ポール・トーマス・アンダーソン

アメリカの映画製作者

ポール・トーマス・アンダーソン(Paul Thomas Anderson, 1970年6月26日 - )は、アメリカ合衆国映画監督脚本家映画プロデューサー世界三大映画祭の全てで監督賞を受賞している。

Paul Thomas Anderson
ポール・トーマス・アンダーソン
ポール・トーマス・アンダーソン
2007年
別名義P.T. Anderson
生年月日 (1970-06-26) 1970年6月26日(53歳)
出生地アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス
国籍アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ジャンル映画監督脚本家プロデューサー
活動期間1988年 -
配偶者マーヤ・ルドルフ(婚姻なし)
主な作品
ハードエイト
ブギーナイツ
マグノリア
パンチドランク・ラブ
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ザ・マスター
インヒアレント・ヴァイス
ファントム・スレッド
リコリス・ピザ
 
受賞
カンヌ国際映画祭
監督賞
2002年パンチドランク・ラブ
ヴェネツィア国際映画祭
銀獅子賞(監督賞)
2012年ザ・マスター
国際映画批評家連盟賞
2012年『ザ・マスター』
ベルリン国際映画祭
金熊賞
2000年マグノリア
銀熊賞(監督賞)
2008年ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
全米映画批評家協会賞
監督賞
2007年『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
ニューヨーク映画批評家協会賞
脚本賞
2017年ファントム・スレッド
2021年リコリス・ピザ
ロサンゼルス映画批評家協会賞
監督賞
2007年『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
2012年『ザ・マスター』
ニュー・ジェネレーション賞
1997年ブギーナイツ』『ハードエイト
放送映画批評家協会賞
コメディ映画賞
2021年『リコリス・ピザ』
英国アカデミー賞
オリジナル脚本賞
2021年『リコリス・ピザ』
その他の賞
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プロフィール

来歴

カリフォルニア州ロサンゼルス出身。父親は俳優・司会者のアーネスト・アンダーソン。9人兄弟の3番目で父と特に仲が良く、12歳でビデオカメラを買ってもらい、映画監督になる夢を支援されていた。ティーンエイジャーの頃から脚本を書き始め、ニューヨーク大学に入るがすぐに中退。テレビ番組のプロダクション・アシスタントなどを経て短編映画を製作するようになる。

1992年の短編『シガレッツ&コーヒー』がサンダンス映画祭で注目されるとハリウッドから声が掛かり、本作をベースにした長編映画『ハードエイト』(1996年)で長編映画監督デビューを果たす。

その翌年には監督2作目となる『ブギーナイツ』が公開される。10代の頃に撮ったポルノ業界についての短編モキュメンタリーである『The Dirk Diggler Story』を長編に作り直した本作がスマッシュヒットを記録した上にアカデミー脚本賞にもノミネートされたことで、弱冠20代ながらも映画監督としての評価を確立させる。

3作目の『マグノリア』(1999年)では、トム・クルーズらスターを起用し、一風変わった10人の主人公の24時間を、エイミー・マンの曲にのせて描く群像劇を演出。興行的にはやや振るわなかったものの、第50回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞するなど高い評価を再び獲得した。

4作目の『パンチドランク・ラブ』では、アダム・サンドラーを主演に迎え、悲壮感を抱えた男をシリアスに演じさせて新たな一面を引き出させた上に、その強烈で一風変わった世界観も好評を博し、カンヌ国際映画祭 監督賞を受賞した。

5作目の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)では、ベルリン国際映画祭監督賞を始めとする多数の映画賞における監督賞を受賞。非道な石油王を演じたダニエル・デイ=ルイスは米国の主要映画賞を総なめにし、第80回アカデミー賞で2度目となるアカデミー主演男優賞を受賞した。他にも最多8部門でノミネートされていたものの、受賞は主演男優賞と撮影賞の2部門のみに留まり、作品賞監督賞は、同じく最多8部門でノミネートされていたコーエン兄弟の『ノーカントリー』に奪われた。しかし、英国のトータル・フィルム誌など「00年代最高の映画」と推す批評家も多く、英BBCが選んだ「21世紀 最高の映画100本」では第3位に選ばれている[1]

6作目の『ザ・マスター』(2012年)では、新興宗教の教祖とそのカリスマ性に引き寄せられていく男を描いて第69回ヴェネツィア国際映画祭監督賞を受賞し、僅か6本のフィルモグラフィで世界三大映画祭すべてで監督賞に輝いた稀有な映画監督となった。

