ラファエル・ヴァラン

フランスのサッカー選手 (1993-)

ラファエル・ヴァランRaphaël Varane1993年4月25日 - )は、フランスリール出身のサッカー選手マンチェスター・ユナイテッドFC所属[2]。元フランス代表。ポジションはディフェンダー[3]

ラファエル・ヴァラン
マンチェスター・ユナイテッドFCでのヴァラン(2021年)
名前
ラテン文字Raphaël Varane
基本情報
国籍フランスの旗 フランス
マルティニークの旗 マルティニーク
生年月日 (1993-04-25) 1993年4月25日(31歳)
出身地リール
身長191cm[1]
体重81kg[1]
選手情報
在籍チームイングランドの旗 マンチェスター・ユナイテッドFC
ポジションDF (CB)
背番号19
利き足右足
ユース
2000-2002フランスの旗 エレーム
2002-2010フランスの旗 RCランス
クラブ1
クラブ出場(得点)
2010-2011フランスの旗 RCランス 23 (2)
2011-2021スペインの旗 レアル・マドリード 236 (8)
2021-イングランドの旗 マンチェスター・ユナイテッド 46 (1)
代表歴
2010 U-18フランス2 (1)
2012 U-20フランス1 (0)
2011-2012 U-21フランス15 (2)
2013-2022フランスの旗 フランス93 (5)
1. 国内リーグ戦に限る。2023年5月31日現在。
■テンプレート■ノート ■解説■サッカー選手pj

RCランスの下部組織出身で、2010年11月7日のモンペリエHSC戦でトップチームデビューした[4]エリック・アサドゥリアン監督はヴァランを「本当のトップクラスの選手」であり「技術力も戦術理解力も申し分ない」と表現している[5]。2011年、18歳でレアル・マドリードに加入すると、10シーズンで3度のラ・リーガ制覇や4度のUEFAチャンピオンズリーグ優勝を経験。2021年夏、イングランドプレミアリーグの、マンチェスターUに移籍した。

25歳であった2018年の時点で「優勝請負人」の名誉を手に入れた名プレイヤー[6]。彼の獲得に携わったジネディーヌ・ジダンは、現役時代の同僚であったローラン・ブランの後継者と語り[3]フェルナンド・イエロとも比較されるなど大きな期待を受けた[7]。ヴァラン自身は最良のお手本として、リリアン・テュラムの名前を挙げている[8]

クラブ経歴

プロデビュー前

父親はカリブ海マルティニークのLe Morne-Rougeにルーツを持ち、母親もマルティニークにルーツを持つ[9]。1993年4月25日、リールに生まれ、7歳の時に地元リール郡にあるASエレムでサッカーを始めた[10]。2シーズンをASエレムで過ごした後、地元の強豪リールからも興味を持たれていたが、2002年7月にLOSCリール・メトロポールのライバルのRCランスの下部組織に加わった[11]。また、ガエル・カクタティモテー・コロジエチャクなど、ノール=パ・ド・カレー地域圏出身者だけで構成された同年代の逸材たちとともに、リエヴァンにあるCentre de Préformation de Footballという練習施設で練習に励んだ[9]。平日はこの施設で、休日はRCランスの下部組織でプレーしていたが、2年後に完全にRCランスでプレーするようになると、下部組織の各カテゴリーを速足で駆け上がっていった。

2008-09シーズンはトルガン・アザールジョフレイ・コンドグビアとともにU-16チームでプレーし、この世代の全国リーグ(Championnat National des 16 ans)で優勝した。2009-10シーズンはU-19チームに昇格し、主に2歳年上の選手たちに交じってプレーした。2010-11シーズン開幕前にRCランスとプロ契約を結ぶと[12]、続いてフランスアマチュア選手権(4部)に属するリザーブチームに昇格し[13]、JAドランシ(JA Drancy)とのシーズン開幕戦(2-0)でリザーブチームデビューした[14]。その後は9試合連続で先発出場し、その間は1敗しかしていない。

RCランス

2010年10月末、ジャン=ギー・ヴァレム(Jean-Guy Wallemme)監督によってトップチームの練習に招集され、週末の11月6日に行われたモンペリエHSC戦(2-0)では負傷中のアラディン・ヤイアに代わって驚きの先発出場を果たした[15]。この試合にフル出場し、それまでのシーズンに2度しか達成していない完封で勝利を収めた[4]。試合後にはキャプテンのアディル・エルマシュ、コンビを組んだエリック・シェル、ストライカーのダヴィド・ポジェなどのチームメイトからプレーぶりを称賛され、地元メディアやヴァレム監督からも賛辞を受けた[16][17]。モンペリエHSC戦後はオリンピック・マルセイユオリンピック・リヨンの強豪と連戦したため、他の若手選手たちとともにベンチを温めたが[18][19]、11月30日のスタッド・ブレスト29戦(4-1)では先発メンバーに復帰した[20]。この試合後にヴァレム監督は解任されたが、ヴァランはラースロー・ベレニ新監督の下でも先発メンバーに定着した。12月にはセンターバックのポジションを争うシェルとヤイアが復帰したため、FCジロンダン・ボルドー戦では守備的ミッドフィールダーとして出場した。この試合では3人目のセンターバックのようなポジションでプレーし、84分にはヨアン・グルキュフの近距離からのシュートをブロックして2-1のリードを保ったが[21]、終盤に失点を喫して2-2の引き分けに終わった[22]

