Coffee Lakeマイクロアーキテクチャ

Coffee Lake(コーヒーレイク)とはインテルによって開発されたマイクロプロセッサである。2017年9月24日に発表され[1]Kaby Lake Refreshと同じ第8世代Intel Coreプロセッサとして製品化された[2]

Coffee Lake
生産時期2017年10月5日[1]から
生産者インテル
プロセスルール14nm
アーキテクチャx64
マイクロアーキテクチャSkylake
命令セットx86-64, Intel 64
コア数2から8
(スレッド数:2から16)
ソケットLGA 1151
前世代プロセッサKaby Lake
次世代プロセッサComet Lake
Ice Lake
L1キャッシュコアあたり64KiB
(命令32+データ32)
L2キャッシュコアあたり256KiB
L3キャッシュコアあたり最大2MiB
ブランド名
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2018年10月8日には最大8コアのCoffee Lake Refresh(コーヒーレイク リフレッシュ)が第9世代Intel Coreプロセッサとして発表された。

なお、本項では便宜上、15W以下のモバイル向けのWhiskey Lake(ウイスキーレイク)についても記述する。

概要

10nmプロセス立ち上げの更なる遅延により同じ14nmプロセスであるKaby Lakeの後継として用意された[3]

CPUコア数の増加やブーストクロックの向上など性能強化が図られているが、マイクロアーキテクチャはSkylakeのままである。製造プロセスも14nmプロセスと変わっていないが、14nm++としてゲートピッチを84nmに緩めるなどクロック向上のために最適化されている。

2018年には更にCPUコア数を増やしたCoffee Lake Refreshが投入されたが、製造プロセスは変わっていないためダイサイズが増加する一方となった。これにチップセットの14nm化も重なりプロセッサの供給不足が発生した[4]

この世代にP6から続くアウト・オブ・オーダー実行を起因としたサイドチャネル攻撃に対する脆弱性が明らかとなり[5]、これに対する性能低下を補うためにハードウェアによる緩和策が進められるようになった[6]

CNL-PCHをワンパッケージ化したものは開発コードが異なり、Whiskey Lakeとなっている。

2018年に入ると、8086発売40周年を記念し、Coffee Lakeマイクロアーキテクチャに基づくデスクトップ向けのCore i7-8086Kを限定品として発売した。記念品的要素もあり、モデル名は敢えて付番法則に則っていない。実質的にはCoffee Lakeとして(Refreshを除けば)最速のCPUである。またCore i7-8086Kの最大周波数は Intelのx86互換CPUとしては、単一のコアで初めて5GHzにも達する。これは8086の規定クロックである、5MHzのちょうど1000倍となっている点も記念碑的なポイントと言えよう。

この世代よりWindows 11以降のWindowsに正式かつ、完全対応している。ただし、Windows 11以降のWindowsをアップグレードインストール、または新規インストールする場合はセキュアブートTPM2.0等の各種セキュリティデバイスが必要となる。

特徴

  • 14nm++プロセス
  • Skylakeコア (CPUコア数の増加、最大8コア)
  • DDR4-2666対応 (DDR3には非対応)
  • UHD Graphics 600 シリーズ (最大ブーストクロックが向上)
  • ソケット1151 (Kaby Lakeと電気的互換性なし[7])
  • 300 シリーズのチップセット
  • USB 3.1のサポート (Gen2には14nmのCNL-PCH版が対応)

プロセスルール

プロセスルールは Kaby Lake から更に最適化が行われている[8]

マイクロアーキテクチャプロセスルールの名称
Broadwell
Skylake
14nm
Kaby Lake
Kaby Lake Refresh
Amber Lake
14nm+
Coffee Lake
Coffee Lake Refresh
Whiskey Lake
14nm++

脆弱性の対応

IntelはMeltdownSpectreなどの脆弱性に対し、マイクロコードやソフトウェアの変更による緩和を進めたが一部のワークロードでは大きな性能低下を引き起こすため、ハードウェアレベルでの防御ができるようWhiskey Lake以降のCPUに変更を加えた。2019年にはCascade Lakeで更なる対応が進むなど対策を進めている[9]

