26型フリゲート

26型フリゲート英語: Type 26 frigates)はイギリス海軍フリゲートの艦級。艦名からシティ型: City-class)やグラスゴー級: Glasgow-class)とも称される。計画名はグローバル戦闘艦英語: Global Combat Ship, GCS)であった。

26型フリゲート
基本情報
艦種フリゲート
運用者 イギリス海軍
建造期間2017年-現在
計画数8隻
前級23型
準同型艦オーストラリア ハンター級
次級31型
要目
満載排水量8,000 トン[1]
全長149.9 m[1]
20.75 m[1]
機関方式CODLOG方式[2]
主機
推進器スクリュープロペラ×2軸
電源MTU 20V4000 M35Bディーゼル発電機 (4,075馬力)×4基
速力26ノット (48 km/h)以上
航続距離7,000海里 (15kt巡航時)
乗員157名 + 便乗者51名
兵装
搭載機
  • AW101哨戒ヘリコプター×1機
  • レーダー
  • 997型 3次元式×1基
  • ソナー
  • 2150型 船首装備型×1基
  • 2087型 曳航式×1基
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    来歴

    2010年までは将来水上戦闘艦(FSC)として計画が進められており、当初は実験船「トライトン」で試験を重ねていた三胴船型(トリマラン)が予定されていたが、後には在来型の単胴船型で、異なる大きさのC1〜3の3つのサブタイプとして建造されるよう計画変更された[3]

    2010年に現計画名に変更されるとともに、各サブタイプの規模も統一されたが、対潜型・対空型・汎用型の3つのサブタイプを建造するという計画は維持されている[3]。ただし当初計画では満載排水量5,400トンとされていたものが[3]、最終的には8,000トンまで大型化した。このためもあって、当初は本型の通常型5隻と対潜型8隻を建造して23型13隻を一対一で更新する上に追加建造も検討されていたにもかかわらず、2015年の戦略防衛・安全保障計画の見直しに伴って、本型の建造は対潜型8隻のみに留めて、通常型5隻については、より小型の31型に切り替えられることになった[1]

    設計

    船体と上部構造物はステルス性を考慮して設計されている。全体的な艦容は45型駆逐艦に類似するが、凌波性を考慮して艦首の甲板高が高められた。前檣には、ステルス性に配慮した塔型の大型マストが採用されている。また後檣は、やはりステルス性に配慮した細い単檣が2基、並列で設けられている[1]

    1タイプ前の23型と比べて4,000トン近く大型化しているが、自動化を進めることで、乗員数は、23型では181名だったのに対し、本型では157名に抑えられた。ただし人道支援任務や特殊作戦などで便乗者が乗艦することを想定して、51名分の予備スペースが確保されている[1]

    機関は、水中放射雑音の低減や、巡航時の航続距離延伸を重視して、CODLOG方式を採用した[2]。本型では、巡航時にはMTU 20V4000 M35Bディーゼル発電機4基と電動機2基(合計出力8,542馬力)による電気推進を使用し、高速航行時にはMT30ガスタービンエンジン(46,935馬力)を使用する。これにより、イギリス海軍のフリゲートの標準速力である28ノットを発揮でき、また電気推進による巡航であれば15ノットで7,000海里という航続距離を発揮できる[1]

    装備

    C4ISR

    対空・対水上用の主たるセンサーとなるのが3次元式997型レーダーで、前檣頂部に設置されて、対空・対水上捜索およびSAMの火器管制レーダーとしても用いられる。また前檣の中段には、航海用として、ケルヴィン・ヒューズ社のシャープアイ型レーダーも搭載される。なお戦術情報処理装置としては、23型が後日装備したDNA(2)システムの改型が搭載される[1]

    ソナーとしては、中周波数の2150型を船体に装備するほか、可変深度曳航式の2087型も搭載する。2087型はタレス社のUMS-4249を制式化したもので、当初は対潜型のみに搭載されるといわれていたが、現在整備予定の8隻は全艦が搭載予定となっている。またこれらのソナーおよび2170型魚雷防御システムの情報処理は、DNA(2)戦術情報処理装置で包括して行われる[1]

