東日本大震災による各種施設の被害

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東日本大震災による各種施設の被害(ひがしにほんだいしんさいによるかくしゅしせつのひがい)では、東日本大震災東北地方太平洋沖地震)によって各種施設に生じた被害の事例について記す。

津波で被災した南三陸町防災対策庁舎
東京タワーの曲がったアンテナ(2011年3月11日、東京都港区
福島第一原子力発電所

政府の推計被害額

2011年6月24日内閣府は被害が甚大であり、その時点で全体像の把握はできないもののストック(建築物、ライフライン施設、社会基盤施設等)の推計被害額を復旧と復興の議論の参考に資するためとして発表した[1]。なおこの推計には福島第一原子力発電所事故による被害額は含まれない[2]

項目推計被害額項目明細
建築物等約10兆4000億住宅・宅地、店舗・事務所、工場・機械等
ライフライン施設約1兆3000億円水道、ガス、電気、通信・放送施設
社会基盤施設約2兆2000億円河川、道路、港湾、下水道、空港等
農林水産関係約1兆9000億円農地・農業用施設、林野、水産関係施設等
その他約1兆1000億円文教施設、保健医療・福祉関係施設、廃棄物処理施設、その他公共施設等
総計約16兆9000億円

国土交通省による阪神・淡路大震災の推計被害額は約9兆6000億円である[1]

産業施設

岩手県から千葉県までの太平洋岸では、製油所や多くの工場が被災し、産業界にも幅広く影響が出ている。

炎上する製油所(2011年3月11日、千葉県市原市
  • 千葉県市原市にあるコスモ石油千葉製油所では、高圧ガスタンクが落下して下にあったガス管が破裂し、爆発炎上した[3]。21日に鎮火を確認したが、ガスタンク25基のうち少なくとも13基を失った[4]。また作業員6人が負傷し、うち1人が重傷を負った[5]。この火災に伴うデマが広がった。

官公庁

官公庁施設については、東北・関東・北海道・中部で計370施設が被害を受けた。[10]被害総額については集計がない。主要な施設の被害は以下の通り。

所在地施設名業務再開日被害概要
宮古市宮古市役所3月25日[11]1階部分浸水
釜石市釜石市役所10月1日1階・地階部分浸水・受電設備喪失
大槌町大槌町役場隣地に移転全壊・死者夥多
陸前高田市陸前高田市役所移転全壊・死者夥多
北上市北上市役所休業せず給水・空調設備喪失
遠野市遠野市役所移転全壊
南三陸町南三陸町役場移転全壊・死者夥多
女川町女川町役場移転全壊
石巻市石巻市役所数日後1階部分が数日間水没
石巻市石巻市役所北上総合支所移転全壊・死者夥多
石巻市石巻市役所雄勝総合支所移転全壊
亘理町亘理町役場隣地に移転躯体損傷・使用不能
山元町山元町役場隣地に移転躯体損傷・使用不能
福島市福島県庁東分庁舎一部移転躯体損傷・使用不能
郡山市郡山合同庁舎北分庁舎一部移転躯体損傷・使用不能
郡山市郡山市役所未定躯体損傷・崩落により死者
国見町国見町役場移転地盤液状化・使用不能
須賀川市須賀川市役所移転躯体損傷・使用不能
双葉町双葉町役場移転原発地域
大熊町大熊町役場移転原発地域
富岡町富岡町役場移転原発地域
楢葉町楢葉町役場移転原発地域
飯舘村飯舘村役場移転原発地域
葛尾村葛尾村役場移転原発地域
広野町広野町役場2012年3月1日原発地域
川内村川内村役場2012年4月1日原発地域
水戸市水戸市役所建て替え[12]躯体損傷・使用不能
高萩市高萩市役所移転躯体損傷・使用不能
笠間市笠間市役所笠間支所移転躯体損傷・使用不能
佐野市佐野市役所移転躯体損傷・使用不能
大田原市大田原市役所建て替え[13]躯体損傷・使用不能
かすみがうら市かすみがうら市役所千代田庁舎[14]移転躯体損傷・使用不能
日立市日立市役所一部移転躯体損傷・3階より上層使用不能
秩父市秩父市役所建て替え躯体損傷・使用不能
習志野市習志野市役所移転躯体損傷・使用不能
江東区国土交通省青海総合庁舎休業せず7階から出火

