復旦大学

中国の国立大学

復旦大学(ふくたんだいがく、复旦大学復旦大學拼音: Fùdàn Dàxué英語: Fudan University)は、上海市楊浦区に所在する中華人民共和国国立大学である。副部級大学の一つとして、1905年に創立された。数多くの国家重点実験室を持っている。九校連盟985工程211工程双一流の成員校として、国家重点大学である。

復旦大学
Fùdàn Dàxué
復旦大学、最古の建築物
「子彬院」地図
モットー《博学而篤志,切問而近思。》
種別国立
設立年1905年
学長許寧生中国語版
党委書記姜斯憲
職員数
2300人
学生総数4万5000人(2004年
学部生1万6200人(2004年)
大学院生7000人(2004年)
博士課程在籍者
3100人(2004年)
所在地中華人民共和国の旗 中国
上海市上海市楊浦区邯鄲路220号
Universitas 21
公式サイト公式ウェブサイト
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概要

中国を代表する文科・理科をカバーする総合大学で2004年の在校生4万5000人のうち、学部学生1万6200人、大学院修士課程7000人、博士課程3100人、外国留学生1760人、成人教育学生1万1000人、インターネット教育学生5800人を数える。メイン・キャンパスは上海市楊浦区邯鄲路220号に所在する。現学長許寧生中国語版

2019年に大学憲章から「思想の自由」への言及を削除し[1]、「共産党の指導に従うことを誓う」「教職員に習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想を身につけさせ、教師と学生の心を武装させる」と付け加え、教員と学生に「社会主義の核心的価値観」の遵守を義務づけたが、これは若者が反政府活動に傾く土壌を排除しようという思惑がある[2]

沿革

復旦大学は近代中国の著名な教育家・馬相伯によって1905年私立の復旦公学として創立された。校名は『尚書』虞夏伝の「日月光華、旦復旦兮」の名句に由来する。

1917年私立復旦大学と改称し、1937年日中戦争が勃発すると重慶に移転し、1941年国立大学となった。戦後、1946年に上海に復帰した。1950年1952年に大規模な再編が実施され、1954年には、復旦大学は二流の大学から全国最先端の国家重点大学となり、2000年には上海医科大学と合併して医学部も有するようになった。

組織

17学院(日本の学部に相当する)、69の系、73の専攻科がある

学院(学部)

  • 人文学院
  • 外文学院
  • 新聞学院
  • 法学院
  • 経済学院
  • 管理学院
  • 技術科学と工程学院
  • 生命科学学院
  • 上海医学院
  • 公共衛生学院
  • 薬学院
  • 看護学院
  • 情報科学と工程学院
  • 国際関係と公共行政学院
  • 社会発展と公共政策学院
  • 数学科学学院
  • コンピュータサイエンス学院

国家重点学科

40学科(全73専攻学科のうち)

  • マルクス主義哲学
  • 外国哲学
  • 政治経済学
  • 世界経済
  • 金融学
  • 産業経済学
  • 政治学理論
  • 国際関係
  • 中国古代文学
  • 漢語言文字学
  • メディア学
  • 歴史地理学
  • 基礎数学
  • 応用数学
  • プランニング学とコントロール論
  • 理論物理
  • 凝集態物理
  • 光学
  • 物理化学
  • 高分子化学と物理
  • 生態学
  • 神経生物学
  • 遺伝学
  • 生理学
  • 電気回路と系统
  • 微電子学と固体電子学
  • 人体解剖と組織培養学
  • 病原生物学
  • 病理学と病理生理学
  • 内科学(心血管病、腎臓病、伝染病)
  • 小児科学、神経病学
  • 影像医学と核医学
  • 外科学(普通外科、骨外科、泌尿外科、神経外科)
  • 眼科学
  • 耳鼻咽喉科学
  • 腫瘍学
  • 中西医結合基礎科学
  • 中西医結合臨床学
  • 社会医学
  • 衛生行政管理学

研究所

総計77の研究機構を有する。主要な研究所:

  • 中国語言文学研究所
  • 中国社会主義市場経済研究センター
  • アメリカ問題研究センター
  • 日本研究センター
  • 歴史地理研究所
  • 人口研究所
  • 世界経済研究所
  • 金融研究院
  • 数学研究所
  • 現代物理研究所
  • 遺伝学研究所
  • 上海市心臓血管病研究所
  • 上海市放射医学研究所
  • 肝臓ガン研究所

学長

  1. 1905-1906 馬相伯
  2. 1906-1907年 厳復
  3. 1907-1909年 夏敬観
  4. 1909-1910年 高鳳謙
  5. 1910-1912年 馬相伯
  6. 1913-1936年 李登輝 (教育家)(en)
  7. 1918年 唐路園
  8. 1924-1925年 郭任遠
  9. 1936-1940年 銭新之
  10. 1940-1943年 呉南軒
  11. 1943-1949年 章益
  12. 1949-1977年 陳望道
  13. 1977-1983年 蘇歩青
  14. 1983-1988年 謝希徳
  15. 1988-1993年 華中一
  16. 1993-1999年 楊福家
  17. 1999-2009年 王生洪
  18. 2009-2014年 楊玉良
  19. 2014-許寧生

