HSBCホールディングス

イギリスの金融グループ

HSBCホールディングス(エイチエスビーシーホールディングス、HSBC Holdings plc)はロンドンカナリー・ワーフに本社を置き、商業銀行を主体とする世界最大級のメガバンクである。1865年に香港で創設された香港上海銀行[1]を母体として1991年に設立された。

エイチエスビーシー・ホールディングス
HSBC Holdings plc
HSBC世界本部(ロンドンHSBCタワー
種類株式会社
市場情報LSEHSBA
NYSEHSBC
EuronextHSB
SEHK5
略称HSBC
本社所在地イギリスの旗 イギリス
ロンドンカナリー・ワーフ
エイト・カナダ・スクウェア
設立1991年(持株法人設立)
香港の旗 イギリス領香港1865年(香港上海銀行
業種銀行業
事業内容市中銀行投資銀行プライベート・エクイティ
売上高495億5200万米ドル(2021年通期決算)
営業利益189億6000万米ドル
純利益146億9300万米ドル
従業員数219697人
主要子会社香港上海銀行イギリスHSBC銀行英語版米国HSBC銀行英語版メキシコHSBC英語版ブラジルHSBC銀行=バンコ・マルチプロ英語版HSBCファイナンス英語版など(世界展開を参照)
関係する人物ダグラス・フリント英語版(会長)
スチュアート・ガリバー英語版(CEO)
トーマス・サザーランド英語版(創業者)
外部リンクwww.hsbc.com
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前身から引続き東洋におけるカストディサービスを担っている。2016年現在、HSBCのキャッシュ・マネジメント英語版は最も人気がある。これは束の間だけマネー・マーケット・ファンドへ投資できるという商品である。

HSBCのイギリス部門が収益源に占める比率は20%であり、最大の収益源は22%の香港部門である。HSBCの事業部門は、商業銀行・投資銀行・リテール銀行・グローバルプライベートバンキングの4つである[2]

2017年9月2日現在の主要株主では、首位にケネス・フィッシャー英語版のフィッシャー・アセット・マネジメント、二位にデビッド・ブース英語版の投資顧問会社(Dimensional Fund Advisors英語版)、それらに比べて保有株数が1/3以下の規模でカナダロイヤル銀行バンカメ、各種ミューチュアル・ファンドが存在している[3]。ブースはウェルズ・ファーゴインデックスファンドを草分けてから、1981年にDFAを立ち上げた。

沿革

旧香港上海銀行上海支店ビル(現上海浦東発展銀行本店)

包玉剛を義父にもつヘルムート・ゾーメン英語版が、1984年から1996年まで香港上海銀行の役員を、1996年から2005年まで会長代理を、1990年から2007年まで親会社のHSBCホールディングスの役員を務めている。包は鄧小平に厚遇されていた。

HSBC上場からベアリングス破産まで

ベアリングスの屍を越えて

世界金融危機以降

  • 2008年 - インドのIL&FS(Infrastructure Leasing & Financial Services英語版)インベスツマートを買収。IL&FSは1987年インド準備銀行HDFC、そしてミューチュアル・ファンド(Unit Trust of India英語版)の資本参加で設立された。
  • 2009年 - ワシントン合意2度目の改定。金の売却量を2014年まで合計4億トロイオンス以内に収める協定であった。
  • 2010年5月 - 米国株式市場が1962年以来最悪の相場となり、新興国市場にも影響した[4][注釈 2]。7月7日、フィナンシャル・タイムズBIS gold swap confuses as price rebounds という記事で、欧州の金融機関が346トンの金を担保に国際決済銀行からキャッシュを得ていたことを報道した。23日、「金価格は操作されている - 秘密の中央銀行」という記事が出た[5]

29日、またフィナンシャル・タイムズがBIS gold swaps mystery is unravelled という記事で、国際決済銀行からキャッシュを得ていた金融機関にHSBCやソシエテ・ジェネラル、さらにパリバがあったことと、引き出しがBIS側の要請であったことを明らかにした。

世界展開

以下は、税引前5,000万ドル以上の利益をあげている各国における展開の概要である[23]。HSBCホールディングスplcは英国に本部を置き、ヨーロッパ、アジア太平洋地域、アメリカ大陸、中東、アフリカにまたがる83の国と地域に10,000を超える拠点を擁し、2007年12 月末現在2兆3,540億米ドルの総資産を持つ世界有数の金融グループである。

