サイン (占星術)

サイン英語: sign)またはアストロロジカル・サイン英語: astrological sign)は、西洋占星術などのホロスコープを用いる占星術において、黄道帯(または、獣帯)を黄経で12等分したそれぞれの領域。黄道帯(zodiac)とは、天球上の黄道を中心とした、惑星太陽などを含む)が運行する帯状の領域である。サインは古くは(きゅう)と呼ばれていた。12のサインを合わせて十二宮黄道十二宮と言う。ゾディアック・サイン(zodiac sign)とも呼ばれる。

黄道12宮。各点は1つの宮の始点を示し、30度ごとに区切られている。天の赤道 (Celestial eauator) と黄道 (Ecliptic) の交点が牡羊座の始点()と天秤座()の始点を示す。天球の極(PとP')を含む大円は、黄道と0°の蟹座()と0°の山羊座()で交差している。この図では、太陽は模式的に水瓶座()の始点に配置されている。

なお、12サインの基点である白羊宮の0°をどこに定めるかは、占星術の流派などによってさまざまだが、大きく分けてトロピカル方式とサイデリアル方式のふたつに分類できる。西洋占星術ではトロピカル方式、インド占星術ではサイデリアル方式が主流である。

西洋占星術でサインと同様に黄道帯を12分する概念に「ハウス」があるが、ハウスがより具体的な事柄を扱うのに対して、サインはより基本的な性格・性質を司る。

由来

サインは、古代バビロニア時代に設定されたと考えられている。ただし、順や名前は、現代のものとは若干異なる。バビロニアから西に伝わったものはギリシア神話の体系に組み込まれ、インドにはギリシアから紀元前後に伝えられた。古代中国にも十二次というサインと類似したものがあるが、伝播によって成立したものかは定かではない。後に仏教経典を通じてインドから中国にサインが伝えられ、さらに日本にも伝わった。

漢字の宮名は西洋から伝来した当初に意訳された占星術用語と思われる。天文学が制定した星座・星座名とは異なるが、混用されることが多い。中国から日本に伝来した十二支ともよく似ているが、相互の関係については詳しく分かっていない。

サインと星座

実際の黄道十二星座は大小さまざまであるが、サインは実際の星座とは別に黄道を12等分したものである。初期には実際の星座とサインは、大雑把に一致していたが、歳差によってずれていった。歳差を発見したのは古代ギリシャヒッパルコスである。

歳差により、春分点は星座に対し72年で1°の割合で移動しており、その角度はヒッパルコスの時代から見ればおおよそサイン1つ分に近い20°以上に達している(正確な度数はサイデリアルを採用する各流派ごとにことなる)。これへの対処は、流派により異なる。

  • トロピカル方式では、サインは春分点に対し固定されている。そのため、サインの黄経は一定である。いっぽう、サインと星座はおおよそ1つずれている。
  • サイデリアル方式では、サインは星座に対し固定されている。そのため、サインと星座は、幅は異なるがおおよその位置は一致している。いっぽう、サインの黄経は変化する。

13星座占いは、黄道上に新たにへびつかい座が移動してきたとして12ではなく13星座を使うものである。歳差の処理はサイデリアル方式に近いが、実際の星座の大きさをそのまま黄道にあわせて使うので、13サインは大小さまざまな不均等なものとなる。これは古代にもまったく例のないことで、現代人の発想になる新しい占いである。

黄道十二宮

基本情報

歳差(時の流れ)により春分点が移動したために星座が1つ隣の十二宮へと移動している(例:やぎ座磨羯宮から宝瓶宮へと移動)。北の天頂(天の北極)を向いて北極を基準に時計回りで観察すると十二次(星座に古代中国天文学での名称を当てはめた物)は西から東(逆時計回り)へと並ぶ[1]。暦年の長さが一定でなく回帰年と一致していないことと、時差があることにより、年とタイムゾーンにより期間が数時間から1日程度変化する。また100年以上の時間スケールではトロピカル方式では歳差により大きくずれるために表の日付はおおよそである。各年の正確な期間は西洋占星術用の天文暦やコンピュータソフトなどを用いて知ることができる。黄経は度以下の単位を使わない場合は0-29°などとなる。サイデリアル方式の日付は流派によって様々な説があるため注意が必要である。