2011年1月には背番号14番が与えられた。様々なクラブがヴァランの獲得に興味を示し[23]、これらのクラブからの関心を鎮めるために、2月3日にはRCランスとの契約を2015年まで2年間延長した[24][25][26]。5月8日のSMカーン戦(1-1)でプロ初得点を挙げ[27]、その翌節のASモナコ戦(1-1)では同点弾を決めた[28]。これらの価値ある得点を決めたにもかかわらず、RCランスは下位に低迷し、リーグ・ドゥ(2部)降格が決まった[29]。5月21日のACアルル・アヴィニョン戦(0-1)ではゲームキャプテンを務めた[30]

レアル・マドリード

2011年6月22日、RCランスのジェルヴェ・マルテル会長はクラブミーティングで、ヴァランがスペインのレアル・マドリードに移籍すると明言し、「彼はジョゼ・モウリーニョ監督が率いるレアル・マドリードの一員としてプレーするだろう」と述べた[2][31]。ヴァランは契約に先立ってレアル・マドリードのクラブオフィスを訪れ、同じフランス人でアドバイザーを務めるジネディーヌ・ジダンと対面した[2][32]。メディカルチェックを受けた後の6月27日、レアル・マドリードは公式にヴァランの獲得を発表した[33][34]。彼は6年契約を結び、移籍金は約1000万ユーロとされている[35]

ヴァランは背番号19番を背負い、開幕前に行われたプレシーズンマッチのロサンゼルス・ギャラクシー戦の後半開始時にデビュー。その4日後のCDグアダラハラ戦ではスターティングメンバーに名を連ね、フル出場した。リーガ第5節ラシン・サンタンデール戦で公式戦デビューし、リカルド・カルヴァーリョと共にセンターバックで出場して無失点に抑えた。3日後のラーヨ・バジェカーノ戦では、メスト・エジルのコーナーキックからアクロバティックなゴールを決め、移籍後初ゴールを記録した[36]

2012-13シーズンには背番号が2番へと変更になった。コパ・デル・レイ準決勝1stレグで行われたFCバルセロナ戦では、メスト・エジルのクロスから同点弾となるゴールを決めた。また、UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝のガラタサライSK戦1stレグでは3-0での完封勝利に貢献。マルカのファン投票やアスオンラインなどでチーム最高評価を得、ディディエ・ドログバからは、「ヴァランがまだわずか19歳とは本当に信じられない。彼は自分がこれまで対戦してきた中でも最も優れたDFの1人だ」と賞賛された[37]。しかし、リーガ第35節RCDエスパニョール戦にてワカソ・ムバラクとの競り合いで負傷、右足の半月板損傷により長期の離脱を余儀なくされた[38]

2013-14シーズン、10月2日に行われたチャンピオンズリーググループステージFCコペンハーゲン戦で5ヶ月ぶりに復帰を果たしたものの、11月の代表戦後に再び同箇所を傷めて戦線離脱[39]。2月2日のリーガ第22節アスレティック・ビルバオ戦でロスタイムに出場して復帰すると、11日のコパ・デル・レイでのアトレティコ・マドリード戦で先発復帰を果たした。2014年9月18日、公式サイトでレアル・マドリードとの契約を2020年まで延長したと発表した[40]

2016-17シーズンから背番号を2番から5番に変更した。2017年9月27日、レアル・マドリードとの契約を延長した[41]

レアル・マドリードでのヴァラン(2018年)

2017-18シーズンはチャンピオンズリーグ3連覇に貢献。1998年のクリスティアン・カランブー、2002年のロベルト・カルロス、2014年のサミ・ケディラに次ぎ4人目となる同年にチャンピオンズリーグ、FIFAワールドカップを制した選手となった。それにより、ルカ・モドリッチキリアン・エムバペアントワーヌ・グリーズマンらとともにバロンドールの有力候補の一人と目された[42]。バロンドールはチームメイトであるモドリッチが受賞したものの、FIFA/FIFProワールドイレブンUEFAチーム・オブ・ザ・イヤーに初めて選出された。

マンチェスター・ユナイテッド

2021年7月27日、マンチェスター・ユナイテッドFCは、ヴァランの移籍に関してレアル・マドリードと基本合意に達したことを発表した[43][44]。2021年8月14日、2021-22シーズンのプレミアリーグ開幕節にヴァランが背番号19番のユニフォームを持って現れることでマンチェスター・ユナイテッドは正式に加入を発表した。契約期間は2025年6月末まで[45]。第35節のブレントフォード戦移籍後初ゴールを挙げた[46]