南北アメリカ

  • アルゼンチン - アルゼンチンHSBC銀行英語版は、アルゼンチン全国に展開する150の支店を通じて、120万人の顧客に全般的な金融サービスを提供している。1987年に現地のバンコ・ロベルツを買収したミッドランド銀行を、さらに1997年にHSBCが買収し、HSBCブランドに変更した。このときフォレスタルと人的関係ができた。
  • バミューダ諸島 - バミューダ銀行英語版は2004年2月にHSBCに買収された。1889年設立の同行はタックス・ヘイヴンのバミューダにあって、HSBCの買収以降、投資ファンド、有価証券信託・預託、資産管理などの業務を推進している。
  • ブラジル - ブラジルHSBC銀行=バンコ・マルチプロ英語版は、HSBCの南アメリカ法人中最大の規模であった。1952年設立のバンコ・バメリンダス・ド・ブラジルから、1997年に営業を継承して発足した。ブラジルの550都市に1,700の支店と550の出張所を設置しており、同国銀行業界で10位以内にランクインしていた。この事業は2015年8月3日、HSBCがバンコ・ブラデスコに即金52億ドルで売却すると発表した[24]
  • カナダ - カナダHSBC銀行はカナダ第7の銀行であり、プリンスエドワードアイランド州を除く全国で営業している。同国における外資系銀行としては最大である。特に、バンクーバートロント華僑社会における存在感が大きい。
  • メキシコ - メキシコHSBC英語版はメキシコ4大金融グループの一角であり、1,400の支店と4,800台のATM、600万人の顧客を抱える。HSBCが2002年11月にバンコ・インテルナシオナールを買収し、2004年1月にHSBCブランドとなった。
  • アメリカ合衆国 - 米国HSBC銀行英語版およびHSBCファイナンス(HSBC Finance Corporation)は米国におけるHSBCの業務の中核であり、マリン・ミッドランド(1980年)、リパブリック・ニューヨーク(1999年)、ハウスホールド・インターナショナル(2003年)、メトリス(2005年)などの買収を通じて成長した。米国HSBC銀行はバッファローに本店を置き、旧リパブリックを拠点として全米に店舗網を構える。HSBCファイナンスは査定の厳格化された個人ローンを全米で展開している。

アジア太平洋

1993年までHSBCの本部が置かれた香港上海銀行本店ビル
  • オーストラリア - オーストラリアHSBC銀行英語版は1986年に銀行業免許を取得、支店網やダイレクトチャネルを通じた営業を行っている。
  • 中国 - HSBC銀行(中華人民共和国)はHSBCグループの源流であり、1865年3月3日に上海に最初の支店を開いた。これ以来、第二次世界大戦中の日本統治時代を除き、上海金融界では強い影響力を持つ。中国国民党政権下を経て、中国共産党政権下においても外国送金を行っていたが、1990年代以降の改革に伴い、再びサービスの幅を拡大させている。現地の関連企業として、交通銀行の19.9%、上海銀行の8%、中国平安保険の19.9%の株式を保有している。
  • インド - 香港上海銀行が、1853年設立のムンバイの銀行・マーカンタイル銀行を1959年に買収したのが原型である。内国銀行業務と同時に、グループサービスセンターを通じたインド企業の海外展開も支援している。
  • インドネシア - 香港上海銀行が1884年にジャカルタに最初のインドネシア支店を開いた。第二次世界大戦終戦後、1960年代中頃から業務の再建を開始し、同国最大手の外資系銀行となっている。
  • 日本 - 1866年に香港上海銀行(日本支店)を横浜市に開設して以来、日本では最も長い歴史を持つ外資系銀行である。東京都大阪府に支店を置き、事業法人を対象とした業務を行っているが、個人相手の業務からは撤退している。
  • マレーシア - マレーシアHSBC銀行英語版の起源は、香港上海銀行がペナン島に支店を開いた1884年に遡る。一時期マレーシア政府から紙幣発券を受託していた時期がある。1994年に同国初の現地法人が認可され、法的に分離された。
  • シンガポール - 香港上海銀行はシンガポール国債市場特別参加者であり、同国の認可債券仲介業者である。金融産業が活発なシンガポールでも最大規模のディーリングルームを設置し、100人以上の社員が勤務している。
  • 韓国 - 香港上海銀行が1897年に仁川広域市に初の支店を開き、現在では14支店を構える。2007年9月に、いったんは韓国外換銀行の株式を51%をローンスターから条件付きで買収することを合意したが、買収価格が折合わず2008年9月に破談となった。
  • 台湾 - 香港上海銀行台湾における初の支店は1885年の淡水鎮で、その後中国国民党が中国大陸と台湾島を統治していた時代を経て、現在においては中華人民共和国におけるの営業の一部として展開している。現在は18拠点に拡大している。
  • タイ - 香港上海銀行が法人向け業務を営業している。個人向け業務は2012年にアユタヤ銀行へ売却し、撤退した。