7作目に、アメリカ最高の文学者のひとりとして知られるトマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』の映画製作に取り掛かり、2014年に『インヒアレント・ヴァイス』という題名で全米公開。ピンチョンが自作の映画化を許可したのはこれが初めてであった[2][3]

8作目では、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でタッグを組んだダニエル・デイ=ルイスと2度目のタッグを組み、1950年代のファッション業界を描いた『ファントム・スレッド』(2017年)を監督。ダニエル・デイ=ルイスにとっては俳優引退作となった[4]

9作目では、フィリップ・シーモア・ホフマンの遺児であるクーパー・ホフマンと、3姉妹のポップ・ロックバンドグループであるハイムの三女・アラナ・ハイムを主演に起用し、『リコリス・ピザ』(2021年)を監督。第94回アカデミー賞では作品賞を含む3部門にノミネートされた。

私生活

歌手のフィオナ・アップルと交際し、彼女のPVを何本か手がけたが、現在は女優のマーヤ・ルドルフ(歌手ミニー・リパートンの娘)と事実婚関係にあり、ふたりの間には4子がある。

特徴

家族の機能不全、社会からの疎外や孤独、擬似的な父子関係といったテーマを扱うことが多い。手持ちカメラによる常に移動しながらの撮影など大胆な視覚効果が特徴。

全作品で自ら脚本も手がけ、多くの作品で製作にも名を連ねている。

ロバート・アルトマンジョナサン・デミスタンリー・キューブリックといった映画監督からの影響を挙げている。特に、ジョナサン・デミの『メルビンとハワード』は『ハードエイト』のインスパイア元となり、『ザ・マスター』ではバイクで疾走するシーンがオマージュされている。更に『マグノリア』における群像劇というスタイルはロバート・アルトマンからの影響である。

特定の俳優を複数回にわたって起用することが多い。5作に出演しているフィリップ・シーモア・ホフマンを始め、メローラ・ウォルターズジョン・C・ライリーフィリップ・ベイカー・ホールルイス・ガスマンらが3作以上で、ジュリアン・ムーアウィリアム・H・メイシーホアキン・フェニックスダニエル・デイ・ルイスマーヤ・ルドルフらが2作以上で、仕事を共にしている常連俳優である。