    武器システム

    艦砲としては、イギリス海軍として初めて62口径5インチ単装砲(Mk.45 mod.4)を採用しており、前甲板に搭載する。またその他の砲熕兵器として、近接防空には20mm口径ファランクス CIWSを、近距離での対水上用として30mm口径ブッシュマスターII(DS30M) 機関砲を搭載する[1]

    個艦防空ミサイルとしてはシーセプターを採用し、艦砲の直後と煙突後方の2ヶ所に24セルずつ、合計48セルのVLSを搭載する。また巡航ミサイルのため、艦橋構造物の直前(シーセプター用VLSの直後)に24セルのMk.41 VLSが設置される。ここに収容されるミサイルとしては、対地用にはトマホークあるいはその後継となるNGLAW(Next Generation Land Attack Weapon)、対艦用としてはNGLAWの対艦型が予定されている[1]

    格納庫には、マーリンであれば1機、リンクス・ワイルドキャットであれば2機を収容できる。また沿岸部での水陸両用作戦や人道支援任務などを考慮して、ヘリコプター甲板は大型のチヌーク輸送ヘリコプターの運用にも対応できる[1]

    比較

    同規模艦艇の比較
    B・ヴュルテンベルク級 26型 コンステレーション級 MKS180
    船体満載排水量7,316 t8,000 t7,291 t10,550 t
    全長149.5 m149.9 m151.18 m166 m
    全幅18.8 m20.75 m19.81 m21.7 m
    主機方式CODLAGCODLOGCODLAGCODLAD
    出力27,000 hp46,500 hp40,600 hp43,000 hp
    速力26 kt
    兵装砲熕64口径127mm単装砲×1基62口径5インチ単装砲×1基70口径57mm単装砲×1基64口径127mm単装砲×1基
    27mm機関砲×2基ファランクス CIWS×2基27mm機関砲×複数
    RWS×5基DS30M 30mm機銃×2基M240またはM2機銃×複数12.7mm機銃×複数
    12.7mm機銃×2基
    ミサイルRAM 21連装発射機×2基VLS×24セル
    シーセプター
    Mk.41 VLS×32セル[注 1]Mk.41 VLS×64セル
    ESSM
    Mk.41 VLS×24セル[注 2]RAM 21連装発射機×1基RAM 21連装発射機×2基
    ハープーン 4連装発射筒×2基NSM 4連装発射筒×4基NSM 4連装発射筒×2基
    水雷3連装短魚雷発射管×2基
    艦載機NFH90×2機AW159 / AW101×1機MH-60R×1機 + MQ-8C×1機NFH90×2機
    同型艦数4隻8隻予定[注 3]
    (3隻建造中)
    20隻予定6隻予定


    同型艦一覧

    バッチ#艦名起工進水就役
    1F88グラスゴー
    HMS Glasgow
    2017年
    7月20日
    2022年
    12月3日
    F89カーディフ
    HMS Cardiff
    2019年
    8月14日
    F90ベルファスト
    HMS Belfast
    2021年
    6月29日
    2バーミンガム
    HMS Birmingham
    2023年
    4月4日
    シェフィールド
    HMS Sheffield
    ニューカッスル
    HMS Newcastle
    エディンバラ
    HMS Edinburgh
    ロンドン
    HMS London

    脚注

    注釈

    出典

    参考文献

    • 大塚, 好古「26型/イギリス (30FFMとそのライバルたち)」『世界の艦船』第941号、海人社、2021年2月、88-91頁。 
    • 海人社(編)「世界の新型水上戦闘艦 ラインナップ (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」『世界の艦船』第832号、海人社、2016年3月、78-89頁、NAID 40020720329 
    • 多田, 智彦「4. 26型FF (世界の新型水上戦闘艦ラインナップ)」『世界の艦船』第782号、海人社、2013年8月、84-85頁、NAID 40019721131 

    外部リンク