1958年モロッコグランプリ

1958年モロッコグランプリ (1958 Moroccan Grand Prix) は、1958年のF1世界選手権第11戦(最終戦)として、1958年10月19日アイン・ディアブ・サーキットで開催された。

モロッコ 1958年モロッコグランプリ
レース詳細
1958年F1世界選手権全11戦の第11戦
日程1958年10月19日
正式名称VII Grand Prix du Maroc
開催地アイン・ディアブ・サーキット
モロッコの旗 モロッコ カサブランカ
コース公道コース
コース長7.618 km (4.734 mi)
レース距離53周 403.754 km (250.902 mi)
決勝日天候晴(ドライ)
ポールポジション
ドライバーフェラーリ
タイム2:23.1
ファステストラップ
ドライバーイギリス スターリング・モスヴァンウォール
タイム2:22.5 (21周目)
決勝順位
優勝ヴァンウォール
2位フェラーリ
3位フェラーリ

レース概要

前年まで非選手権戦として開催されたモロッコGPが初めてF1世界選手権の一戦に組み込まれた[1]

マイク・ホーソーン(40点)とスターリング・モス(32点)のドライバーズチャンピオン争いは最終戦の当レースまでもつれ込んだ。モスが逆転王者になるためには優勝してかつファステストラップを記録する必要があった[2]。ホーソーンは2位以上になればモスの結果に関係なくチャンピオンを決めることができる[3][1]

モロッコ国王ムハンマド5世と握手を交わした25名(F2部門で参加する[4]6名を含む。黄色で表示)のドライバーが最終戦に臨んだ[1]

ポールポジションを獲得したホーソーンはモスの先行を許す。レース前半はフェラーリの囮役を受け持つフィル・ヒルがモスの背後についてミスを誘おうとしたが、モスは動揺せずに首位を走行し続ける。レース中盤にモスのチームメイトであるトニー・ブルックスがホーソーンを抜いて3位に上がり、モスは21周目にファステストラップを記録して優位に立ったが、ブルックスのエンジンが壊れてリタイアする。フェラーリ陣営はフィル・ヒルにスローダウンの指示を出してホーソーンを先行させ、ホーソーンはチャンピオンを自力で決められる2位に浮上した。残り10周となったところで、3台目のヴァンウォールを駆るスチュアート・ルイス=エヴァンズのエンジンがブローして後輪がロックされてしまい、コースを飛び出してマシンは大破し炎上する。この事故で大火傷を負ったルイス=エヴァンズは6日後に亡くなった。レースはモスが制して優勝とファステストラップの9点を上乗せして41点となったが、ホーソーンが2位でフィニッシュして有効ポイントを42点としたため、ホーソーンがイギリス人初のドライバーズチャンピオンを獲得した。モスはシーズン最多の4勝[5]を挙げたもののリタイアも5回と多く、ホーソーンは優勝がフランスGPの1回だけだったが、2位に5回入賞したのがチャンピオン獲得の決め手となった[1]

ヴァンウォールはシーズン6勝を挙げ、前戦イタリアGPで初代コンストラクターズチャンピオンを獲得し、自車でフェラーリに勝つという目標を達成したことで、トニー・ヴァンダーヴェル代表は自らの健康上の問題を理由にF1撤退を表明した[6]。ルイス=エヴァンズの事故死も撤退の理由の一つとされている[1]

ホーソーンは王者獲得の2ヶ月後、29歳にして現役引退を表明した。無二の親友でもあったチームメイトのピーター・コリンズドイツGPで事故死したことや体調不良が原因とされている[7]。それから間もない翌1959年1月22日ギルフォードの公道で事故死してしまい、友の待つ天国へと足早に旅立っていった[1]

エントリーリスト

No.ドライバーエントラントコンストラクターシャシーエンジンタイヤ
2 オリビエ・ジャンドビアン スクーデリア・フェラーリフェラーリ246フェラーリ Tipo143 2.4L V6E
4 フィル・ヒル
6 マイク・ホーソーン
8 スターリング・モス ヴァンダーヴェル・プロダクツ・リミテッドヴァンウォールVW5ヴァンウォール 254 2.5L L4D
10 トニー・ブルックス
12 スチュアート・ルイス=エヴァンズ
14 ジャン・ベーラ オーウェン・レーシング・オーガニゼーションBRMP25BRM P25 2.5L L4D
16 ハリー・シェル
18 ヨアキム・ボニエ
20 ロン・フロックハート
22 マステン・グレゴリー テンプル・ビューエルマセラティ250Fマセラティ 250F1 2.5L L6D
24 ヴォルフガング・ザイデル スクーデリア・セントロ・スッドマセラティ250Fマセラティ 250F1 2.5L L6P
26 ジェリーノ・ジェリーニ
28 ロイ・サルヴァドーリ クーパー・カー・カンパニークーパーT45クライマックス FPF 2.2L L4D
30 ジャック・フェアーマン
32 グラハム・ヒル チーム・ロータスロータス16クライマックス FPF 2.2L L4D
34 クリフ・アリソン12クライマックス FPF 2.0L L4
36 モーリス・トランティニアン RRCウォーカー・レーシングチームクーパーT45クライマックス FPF 2.2L L4D
38 ハンス・ヘルマン ヨアキム・ボニエマセラティ250Fマセラティ 250F1 2.5L L6P
40 ポール・エメリー 1 エメリソン・カーズエメリソン56アルタ GP 2.5L L4D
42 ジャン=クロード・ビシール 1 ジャン=クロード・ビシールクーパーT45クライマックス FPF 1.5L L4D
44 キース・ホール 1 チーム・ロータスロータス12クライマックス FPF 1.5L L4D
46 ジャン・ケルゲン 1 ジャン・ケルゲンポルシェRS550ポルシェ 547/3 1.5L F4D
48 アンドレ・ゲルフィ アンドレ・ゲルフィクーパーT45クライマックス FPF 1.5L L4D
50 ジャック・ブラバム クーパー・カー・カンパニークーパーT45クライマックス FPF 1.5L L4D
52 ブルース・マクラーレン
54 フランソワ・ピカール RRCウォーカー・レーシングチームクーパーT43クライマックス FPF 1.5L L4D
56 トム・ブリッジャー ブリティッシュ・レーシング・パートナーシップクーパーT45クライマックス FPF 1.5L L4D
58 ロベール・ラ・カズ ロベール・ラ・カズクーパーT45クライマックス FPF 1.5L L4D
ソース:[8][9]
追記
  • ^1 - エントリーしたが出場せず