公共施設

本震でホールの天井が崩落したり、建物が倒壊・損壊する被害が、東北地方関東地方の広い範囲で発生した。

詳細は、ミューザ川崎シンフォニーホール#東日本大震災による被害を参照。

学校

震災が発生したのは、年度末の卒業式終業式が行われる時期に当たったが、震災の被害によって元の校舎で卒業式や終業式並びに入学式、次年度を迎えることができなかった学校も多くあった。詳細は各学校の記事を参照。

岩手県
宮城県
  • 石巻市立大川小学校 - 津波によって校舎の損傷だけでなく、避難中の児童74人、教職員10人が死亡・行方不明となった。難を逃れた児童22人が石巻市立飯野川第一小学校へ通学している。
栃木県
茨城県
埼玉県
  • さいたま市立栄小学校 - 本校舎が50センチ沈下し、使用不能になった。仮設校舎を建設し、校舎を解体、2012年に新校舎が着工、2014年に完成した。
千葉県

病院

宮城県・岩手県・福島県の33の災害拠点病院のうち、31病院が一部損壊の被害を受けた。また、震災を契機に全国的に耐震診断や老朽化した病院の建て替え・耐震化工事が加速した。

  • 公立志津川病院 - 4階まで津波が押し寄せ、患者107人中72人が死亡または行方不明、職員も3人が死亡
  • 石巻市立雄勝病院 - 患者40人が全員死亡・行方不明、職員30人中24人が死亡・行方不明
  • 岩手県立高田病院 - 患者と医師20人が死亡
  • 双葉病院 - 隣接するドーヴィルを含め50人が死亡

博物館

商業施設

地震によりスロープが崩落したコストコ多摩境倉庫店

商業施設の建物被害については、各市町村や各企業単位以上の集計が行われなかったため、被害の全容は不明で終わっている。政府発表としては、平成23年7月14日付で内閣府が「被災地にある総合スーパーの約3割、コンビニ店舗の4割強」[24]が震災により営業停止したと発表したに留まる。

それぞれの商業施設の被害状況は以下の通り。

総合スーパー・ショッピングセンター・百貨店

所在地店舗名営業再開日被害概要
大船渡市三陸ショッピングセンターサンリア4月1日[25]外壁・天井崩落
一関市イオン一関店3月21日外壁・天井崩落・看板塔傾斜
陸前高田市リアスコースト・ショッピングセンターリプル-全壊流失
大槌町シーサイドタウンマスト12月22日[26]浸水・火災
仙台市三井アウトレットパーク 仙台港6月25日[27]1階部分浸水
仙台市カインズモール仙台港4月8日[28]浸水
仙台市ララガーデン長町4月8日立体駐車場崩落
仙台市イオンタウン仙台泉大沢3月13日エスカレーター崩落[29]
仙台市仙台泉プレミアム・アウトレット6月17日[30]電気・空調設備被害
仙台市セルバ4月13日[31]内装被害
仙台市さくら野百貨店仙台店4月5日高層階外壁崩落
石巻市イオンモール石巻3月31日[32]避難者による店舗占拠
塩竈市イオンタウン塩釜6月25日[33]1階部分浸水
気仙沼市イオン気仙沼店4月1日[34]1階部分浸水
多賀城市イオン多賀城店8月10日[35]1階部分浸水
利府町イオンモール利府(現:イオンモール新利府 北館)3月15日[36]天井崩落、買物客に犠牲者
郡山市ザ・モール郡山4月15日天井崩落、スプリンクラー作動による水損
郡山市Ati郡山9月22日躯体損傷
郡山市ショッピングモールフェスタ3月13日エスカレーター崩落
いわき市鹿島ショッピングセンターエブリア3月26日[37]スプリンクラーによる水濡
いわき市MEGAドン・キホーテラパークいわき店4月11日[38]原発30km圏内による自主退避
富岡町トムトム-警戒区域
浪江町サンプラザ-警戒区域
大熊町スーパーセンターPLANT-4大熊店-警戒区域
大洗町大洗リゾートアウトレット7月16日[39]1階部分浸水
水戸市丸井水戸店4月15日設備損傷
稲敷市パルナ2012年8月3日液状化・使用不能
柏市丸井柏VAT(現:柏マルイ)4月1日設備損傷
町田市コストコ多摩境倉庫店2月24日[40]駐車場スロープ崩落、死者あり[注 1]

