OpenDocument (オープンドキュメント、日: オフィス文書のためのオープン文書形式 [1] )は、XML をベースとしたオフィススイート 用のファイルフォーマット である。
構造化情報標準促進協会 (OASIS )[2] 、国際標準化機構 (ISO) / 国際電気標準会議 (IEC)[3] および日本産業規格 (JIS X 4401 :2014)[1] 、韓国 工業規格[4] 、ブラジル [5] 、南アフリカ [6] の標準規格に認定されている。競合国際規格として、「ISO/IEC 29500:Office Open XML(OpenXML, OOXML) 」がある。
概要 OpenDocumentは、OpenOffice.org が利用していたドキュメントファイルフォーマットを元に策定された、オフィスソフト用の文書ファイルフォーマットである。
一つの規格でありながら、テキスト 、表計算 (スプレッドシート)、プレゼンテーション の他、数式 、グラフィック ドキュメント、データベース の各形式をサポートしている。
多言語 対応となっており、仕様上は、文章・段落・文字列について、各々「言語 」及び「国 又は地域」を指定できるようになっている。
データの記述方法とその(画面上および紙上での)表現方法については一定の規格があるが、詳細な表現方法については各アプリケーションに依存している。そのため、閲覧するオペレーティングシステム やアプリケーションによって、表示される結果が異なることがある。しかし最近ではソフト間の対応によって、これらの問題は改善されつつある。
仕様 ODFは、複数のXMLファイルをZIP 形式でデータ圧縮 したファイルである。
ODFファイルの中身となっているXMLファイルはそれぞれ次のような内容となっている。
content.xml テキストコンテンツ meta.xml メタ情報。 settings.xml 設定情報 styles.xml テキストのスタイル情報 meta-inf/manifest.xml XMLファイルの構造 Thumbnails/thumbnail.png サムネイル画像(必須ではない) ファイルの種類 ファイルの種類 拡張形式 MIMEタイプ ODF仕様 ワープロ .odt application/vnd.oasis.opendocument.text 1.0- 表計算 .ods application/vnd.oasis.opendocument.spreadsheet 1.0- プレゼンテーション .odp application/vnd.oasis.opendocument.presentation 1.0- 図形 .odg application/vnd.oasis.opendocument.graphics 1.0- グラフ .odc application/vnd.oasis.opendocument.chart 1.0- 数式 .odf application/vnd.oasis.opendocument.formula 1.0- イメージ .odi application/vnd.oasis.opendocument.image 1.0- マスタードキュメント .odm application/vnd.oasis.opendocument.text-master 1.0- データベース .odb application/vnd.oasis.opendocument.base 1.2-[7]
バージョン OpenDocument 1.0 OpenDocument 1.0 は2005年 5月1日にOASIS標準規格として承認された規格である。 OpenDocument 1.0 (second edition) OpenDocument 1.0 (Second edition)は、2006年5月1日にISO/IEC 26300:2006 として公開された規格である。これはOASIS による Committee Specification を含み、JTC1 ballot のコメントを検討した上で、編集上の修正がなされたものである。国際規格化されたことに伴い、2007年に韓国工業規格 KS X ISO IEC 26300、2008年にブラジルABNT NBR ISO/IEC 26300、南アフリカSANS 26300 の各国で相次いで規格化された。日本に於いては、2010年にJIS X 4401:2010 - ウェイバックマシン (2013年10月3日アーカイブ分)として規格化された。 OpenDocument 1.1 OpenDocument 1.1 は2006年 10月19日にOASISにより策定された規格である。アクセシビリティの観点から諸機能が追加された[8] 。また、"The Open Document Format for Office Applications (OpenDocument) Specification"の バージョン1.1が、2007年 1月16日に行われた投票の結果、OASIS標準規格として2月1日に承認された[9] 。このことは2007年2月13日に公式に発表された[10] 。この規格は、2012年3月8日に ISO/IEC 26300:2006/Amd 1:2012 - Open Document Format for Office Applications (OpenDocument) v1.1として公開された。[11] [12] OpenDocument 1.2 OpenDocument 1.3 OpenDocument 1.3 は、2021年5月27日にOASIS標準規格として承認された規格である[17] 。OpenDocument 1.2を改訂したもので、ドキュメントへの電子署名、OpenPGPベースの暗号化、変更追跡などが加わった[18] 。 また、仕様不足であったところの明確化が行われている[19] 。 経緯 一般にプロプライエタリなフォーマットでは、そのプロプライエタリさを支えている「ライセンス」の文言上の禁止事項により以下のような問題点があることが極めて多い(著作権法上、そのような禁止事項にどのような法理があるのかはともかく)。