結果

予選

順位No.ドライバーコンストラクタータイム
16 マイク・ホーソーンフェラーリ2:23.1
28 スターリング・モスヴァンウォール2:23.2+ 0.1
312 スチュアート・ルイス=エヴァンズヴァンウォール2:23.7+ 0.6
414 ジャン・ベーラBRM2:23.8+ 0.7
54 フィル・ヒルフェラーリ2:24.1+ 1.0
62 オリビエ・ジャンドビアンフェラーリ2:24.3+ 1.2
710 トニー・ブルックスヴァンウォール2:24.4+ 1.3
818 ヨアキム・ボニエBRM2:24.9+ 1.8
936 モーリス・トランティニアンクーパー-クライマックス2:26.0+ 3.0
1016 ハリー・シェルBRM2:26.4+ 3.4
1130 ジャック・フェアーマンクーパー-クライマックス2:27.0+ 3.9
1232 グラハム・ヒルロータス-クライマックス2:27.1+ 4.0
1322 マステン・グレゴリーマセラティ2:27.6+ 4.5
1428 ロイ・サルヴァドーリクーパー-クライマックス2:28.6+ 5.5
1520 ロン・フロックハートBRM2:29.8+ 6.7
1634 クリフ・アリソンロータス-クライマックス2:33.7+ 10.6
1726 ジェリーノ・ジェリーニマセラティ2:35.1+ 12.0
1838 ハンス・ヘルマンマセラティ2:35.1+ 12.0
1950 ジャック・ブラバムクーパー-クライマックス2:36.6+ 13.5
2024 ヴォルフガング・ザイデルマセラティ2:38.2+ 15.1
2152 ブルース・マクラーレンクーパー-クライマックス2:39.0+ 15.9
2256 トム・ブリッジャークーパー-クライマックス3:01.0+ 37.9
2358 ロベール・ラ・カズクーパー-クライマックス3:03.5+ 40.4
2454 フランソワ・ピカールクーパー-クライマックス3:06.4+ 43.3
2548 アンドレ・ゲルフィクーパー-クライマックス3:09.0+ 45.9
ソース:[10]

決勝

順位No.ドライバーコンストラクター周回数タイム/リタイア原因グリッドポイント
18 スターリング・モスヴァンウォール532:09:15.129 1
26 マイク・ホーソーンフェラーリ53+ 1:24.716
34 フィル・ヒルフェラーリ53+ 1:25.554
418 ヨアキム・ボニエBRM53+ 1:46.783
516 ハリー・シェルBRM53+ 2:33.7102
622 マステン・グレゴリーマセラティ52+ 1 Lap13
728 ロイ・サルヴァドーリクーパー-クライマックス51+ 2 Laps14
830 ジャック・フェアーマンクーパー-クライマックス50+ 3 Laps11
938 ハンス・ヘルマンマセラティ50+ 3 Laps18
1034 クリフ・アリソンロータス-クライマックス49+ 4 Laps16
1150 ジャック・ブラバムクーパー-クライマックス49+ 4 Laps19
1226 ジェリーノ・ジェリーニマセラティ48+ 5 Laps17
1352 ブルース・マクラーレンクーパー-クライマックス48+ 5 Laps21
1458 ロベール・ラ・カズクーパー-クライマックス48+ 5 Laps23
1548 アンドレ・ゲルフィクーパー-クライマックス48+ 5 Laps25
1632 グラハム・ヒルロータス-クライマックス45+ 7 Laps12
Ret12 スチュアート・ルイス=エヴァンズヴァンウォール41事故死3
Ret54 フランソワ・ピカールクーパー-クライマックス31アクシデント24
Ret56 トム・ブリッジャークーパー-クライマックス30アクシデント22
Ret10 トニー・ブルックスヴァンウォール29エンジン7
Ret2 オリビエ・ジャンドビアンフェラーリ29アクシデント6
Ret14 ジャン・ベーラBRM26エンジン4
Ret24 ヴォルフガング・ザイデルマセラティ15アクシデント20
Ret20 ロン・フロックハートBRM15カムシャフト15
Ret36 モーリス・トランティニアンクーパー-クライマックス9エンジン9
ソース:[11][12]
追記

ランキング

コンストラクターズ・チャンピオンシップ
順位コンストラクターポイント
1 ヴァンウォール48 (57)
2 フェラーリ40 (57)
3 クーパー-クライマックス31
4 BRM18
5 マセラティ6

  • : トップ5のみ表示。ベスト6戦のみがカウントされる。ポイントは有効ポイント、括弧内は総獲得ポイント。

脚注

参照文献

  • 林信次『F1全史 1956-1960』ニューズ出版、1999年。ISBN 4-938495-27-9 

関連項目

外部リンク

前戦
1958年イタリアグランプリ
FIA F1世界選手権
1958年シーズン
モロッコグランプリ