ヨーロッパ

  • フランス - フランスHSBC英語版は、フランス商業信用銀行(CCF)が前身であり、HSBCブランドで運営される800以上の支店をフランスに持ち、現在ではユーロゾーンにおけるHSBC傘下銀行の中核となっている。資本市場・国際市場業務や、富裕層向け業務に集中している。
  • ドイツ - HSBCトリンカウス・アンド・ブルクハルト英語版は1785年創業のパートナーシップ企業であるトリンカウス・アンド・ブルクハルトを前身とし、HSBCグループ企業中最古の歴史を持つ。プライベート・バンキング、法人向け業務や投資銀行業務を行う。
  • アイルランド - イギリスHSBC銀行英語版とその子会社が、保険, 再保険, 有価証券業務や、新設の消費者金融業務を行っている。ファンドマネジメント部門の受託資産は2006年時点で200億米ドルに達する[25]
  • マルタ - マルタHSBC銀行英語版はマルタ最大の銀行の1つ。株式を上場しているが、筆頭株主はHSBCグループである。ミッド=メッド銀行を前身とし、マルタの銀行史上2番手の最古参である。
  • スイス - HSBCプライベートバンク(スイス)(HSBC Private Bank (Suisse) SA)およびHSBCゴヤーツェラー銀行(HSBC Guyerzeller Bank AG)はHSBCのスイス業務子会社で、スイス国内に12拠点、プライベートバンキングとして全世界に74拠点を構える。
  • イギリス - イギリスHSBC銀行(HSBC Bank plc)はイギリス「4大商業銀行」の1行であり、イングランドウェールズに股がる広域な支店網を有し、少数ながらスコットランド北アイルランドにも支店を持つ。「ファースト・ダイレクト」の名のテレフォンバンキング・ネットバンキングがあるほか、「ベネフィカル・ファイナンス」という消費者ローンブランド、金融子会社のマークス・アンド・スペンサーがある。

中東アフリカ

  •  エジプト - エジプトHSBC銀行英語版は香港エジプト銀行として1982年に設立された。2001年4月にHSBCが持株比率を40%から94.5%に引き上げ、HSBCブランドとなった。エジプト最大の多国籍企業の1つであり、22支店を通じて銀行業務と関連する金融商品を提供している。
  • サウジアラビア - SABB(旧サウジ・ブリティッシュ銀行)の株式を40%保有しており、SABBがHSBCの代理店としての役割を果たしている。また、SABBとの合弁でHSBCサウジアラビアがあり、同国初の総合投資銀行業務を営んでいる。
  • カタール - 中東HSBC銀行英語版は、個人・法人双方の銀行業務をカタールで行っている。ドーハ、アル・サッド、ウェスト・ベイ、ラヤーン、グランド・ハマド通りの支店と21台のATMが稼働している。
  • アラブ首長国連邦 - 中東HSBC銀行の本店はアラブ首長国連邦に所在する。アラブ首長国連邦はHSBCの中東ビジネスの中核地域であり、16の支店がある。
  • トルコ - HSBC銀行AS英語版は、HSBCがトルコ市場に参入した1990年以来、M&Aを通じて拡大した。190支店を擁し、第15位の銀行となっている。個人・法人向け営業は、HSBCブランドの他、「アドバンテージ」ブランドでも行われている。

不祥事

香港上海銀行時代、戦前の金解禁に際し、モルガン商会やクーン・レーブロスチャイルドなどとシ団をつくった。その直後のドル買い事件ではナショナルシティ銀行野村証券などと買いに走った。この2社はICSDたるセデルの匿名口座に関与した。

2012年7月、麻薬取引による不正利得をケイマン諸島へ送り資金洗浄していたことが報告された[26]。2015年2月、スイスのジュネーブ検察当局は、資金洗浄に関与した疑いでHSBCプライベートバンクの家宅捜索を開始した[27]。2015年のスイスリークス事件では、情報が世界中のメディアへ拡散したが、スイス当局は社内から情報を持ち出した人物を告訴した(スイスでは、2011年にウィキリークスへ顧客情報を提供した容疑でジュリアス・ベア銀行の元幹部が逮捕されている[28])。2015年6月、HSBCは4000万スイスフランをジュネーブ当局へ支払うことになった。米国、フランス、ベルギー、アルゼンチンでは脱税捜査が継続している[29]

また、同年2月、HSBCは貴金属取引における価格カルテルの疑いで米司法省と商品先物取引委員会に捜査された。HSBCの他で判明した捜査対象は、バークレイズスコシアバンクUBSクレディ・スイスドイツ銀行ゴールドマン・サックスJPモルガン・チェースソシエテ・ジェネラルスタンダード銀行となっている[30]

さらに同年、HSBCは他のメガバンクと共に為替相場の不正操作をめぐる民事訴訟を提起された。関係性が疑われたメガバンクの内訳は、JPモルガン・チェースを初めとする世界勢力であり、FRBから揃ってベイルアウトを受けるほどの規模であった。日本とも取引が多い企業群で、一部は日本国債の流動化にも関わったが、バークレイズ、パリバ、ゴールドマン・サックスと共に、6月、和解に合意した[31]。同様の事件で、すでにシティグループやJPモルガン・チェース、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、バークレイズ、UBS、バンカメの6社が、反トラスト法違反で罰金を科されている[32][注釈 3]。この件に関して、ブラジル当局は30人の個人名を調査対象として発表した[33]

2009年に同行は新たなコピーとしてAssume Nothing(なにも想定しない、思い込みをしない等の意)を掲げたが、複数の国でこのコピーが誤訳によりDo Nothing(何もしないの意)となってしまった。この誤訳されたコピーを正しいものに直すために1000万ドルほどかかったとされる。

協賛スポーツ

脚注

注釈

出典

外部リンク