割り切れる年が先頭)。1924年から2091年3月20日3月21日だが、1923年までは3月22日もあり、2092年からは3月19日もある。

表 春分日(日本時間におけるもの)
年を4で割った余り確定困難な(日を跨ぐ)年
0123真夜中の前後10分
1583年 - 1599年20日21日21日21日
1600年 - 1631年20日20日21日21日
1632年 - 1663年20日20日20日21日
1664年 - 1699年20日20日20日20日1696(19-20日),
1700年 - 1731年20日21日21日21日1729(20-21日),
1732年 - 1763年20日20日21日21日
1764年 - 1795年20日20日20日21日1795(20-21日),
1796年 - 1799年20日20日20日20日
1800年 - 1827年21日21日21日21日
1828年 - 1859年20日21日21日21日1828(20-21日),
1860年 - 1891年20日20日21日21日
1892年 - 1899年20日20日20日21日1894(20-21日),
1900年 - 1923年21日21日21日22日
1924年 - 1959年21日21日21日21日1927(21-22日),
1960年 - 1991年20日21日21日21日
1992年 - 2023年20日20日21日21日
2024年 - 2055年20日20日20日21日
2056年 - 2091年20日20日20日20日
2092年 - 2099年19日20日20日20日
2100年 - 2123年20日21日21日21日
2124年 - 2155年20日20日21日21日
2156年 - 2187年20日20日20日21日2187(20-21日),
2188年 - 2199年20日20日20日20日
2200年 - 2223年21日21日21日21日2220(20-21日),
2224年 - 2255年20日21日21日21日2253(20-21日),
2256年 - 2287年20日20日21日21日2286(20-21日),
2288年 - 2299年20日20日20日21日
2300年 - 2319年21日21日21日22日2319(21-22日),
2320年 - 2351年21日21日21日21日
2352年 - 2383年20日21日21日21日2352(20-21日),
2384年 - 2399年20日20日21日21日

記念日

日本では春分の日という休日国民の祝日)となる。この日が休日となる歴史は1879年明治12年)から続いており、1948年昭和23年)に休日ニ關スル件(昭和2年勅令第25号)が廃止されるまでは春季皇霊祭という名称だった。

春分の日は、国立天文台の算出する定気法による春分日を基にして、前年の2月第1平日付の官報の公告(特殊法人等)欄で暦要項として公告される。なお、この暦要項は、閣議決定等はされず、閣議報告事項でもない[16]

イラン暦の元日、ノウルーズ(nawrūz)はちょうど春分の日に当たり、イランを中心に、中央アジアからアフリカまでに及ぶ広い地域で祝われる祭日である。ヨーロッパなどでも、春分をもっての開始とする。いくつかの国では休日とされる。

キリスト教復活祭の日付を算出するには、春分を基点とし、春分後最初の満月の次の日曜日を復活祭の日と定める。この算出方法をコンプトゥスという。ただし、ここでいう「春分」は暦の上での3月21日に固定されており、太陽黄経が0度の日とは必ずしも一致しない。「満月」も簡素化した計算によって求められており、天文学上の満月とは必ずしも一致しない。この算定法は第1ニカイア公会議で定められた。

前後の節気

啓蟄春分清明

脚注

関連項目