スーパーマーケット

チェーン名被災店舗再開不能店舗原発地域店舗
ヨークベニマル約100[42]3(湊鹿妻・中浦・笹谷)5(富岡・大熊・夜の森・浪江・原町)
マックスバリュザ・ビッグ78[43]--
西友24[44]1(多賀城桜木)-
生活協同組合62[45]2(閖上・アイトピア)-
ジョイス4[46]2(山田・みたけ)-
マイヤ6[47]6(本店・中央・綾里・高田・リプル・大槌)-
ウジエスーパー7[48]1(志津川駅前)-
ヤマザワ6[49]--
フレスコキクチ5[50]-1(大木戸)
びはんストア21(駅前)-

コンビニエンスストア

チェーン名被災店舗再開不能店舗原発地域店舗
セブン-イレブン約600[51]約2016
ローソン387[52]208
ファミリーマート約300[53]-8
サークルKおよびサンクス約200[54]10-
ミニストップ160[55]23

その他小売チェーン

チェーン名被災店舗再開不能店舗原発地域店舗
ファーストリテイリング174[56]--
DCMホールディングス28[57]--
カインズ16[58]--
コメリ16[59]5(陸前高田・唐桑・志津川・山元・丸森)6(浪江・富岡・双葉・楢葉・飯舘・小高)
ヤマダ電機54[60]--
ケーズデンキ約100[61]-1(富岡(開店予定店舗))
コジマ56[62]--
ニトリ13[63]--
ドン・キホーテ10[64]--

レジャー施設

日本動物園水族館協会の発表では、14の動物園・水族館で被害があったと発表した。[65]この集計に含まれていないものも含め、主な被害状況は以下の通り。

所在地施設名営業再開日被害概要
青森市青森県営浅虫水族館3月22日停電・物資欠乏
男鹿市秋田県立男鹿水族館4月1日停電・物資欠乏
久慈市もぐらんぴあ移転全壊・飼育魚ほぼ全滅
気仙沼市シャークミュージアム-全壊・飼育魚全滅
気仙沼市はまなすステーション-全壊・飼育魚全滅
気仙沼市岩井埼フロムナードセンター-全壊・飼育魚全滅
陸前高田市海と貝のミュージアム-全壊・飼育魚全滅
山田町鯨と海の科学館-全壊・飼育魚全滅
松島町マリンピア松島水族館4月23日浸水・電気設備喪失・飼育魚一部死滅
大洗町アクアワールド・大洗4月1日停電・物資欠乏
羽生市さいたま水族館4月1日電力不足
江戸川区葛西臨海水族園4月1日電力不足
盛岡市盛岡市動物公園4月9日停電・物資欠乏
仙台市八木山動物公園4月23日設備被害
那須町那須どうぶつ王国4月2日併設の温泉施設被害
日立市日立市かみね動物園3月22日ペンギン舎倒壊
宮代町東武動物公園3月26日電力不足
東松山市埼玉県こども動物自然公園3月26日電力不足
台東区恩賜上野動物園4月1日電力不足
日野市多摩動物公園4月1日電力不足
武蔵野市井の頭自然文化園4月1日電力不足
羽村市羽村市動物公園4月1日電力不足
足立区足立区生物園4月2日電力不足
千葉市千葉市動物公園4月1日電力不足

