Logo ウィキメディア財団の紹介動画(2009年4月製作) ウィキメディア財団 (ウィキメディアざいだん、英 : Wikimedia Foundation, Inc. 、略語: WMF )は、ウィキペディア を運営し、その母体となる財団 である。ウィキペディアの創立者の一人ジミー・ウェールズ によって設立され、2003年にアメリカ合衆国 ・フロリダ州 法による非営利組織 (非営利コーポレーション )になった[3] [9] [10] 。
名称の「ウィキメディア」は英語版ウィキペディア の参加者シェルドン・ランプトン の命名により、ウィキ (wiki) とマルチメディア (multimedia) から造語された[11] 。「ウィキペ ディア財団」は誤りである。
同財団の目的は、ウィキ を用いたオープンコンテント の知的資源を開発するプロジェクト の促進と、その資源を無料で広告を用いずに広く公衆に提供することにある。多言語百科事典ウィキペディア の運営に加え、多言語辞書兼シソーラス であるウィクショナリー 、警句箴言集のウィキクォート 、主に学生向けの電子書籍集ウィキブックス のサポートなどを行っている。財団が運営するプロジェクトについては、#ウィキメディア財団のプロジェクト を参照。
しばしば誤解されることであるが、全プロジェクトに共通の方針や法的措置にかかわる場合を除き、財団は各プロジェクトにおけるコンテンツの内容をめぐる議論にも個別の運用方針にも関与せず、また各プロジェクトの代表者というものも存在しない。
財団のプロジェクト ウィキメディア財団のウェブサイトに掲載されているコンテンツのほとんどは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 - 継承 4.0 国際という、自由な再配布を認めたライセンスにしたがい公開してある。これらのコンテンツはボランティアが貢献して編み、パブリック・ドメイン などの理由でほとんどまたは全く著作権の制約を受けない資料によって構築されている。以下のプロジェクトをまとめて、ウィキメディア・プロジェクト と呼ぶ。
フリーコンテンツモデルを追求しているウィキメディア財団では、ウィキペディア を始め、多くのウィキ を運営している。
コンテンツを支えるプロジェクトも存在する。例えば、アウトリーチ・プロジェクト では、ウィキメディア・プロジェクトの利用促進についてのガイドラインを示している。
組織 理事会 ウィキメディア財団の最高意志決定機関は理事会であり理事定数を下限9席から上限16席までと定め、2022年1月時点で11名の理事が在籍している[1] [12] [13] 。
1席はコミュニティ創立者枠。共同創立者で初代理事長を務めたジミー・ウェールズ の議席である[12] [13] [2] 。3年ごとに理事たちに承認を受ける必要があるが、任命され続ける限り多任制限はない[1] 。もし任命を受けなかった場合はコミュニティ創立者枠は空席となり、定款が改定されない限り他の理事枠の候補がこの席を埋めることはない[1] 。 コミュニティおよび提携団体選出理事の枠は上限を8席とし、ウィキメディア利用者の互選によって決まる。2022年1月時点でこの枠の理事6名が在籍[12] [13] 。 特別な専門知識を備えた理事の枠は上限を7席とし、理事会が委嘱する。2022年1月時点でこの枠の理事4名が在籍[12] [13] 。 現職理事名簿は財団ページに[12] 、これまでの理事経験者一覧はWikimedia Foundation にある[※ 1] 。
理事会は、財団とプロジェクトに対する最終的な決定権を持ち、また定款を変える権限をもつ。
理事長は2022年1月時点でNataliia Tymkiv (2021年10月 - ) [12] [6] [5] 。
会員資格 ウィキメディア財団は会員資格を持たない[1] 。会員制度は2006年以前の定款に記述があるが、実現には到らなかった[14] 。この改定以前の定款で「会員よりの選出」とされた理事枠は、「コミュニティ」の投票による理事枠として残された[14] 。投票権者の詳細は理事会がこれを定める。2007年の選挙では、一定の編集回数と編集歴によるほか、システム管理者、職員で一定の活動歴をもつもの、および理事に投票権が与えられた。
提携団体 ローカル・チャプター ローカル・チャプターの設立状況(2021年時点)灰色 の地域は設立議論もされていない 承認済みだが未設立
計画段階の支部