事件

復旦大学PRビデオ盗作騒動

2015年、復旦大学のPRビデオが、東京大学PRビデオ盗作であると認めて「社会に悪影響をもたらし、大学の名声を傷つけ、みなさんの感情を害したことに心から謝罪する」と謝罪をおこなった[3]。東京大学のPRビデオ宇宙服を着た人物がキャンパスを歩き回り、最後にヘルメットを取ると、卒業生の山崎直子が現れるものであるが、復旦大学のPRビデオも宇宙服を着た女性がキャンパスを歩き、最後にヘルメットを脱ぐというものだった[3]。その後、復旦大学が改めて発表した新作PRビデオは、学生が復旦大学を紹介するのに大きな校章をかざす部分があるが、これがドイツミュンヘン工科大学2013年のPRビデオの内容に酷似しているという指摘があり、さらに、復旦大学の新作PRビデオは創立110年周年を記念するものだが、その110周年記念祝賀プロモーション委員会のロゴマークが、指紋をかたどっているAppleTouch IDと酷似していると指摘されている[3]相馬勝は、「復旦大学といえば、日本とも馴染みが深く、外相や国務委員も歴任した唐家璇氏や、李源潮国家副主席ら多数の政治家や著名な学者を輩出した中国を代表する名門中の名門だが、PRビデオパクリ疑惑が2度も出てくるとは、一体プライドはどこにいったのか」とコメントしている[3]

ブダペストキャンパスの開設とその論争

ハンガリー首都ブダペストに復旦大学のキャンパスを2024年に開設する予定であり、建設費はハンガリーの高等教育予算1年分を上回る推計15億ユーロで、中国はうち13億ユーロを融資する[1]。元請け業者は中国の建設会社に決定したが、入札は実施されず、地元行政区のブダペスト市九区特別区区長バラニ・クリスティナハンガリー語版(Baranyi Krisztina [ˈbɒrɒɲi ˌkristinɒ])は「地元の誰も賛成していないのに、マンモス大学を造ろうとしている」「それを知ってショックを受けた。何もかも不透明だ。誰にも相談はなかった」と不満をあらわにしている[1]

復旦大学が2019年に大学憲章から「思想の自由」を削除したことも、ハンガリーの学問の自由をめぐる懸念を拡大させている[1]

復旦大学のキャンパス建設は、オルバーン・ヴィクトルが掲げる「東方開放政策」の一環であるが、中国に接近するオルバーン・ヴィクトルの外交姿勢や対中債務の急増に対する不安をかき立てており、EUNATOの内側に中国を招き入れる「トロイの木馬」になると批判されており、キャンパス建設を中国人労働者が担い、ハンガリーの納税者がその費用を支払う計画は、「ハンガリーには何らメリットがないように見える」「(中国からの融資は)経済的主権の喪失」「対中債務がかさみつつあり、危険だ」と批判されている[1]

2021年6月2日、バラニ・クリスティナ九区区長はカラーチョニュ・ゲルゲイ英語版(Karácsony Gergely [ˈkɒrɑ̈ːt͡ʃoɲ ˌɡerɡej])ブダペスト市長英語版と共同で、大学の建設予定地を取り囲む四つの道路名を、38086/12番地の「船着き場通り」から「自由香港通り」に、38086/176番地の「橋造り街」からチベット仏教の最高指導者にちなんで「ダライ・ラマ通り」に改称し、新たに「大市場」の地域の38086/160 と38086/161番地を「ウイグル犠牲者通り」と、同じく「大市場」の地域の38086/186番地を迫害されたカトリック司祭の名前にちなんで「謝士光ハンガリー語版通り」と命名したと発表した[4][5]。九区とブダペスト市は中国の人権問題を非難し、「大学建設計画が実現しないことを望むが、もし実現しても大学側はこれらの名前を我慢しなければならない」と述べている[6]。これに対して、中国外務省は「極めて不愉快」「中国とハンガリーは極めて良好な関係を保っている」とコメントしている[7]。ただし九区の道路名の命名および改称に関する決定は表向きはあくまでもCOVID-19 新型コロナウイルス感染症の緊急事態に対する対策の一環という形を取っている[8]

カラーチョニュ・ゲルゲイ英語版ブダペスト市長英語版は、ハンガリーの中国政府による広域経済圏構想「一帯一路」への参加により、中国への負債が積み重なるなかでハンガリーの経済危機が強まっており、復旦大学を誘致すれば、一層の中国依存から逃れられなくなると反対している[9]

2021年6月5日、ブダペストで復旦大学のキャンパス建設計画に反対する抗議デモが行われ、約1万人が参加した[10]カラーチョニュ・ゲルゲイ英語版ブダペスト市長英語版も参加した抗議デモでは、「復旦大はいらない! 東側ではなく西側!」と書かれプラカードや、「オルバーンフィデス反共を自称しているが、実際には共産主義者の仲間だ」として、オルバーン・ヴィクトルと所属政党フィデス=ハンガリー市民同盟は中国に擦り寄っていると批判するものもあり[10]、デモ参加者は「独裁を持ち込むな」などとシュプレヒコールを上げた[7]

2021年6月10日オルバーン・ヴィクトルは、復旦大学のキャンパスをブダペストに設置する計画について、住民投票で是非を問う方針を表明した[11]。中国接近をもくろむオルバーン・ヴィクトルは設置を推進してきたが、市民の猛反発を受けて姿勢を後退させた[11]

ハンガリーのシンクタンクである共和党研究所の最新世論調査によると、ハンガリー国民の66%が復旦大学の設立に反対しており、支持しているのは27%に過ぎず、 ハンガリーメディアは、復旦大学の建設により、ハンガリーは少なくとも数十億ドルの対中債務を新たに抱え込むと報じている[9]

日本における協定校

脚注

関連項目

外部リンク

東経121度29分57秒 / 北緯31.29889度 東経121.49917度 / 31.29889; 121.49917 (復旦大学)