正式名・読み仮名・ラテン語式英名星座による
一般的名称
十二辰[2][3]記号黄経太陽が通過する期間(おおよそ)
画像文字コードトロピカル方式トロピカル方式サイデリアル方式二十四節気
白羊宮はくようきゅうAriesおひつじ座 U+264800–30°03月21日 04月19日04月14日 05月14日春分清明–穀雨直前
金牛宮きんぎゅうきゅうTaurusおうし座 U+264930–60°04月20日 05月20日05月15日 06月14日穀雨立夏–小満直前
双児宮そうじきゅうGeminiふたご座 U+264A60–90°05月21日 06月21日06月15日 07月16日小満芒種–夏至直前
巨蟹宮きょかいきゅうCancerかに座 U+264B090–120°06月22日 07月22日07月17日 08月16日夏至小暑–大暑直前
獅子宮ししきゅうLeoしし座 U+264C120–150°07月23日 08月22日08月17日 09月16日大暑立秋–処暑直前
処女宮しょじょきゅうVirgoおとめ座 U+264D150–180°08月23日 09月23日09月17日 10月17日処暑白露–秋分直前
天秤宮てんびんきゅうLibraてんびん座 U+264E180–210°09月24日 10月23日10月18日 11月16日秋分寒露–霜降直前
天蝎宮てんかつきゅうScorpioさそり座 U+264F210–240°10月24日 11月22日11月17日 12月15日霜降立冬–小雪直前
人馬宮じんばきゅうSagittariusいて座 U+2650240–270°11月23日 12月21日12月16日 01月14日小雪大雪–冬至直前
磨羯宮まかつきゅうCapricornやぎ座 U+2651270–300°12月22日 01月19日01月15日 02月12日冬至小寒–大寒直前
宝瓶宮ほうへいきゅうAquariusみずがめ座 U+2652300–330°01月20日 02月18日02月13日 03月14日大寒立春–雨水直前
双魚宮そうぎょきゅうPiscesうお座 U+2653330–360°02月19日 03月20日03月15日 04月13日雨水啓蟄–春分直前

また、この十二宮は東西に伝播し、インドから中国を経て密教にも取り入れられている。密教の経典『宿曜経』には以下のように記され、星曼荼羅や胎蔵曼荼羅の最外院にその姿が見られる[4]。なお、『宿曜経』では師子宮(獅子宮)が第一宮とされる。

宿曜経での名前読み仮名別名二十七宿[5]
師子宮ししぐう(ししきゅう)師子神主星宿張宿翼宿
女宮じょぐう(じょきゅう)少女宮、室女宮翼宿軫宿角宿
秤宮びんぐう(びんきゅう)天秤宮、秤量宮角宿亢宿氐宿
蝎宮かつぐう(かつきゅう)蝎虫宮、天蝎宮氐宿房宿心宿
弓宮きゅうぐう(きゅうきゅう)天弓宮、人馬宮尾宿箕宿斗宿
摩竭宮まかつぐう(まかつきゅう)摩蝎宮斗宿女宿虚宿
賢瓶宮けんびょうぐう(けんびょうきゅう)瓶宮、宝瓶宮虚宿危宿室宿
双魚宮そうぎょぐう(そうぎょきゅう)魚宮、二魚宮室宿壁宿奎宿
羊宮ようぐう(ようきゅう)白羊宮、持羊神婁宿胃宿昴宿
牛宮ごぐう(ごきゅう)牛密宮、金牛宮昴宿畢宿觜宿
夫婦宮ふうふぐう(ふうふきゅう)婬宮、陰陽宮、男女宮觜宿参宿井宿
蟹宮かいぐう(かいきゅう)巨蟹宮井宿鬼宿柳宿

占星術における形而上学的意味

各サインには、西洋占星術において伝統的に用いられている、男性・女性の2区分[6](または性別[7])、活動・不動・柔軟の3区分[6](またはカーディナル・サイン(運動サイン、基本宮)、フィックスト・サイン(定着サイン、不動宮)、ミュータブル・サイン(可変サイン、柔軟宮)で分類される性質[7])、四大元素による分類である4区分[6](またはエレメント[7])などの形而上学的意味付けと、各サインと密接な関連を持つとされる占星術上の惑星(太陽や月も含む)が割り当てられている[8]

サインエレメント[9][10]エレメント五行変換十二宮の十二支五行性質[9][10]支配星[11]意味身体部位性別[9][10]記号ヘブライ文字
10磨羯宮土・金活動/基本宮06-000-土星自我女性 ל
11宝瓶宮水(土用期間は土旺)[12]・木不動/不動宮07-000-天王星土星独創男性 מ
12双魚宮柔軟/柔軟宮08-000-海王星木星交感女性 ס
01白羊宮活動/基本宮04-000-火星冥王星粗野頭部男性 פ
02金牛宮土・金木(土用期間は土旺)[12]・火不動/不動宮02-000-金星地球保守顔面女性 א
03双児宮柔軟/柔軟宮01-000-水星鋭敏男性 ב
04巨蟹宮活動/基本宮00-001-排他女性 ג
05獅子宮火(土用期間は土旺)[12]・金不動/不動宮00-000-太陽自信背中男性 ד
06処女宮土・金柔軟/柔軟宮01-000-水星分析腹部女性 ה
07天秤宮活動/基本宮02-000-金星機転男性 ו
08天蝎宮金(土用期間は土旺)[12]・水不動/不動宮09-000-冥王星火星情熱生殖器女性 י
09人馬宮柔軟/柔軟宮05-000-木星冒険太腿男性 כ

