ジャッカル

イヌ属の哺乳類

ジャッカル英語: Jackal、胡狼)は、哺乳綱食肉目イヌ科イヌ属 Canis に属するキンイロジャッカルに似た中小型種3[1]–4[2]種の総称である。ただしこれらは、互いに最も近縁な関係になく、単系統ではない。漢字では犴(かん)、野犴(やかん)という呼び名も充てられる。

ジャッカル
セグロジャッカル
分類
ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:ネコ目(食肉目)Carnivora
:イヌ科 Canidae
亜科:イヌ亜科 Canini
:Lupulella属 Lupulella

イヌ属 Canis

階級なし:“ジャッカル” “Jackal”
和名
ジャッカル
英名
Jackal
  キンイロジャッカル   ヨコスジジャッカル   セグロジャッカル
  キンイロジャッカル
  ヨコスジジャッカル
  セグロジャッカル

名称

語源はサンスクリットキンイロジャッカルを意味するシュリガーラ (शृगाल śṛgāla) である。この語はペルシャ語のシャガール (شغال shaghāl)、トルコ語のチャカル (çakal) を経由して英語のジャッカル(Jackal)となり日本語に借用された。[3]

中国では司馬相如『子虚賦』「其上則有鵷鶵孔鸞、騰遠射干」に付けられたの張揖注に「射干は狐に似て木に縁る」とあり[4]、これがジャッカルと考えられている。漢訳仏典では「野干」「悉伽羅」などと音訳された[5][6]:329。ジャッカルのいない中国ではキツネと混同され、日本でも両者は混同された。

特徴

体長65〜106cm、尾20〜41cmほどで、オオカミに似るが耳は大きく、より尖った口吻を持つことが多い。アジア南部〜ヨーロッパ南東部、アフリカに分布。平原や林に1〜6頭で棲み、夜出て猛獣の食べ残しをあさるほか、ネズミウサギイタチなどを襲い、サトウキビなども食べる。穴を掘るのが上手く、4〜9匹の子を生む。

種類

キンイロジャッカル C. aureus
南アジア中央アジア西アジア東南ヨーロッパ北アフリカ東アフリカに生息[7]
アビシニアジャッカル C. simensis
エチオピアに生息。アビシニアオオカミなどとも呼び、ジャッカルに含めないこともある[1]
セグロジャッカル L. mesomelas
南部アフリカに生息。
ヨコスジジャッカル L. adustus
中部アフリカに生息。

旧亜種

アフリカンゴールデンウルフ
キンイロジャッカルのうち、アフリカ大陸に生息する個体群はユーラシア大陸に生息する個体群と形態に差異が見られていた。近年の遺伝子解析の結果によりこれらの個体群は オオカミにより近縁であると判明した[7][8]。これらの個体群は現在 Canis lupaster (暫定名 アフリカンゴールデンウルフ)とされ、独立種とする説が有力である。

雑種

オオカミ(イヌ)と近縁なキンイロジャッカルとアビシニアジャッカルは、イヌと野生状態で交雑し[9]、繁殖能力を持つ正常な仔が生まれる。イヌ(イエイヌ)とジャッカルの交配種(品種又は雑種)をジャッカル・ハイブリッド(・ドッグ)と呼ぶ。

交配されたジャッカルの種によっては獰猛なものもいるが、狼犬と比べると小柄で、ペットとして飼育される国もある。しかし、日本ではジャッカルは特定動物に指定されているため、その交配種であるジャッカル・ハイブリッドも飼育には許可がいる。ロシアでは空港爆発物麻薬を捜索するための探知犬として、キンイロジャッカルシベリアン・ハスキーの交配犬種のスリモヴ・ドッグがいる。

系統関係

4種の類縁関係は完全には判明していないが、単系統群を作ることはない[9][7]

キンイロジャッカルとアビシニアジャッカルは、オオカミやコヨーテに近縁である。

ヨコスジジャッカルLupulella adustus

セグロジャッカルLupulella mesomelas

リカオンLycaon pictus

ドールCuon alpinus

アビシニアジャッカル
Canis simensis

キンイロジャッカルCanis aureus

アフリカンゴールデンウルフ
Canis lupaster

コヨーテCanis latrans

タイリクオオカミ
Canis lupus

イヌ

文化

死肉を漁るジャッカルの姿から、に関係する神と結び付けられる。

エジプト神話双子の冥界神(異説あり)アヌビスウプウアウトは、エジプトのイヌ属であるエジプトジャッカルの頭部を持つ半人半獣、あるいはエジプトジャッカルそのものの姿に描かれてきた。しかし、エジプトジャッカルは、実際はCanis lupaster(暫定名 アフリカンゴールデンウルフ)であることが判明した[7][10]

ヒンドゥー教では、女神チャームンダー(ドゥルガーの分身の七母神の1神)が、ジャッカルを乗り物(ヴァーハナ)とする。火葬場に住み、痩せ細った体でしばしば死体の上に立つ姿で表される。また、同じくドゥルガーの分身であるカーリーも、幾多のジャッカルに囲まれて火葬場に居住するとされる。動物の肉が供えられると、カーリーはジャッカルの姿で司祭者の前に現われるとも伝えられる[11]

脚注

外部リンク