公称Variant概要Cascade Lake

Ice Lake

Whiskey Lakeの一部、

Coffee Lake Refreshの一部

Comet Lake

Whiskey Lake

Coffee Lake Refresh

Coffee Lake

Amber Lake

及びそれ以前のCPU

Spectre1条件付き分岐における境界チェックの回避OS/VMM
2分岐先のインジェクションハードウェア + OSファームウェア + OS
Meltdown3不正なデータキャッシュの読み込みハードウェアファームウェア
3a不正なシステムレジスタの参照ハードウェアファームウェア
4書込み前メモリの参照ハードウェア + OSファームウェア + OS
Foreshadow

(L1TF)

L1データキャッシュ情報が漏えいする脆弱性ハードウェアファームウェア

第8世代 Coffee Lake 製品構成

デスクトップ向け

コア数がi7・i5は6つ、i3は4つに増えた事が最大の特徴である。これにより、マルチスレッド性能が大幅に向上した。ハイパースレッディング・テクノロジーはi7、Pentium Goldのみに採用されている。

また、ソケットは先代と共通のLGA1151であり、Z170やZ270といったチップセットを搭載したマザーボードとの物理的互換性はあるが、インテルがそれを許可しなかったため、Intel 300 Seriesを搭載したマザーボードの購入(買い替え)が必要となる。

インテル側は「電源回路の差異」を理由にしているが、マザーボードメーカーであるASUSのスタッフによって否定され、非公式ながらBIOSの改造でZ170やZ270で起動させることも可能である。実演したコアユーザーも存在する。

ブランド型番コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz)GPUL3
キャッシュ

(MB)

TDP

(W)

ソケット価格

(US$)

定格ターボブーストブランド周波数

(GHz)

1コア2コア4コア6コア
Core i78086K6 (12)4.05.0UHD 6301.21295LGA1151425
8700K[10]3.74.74.64.44.3359
8700[10]3.24.64.54.34.365303
8700T2.44.035
Core i58600K[10]6 (6)3.64.34.24.24.11.15995257
86003.14.365213
8600T2.33.735
85003.04.165192
8500T2.13.535
8400[10]2.84.03.93.93.865182
8400T1.73.335
Core i38350K[11]4 (4)4.0N/A891168
83003.762138
8300T3.235
8100[11]3.6665117
8100T3.135
Pentium GoldG56002 (4)3.91.145486
G55003.875
G5500T3.21.0535
G54003.7UHD 6105464
G5400T3.135
CeleronG49202 (2)3.225452
G49003.142
G4900T2.91.035

ワークステーション向け

ブランド型番コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz)GPUL3
キャッシュ

(MB)

TDP

(W)

ソケット価格

(US$)

定格ターボ

ブースト

ブランド周波数

(GHz)

Xeon E2186G6 (12)3.84.7UHD P6301.21295LGA1151450
2176G3.780362
2146G3.54.51.15311
21363.3N/A284
2126G6 (6)UHD P6301.15255
2174G4 (8)3.84.71.20871328
2144G3.64.51.15272
21343.5N/A250
2124G4 (4)3.4UHD P6301.15213
21243.34.3N/A$193
2104G3.2N/AUHD P6301.165

モバイル向け

最大6コアに強化され、モバイル向けとしては初めてCore i9ブランドのCPUが登場した。

ブランド型番コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz)GPUL3
キャッシュ

(MB)

L4キャッシュ
(eDRAM)

(MB)

TDP

(W)

cTDP

(W)

価格

(US$)

定格ターボ

ブースト

ブランド周波数
定格

(MHz)

最大

(GHz)

