ラリー・スウェーデン

ラリー・スウェーデン(Rally Sweden, : Svenska rallyt)は、スウェーデンで開催される世界ラリー選手権 (WRC) のイベント。スウェディッシュ・ラリー (Swedish Rally) とも呼ばれる。現在ではWRC唯一のフルスノーラリー。

歴史

1950年にインターナショナル・スウェーデン・ラリーとしてスタート。最初は真夏のミッドナイト・サン(白夜)ラリーとして行なわれたが、1965年より真冬のイベントとして行なわれてきた[1]。WRCでは開幕戦モンテカルロの後に続く冬季の連戦として定着している。2010年はラリー・ノルウェーが財政難で中止されたためノルウェーとの共催で開催された[2]

ラリー・フィンランド以上にスカンジナビアンが強いラリーとして知られ、地元スウェーデン勢とフィンランド勢の独壇場であった。この2ヶ国以外では、2005年にノルウェー人のペター・ソルベルグが優勝している。北欧勢以外で優勝したのはセバスチャン・ローブ(フランス)とセバスチャン・オジェ(フランス)、ティエリー・ヌービル(ベルギー)、オィット・タナック(エストニア)の、エルフィン・エバンス(イギリス)の5名。

1990年は雪不足のため開催が中止された。2016年も雪不足に見舞われ、選手側がスパイクタイヤでグラベルを走行する危険性を協議し、出走拒否(ボイコット)の可能性もあったが[3]、最終的にスケジュールを大幅に短縮して開催された。2020年も雪不足のため19SS(300.84km)を9SS(148.55km)に半減して開催された[4]

2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、開催中止となった[5]

2022年は、北東部の都市ウメオへと本拠地が移された。北極圏までトルスビーよりも730kmほど近い所でのラリーとなる。

特徴

針葉樹の森の中を行くグラベルコースだが、コースの大半が雪や氷で覆われているため、スノーラリーと呼ばれている。氷点下20度の極寒のコンディションで行なわれ、低温によって油圧系統の機能が落ちたり、逆にインテークに雪が詰まるとエンジンがオーバーヒートする恐れもある[1]。近年は気温が上がり、積雪量が少ないこともある[6]。例年、ヴェーネルン湖の北岸カールスタードを拠点にしていたが、積雪量を確保するためルートを北へ移動し、一部でノルウェーとの国境をまたぐ形をとっている。

コースは比較的フラットで高速コーナーが連続し、雪上イベントでも平均速度はグラベルのラリー・フィンランドに次いで高い[7]。コーナーへの侵入では、コースサイドの雪壁(スノーバンク)にマシンの鼻先を当てて向きを変える特殊なテクニックが使われる[8]

このイベント用に幅20cm弱のナロートレッドに突き出し量6.5mmのスタッドを380本以上打ち込んだ特製スパイクタイヤが投入される[9]。通常よりもタイヤが細いのは、接地面の面圧を上げてスタッドをしっかり食い込ませるため。スタッドが固い氷を噛むことで、ターマックをしのぐ強いグリップ力が発生する[10]。SSのループ走行ではグラベルが露出してスタッドが脱落してしまうことがあるので、タイヤの温存にも配慮しなければならない[9]

コリンズ・クレスト

コリンズ・クレスト

ヴォルゴーセン (Vargasen) のSSにはかつてコリン・マクレーが豪快な大ジャンプを見せた「コリンズ・クレスト[11] (Colin's Crest) 」と呼ばれる高速ジャンピングスポットがあり、大勢の見物客がつめかける観戦ポイントでもある。マクレーがヘリコプター事故で亡くなった翌年(2008年)より毎年一番の飛距離を記録した選手へ「コリンズ・クレスト賞」が贈られる。過去の最長ジャンプは2016年にアイビン・ブリニルドセン(フォード・フィエスタR5)が記録した45m。

歴代コリンズ・クレスト賞受賞者

歴代優勝者(1973年以降)