ウィキメディア運動と推進する目的を共にし、ウィキメディアを名乗る資格を財団から認められた国や地域別に設置された非営利法人を、ローカル・チャプター (local chapter ) と呼ぶ[15] 。財団の下部組織ではなく、それぞれ独立した組織である。以前は「地方支部」と訳されていたが、下部組織と誤解を招きやすかったので「国別協会 」あるいは「国別・地域別協会 」と翻訳されるようになった。ローカル・チャプターと財団の法的関係は、必ずしも一様ではなく、個別に契約を締結する。ウィキメディア財団を現地で法的に代表する資格を持つものから、独立な法人格をもち非公式な協力関係にあるものまで、主に現地の法律上の理由にもとづきさまざまな関係が存在する。
ウェブサイト上のコミュニティでもある各プロジェクトと、ローカル・チャプターの間には法的には関係がない。ローカル・チャプターは企業・学校・他の社会団体と現地ユーザとの連携を図ると共に、また独自の資産をもち、財団の活動の支援を行う。ローカル・チャプターはそれぞれ独自の会計をもち、ローカル・チャプターへの寄付はウィキメディア財団の直接の収入とはならない。一方でローカル・チャプターが取得した財産がウィキメディア財団の活動の支援のために利用されることがある。代表的な例として、ドイツ・チャプター からのウィキマニア2005(後述)への寄付、ドイツ・チャプターの保有する計算機資源の提供 (toolserver ) などがある。
2022年1月時点で運営中であるローカル・チャプターは38箇所になるが[16] 、日本ではまだ設立はおろか、準備中ですらない。日本のローカル・チャプターの設立に関する議論は、メタ・ウィキ[17] の Wikimedia Japan のページにある[18] 。
それぞれのチャプターの設立年次および法人格等についてはメタ・ウィキのウィキメディア国・地域別協会にある[16] 。
テーマ別組織 テーマ別組織は特定分野のテーマに沿って設立された財団からは独立した非営利団体である[19] 。2022年1月時点では カタールニャ語 話者による「アミカル・ ウィキメディア」[20] と医学文献へのアクセスをより広める「ウィキプロジェクト医療」[21] の2組織が運営されている[22] 。
利用者グループ 国別・地域別協会やテーマ別組織と違い設立には法人格を求めておらず、条件を満たした最低3名の利用者から始められるグループである[23] 。認定を受ければ財団が権利を有する商標の名称やロゴをグループ用にアレンジしたものを使用できるが、公式に行動規範や知的財産権に対する扱いなどを取り決めた契約書に同意する必要がある[23] 。2022年1月時点で136グループが認証されている[23] 。
以上の3つのグループを総称して提携団体と呼ばれている[24] 。
職員 ウィキメディア財団はカリフォルニア州サンフランシスコ (2008年1月まではフロリダ州セントピータースバーグ)に事務所を置く[25] 。
最初の有給職員は2005年に採用され、この年、3人の職員が雇われた(ブライアン・ヴィバー、ダニー・ウール、サーバ担当の非常勤職員1名)。以後、業容の拡大に伴い、順次職員を採用している。2008年当時は約10名の常勤職員がこの事務所で働いており、またサーバの管理等に数人の契約職員を雇用していた。国外にいる職員はフルタイム契約・パートタイム契約を問わず、すべて契約職員であった[26] 。また2007年より、インターンが管理部門の業務を補助していた。現在の組織は Wikimedia Foundation departments を参照されたい。
歴代の事務長 歴史 サン・フランシスコ事務所の一隅 (2008年) ウィキペディアを初めとするプロジェクト は、当初ジミー・ウェールズ の個人プロジェクトとして開始された。諸プロジェクトのサーバ 、ドメイン名 およびデータ は、ジミー・ウェールズが当時、最高経営責任者であったインターネット 会社 Bomis によって所有されてきた[3] 。2003年 6月 にウェールズがウィキメディア財団の設立を発表すると同時に、これらの所有権は財団に寄付 された[3] 。
財団設立後も、プロジェクトの消費電力 やネットワーク 費用は、Bomisの寄付によって賄われてきた。非営利団体の設立によって、寄付金や米国連邦政府 からの研究資金などを獲得しやすくすることで、これらのプロジェクトの安定した発展が保証されるとの見方が大勢を占めた。財団設立後、2004年 から2005年 初頭には他の団体からの寄付や助成の申し出があり、2005年 3月 現在、Bomis の寄付は、プロジェクトの使用する全帯域の2/3に相当する。
