世界陸上競技選手権大会

奇数年の8・9月に開催される陸上競技の世界大会
世界陸上から転送)

世界陸上競技選手権大会(せかいりくじょうきょうぎせんしゅけんたいかい、World Athletics Championships)は、奇数年8 - 9月に9 - 10日間開催される陸上競技で世界最高峰の大会である。通称世陸世界陸上世界選手権

世界陸上競技選手権大会
今シーズンの大会:
第19回大会(2023年度)
開始年1983年
主催ワールドアスレティックス
公式サイト
ワールドアスレティックス
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歴史

1980年モスクワオリンピックの西側諸国のボイコット問題(1979年12月に発生したソ連アフガニスタン侵攻の影響)を機に新設され、1983年ヘルシンキ第1回大会を開催した。1991年東京大会までは4の倍数年の前年(卯年未年亥年)に開催されていたが、1993年シュトゥットガルト大会以降は4の倍数年の翌年(丑年巳年酉年)にも開催されるようになり、2年ごとに開催されている。当初はヨーロッパ地域での開催が多かったが2005年ヘルシンキ大会以降2019年までアジア(夏季オリンピック前年の大会)とヨーロッパ(夏季オリンピック翌年の大会)の交互開催となっていた。世界選手権は、選手にとってオリンピックに並ぶ価値を持ち、数々の名勝負を演出してきた。オリンピックよりも世界記録や参加する国と地域の総数が多く(2004年アテネオリンピックの202に対し、2003年パリ大会では210)、歴史は浅いが陸上競技では最高峰の大会である。

実施競技についてはこれまで次のように変化している。

大会一覧

回数開催日程開催国 (回数)開催都市開催会場参加国・地域競技者数
11983年8月7日 - 14日  フィンランドヘルシンキヘルシンキ・オリンピックスタジアム1531333
21987年8月28日 - 9月6日 イタリアローマスタディオ・オリンピコ1561419
31991年8月23日 - 9月1日 日本東京(旧)国立競技場1621491
41993年8月13日 - 22日 ドイツシュトゥットガルトゴットリープ・ダイムラー・シュタディオン1871630
51995年8月5日 - 13日  スウェーデンイェーテボリウッレヴィ1901755
61997年8月1日 - 10日 ギリシャアテネアテネ・オリンピックスタジアム1971785
71999年8月20日 - 29日 スペインセビリアエスタディオ・オリンピコ2001750
82001年8月3日 - 12日 カナダエドモントンコモンウェルススタジアム1891602
92003年8月23日 - 31日 フランスサン=ドニフランス競技場1981679
102005年8月6日 - 14日  フィンランド (2)ヘルシンキヘルシンキ・オリンピックスタジアム1911687
112007年8月25日 - 9月2日 日本 (2)大阪長居スタジアム1971800
122009年8月15日 - 23日 ドイツ (2)ベルリンオリンピアシュタディオン2001895
132011年8月27日 - 9月4日 韓国大邱大邱スタジアム1991742
142013年8月10日 - 18日 ロシアモスクワルジニキ・スタジアム2031784
152015年8月22日 - 30日 中国北京市国家体育場2051761
162017年8月4日 - 13日 イギリスロンドンロンドン・スタジアム1971857
172019年9月27日 - 10月6日 カタールドーハハリーファ国際スタジアム2091972
182022年7月15日 - 24日[注 1][1] アメリカ合衆国ユージーン(オレゴン州)ヘイワード・フィールド192[注 2]1705
192023年8月19日 - 27日  ハンガリーブダペストネムゼティ・アトレーティカイ・ケズポント2022187
202025年9月13日 - 21日 日本 (3)東京国立競技場
212027年 中国 (2)北京市国家体育場
日程は現地時間

この他、当時オリンピックで行われなかった種目についての世界選手権として、以下の2大会3種目がIAAFから認められている。

全体の競技結果

1983年のヘルシンキ大会から2013年のモスクワ大会まで14回の大会で通算632の競技が行われ、合計1901個のメダルが授与されている[注 3]。そのうち、アメリカ合衆国選手団は国別で最多となる301個のメダルを獲得し、金メダル数では138個で他国を圧倒している(銀メダル88個、銅メダル75個)。メダル獲得総数・金メダル数とも2位はロシア連邦で、男子長距離走で有力な選手を多く揃えるケニアが金メダル数で3位となっている。また、今までに96の国や地域(現存しないものも含む)の選手がメダルを獲得し、そのうち64の国や地域(承前)では金メダルを獲得している。