フィルモグラフィー

受賞歴

部門作品結果
アカデミー賞1997年脚本賞ブギーナイツノミネート
1999年脚本賞マグノリアノミネート
2007年作品賞ゼア・ウィル・ビー・ブラッドノミネート
監督賞ノミネート
脚色賞ノミネート
2014年脚色賞インヒアレント・ヴァイスノミネート
2017年作品賞ファントム・スレッドノミネート
監督賞ノミネート
2021年作品賞リコリス・ピザノミネート
監督賞ノミネート
脚本賞ノミネート
英国アカデミー賞1997年オリジナル脚本賞『ブギーナイツ』ノミネート
2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ノミネート
監督賞ノミネート
脚色賞ノミネート
2012年オリジナル脚本賞ザ・マスターノミネート
2021年作品賞『リコリス・ピザ』ノミネート
監督賞ノミネート
オリジナル脚本賞受賞
ゴールデングローブ賞2007年作品賞 (ドラマ部門)『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ノミネート
2021年作品賞(ミュージカル・コメディ部門)『リコリス・ピザ』ノミネート
脚本賞ノミネート
全米監督協会賞2007年長編映画監督賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ノミネート
2021年長編映画監督賞『リコリス・ピザ』ノミネート
カンヌ国際映画祭2002年監督賞『パンチドランク・ラブ』受賞
ヴェネツィア国際映画祭2012年銀獅子賞『ザ・マスター』受賞
国際映画批評家連盟賞受賞
ベルリン国際映画祭2000年金熊賞『マグノリア』受賞
2008年監督賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
ニューヨーク映画批評家協会賞2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』次点
監督賞次点
2012年作品賞『ザ・マスター』次点
監督賞次点
2017年脚本賞『ファントム・スレッド』受賞
2021年脚本賞『リコリス・ピザ』受賞
全米映画批評家協会賞1997年作品賞『ブギーナイツ』3位
監督賞3位
2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
監督賞受賞
脚本賞2位
2012年作品賞『ザ・マスター』2位
監督賞2位
脚本賞2位
2014年脚本賞『インヒアレント・ヴァイス』2位
2017年作品賞『ファントム・スレッド』3位
監督賞3位
脚本賞3位
2021年脚本賞『リコリス・ピザ』3位
ロサンゼルス映画批評家協会賞1997年ニュー・ジェネレーション賞『ブギーナイツ』
ハードエイト
受賞
2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
監督賞受賞
脚本賞次点
2012年作品賞『ザ・マスター』次点
監督賞受賞
2021年脚本賞『リコリス・ピザ』次点
ボストン映画批評家協会賞1997年新人映画人賞『ブギーナイツ』受賞
2012年監督賞『ザ・マスター』次点
2017年作品賞『ファントム・スレッド』受賞
監督賞受賞
トロント映画批評家協会賞1997年監督賞『ブギーナイツ』ノミネート
1999年作品賞『マグノリア』受賞
監督賞受賞
脚本賞受賞
2002年作品賞パンチドランク・ラブノミネート
監督賞受賞
脚本賞ノミネート
2012年作品賞『ザ・マスター』受賞
監督賞受賞
脚本賞受賞
2014年作品賞『インヒアレント・ヴァイス』ノミネート
監督賞ノミネート
脚本賞ノミネート
2017年作品賞『ファントム・スレッド』ノミネート
監督賞ノミネート
2021年作品賞『リコリス・ピザ』ノミネート
脚本賞ノミネート
フロリダ映画批評家協会賞1999年作品賞『マグノリア』受賞
ニューヨーク映画批評家オンライン賞2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
監督賞受賞
サンディエゴ映画批評家協会賞2007年監督賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
脚色賞受賞
2012年脚本賞『ザ・マスター』受賞
カンザスシティ映画批評家協会賞2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
監督賞受賞
2012年作品賞『ザ・マスター』受賞
オリジナル脚本賞受賞
2021年オリジナル脚本賞『リコリス・ピザ』受賞
オースティン映画批評家協会賞2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
監督賞受賞
2012年監督賞『ザ・マスター』受賞
シカゴ映画批評家協会賞2021年オリジナル脚本賞『リコリス・ピザ』受賞
ロンドン映画批評家協会賞2007年監督賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
クリティクス・チョイス・アワード2021年コメディ映画賞『リコリス・ピザ』受賞
ダブリン映画批評家協会賞2007年作品賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
監督賞受賞
オンライン映画批評家協会賞2012年監督賞『ザ・マスター』受賞
サンフランシスコ映画批評家協会賞2012年作品賞『ザ・マスター』受賞
2014年脚色賞『インヒアレント・ヴァイス』受賞
ユタ映画批評家協会賞2007年監督賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ノミネート
2014年脚色賞『インヒアレント・ヴァイス』受賞
英国インディペンデント映画賞1998年外国映画賞『ブギーナイツ』受賞
フランス映画批評家協会賞2008年外国語映画賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
ボディル賞2001年アメリカ映画賞『マグノリア』ノミネート
2009年アメリカ映画賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
セザール賞2009年外国映画賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ノミネート
ヨーロッパ映画賞1998年非ヨーロッパ映画賞『ブギーナイツ』ノミネート
ゴヤ賞2018年ヨーロッパ映画賞『ファントム・スレッド』ノミネート
国際映画批評家連盟賞2000年グランプリ『マグノリア』受賞
2008年グランプリ『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』受賞
2018年グランプリ『ファントム・スレッド』受賞
ゴールデン・ビートル賞2000年外国映画賞『マグノリア』受賞
2009年外国映画賞『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ノミネート
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞2014年脚色賞『インヒアレント・ヴァイス』受賞
2017年オリジナル脚本賞『ファントム・スレッド』受賞
2021年作品賞『リコリス・ピザ』受賞
監督賞受賞
インディペンデント・スピリット賞1996年新人作品賞『ハードエイト』ノミネート
新人脚本賞ノミネート
2014年ロバート・アルトマン賞『インヒアレント・ヴァイス』受賞
グラミー賞2019年長編ミュージックビデオ賞『ANIMA』ノミネート

脚注

参考文献

  • アダム・ネイマン『ポール・トーマス・アンダーソン ザ・マスターワークス』井原慶一郎訳、2021年10月、DU BOOKS

外部リンク