当初、財団の定款では理事会 の定員は5人とされ、うち2人がユーザ 代表であるとされた(2019年現在では定員10名)。しかしほぼ1年間ユーザ代表理事は置かれず、その間、財団のガバナンス のあり方、理事会などについての詳細が関連プロジェクトのメンバーによって議論された。2004年 6月 、最初のユーザ代表理事が選ばれた。このときの任期は1年であったが、のち2005年にはユーザ代表理事の任期は2年に延長された。
財団の活動をより強化し、また財団運営へのユーザの参加を促すことがしばしば課題として指摘される。これに対し、地方支部理事の財団理事会へのオブザーバーとしての招聘、および各種テクノロジー 、法務 、広報 などの分野にユーザから選ばれた委員をおくなどの措置が2005年に取られた。また2006年には、これら委員が個人で分掌していた仕事をさらに効率的にすすめるべく、ユーザーからなる委員会がいくつかの分野に設置された。
委員会はすべて理事会決議によって設置され、設置と同時に委員長を含む原初構成員が指名される。構成員には、議決権をもつメンバーと議決権をもたないアドバイザーの二種があり、理事、地方支部理事、一般ユーザ、外部のエキスパートなどが構成員となりうる。構成員は理事の指名または委員会メンバーからの推薦および承認によって決定される。
ただしこのような委員職や委員会の設置は、その職にない一般ユーザが自分の裁量で行動することをさまたげるものではない。ユーザの裁量による行動は、サイト 上のコンテンツ 制作にとどまらず、外部資金の獲得や、企業 との提携 などにも及んでいる。財団は法的な権利を保持しつつ、ユーザの自主的な活動を積極的に奨励している。したがって、ユーザーはアグレッシブに参加でき、その点においてユーザー主導の立体的な辞典の構築が可能である。ただ、この点については逆にデメリットであるという指摘もあることを見落とすべきではないだろう。
なお、2007年 10月9日 には、財団の本部をフロリダ州 セントピーターズバーグ からカリフォルニア州 サンフランシスコ のテクノロジーハブへ移転することが発表され[25] 、2008年 1月 末に移転を実施した。財団は、サンフランシスコへ移転する理由として、アメリカのハイテク の中心地であること、展開しているプロジェクトに関連した優秀な人材やサポートを確保できること、地理的にアジア での事業パートナー候補との結び付きを深めることができること、などを挙げている[31] 。
交流の支援 ウィキメディア財団の事業のなかには、ユーザ同士の交流の促進も含まれる。ウィキメディア財団は、2005年以降、毎年国際会議・通称ウィキマニア を開催している[32] [33] 。開催地は次の通り。
毎年 380人から2,000人程度、国・地域別では80ヶ国前後から出席者がある[32] 。
2004年ごろから、ユーザ主体によるミーティングが主にヨーロッパで催される中、多言語プロジェクトゆえの国際的な交流の要望が高まり、ウィキメディア財団主催による国際的会議の構想につながった。
ウィキマニアはユーザの交流と同時にウィキメディア・プロジェクト全般に対する研究の促進を目標にしており、外部から優れた招待講演者を招くことにも力をいれている。これまでの招待講演者には、リチャード・ストールマン 、ウォード・カニンガム 、ローレンス・レッシグ 、ブリュースター・カール 、伊藤穰一 などがいる。
この試みは他の同種の非営利団体からも好感がもたれており、Open Source Initiative からは発展途上国からのウィキマニア参加希望者に3年連続で旅費の援助がなされている。
財務 全般 ウィキメディア財団の財政の成長(単位:US$)。2003–2018。 黒:純資産緑:歳入 赤:支出 ウィキメディア財団は、目的のために必要な資金として、公共の寄付と助成金に頼っている[46] 。そのため、連邦所得税[4] [47] および州の所得税が免除されている[46] [48] 。私有の財団ではないため、アメリカ合衆国では、ウィキメディア財団への寄付金は税金の控除対象となる慈善寄付とみなされる[46] [47] 。
技術的・経済的な継続した成長のほとんどは寄付金に依存しているが、ウィキメディア財団でも、連邦助成金(英語版 ) 、スポンサー、サービスの提供、ブランドのマーチャンダイスなどの代替手段による歳入源を増加させている。検索エンジンや同様の一括分析・再出版を主なターゲットとしたWikimedia OAI-PMH の更新フィードサービスは、何年間も歳入源となってきたが[46] 、現在では新規の顧客は受け付けていない[49] 。DBpedia は、このフィードへの無料のアクセス権を与えられている[50] 。
