ソフト・パワー

ソフト・パワー: soft power)とは、相手国(民)を軍事力で脅したり、買収したり、プロパガンダで騙すのでもなく[1][2]自国の価値観文化魅了味方につける能力・力[3]。自国の魅力を通じて、他国に与えられる影響力[2]。例として、日本国のソフトパワーの源泉として、アニメ漫画など2次元コンテンツ、日本食などその他の伝統文化がある[1][3][4][5]。ソフトパワーがより強い国に人々は惹かれ、ベルリンの壁崩壊は砲撃(ハードパワー)ではなく、居住国よりも西側諸国のソフトパワーに惹かれた東ドイツの人々によって起きている[2]

概要

ソフト・パワーという概念を提唱したのは、クリントン政権下において国家安全保障会議議長、国防次官補を歴任したアメリカ・ハーバード大学大学院ケネディスクール教授ジョセフ・ナイである。1980年代のアメリカ衰退論に異議を唱えた著書 Bound to Lead (邦題『不滅の大国アメリカ』)で最初に提示され、Soft Power: The Means to Success in Wold Politics(邦題『ソフト・パワー』)において精緻化されたものである。 中国は一帯一路だけでなく、途上国へ新型コロナウイルスの自国産ワクチン供与によるソフトパワー増進しようとしたが、高圧的外交姿勢であるために評価されなかった[2]

ある国の有する文化や政治的価値観などの魅力などで、他国民から信頼や支持や理解、共感を得ることで国家の対外的発言力を獲得し、自国の外交に有利に働く力[6]。対義語のハードパワーとは、ある国家の「軍事力経済力で(他国や他国民を)無理やり従わせる」力のこと[3]

例として、中国はパンダをソフトパワーに利用してきたが[7]、その他のコンテンツは中国共産党管理下のために海外人気がなく、軍事力や経済力由来のハードパワー頼りでソフトパワーが弱い[8][2]。逆に日本はソフトパワーも強い国であり、反日感情自体は強い韓国内でさえも日本旅行の増加だけでなく、日本のゲーム・映画に対するコンテンツ人気で日本語学習者も増えている。英誌エコノミストは、過去に中国の経済的台頭期に在任していたオバマ政権(2009年1月20日 – 2017年1月20日)は「学生100万人が中国語を学ばなければならない」と言ったほどだった中国語学習需要はソフトパワーと共に低下した。韓国でも2020年境に日本語が・中国語選択者を上回り、2024年時点で約2倍となっている。韓国だけでなく、中国忌避は世界的な現象となっている。中国を最大の貿易国とするオーストラリア、ニュージーランドでも2024年時点で中国語専攻者が7~8年前比較で半減、インド政府は中国語を奨励外国語から除外している[8]

脚注

-->

参考文献

  • ジョセフ・S・ナイ『ソフトパワー:21世紀国際政治を制する見えざる力』山岡洋一訳、日本経済新聞社、2004年。ISBN 978-4532164751

関連項目