移籍当初は苦しんだが、エリック・テン・ハフ体制になると新加入のリサンドロ・マルティネスと強固な守備を構築し、マンチェスター・ユナイテッド6年ぶりのタイトルであるカラバオ・カップ獲得に貢献した。しかしその後はヴァラン自身のスピードやフィジカルの衰えに加えハリー・マグワイアの復調、マグワイアのパートナーとしてヴィクトル・リンデロフジョニー・エヴァンズがより左足の精度に優れることなどからセンターバックの序列を下げ、出場機会を減らした[47]

フランス代表

U-18フランス代表

世代別フランス代表にはU-17代表で初招集されたが、この時は出場機会がなかった[11]。2010年8月24日、U-18デンマーク代表との親善試合(2-0)でU-18フランス代表デビューし、この試合でチームの2点目を決めた[48]。RCランスのトップチームでの出場機会が増え、その後は代表招集の辞退が続いた結果、イスラエルで開催されたTournoi de Limogesには出場できなかった[9]

U-21フランス代表

2011年2月3日にはU-21スロバキア代表との親善試合のためにU-21フランス代表に初招集され[49]、ヴァランはこの招集を「大きなサプライズ」と表現した[50]。このU-21スロバキア代表戦でデビューし、フル出場して3-1の勝利を収めた[51]。11月15日のU-21欧州選手権予選スロバキア戦では、このカテゴリで初得点をマーク。2012年8月にはディディエ・デシャン率いるフル代表にも招集されたが[52]、出場機会はなかった。

フランスA代表

フランス代表でのヴァラン (2018年)

2013年3月22日に行われた2014 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選ジョージア代表戦でポール・ポグバと共にA代表デビューを果たし、先発フル出場した[53]。4日後のスペイン代表戦にも出場したが、怪我によりそれ以降の試合を欠場。予選はスペインが勝ち抜きを決め、フランスはプレーオフウクライナ代表と試合をすることとなった。アウェーのオリンピスキ・スタジアムで行われた第1戦も欠場し、フランスは0-2で敗れた。スタッド・ド・フランスでの第2戦にはヴァランも出場し、逆転でFIFAワールドカップの出場権を獲得した。しかし、この試合でヴァランは再び負傷してしまった[39]。本大会ではベスト8でドイツに敗れたが、フランスの5試合全てに出場した。

2014年11月18日に行われたスウェーデン代表との親善試合で代表で初の主将を務め、後半に代表初得点を挙げた[54]

2016年、レアル・マドリードでの練習中に左足大腿二頭筋を負傷し、EURO 2016を欠場した[55]

2018FIFAワールドカップロシア大会ではレギュラーの座を勝ち取り、フランス代表の優勝に貢献した。同大会では準々決勝ウルグアイ戦で先制ゴールを挙げるなど攻守共にチームを牽引し、ベストイレブンにも選出された。

ワールドカップカタール大会には10月に負った怪我で出場さえ危ぶまれていたが[56]、初戦のオーストラリア戦を欠場するも、全7試合中6試合に先発出場し、決勝でアルゼンチンに敗れて2連覇はならなかった。大会終了後に代表チームからの引退を宣言した[57]

個人成績

クラブ

2022-23シーズン終了時点[58]

クラブシーズンリーグ戦国内カップリーグカップ国際大会その他合計
ディビジョン出場得点出場得点出場得点出場得点出場得点出場得点
RCランス2010-11リーグ・アン2321000--242
レアル・マドリード2011-12ラ・リーガ9121-4000152
2012-1315072-11000332
2013-1414020-7000230
2014-1527042-12030462
2015-1626000-70-330
2016-1723131-10230394
2017-1827010-11050440
2018-1932240-4030432
2019-2032211-8020433
2020-2131200-9010412
通算2368247-83217036017
マンチェスター・ユナイテッド2021-22プレミアリーグ221200050-291
2022-23240302050-340
通算4615020100-631
キャリア通算305113072093217044720

代表

出場大会
2014年 - 2014 FIFAワールドカップ (ベスト8)
2018年 - 2018 FIFAワールドカップ優勝
2021年 - UEFA EURO 2020(ベスト16)
2022年 - 2022 FIFAワールドカップ(準優勝)
試合数
2022年12月18日現在[59]
  • 国際Aマッチ 93試合 5得点(2013年-2022年)


フランス代表国際Aマッチ
出場得点
201340
2014131
2015101
201680
201750
2018141
2019102
202070
2021120
2022100
通算935
得点
#開催日開催地対戦国スコア結果大会
1.2014年11月18日 マルセイユスタッド・ヴェロドローム  スウェーデン1–01–0親善試合
2.2015年3月26日 サン=ドニスタッド・ド・フランス  ブラジル1–01–3
3.2018年7月6日 ニジニ・ノヴゴロドニジニ・ノヴゴロド・スタジアム ウルグアイ1–02–02018 FIFAワールドカップ
4.2019年3月22日 ジンブル・スタジアム  モルドバ0-21-4UEFA EURO 2020予選
5.2019年11月14日 サン=ドニスタッド・ド・フランス1-12-1

タイトル

クラブ

レアル・マドリード
マンチェスター・ユナイテッドFC

代表

個人

脚注

注釈


脚注

関連項目

外部リンク