超人ハルク (テレビドラマ)

超人ハルク』(ちょうじんハルク、The Incredible Hulk)は、アメリカン・コミック(アメコミ)の同名のキャラクターを元にした実写版テレビドラマ。アメリカCBS系で、1977年から1982年まで放送された。2023年よりユニバーサル版のパイロット版がNetflixで配信された。

概要

ハルクのキャラクターは、スタン・リージャック・カービーにより生み出され、1962年マーベル・コミックで初登場した。

1977年、「600万ドルの男」や「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」の制作で知られる、テレビ・プロデューサーのケネス・ジョンソンにより実写化され、2時間のパイロット版 "The Incredible Hulk" が制作された(日本では、第1・2話の「ハルク誕生」前・後編として放送)。デヴィッド・バナー博士役に「ザ・マジシャン」で主役を演じたビル・ビクスビー、変身後のハルク役には、ボディ・ビルダー1974年度ミスター・アメリカおよびミスター・ユニバースのルー・フェリグノが配された。その後、続編の2時間版 "Return of the Incredible Hulk"(再放送などでは2パートの "Death in the Family" に改題、日本でも「一人ぼっちの相続人」前・後編として放送)が制作された後、1時間枠のドラマ・シリーズとなった。

デヴィッドからハルクへの変身は、まず激怒したデヴィッドの目(虹彩)が白くなり、皮膚が緑色に変色(ここまではビクスビー)、筋肉が盛り上がって着ていた服が裂け、ハルクへ変貌(フェリグノ)というプロセスで行われた。白い目は、カラー・コンタクトレンズを装着して表現している。また、本当なら服が裂けるのであれば、当然ズボンも裂けて脱げ落ちなければおかしいのだが、そこはテレビの規制上、同色のバミューダ・パンツで丈が短くなったように見せてしのいでいた。

毎回のストーリーは、デヴィッドが放浪先で、さまざまな人々と関わることで起こる出来事を描くことに主眼が置かれている。しかし、結局はハルクに変身して騒ぎを起こし、マクギー記者の執拗な追跡も受けて長くとどまることができず、また放浪を続けるというエンディングとなる。このパターンは、1960年代のドラマ「逃亡者」の影響を受けている。「逃亡者」は、身に覚えのない妻殺しの罪で死刑を宣告された男が、刑事の追跡を逃れながら真犯人を探し求めて逃亡を続ける物語で、細かな違いはあるものの、構図的には非常に良く似ている。

シリーズ終了後、1988年に続編のスペシャル版 "The Incredible Hulk Returns" 「新 超人ハルク/勇者伝説」が作られ、1989年には "The Trial of the Incredible Hulk" 「超人ハルク'90」、1990年には "The Death of the Incredible Hulk" 「超人ハルク/最後の闘い」が、デヴィッド・バナー役のビル・ビクスビーの監督で制作された。ビクスビーは、その後1993年に死去している。

2003年には映画「ハルク」が製作されたが、設定やストーリーには違いが見られる。また2008年にはスタッフ、キャストを一新した映画「インクレディブル・ハルク」が製作されており、元祖ハルク役者のルー・フェリグノが、警備員役で顔を見せている。

ストーリー

科学者デヴィッド・バナー博士は、ドライブ中に起きた自動車事故で、妻ローラを失った過去を持つ。人間は非常時に潜在能力(いわゆる火事場の馬鹿力)を発揮することがあるが、デヴィッドにはそれが起きず、炎上する車から彼女を救出できなかったのだ。それ以来彼は、共同研究者のエレーナ・マークス博士と共に、潜在能力の研究に没頭していた。

やがてデヴィッドは、潜在能力を引き出すためにガンマ線を使うことを思いつき、自らの身体に照射するが、誤って大量に浴びてしまう。その結果、DNAに変調をきたした彼は、激怒すると緑色の大男に変身する体質となってしまった。しばらくすると元に戻るのだが、その間の記憶は残らないのだ。

一方、ナショナル・レジスター紙(シカゴに本社のある1960年創立の新聞社)の記者ジャック・マクギーは、デヴィッドの研究に興味を抱いて身辺を嗅ぎ回っていた。マクギーがデヴィッドの研究所に忍び込んだとき、爆発事故が起きる。エレーナを助けようとしたデヴィッドは、大男に変身。マクギーは、大男が彼女を抱えて外に出るのを目撃する。

エレーナは爆発による負傷のため死亡し、デヴィッドもまた死亡したとされた。マクギーは、大男が二人を殺したのだと思いこみ、「ハルク」と名づけてその行方を追跡することを決意する。生きたまま墓標を立てられたデヴィッドは、自分の身体を元に戻すか、変身を抑制する方法を見つけるため、ハルクを探し求めるマクギーから逃れながら、当てのない旅を続けることになる。