優勝者車輌
ドライバーコ・ドライバー
1973年 スティグ・ブロンクビスト アーネ・ヘルツサーブ・96V4
1975年 ビョルン・ワルデガルド ハンス・ソルセリウスランチア・ストラトス
1976年 パー・エクルンド ビョルン・セダーベルグサーブ・96V4
1977年 スティグ・ブロンクビスト ハンス・シルヴァンサーブ・99EMS
1978年 ビョルン・ワルデガルド ハンス・ソルセリウスフォード・エスコートRS1800
1979年 スティグ・ブロンクビスト ビョルン・セダーベルグサーブ・99ターボ
1980年 アンデルス・クラング ブルーノ・ベルグルンドオペル・アスコナ400
1981年 ハンヌ・ミッコラ アーネ・ヘルツアウディ・クワトロ
1982年 スティグ・ブロンクビスト ビョルン・セダーベルグアウディ・クワトロ
1983年 ハンヌ・ミッコラ アーネ・ヘルツアウディ・クワトロA1
1984年 スティグ・ブロンクビスト ビョルン・セダーベルグアウディ・クワトロA2
1985年 アリ・バタネン テリー・ハリーマンプジョー・205T16
1986年 ユハ・カンクネン ユハ・ピロネンプジョー・205T16E2
1987年 ティモ・サロネン セッポ・ハルヤンヌマツダ・323 4WD
1988年 マルク・アレン イルッカ・キビマキランチア・デルタHF 4WD
1989年 イングバー・カールソン パー・カールソンマツダ・323 4WD
1991年 ケネス・エリクソン スタファン・パルマンダー三菱・ギャランVR-4
1992年 マッツ・ジョンソン ラース・バックマントヨタ・セリカGT-Four
1993年トヨタ・セリカターボ4WD
1994年 トマス・ラドストローム
1995年†† ケネス・エリクソン スタファン・パルマンダー三菱・ランサーエボリューションII
1996年 トミ・マキネン セッポ・ハルヤンヌ三菱・ランサーエボリューションIII
1997年 ケネス・エリクソン スタファン・パルマンダースバル・インプレッサWRC
1998年 トミ・マキネン リスト・マニセンマキ三菱・ランサーエボリューションIV
1999年三菱・ランサーエボリューションVI
2000年 マーカス・グロンホルム ティモ・ラウティアイネンプジョー・206WRC
2001年 ハリ・ロバンペラ リスト・ピエティライネン
2002年 マーカス・グロンホルム ティモ・ラウティアイネン
2003年
2004年 セバスチャン・ローブ ダニエル・エレナシトロエン・クサラWRC
2005年 ペター・ソルベルグ フィル・ミルズスバル・インプレッサWRC
2006年 マーカス・グロンホルム ティモ・ラウティアイネンフォード・フォーカスWRC
2007年
2008年 ヤリ=マティ・ラトバラ ミイカ・アンティラ
2010年 ミッコ・ヒルボネン ヤルモ・レーティネン
2011年フォード・フィエスタWRC
2012年 ヤリ=マティ・ラトバラ ミイカ・アンティラ
2013年 セバスチャン・オジェ ジュリアン・イングラシアフォルクスワーゲン・ポロ R WRC
2014年 ヤリ=マティ・ラトバラ ミイカ・アンティラ
2015年 セバスチャン・オジェ ジュリアン・イングラシア
2016年
2017年 ヤリ=マティ・ラトバラ ミイカ・アンティラトヨタ・ヤリスWRC
2018年 ティエリー・ヌービル ニコラ・ジルソウルヒュンダイ i20クーペWRC
2019年 オィット・タナック マルティン・ヤルヴェオヤトヨタ・ヤリスWRC
2020年 エルフィン・エバンス スコット・マーティン
2021年中止
2022年 カッレ・ロバンペラ ヨンネ・ハルトゥネントヨタ・GRヤリス ラリー1
2023年 オィット・タナック マルティン・ヤルヴェオヤフォード・プーマ ラリー1
2024年 エサペッカ・ラッピ ヤンネ・フェルムヒョンデ・i20 N ラリー1
  • † 1994年は2リッターワールドカップ (W2L) として開催。
  • †† 1995年はWRCとW2Lの併催。

脚注

外部リンク