全体の国別メダル獲得数は以下の通りである

順位国/地域
1 アメリカ合衆国195134114443
2 ケニア655848171
3 ロシア425248142
4 ジャマイカ406148149
5 ドイツ393648123
6 エチオピア353831104
7 Great Britain 334048121
8 Soviet Union23272878
9 中国22262775
10 キューバ22251663
11 East Germany21191656
12 ポーランド20202565
13 オーストラリア15161445
14 チェコ155828
15 フランス14192356
16 イタリア13182051
17 ウクライナ12151643
18 モロッコ1212933
19 スウェーデン127827
南アフリカ127827
21 ノルウェー126624
22 スペイン11191646
23 カナダ11181746
24 ベラルーシ10111233
25 バハマ99826
26 日本891835
27 バーレーン83314
28 オランダ791228
29 フィンランド78823
30 ポルトガル77923
31 ウガンダ72413
32 ギリシャ671225
33 アルジェリア62311
34 ニュージーランド6118
35 ルーマニア581225
36 ブルガリア53816
37 カタール52411
38 Czechoslovakia44311
39 クロアチア44210
40 コロンビア4329
41 ドミニカ共和国4217
42 アイルランド4206
43 スイス4059
44 ベネズエラ4015
Authorised Neutral Athletes[1]38112
45 West Germany36312
46 トリニダード・トバゴ35715
47 メキシコ34714
48 リトアニア3339
49 エクアドル3216
50 グレナダ3126
51 モザンビーク3115
52 デンマーク3014
53 ブラジル26816
54 エストニア26210
55 ベルギー22711
56 スロベニア2237
57 タジキスタン2103
ペルー2103
59 ナイジェリア15511
60 ナミビア1416
61 カザフスタン1359
62 トルコ1304
63 ボツワナ1214
64 ザンビア1203
65 インド1113
チュニジア1113
ブルキナファソ1113
68 エリトリア1102
パナマ1102
70 セントクリストファー・ネイビス1045
71 スロバキア1034
セルビア1034
73 シリア1023
バルバドス1023
75 セネガル1012
ソマリア1012
77 北朝鮮1001
78 ハンガリー07815
79 コートジボワール0415
80 イスラエル0325
81 プエルトリコ0314
82 ジブチ0213
ブルンジ0213
84 カメルーン0202
85 オーストリア0134
86 ガーナ0112
キプロス0112
スリナム0112
スリランカ0112
タンザニア0112
フィリピン0112
ボスニア・ヘルツェゴビナ0112
ラトビア0112
韓国0112
95 イギリス領ヴァージン諸島0101
エジプト0101
スーダン0101
バミューダ0101
パキスタン0101
100 アメリカ領サモア0011
イラン0011
ケイマン諸島0011
サウジアラビア0011
ジンバブエ0011
ドミニカ国0011
ハイチ0011
計 (国/地域数: 106)8788848802642
Notes

^[1]  中立選手 is the name under which Russian athletes competed in the 2017 and 2019 Championships. Their medals were not included in the official medal table.[2][3]

主要各国と日本の年代別金メダル数の変遷

1983-19871991-19992001-20092011-2019
 アメリカ合衆国18515150
 ケニア3131529
 ロシア10258
 ドイツ18812
 ジャマイカ131021
 イギリス38514
 エチオピア051311
 キューバ01093
 中国0739
 ポーランド2359
 フランス0454
 オーストラリア1263
 南アフリカ共和国165
 イタリア3620
 日本0303

選手の参加資格

文字通り世界一の陸上競技選手を決する大会であるが、かつてのオリンピックの様に各国の陸上競技連盟の推薦のみ。[注 4] で選手出場を無条件に認めてしまうと参加選手数が激増し、大会が肥大化して宿泊施設、食事の供給、選手の移動、競技の長時間化など様々な面で支障が発生する。そのため、開催年毎に各種目ごとにA・B二段階参加標準記録[1] が設定されており、この標準記録を突破した選手のみに参加資格が与えられるという一種の足切りが行われている。ただし、遠征費用などの都合からこれ以外にも派遣設定記録など個別に派遣条件を課している国もあり、たとえ標準記録を突破していても自国から大会参加が認められるとは限らない。

参加資格は、大きく分けて以下に大別できる[4][5][6][7]