キャスト

スタッフ

  • 製作総指揮:ケネス・ジョンソン
  • 音楽:ジョー・ハーネル
  • プロデューサー - 服部比佐夫(日本テレビ)
  • 翻訳 - 磯村愛子
  • 効果 - PAG
  • 調整 - 坂巻四郎
  • スタジオ - グロービジョン・スタジオ
  • 演出 - 壺井正
  • 日本語版製作 - 日本テレビ
  • 日本語版配給 - 日本MCA

日本での放送

日本では1979年4月7日[2]から1980年9月まで、日本テレビの毎週土曜23:45 - 翌0:40(JST)で放送。本作を最後に、1973年10月開始の『コルディッツ大脱走』以来7年続いた土曜23:45枠の海外ドラマ[3]は終了した。

  • なおこの枠は1972年10月以来、土曜19:30 - 20:55(→20:54)にプロ野球ナイター中継が編成された際、この枠のドラマ(当初は『土曜イレブン』)を休止して、20:00枠の『全日本プロレス中継』を録画放送していたが、本作が始まった1979年4月より『全日本プロレス中継』を土曜17:30 - 18:25で放送する様に変わったので、本作はプロレスで休止になる事は無かった。

1990年代前半にはスカイパーフェクTV!のスーパーチャンネル(現:スーパー!ドラマTV)で再放送されていた[4]

各話リスト

日本では70本ぐらいまで放送された(正確な話数は不明)。

No.邦題原題日本放送日
1-2ハルク誕生 前編・後編The Incredible Hulk1979年
4月7日
4月14日
3ロッキーを夢見た男Final Round4月21日
4檻の中の対決The Beast Within4月28日
5華麗なる殺人の罠Of Guilt, Models and Murder5月5日
6恐怖のタイムズスクエアーTerror in Times Square5月12日
7空港ロッカー14番The Hulk Breaks Las Vegas5月19日
8スカイパニック7477475月26日
9赤ちゃんの値段Life and Death6月2日
10大地震Earthquakes Happen6月9日
11-12一人ぼっちの相続人 前編・後編A Death in the Family
The Return of the Incredible Hulk
6月16日
6月23日
13-14愛の鎮魂歌 前編・後編Married
Bride of the Incredible Hulk
1979年
6月30日
7月7日
15海岸通りの未亡人The Waterfront Story7月14日
16アントワークの怪物The Antowuk Horror7月21日
17パパ、僕をぶたないでA Child in Need7月28日
18愛馬レインボーズ・エンドRainbow's End8月4日
19不思議の国のアリスAlice in Disco Land8月11日
20チャイナタウンの決闘Another Path8月18日
21輪転機をとめろStop the Presses9月1日
22手錠のままの脱出Escape from Los Santos9月8日
23油田大爆破Wildfire9月15日
24悪の予備軍Like a Brother9月22日
25逃避A Solitary Place9月29日
26幽霊屋敷Haunted10月6日
27私はヘミングウェイNo Escape10月13日
28発掘されたハルクの壁画Kindred Spirits10月20日
29チャイナタウンの再会The Disciple11月24日
30天使のリッキーRicky12月1日
31包帯の中の顔 前編Mystery Man, Part 112月8日
32包帯の中の顔 後編Mystery Man, Part 212月15日
33激突!強奪されたタンクローリーNever Give a Trucker an Even Break12月22日
34復讐の連続スタンド爆破Vendetta Road12月29日
35殺人タックルKiller Instinct1980年
1月5日
36ハルクを名乗る男The Confession1月12日
37モロー博士の人体実験The Quiet Room1月19日
38危険な廃棄物Blind Rage1月26日
39囚人番号1124The Slam2月2日
40ロックの女王Metamorphosis2月9日
41ロデオの英雄Jake2月16日
42タクシードライバーBehind the Wheel2月23日
43老奇術師の恋My Favorite Magician3月1日
44人間狩りThe Snare3月8日
45天才少女ジョリーンBrain Child3月15日
46金庫破りCaptive Night3月22日
47祈祷師ババラオBabalao3月29日
48二人のデビッドBroken Image4月5日
49Homecoming4月12日
50魔女狩りSideshow4月19日
51マクギーの記者魂Proof Positive4月26日
52オートバイ野郎Long Run Home5月3日
53デスマスク殺人事件Deathmask5月10日
54落ちた天使Falling Angels5月17日
55女ボスルーシーRock and a Hard Place5月24日
56山火事On the Line5月31日
57一攫千金を夢見た男The Lottery6月7日
58誘拐 残された9時間Nine Hours6月14日
59仮面舞踏会の夜Equinox6月21日
60超能力を持つ女The Psychic6月27日
61脅迫状Goodbye, Eddie Cain7月5日
1980年7月12日から9月30日(第62話から第??話まで)までに放送された邦題は不明
原題不明のエピソード
?Prometheus, Part 1
?Prometheus, Part 2
?Free Fall
?Dark Side
?Deep Shock
?Bring Me the Head of the Hulk
?Fast Lane
?Goodbye, Eddie Cain
?King of the Beach
?Wax Museum
?East Winds
?The First, Part 1
?The First, Part 2
?The Harder They Fall
?Interview with the Hulk
?Half Nelson
?Danny
?Patterns
?The Phenom
?Two Godmothers
?Veteran
?Sanctuary
?Triangle
?Slaves
?A Minor Problem