2014年7月、財団は、NPOに対する処理手数料の免除を行っているデジタル通貨交換のCoinbase を経由した、ビットコイン による寄付の受付を発表した[51] 。2019年1月にはビットコイン決済サービスプロバイダーのBitPayを利用したビットコインとビットコイン・キャッシュ による寄付の受付を始めると発表した[52] 。2022年には暗号通貨 の運用維持には膨大なエネルギー消費が必要であるとの主張から財団が唱える環境的持続性可能性 の理念と合い入れないとし、プロジェクトの利用者達によって暗号通貨の寄付の受領を停止するよう財団に対して提案がなされた[53] [54] 。しかし財団は寄付された暗号通貨は直ちにUSドル通貨に換金していることから環境への影響は最低限であるとし、また財団は包括性という理念も掲げておりより多くの寄付者が望む寄付方法を維持すべきだとの理由から、暗号通貨の寄付金受け入れは維持されることとなった[54] [55] 。
2006年初には財団の純資産 は 270,000ドル であった。2006年中に財団は総計1,510,00ドルに及ぶ資金援助および収益 を得て、790,000ドルの支出があった。純資産は720,000ドル増え、総計100万ドルを超えた[46] 。2007年、財団は拡大しつづけ、純資産が1,700,000ドルとなった[56] 。2007年に収入も支出も、ほぼ2倍になった[56] 。
2004年の会計年度の終わりから、2014年6月30日に終わった会計年度の終わりまでに、財団の純資産はUS$57,000 からUS$53.5 millionまで増加した[57] 。2007年にウィキメディア財団に参加したスー・ガードナー のリーダーシップの下、財団のスタップレベル、寄付者数、歳入に、非常に大きな成長が見られた[58] 。
ウィキメディア財団の財務・管理の責任者であるGarfield Byrdのインタビュー動画。2011年10月7日にウィキメディア財団で収録。 2007年から2009年まで、Charity Navigator(英語版 ) はウィキメディア財団に最大4つ星の評価で3つ星の全体評価を与え[59] 、2010年には4つ星の評価になった[60] 。2019年11月年現在[update] 、2018年のデータによると、評価は4つ星(総合スコアは100点中98.14点)である[61] 。
支出 ウィキメディア財団の支出は、主に給与や賃金、専門職のオペレーションやサービスに掛かっている[62] 。
寄付 2008年 3月25日 、ベンチャー投資 家のコースラ夫妻から50万ドルを寄付される[63] 。2008年3月28日、財団はアルフレッド・P・スローン財団 から3年で300万ドルの寄付 を受けることを発表した[64] [65] 。2008年にはオープン・ソサエティ財団 より、印刷版のウィキペディアを作るために40,000ドルの寄贈を受けた[66] 。2009年、財団は3つの贈与を受けた。ひとつはフランク・スタントン によるスタントン財団 から890,000ドルで、初めて使用する人のために、ユーザインタフェース の研究と簡素化を支援することを目的としている[67] 。ふたつめはフォード財団 によるもので、ウィキメディアコモンズ に対して、ウィキメディアのウェブサイト群のインタフェースとワークフローの改良のためのものである[68] 。2009年8月、ウィキメディア財団はヒューレット財団 から500,000ドルの贈与を受けた。2009年8月、Omidyar Network(英語版 ) はウィキメディア財団に対して200万ドルの提供を申し出た。2010年 2月22日 、検索サイト を運営するGoogle 社が200万ドルを財団に寄付した。
財団の改名提案とコミュニティによる反対 2021年3月に理事会は財団自体の改名などを含むプロジェクトの発足を発表したが、その改名にはなかなか知名度があがらないという「ウィキメ ディア」財団から、世界的に認知度が高い「ウィキペ ディア」財団へ変更すことを示唆する内容が含まれていたことから、利用者コミュニティから反対意見があがり、同年6月には財団が運用する利用者用のウェブサイトに反対表明の公開書簡が公開された[69] [70] [71] 。公開書簡には1,000名以上の署名が集まり、同年9月に理事会はプロジェクトを保留する決議をしたが、2022年7月以降にプロジェクトを再稼働出来る可能性は残した[72] 。また、もしプロジェクトが再稼働された場合は改名プロセスに利用者コミュニティが大きく関わることや提携団体 の改名にもっと柔軟に対応することも決議に盛り込まれた[72] 。
脚注 注釈 出典 関連項目 外部リンク サイト
動画