  1. A標準記録突破者もしくはB標準記録突破者
    • A標準記録突破者は下記の特例選手を除いて1国3名まで(マラソンは7人エントリー5人出場[注 5]、リレーは6人エントリー4人出場)参加できる。
    • A標準記録突破者2名以内(0名の場合も含む)とB標準記録突破者1名の計3名までを参加させることができる[注 6]
    • 全種目でAとBいずれも突破者のいない国は特例として男女1名ずつの参加が許される[注 7]。特例としての出場ではあるがその1名のエントリーは何種目でも構わない(ただし、10000メートル、3000メートル障害、十種競技、七種競技を除く)。
    2009年大会より標準記録さえ突破していれば1種目につき補欠選手を含めた4名までエントリーできるようになった。実際に出場するのは従来どおり上記の3名まで。
  2. 各個人種目のエリアチャンピオン
    各個人種目のエリアチャンピオン(アジア選手権などの優勝者)は自動的にエントリー資格を取得、A標準突破者として扱われる。(マラソンを除く)
  3. 開催国枠
    開催国に限り、標準記録突破者がいない場合でも各種目1名(もしくはリレー1チーム)の出場枠が設けられている。
  4. 特別出場枠(ワイルドカード)
    前回大会優勝者と、前年のIAAFダイヤモンドリーグ・ダイヤモンドレース優勝者[注 8] に、各国の出場枠に関係なくIAAFから特別出場枠(ワイルドカード)が与えられる。
    ただし両者とも同じ国の場合は片方だけ与えられる[8]

注記(項目1-3について)第15回世界陸上競技選手権(2015/北京)から参加標準記録A、Bの区分は廃止された。[9][10][11]

大会記録

太字で記載されている記録は世界記録も兼ねている記録。

男子

種目記録選手国籍日時大会
100m9秒58ウサイン・ボルト ジャマイカ2009年8月16日 ベルリン大会
200m19秒192009年8月20日
400m43秒18マイケル・ジョンソン アメリカ合衆国1999年8月26日 セビリア大会
800m1分42秒34ドノバン・ブレイジャー(Donovan Brazier) アメリカ合衆国2019年10月1日 ドーハ大会
1500m3分27秒65ヒシャム・エルゲルージ モロッコ1999年8月24日 セビリア大会
5000m12分52秒79エリウド・キプチョゲ  ケニア2003年8月31日 パリ大会
10000m26分46秒31ケネニサ・ベケレ エチオピア2009年8月17日 ベルリン大会
マラソン2時間05分36秒タミラト・トラ エチオピア2022年7月17日 オレゴン大会
110mハードル12秒91コリン・ジャクソン イギリス1993年8月20日 シュトゥットガルト大会
400mハードル46秒29アリソン・ドス・サントス ブラジル2022年7月20日 オレゴン大会
3000m障害8分00秒43エゼキエル・ケンボイ  ケニア2009年8月18日 ベルリン大会
20km競歩1時間17分21秒ジェファーソン・ペレス エクアドル2003年8月23日 パリ大会
35km競歩2時間23分14秒マッシモ・スタノ イタリア2022年7月24日 オレゴン大会
50km競歩3時間36分03秒ロベルト・コジェニョフスキ ポーランド2003年8月27日 パリ大会
4×100mリレー37秒04ネスタ・カーター
マイケル・フレーター
ヨハン・ブレーク
ウサイン・ボルト
ジャマイカ2011年9月4日 大邱大会
4×400mリレー2分54秒29アンドリュー・バルモン
クインシー・ワッツ
ブッチ・レイノルズ
マイケル・ジョンソン
アメリカ合衆国1993年8月22日 シュトゥットガルト大会
走高跳2m41ボーダン・ボンダレンコ  ウクライナ2013年8月15日 モスクワ大会
棒高跳6m21アルマンド・デュプランティス  スウェーデン2022年7月24日 オレゴン大会
走幅跳8m95マイク・パウエル アメリカ合衆国1991年8月30日 東京大会
三段跳18m29ジョナサン・エドワーズ イギリス1995年8月7日 イェーテボリ大会
砲丸投23m51ライアン・クルーザー アメリカ合衆国2023年8月19日 ブダペスト大会
円盤投71m46ダニエル・スタール  スウェーデン2023年8月21日 ブダペスト大会
ハンマー投83m63イワン・チホン  ベラルーシ2007年8月27日 大阪大会
やり投92m80ヤン・ゼレズニー  チェコ2001年8月12日 エドモントン大会
十種競技9045点アシュトン・イートン アメリカ合衆国2015年8月29日 北京大会