Xeon E2186M6 (12)2.94.8UHD P6303501.2012N/A4535623
2176M2.74.4450
Core i98950HK2.94.8UHD 630N/A583
Core i78850H2.64.31.15935395
8750H2.24.11.10
8700B3.24.61.201265N/A303
8559U4 (8)2.74.5Iris Plus 65530081282820431
Core i58500B6 (6)3.04.1UHD 6303501.109N/A65N/A192
8400B2.84.01.05182
8400H4 (8)2.54.21.1084535N/A
8300H2.34.01.00250
8269U2.64.2Iris Plus 6553001.1061282820320
8259U2.33.81.05N/A
Core i38109U2 (4)3.03.64N/A
8100H4 (4)N/AUHD 6303501.006N/A4535225

第8世代 Whiskey Lake 製品構成

2018年8月28日に発表された15W以下のモバイル向けの第8世代Intel Coreプロセッサ。

パッケージ内に搭載されているPCHが14nmのCNL-PCHに変更され、USB 3.1 Gen2にネイティブ対応、Wi-Fi/BluetoothのMACを統合、オーディオDSPがクアッドコアとなった。

また、Meltdown V3、L1TFの脆弱性にハードウェアでの緩和が行われた[9]

なお、Core i7-8665UとCore i5-8365Uについては19年第二四半期の発売となっており、vProに対応するなど機能等の向上が見られる。

モバイル向け

ブランド型番コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz)GPUL3
キャッシュ

(MB)

TDP

(W)

cTDP(W)価格

(US$)

定格ターボ

ブースト

ブランド周波数

(GHz)

UpDown
Core i78665U4 (8)1.94.8UHD 6201.158152510409
8565U1.84.6
Core i58365U1.64.11.16297
8265U3.9
Core i38145U2 (4)2.13.91.04281

第9世代 Coffee Lake Refresh 製品構成

2018年10月8日に発表された。最大8コアの構成になり、特にCore i9の9900Kと9900KFに関してはIntelの量産CPUとしては初の5GHz駆動に至ったことが特徴である。Core i7、Core i9ではSandy Bridgeマイクロアーキテクチャ以来、7世代ぶりとなるヒートスプレッダとコアの間にソルダリング(STIM)を採用することで放熱能力が向上した。またMeltdown V3、L1TFの脆弱性に関してハードウェアでの緩和が行われた[12](一部のSKUを除く)。ソケット形状は第8世代のものと同一で互換性が保たれている。

デスクトップ向け

ブランド型番コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz)GPUL3
キャッシュ

(MB)

TDP

(W)

メモリー価格

(US$)

定格ターボブーストブランド周波数

(GHz)

12345678
Core i99900K8 (16)3.65.04.84.7UHD 6301.21695DDR4
2666
488
9900KFN/A
Core i79700K8 (8)4.94.84.74.6UHD 6301.212374
9700KFN/A
Core i59600K6 (6)3.74.64.54.44.3N/AUHD 6301.159262
9600KFN/A
95003.04.4UHD 6301.1065192
94002.94.11.05182
9400FN/A
Core i39350KF4 (4)4.04.6N/AN/A891DDR4
2400
173
9350KUHD 6301.15
93203.74.462154
93004.3143
9300T3.23.81.1035
91003.64.24.14.0665122
9100FN/A
9100T3.13.7UHD 6301.1035
Pentium

Gold

G56202 (4)4.0N/A45486
G5600T3.31.053575
G54203.8UHD 6105464
G5420T3.235
CeleronG49502 (2)3.325452
G49303.242
G4930T3.01.0035

モバイル向け

ブランド型番コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz)GPUL3
キャッシュ

(MB)

TDP

(W)

cTDP
Down

(W)

メモリー価格

(US$)

定格ターボ

ブースト

ブランド周波数

(GHz)

Xeon E2286M8(16)2.45.0UHD P6301.25164535DDR4-2666,
LPDDR3-2133
623
2276M6(12)2.84.71.212450
Core i99980HK8 (16)2.45.0UHD 6301.2516583
9980H2.34.81.2556
Core i79850H6 (12)2.64.61.1512395
9750HF4.5N/AN/A
9750HUHD 6301.15
Core i59400H4 (8)2.54.31.18250
9300HF2.44.1N/AN/A
9300HUHD 6301.05

脚注