テーマパーク・総合レジャー施設・遊園地の主な被害は以下の通り。

所在地施設名営業再開日被害概要
奥州市とうほくニュージーランド村7月1日施設被害
仙台市仙台ハイランド4月27日遊戯施設損傷
仙台市八木山ベニーランド4月16日遊戯施設損傷
郡山市郡山カルチャーパーク4月29日風評・物資欠乏
小野町リカちゃんキャッスル4月29日風評・物資欠乏
田村市こどもの国ムシムシランド2012年7月14日避難準備区域
いわき市スパリゾートハワイアンズ10月1日天井崩落・プール損壊
日立市奥日立きららの里5月1日施設損壊
日光市日光江戸村4月18日電力不足

公共ホールと同様に、映画館シネマコンプレックスでも天井の崩落や建物の損傷が、東北と関東の各地で数多く発生した。

宮城県内では5月時点でも復帰の見通しが立っていない施設が多かった。関東では、被害が軽微である施設は修繕工事を経ておおむね4月中までに再開したが、茨城県内のシネマコンプレックス(イオンシネマ下妻など複数)、千葉県印西市にあるシネリーブル千葉ニュータウン[注 2]などが甚大な被害を受け、復旧・再開まで長期間を要する見通しとなった[66]

史跡・文化財

土台を残して消失した六角堂(2011年4月6日・茨城県北茨城市
噴砂によって堰き止められた小野川(2011年3月12日、千葉県香取市
  • 茨城県水戸市にある偕楽園では、地盤沈下が多数発生し、休園となった。当時は梅まつりが開催されるなど観光シーズンでもあったが、梅まつりも中止となった[72]

科学技術関連施設

この震災は、東北太平洋岸や関東東部の科学研究施設や実験施設にも大きな影響を与えた[75][76]

  • 大槌町にあった東京大学大気海洋研究所は建物・設備とも全壊した。[82]
  • 情報通信研究機構おおたかどや山標準電波送信所(福島県田村市川内村)では、3月11日14時48分31秒から16時40分12秒にかけ、地震及び地震被害回避を期して停波が実施された。翌3月12日に福島第一原子力発電所事故に伴う災害対策基本法避難指示区域(半径20km圏内に該当)に指定されたため、19時46分より再び停波を実施した。その後、誤った電波を発射しないよう監視する仕組みなどを追加することにより無人で運用できるよう改修し、4月21日13時54分に暫定的に送信を再開したが[86][87]、4月25日12時6分に発生した落雷により再び停波した。同送信所周辺は4月22日以降警戒区域に指定されているが、5月9日に職員が送信所へ一時立ち入りして機器の修理を行い、同日13時8分から再び暫定的に送信を再開している。ただ、送信再開後も雷の発生等天候の状況によっては落雷回避の為に遠隔操作による停波を実施している。
  • 国立天文台水沢VLBI観測所岩手県奥州市)では、3月11日の本震によって観測所自体が東へ2.09メートル、南へ1.15メートル(合わせて東南東へ2.4メートル)移動し、0.13メートル沈下したことが、GPS欧州宇宙機関が運用しているガリレオ衛星を用いた観測から明らかになった。その後の余震などによってさらに1割程度の動きが加わり、3月下旬までに元の位置から東へ2.36メートル、南へ1.23メートル動いている[88]

海浜・干潟

  • 宮城県仙台市では、渡り鳥の飛来地として知られ、国が「海浜鳥獣保護区特別保護地区」に定めていた蒲生干潟が津波により壊滅し、県は再生不能と見ている[89]
  • 千葉県西部の東京湾に面した三番瀬でも、各所で異変が発生した。船橋市のふなばし三番瀬海浜公園では、液状化により園内及び人工海浜に多大の被害が出たため、全施設を立ち入り禁止とした。このため潮干狩り・プールは同年内の日程を全てキャンセルした[91]

治水・利水施設

小野川の崩壊箇所
  • 福島県須賀川市では、藤沼ダムが決壊して死者・行方不明者8人を出した上、貯水量のほとんどを失った(当該記事参照)。

その他

脚注

注釈

出典

関連項目