女子

種目記録選手国籍日時大会
100m10秒65S.リチャードソン アメリカ合衆国2023年8月21日 ブダペスト大会
200m21秒41シェリカ・ジャクソン ジャマイカ2023年8月25日 ブダペスト大会
400m47秒99ヤルミラ・クラトフビロバ チェコスロバキア1983年8月10日 ヘルシンキ大会
800m1分54秒681983年8月9日
1500m3分58秒52タチアナ・トマショワ(Tatyana Tomashova) ロシア2003年8月31日 パリ大会
3000m8分28秒71曲雲霞 中国1993年8月16日 シュトゥットガルト大会
5000m14分26秒83アルマズ・アヤナ エチオピア2015年8月30日 北京大会
10000m30分04秒18ベルハネ・アデレ2003年8月23日 パリ大会
マラソン2時間18分11秒ゴティトム・ゲブレシラシエ2022年7月18日 オレゴン22大会
100mハードル12秒12トビ・アムサン ナイジェリア2022年7月24日 オレゴン22大会
400mハードル50秒68シドニー・マクラフリン アメリカ合衆国2022年7月22日 オレゴン22大会
3000m障害8分53秒02ノラ・ジェルト カザフスタン2007年8月27日 オレゴン22大会
10000m競歩42分55秒49アナリタ・シドチ(Annarita Sidoti) イタリア1997年8月7日 アテネ大会
10km競歩42分13秒イリナ・スタンキナ(Irina Stankina) ロシア1995年8月7日 イェーテボリ大会
20km競歩1時間25分41秒オリンピアダ・イワノワ(Olimpiada Ivanova)2005年8月7日 ヘルシンキ大会
50km競歩4時間05分56秒イネス・エンリケス ポルトガル2017年8月13日 ロンドン大会
4×100mリレー41秒03タマリ・デビス
トワニシャ・テリー
ガブリエル・トーマス
シャカリ・リチャードソン
アメリカ合衆国2023年8月25日 ブダペスト大会
4×400mリレー3分16秒71グウェン・トーレンス
ジール・マイルス=クラーク
ナターシャ・カイザー
マイセル・マローン
アメリカ合衆国1993年8月22日 シュトゥットガルト大会
走高跳2m09ステフカ・コスタディノヴァ  ブルガリア1987年8月30日 ローマ大会
棒高跳5m01エレーナ・イシンバエワ ロシア2005年8月12日 ヘルシンキ大会
走幅跳7m36ジャッキー・ジョイナー・カーシー アメリカ合衆国1987年9月4日 ローマ大会
三段跳15m50イネッサ・クラベッツ  ウクライナ1995年8月10日 イェーテボリ大会
砲丸投21m24ナタリア・リソフスカヤ ソビエト連邦1987年9月5日 ローマ大会
バレリー・アダムス ニュージーランド2011年8月29日 大邱大会
円盤投71m62マルティナ・ヘルマン 東ドイツ1987年8月31日 ローマ大会
ハンマー投80m85アニタ・ヴォダルチク ポーランド2015年8月27日 北京大会
やり投71m99マリア・アバクモワ ロシア2011年9月2日 大邱大会
七種競技7128点ジャッキー・ジョイナー・カーシー アメリカ合衆国1987年9月1日 ローマ大会

日本の大会別獲得メダル数

大会名
1983年 ヘルシンキ0000
1987年 ローマ0000
1991年 東京(開催国)1102
1993年 シュトゥットガルト1012
1995年 イェーテボリ0000
1997年 アテネ1012
1999年 セビリア0112
2001年 エドモントン0213
2003年 パリ0134
2005年 ヘルシンキ0022
2007年 大阪(開催国)0011
2009年 ベルリン0112
2011年 大邱1001
2013年 モスクワ0011
2015年 北京0011
2017年 ロンドン0123
2019年 ドーハ2013
2022年 オレゴン1214
2023年 ブダペスト1012
合計891835

テレビ中継放送

1997年より日本のTBS→TBSテレビワールドアスレティックス(当時IAAF)のオフィシャルブロードキャスターとなっている[12]。この大会以後、日本国内の民放では地上波・衛星を通してTBS系列[注 9]の独占放送となっている。TBSの放映権取得後は、2022年の第18回オレゴン大会までの25年間・13大会にわたり織田裕二中井美穂が進行役を務めた[13]

なお日本においては、第1回の1983年テレビ朝日、第2回の1987年から第5回の1995年までは日本テレビ放送網が放映権を得ており、特に東京開催となった第3回・1991年大会はホストブロードキャスター(他にサブライセンスでNHK BS1(当時衛星第1放送))を担当した。

アメリカではNBCユニバーサル、ヨーロッパでは欧州放送連合加盟各局(ユーロビジョン・ネットワーク)、韓国ではKBS、中国ではCCTVがそれぞれ放送を行っている。

陸上競技主要大会

脚注

注釈

出典

関連項目

  • 世界陸上競技選手権大会メダリスト一覧 (男子)
  • 世界陸上競技選手権大会メダリスト一覧 (女子)
  • 陸上競技日本代表

外部リンク