テレビ映画

邦題原題米国放送日
新 超人ハルク/勇者伝説(VHS)
超人ハルク リターンズ(DVD)
The Incredible Hulk Returns1988年5月22日
超人ハルク'90(VHS)
超人ハルク "敵か?味方か?テアデビル"(DVD)
The Trial of the Incredible Hulk1989年5月7日
超人ハルク/最後の闘いThe Death of the Incredible Hulk1990年2月18日

その他

  • 「スカイパニック747」“747”のエピソードで、映画「エアポート'75」のボーイング747飛行・着陸シーンが流用されている。
  • 「激突! 強奪されたタンクローリー」“Never Give a Trucker an Even Break”のエピソードで、スティーヴン・スピルバーグ監督のテレビ映画「激突!」のカーチェイス・シーンが流用されている。
  • 続編の「新 超人ハルク/勇者伝説」では、北欧神話の神オーディンの息子ソートールの英語読み)が登場。これは、ソーを主人公としたテレビシリーズのパイロット版を兼ねていたからだが、シリーズ化は実現しなかった。また、マクギー記者の所属先が、ニューヨーク・グローブ紙に変わっていた。
  • 続編の「超人ハルク'90」では、同じマーベル・コミックのヒーロー、デアデビル(なぜか日本語版ではテアデビルになっている)が登場。これも、デアデビルのテレビシリーズのパイロット版を兼ねていたからだが、やはりシリーズ化はされなかった。
  • 日本では過去にユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン(現NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)より、パイロット版が収録されたDVDが発売された。日本語吹替はソフト用に新録されたものが収録されている。ブルース・バナー博士(吹替:楠大典)、マクギー記者(吹替:廣田行生)。
  • ジョージ秋山の漫画に『超人晴子』という作品があり、タイトルは「超人ハルク」のパロディになっているが、内容は全く関係がない。
  • 2016年発売のビデオゲーム「レゴ マーベル アベンジャーズ」ではルー・フェリグノがプレイアブルキャラクターとして登場しており、ハルクに変身することができる。

関連作品

テレビ(続編)

  • “The Incredible Hulk Returns”(1988):邦題「新 超人ハルク/勇者伝説」ポニーキャニオン版VHS)/「超人ハルク リターンズ」(JVD版DVD)
    • 制作総指揮:ニコラス・コリア、ビル・ビクスビー
    • 脚本・監督:ニコラス・コリア
日本語吹替
役名俳優VHS版DVD版
デヴィッド・ブルース・バナー博士ビル・ビクスビー田中信夫有川博
ジャック・マクギー記者ジャック・コルヴィン青野武
ジャック・ルボーティム・トマーソン納谷六朗
マギー・ショウリー・パーセル沢海陽子
ドナルド・ブレイクスティーヴ・レヴィット加瀬康之
ジョシュア・ランバートジョン・ガブリエル秋元羊介
ザック・ランバートジェイ・ベイカー小野塚貴志
  • “The Trial of the Incredible Hulk”(1989):邦題「超人ハルク'90」日本コロムビア版VHS)/「超人ハルク 敵か?味方か?テアデビル」(JVD版DVD)
    • 制作総指揮:ジェラルド・ディペゴ
    • 制作:ビル・ビクスビー、ロバート・ユーイング、ヒュー・スペンサー・フィリップス
    • 脚本:ジェラルド・ディペゴ
    • 監督:ビル・ビクスビー
日本語吹替
役名俳優VHS版DVD版
デヴィッド・ブルース・バナー博士ビル・ビクスビー田中信夫有川博
ウィルソン・フィスクジョン・リス=デイヴィス大平透楠見尚己
マット・マードックレックス・スミス安原義人真殿光昭
エリー・メンデスマルタ・デュボワ駒塚由衣幸田直子
エドガーニコラス・ホーマン納谷六朗坂東尚樹
アルバート・G・テンデリージョセフ・マスコロ加藤正之高瀬右光
  • “The Death of the Incredible Hulk”(1990):邦題「超人ハルク/最後の闘い」(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント版DVD[5]
    • 制作:ビル・ビクスビー、ロバート・ユーイング、ヒュー・スペンサー・フィリップス
    • 脚本:ジェラルド・ディペゴ
    • 監督:ビル・ビクスビー

映画

脚注

外部リンク

国内サイト

海外サイト

日本テレビ 土曜23:45 - 翌0:40枠
前番組番組名次番組
超人ハルク
【当番組まで海外ドラマ枠
ザ・ライブハウス'80