互換性が無い 複数のデータ形式は互換性がない。特定の製品で作成したデータは、基本的に他社の製品では使用することができない。 仕様が非公開 データ形式は公開されていないため、第三者が相互変換のためのツールを作成するなどの対策を行うことや対応するシステムを開発することは困難である。 このことは、既に広く使われている製品を選択せざるを得ない状況を生み、特定製品に依存するシステムを生むため、営業戦略において効果的であった。実際、MS-DOS 全盛時代において表計算ソフトLotus 1-2-3 、日本国内でワープロソフト一太郎 を普及させ、Windows 全盛期においてはオフィススイート製品の分野においてMicrosoft Office の独占に近い状態をもたらした一因ともなっている。
このように、特定ベンダによって独占されたファイル形式に依存すること(ベンダロックイン )は、コンピュータの環境が変わると過去のドキュメントの参照や編集ができなくなるなど、知的資産としてのドキュメントの存在意義を低下させる上に、電子文書の活用を妨げるものでもあった。
また、Microsoft Officeが提供されていないオペレーティングシステム (Linux など)の普及に伴い、Microsoft Officeとデータを交換できるオフィススイート向けファイル形式も必要とされていた。
要するに情報化社会において、(法学的にはともかく)コンプライアンスを遵守しライセンスに従わなければならないならば、プロプライエタリなフォーマットで作られたデータは、サポートの終了などによりゴミになってしまうか、ライセンス違反を犯すか、という多大なリスクとなっていた。
よって、特定ベンダに独占されないオープンなファイル形式(オープンフォーマット )の要求、オフィススイート共通のドキュメントファイル形式を策定する動きが起こり、特定のベンダーに依存しないオフィススイートのためのファイル形式として、OASIS のオフィス文書のためのオープン文書形式技術委員会によって策定された。なお、策定開始時の仕様は、サン・マイクロシステムズ が「OpenOffice.org」のファイル形式をもとに作成したものである。
反応 支持団体 OpenDocumentは、一部の公共団体、企業とソフトウェア製品から支持されている。
採用 組織 採用時期 備考 国土交通省(日本) 2007年 2007年頃から申請書などでODF形式を採用[23] マサチューセッツ州政府(アメリカ) 2007年0 1月0 1日 2005年9月2日に米国マサチューセッツ州 が2007年1月1日以降の同州の公文書のフォーマットをODFとする方針を発表した。その後、担当者の辞任等が相次ぎ、2007年8月1日、マサチューセッツ州は、ODFに加えOOXMLを同州の公文書フォーマットの一つとして追加採用する方針を発表している。 マレーシア政府 2007年0 8月 2007年8月、ODF形式をマレーシアの公共機関で採用する計画を発表[24] ベルギー政府 2007年0 9月 ベルギー政府は、2007年9月から連邦政府全省庁でODFの可読を義務化、2008年9月からODF を文書交換用ファイル形式として採用した[25] 。 会津若松市役所(日本) 2008年0 8月 2008年8月よりOpenOffice.org を標準ソフトとして840台に導入し、ODF形式を標準フォーマットとして採用した[26] 。 交野市役所(日本) 2010年0 7月 Microsoft Office 2007ならびに2010年7月からOpenOffice.org を標準ソフトとして導入し、ODF形式を標準フォーマットとして採用した[27] 。 経済産業省(日本) 2011年 2011年ごろから一部調達仕様により、ISO 26300(ODF)形式により保存したファイルの納品を要求[28] 。 徳島県庁(日本) 2011年0 7月0 1日 2011年7月1日からOpenOffice.org を標準ソフトと位置付け約4,000台に導入し、ODF形式を標準フォーマットとして採用した[29] 。 JA福岡 2011年12月0 6日 2011年12月6日からLibreOffice を標準ソフトとして約400台に導入、ODFを標準フォーマットとして採用した[30] 。 甲賀市役所(日本) 2012年0 4月 2012年4月ごろよりLibreOffice を導入。ODFを標準フォーマットとして採用[31]
ポルトガル政府 2012年11月 ポルトガル政府は、2012年11月、ODF形式を採用[32] イギリス政府 2014年0 6月 イギリス政府は、2014年6月、政府が利用する外部交換用文書形式としてODF採用を発表 [33] 台湾中央政府 2015年0 6月 2015年6月、台湾中央政府は政府の利用する文書形式としてODFの利用を発表。自治体や企業にODFの利用を呼びかける。[34] [35] [36] イタリア国防省 2015年0 9月 イタリア国防省は使用するオフィスソフトをLibreOfficeに移行し、省内で利用する文書形式にODFを採用。[37] フランス政府 2015年0 7月 2015年7月、フランス政府は政府内で利用する文書形式としてODFの利用を確認。OOXML の利用は却下された。[38] 北大西洋条約機構 義務的な利用[39]
アプリケーションソフトウェアの対応 The Document Foundation LibreOffice は、ODFを標準ファイル形式として採用している。Apacheソフトウェア財団 Apache OpenOffice は、 ODFを標準ファイル形式として採用している。ジャストシステム 一太郎 2006、花子 2007も追加モジュール(一太郎は2006年9月 、花子は2007年2月 リリース)によってODFの入出力に対応した。また、三四郎 2008、Agree 2008では2008年10月リリースの修正プログラムを適用することで対応する。4製品ともその後のバージョンでは標準で対応している。また、JUST Slide は当初から標準で対応している。JUST Calc とJUST Focus では、法人向け版のみ対応している。マイクロソフト 2009年 に「2007 Office system Service Pack 2 (SP2)」をリリースし、Word 、Excel 、PowerPoint でODFの読み込み、保存に対応した[40] 。また、Windows 7付属のワードパッド でも対応した[41] 。批判 OASIS ODF 1.0、1.1、ISO/IEC 26300:2006 では、表計算の数式言語、構文、関数が明確に定義されていない[42] [43] 。 OASIS ODF 1.0、1.1、ISO/IEC 26300:2006 では、電子署名が定義されていない[44] 。 脚注 参考文献 関連項目 外部リンク ウィキニュースに関連記事があります。国際標準化機構がオープンドキュメントを認定