性別とエレメント

12のサインは男性サインと女性サインに二分され、火風水地の四元素(エレメント)に従った四分割でグループ化される[7]。エレメントによる分割で同じグループに属しているサインは相性がいいとされている[7]

アリストテレスの元素理論(『気象論』『生成消滅論』等)やアテナイアンティオコスの天体と四元素の図式によると、火と水が対極、風と土が対極となる。また属性は別の属性を生じて循環する関係となり、4つの元素の間には「プラトンの輪」と呼ばれる一連の周期的循環現象があり、火は風を助け(凝結して空気(風)となる)、風は水を助け(空気(風)は液化して水になる)、水は土を助け(水は固化して土になる)、土は火を助ける(土は昇華して火になる)[13][14][15][16][17][18]

男性星座は主として外に向かうエネルギーを持っており、積極的・躍動的であるとされる。逆に、女性星座は主として内に向かうエネルギーを持っており、消極的・内省的であるとされる[6]。男性星座・女性星座はそれぞれプラス星座・マイナス星座と呼んでもよいことになっている[6]

性別エレメント助ける属性対極記号[注釈 1]サイン
男性
プラス
白羊宮・獅子宮・人馬宮
双子宮・天秤宮・宝瓶宮
女性
マイナス
巨蟹宮・天蝎宮・双魚宮
金牛宮・処女宮・磨羯宮

性質(クオリティー)

12のサインはカーディナル、フィックスト、ミュータブルという三分割でグループ化される[7]。三分割で同じグループに属しているサインは互いに相性が悪いとされている[7]

性質記号[19]キーワードサイン
カーディナル・サイン
運動サイン
基本宮[7]
活動[6]
活動的[7]、行動的・外交的・エネルギッシュ[6]白羊宮・巨蟹宮・天秤宮・磨羯宮
フィックスト・サイン
定着サイン
不動宮[7]
不動[6]
頑固・忍耐強い[7]、内向的・マイペース[6]金牛宮・獅子宮・天蝎宮・宝瓶宮
ミュータブル・サイン
可変サイン
柔軟宮[7]
柔軟[6]
受動的・動かされやすい[7]、順応性が高い・持久力に欠ける[6]双子宮・処女宮・人馬宮・双魚宮

サン・サイン

サン・サイン(sun sign)は、太陽星座(たいようせいざ)ともいい、西洋占星術の用語。ネイタル・チャートでは、個人の出生時に太陽が位置したサインを指し、その人の生涯の方向性や意志などを表示するとされている。これをおおざっぱに簡略化した占いの一種が、サン・サイン占星術(太陽星座占い)といえる。しかし西洋占星術では、サン・サインは個人のネイタルチャートに限らず、トランジットプログレスでも、あるいはホラリー占星術などでも重視される幅広い基本概念である。

サインの分割

より詳細には、サインを10°ごとに3つのデーカン(第1デーカン、第2デーカン、第3デーカン)に等分する。デーカンの名はラテン語の10に由来する。

デーカンにもルーラーがあり、白羊宮から巨蟹宮までの第1デーカンはそのサインと同じ、第2デーカンは4つ後のサインと同じ、第3デーカンは8つ後のサインと同じ、獅子宮から天蠍宮までの第1デーカンは8つ後のサインと同じ、第2デーカンはそのサインと同じ、第3デーカンは4つ後のサインと同じ、人馬宮から双魚宮までの第1デーカンは4つ後のサインと同じ、第2デーカンは8つ後のサインと同じ、第3デーカンはそのサインと同じである。

12星座占いとの関係

12星座占いは、太陽が(トロピカル方式で)どのサインに位置するかで運勢を判定する占いである。

本来の占星術では、太陽は(重要度は高いが)十数個ある天体の一つに過ぎず、また、どのサインに位置するかだけではなく、どのハウスに位置するか、他の天体との位置関係、サインの中での位置も重要である。

また、太陽がサインを移る日時は年とタイムゾーンにより異なるが、特殊な資料を使わなくていいよう、一律同じ日付で占えるようになっている。

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 西山華耶『占星術』田島董美(絵)、現代書館〈FOR BEGINNERS〉、1995年。ISBN 978-4768400722 
  • 羽仁礼『図解 西洋占星術』新紀元社〈F-Files〉、2009年。ISBN 978-4775306819 

関連項目