ウルドゥー語

インド・ヨーロッパ語族インド語派に属する言語の一つ。ヒンドゥスターニー語の方言。

ウルドゥー語(ウルドゥーご、اردو)は、インド・ヨーロッパ語族インド語派に属する言語の一つ[1]ヒンディー語とともに、ヒンドゥスターニー語の標準のひとつをなす。

ウルドゥー語
اردو
ナスタアリーク体で書かれた「ウルドゥー」
話される国パキスタンの旗 パキスタン
インドの旗 インド
および19カ国
地域南アジア
話者数6100万人
言語系統
表記体系ウルドゥー文字
公的地位
公用語パキスタンの旗 パキスタン(国語)
インドの旗 インド
アーンドラ・プラデーシュ州
ジャンムー・カシミール連邦直轄領
デリー首都圏
ビハール州
少数言語として
承認
インドの旗 インド
連邦政府
ジャールカンド州
統制機関パキスタンの旗 パキスタン国立言語局英語版ウルドゥー語版
インドの旗 ウルドゥー語普及全国評議会英語版ウルドゥー語版
言語コード
ISO 639-1ur
ISO 639-2urd
ISO 639-3urd
テンプレートを表示

概要

北インドを中心に、パキスタンに約1300万人、インドに約6000万人の母語話者がおり、話し言葉レベルでの話者の人口はヒンディー語と共に、中国語英語につぐ世界第3位とされる[1]

パキスタン国語になっている[1](公用語は英語)。インドでは、憲法第8附則において定められた22の指定言語のひとつであり、インド最北部のジャンムー・カシミール州では州の唯一の公用語とされ、北部のビハール州デリー連邦直轄地ウッタル・プラデーシュ州、および中南部のテランガーナ州では追加公用語(additional official language)となっている。

インドの公用語であるヒンディー語と同系の言語であり、両者ともヒンドゥスターニー語デリー方言の社会的変種に属し(複数中心地言語)、ウルドゥー語はそのイスラム教徒版標準語と位置付けられる(一方のヒンディー語はヒンドゥー教徒版標準語となる)。表記法は異なるが文法や基本語彙は同一であるため、多くの場合相互に理解可能である。ただし、ウルドゥー語はヒンディー語に比して宗教的な条件からペルシア語アラビア語からの借用語がより多く使われているのに対し、ヒンディー語は独立闘争期の言語純化運動の影響でサンスクリットからの(再)借用語がより多く、専門的な内容になるほど相互理解可能度は下がる。

ウルドゥー語はインド亜大陸のイスラム教徒のリングワ・フランカであり[1]、ウルドゥー語母語話者の80%はインドに分布している。パキスタンはウルドゥー語を国語としているが、ウルドゥー語(ヒンドゥスターニー語)が母語として使われていた地域からはやや外れており、ウルドゥー語を母語とするのは全人口の1割未満である。また、ウルドゥー語を唯一の公用語としているジャンムー・カシミール州では、ウルドゥー語母語話者は人口の1%にも満たない。これらの国や地域では、ウルドゥー語はイスラム教のシンボルとして、また現地で話されている諸言語に対する中立な共通語として使われていた。

歴史

12世紀・13世紀頃から西北インドへのイスラム教徒(ガズナ朝)の侵入が盛んになると、デリー周辺で用いられていたカリーボーリー方言にペルシャ語やアラビア語の語彙を取り入れてできたという。当時はアラビア文字を改良して使われ、「ウルドゥー」ではなく「北インド」を意味する「ヒンディー」とか「ヒンダヴィー」と呼ばれていた。14世紀以降、デカン高原にイスラーム王朝(トゥグルク朝)が建てられると、それらの王朝内でもこの新しい言語が使われ、さらにその地域のマラーティー語ドラヴィダ系の言葉の影響を受けて発達した。その地域は南方にあったので「南部の」という意味を持つ「ダッキニー」と呼ばれ、叙事詩や叙情定型詩のガザルもこのダッキニーで書かれはじめた。

16世紀の初めにムガル朝が成立するが、宮廷語のペルシャ語と同時に民間ではヒンディー語が話され、第5代のシャー・ジャハーンの時代には「ザバーネ・ウルドゥーエ・ムアラーエ・シャージャハーナーバード」(シャージャハーナーバードの高貴な陣営の言葉)という呼び名を得るほど発達した。18世紀以降ムガル朝が衰退するにつれて、「陣営」の意味を持つ「ウルドゥー」という短い呼び名となって、宮廷でも使われるようになる[2]

文字

表記には、ペルシア文字に特殊な音を表すためにいくつかの文字を加えたものである「ウルドゥー文字」を用いる。ただし、インド国内のムスリムデーヴァナーガリー文字を用いる場合があり、この場合ヒンディー語との境界はより一層不明瞭となる。ヒンディー語話者との文通の際などには、ラテン文字を用いる。

音韻

子音[3]
唇音歯音歯茎音そり舌音硬口蓋音軟口蓋音口蓋垂音声門音
鼻音m مn نŋ ن
有気音 مھ نھ
破裂音/
破擦音
無声音p پ تʈ ٹ چk کq قʔ ع
無声音 有気音 پھt̪ʰ تھʈʰ ٹھtʃʰ چھ کھ
有声音b ب دɖ ڈ جɡ گ
有声音 有気音 بھd̪ʰ دھɖʰ ڈھdʒʰ جھ گھ
はじき音/
ふるえ音
r رɽ ڑ
有気音 رھɽʰ ڑھ
摩擦音無声音f فs سʃ شx خh ہ
有声音v وz زʒ ژɣ غ
接近音l لj ی
有気音 لھ يھ


The oral vowel phonemes of Urdu according to Ohala (1999:102)


母音(二重母音は除く)[3]
前舌母音中舌母音後舌母音
短母音長母音短母音長母音短母音長母音
狭母音ɪʊ
鼻母音ɪ̃ĩːʊ̃ũː
半狭母音eəo
鼻母音ẽːə̃õː
半広母音ɔː
鼻母音ɔ̃ː
広母音ææːɑː
鼻母音æ̃ːɑ̃ː

文法

文構造はSOV型である。修飾語は被修飾語の前に置く。名詞には男性名詞と女性名詞の二種類の文法的性がある。文頭のکیا(kyā)で、当否疑問文を形成し、文末には疑問符を記述する。

脚注

関連項目

外部リンク

🔥 Top keywords: メインページ宮崎麗果特別:検索豊後水道松本忠久土居志央梨若葉竜也能登半島地震 (2024年)田中雄士長谷部誠井上道義The GazettE若林志穂服部百音黒木啓司REITA虎に翼平井理央出口夏希サーブ (盲導犬)三鷹事件セウォル号沈没事故白眞勲三淵嘉子高橋克也 (オウム真理教)ME:Iルーシー・ブラックマン事件佐藤ありさ杉咲花蜜谷浩弥水野真紀亀井亜紀子 (政治家)熊本地震 (2016年)水原一平井川意高中川安奈 (アナウンサー)内藤剛志いなば食品YOSHIKI